コラム

2022年4月5日  

備えつつ暮らすための副読本『地震と火山と防災のはなし』

備えつつ暮らすための副読本『地震と火山と防災のはなし』
3月31日は、年度末で忙しい方も多かったと思います。しかし早朝と夜間に、また地震のニュースがありました。早朝は南太平洋で、夜間は千葉と京都で起こったものです。3月の半ばにも、東北で大きな地震があったばかりです。
また1月と3月上旬には、南太平洋で大きな噴火がありました。昨年には小笠原の海底火山噴火によって軽石が大量に漂着する被害も起こっています。
さらに大きい地震や噴火が起こってもおかしくないのでは、と不安に思っている方も多いでしょう。災害に対する不安を少なくするためには、相手を知って、正しく備えることが必要です。「どうして日本は地震や火山が多いの?」「南海トラフ地震や富士山噴火はいつ起こるの?」「結局どうすればいいの?」そうした不安に、この本が寄り添ってくれるかもしれません。
南海トラフ地震と富士山噴火、二つの懸念とともに暮らす静岡県民向けに、防災講座が開催されました。この防災講座の内容をベースに、やさしくまとめられたのが今回ご紹介する『地震と火山と防災のはなし』です。日本に地震と火山が多い理由、富士山の噴火と南海トラフ地震の予測と防災について解説したあと、自然との付き合い方と防災の心構えを提案します。

この記事の著者

スタッフM:読書が好きなことはもちろん、読んだ本を要約することも趣味の一つ。趣味が講じて、コラムの担当に。

『地震と火山と防災のはなし』はこんな方におすすめ!

  • 地震防災、火山防災に関心のある方
  • 南海トラフ地震や富士山の噴火に不安がある方
  • 日本の自然の特徴と災害との関係を知りたい方

『地震と火山と防災のはなし』から抜粋して5つご紹介

『地震と火山と防災のはなし』からいくつか抜粋してご紹介します。本書は、高校生くらいから読める防災の「心構え」のための入門書です。ひとつの節はそれほど長くないので、隙間時間でも少しずつ読み進めていくことができます。日本の自然に興味と愛着を持ち、その恩恵と表裏一体で常に存在する災害について、日常的に備えられるようになることが目的です。

プレートの動きが変わってできた日本列島

日本列島の成り立ちには、太平洋プレートが大きく関係しています。太平洋プレートは西へ動いているため、ハワイの西に海山が並んでいます。よく見ると、以前は南から北に向いて太平洋プレートが動いていたことが分かります。4300万年前にプレートの動く向きが変わったのです。

動きの向きが変わった太平洋プレートは日本の下に潜り込み、大陸の端が割れて湖ができ始めました。それが広がって1600万年前に日本海になりました。日本海は、世界の海の中で一番若い海です。一方太平洋側では、1億年以上前に生まれた太平洋プレートが日本の下に沈み込んでいるので、世界で一番古い海底が太平洋側にあります。若い海と古い海をもつのも日本の特徴のひとつです。

本州では伊豆半島だけがフィリピン海プレートにあります。南方からやってきて、約60万年前に今の状態になりました。伊豆半島は火山地帯です。地下にマグマがあり、そのマグマは軽いため沈み込むことができず、本州の陸地に衝突したわけです。

沈み込んだプレートが地下約100kmに達すると、マントル内に上昇流が発生し、内部が溶けてマグマが発生します。上昇流は周囲の岩石より軽いので、地表から5〜10km付近の深さまで上昇します。それがマグマだまりです。活火山はマグマの上昇するところの真上に列になって並んでいますが、その下の深さ約100kmに沈み込んだ海のプレートがあります。この活火山の列を、火山フロントと呼びます。

プレートの記された地図を見る度に、「この国が揺れないはずはない」と納得してしまいます。まるで列車の連結部に国土が乗っているような不安定さです。一方、世界にはほとんど地震が起こらない場所も多く、硬い岩盤の上にあってプレートの境目からも遠いフィンランドやスウェーデンなどは、ほぼ地震と無縁だそうです。

将来の噴火はどこから?どのくらいの規模?

過去の噴火から将来の富士山噴火を推定してみます。富士山では、プレートの動きに影響を受け、割れ目に沿って直線上に並ぶ火口(割れ目火口)が北西―南東方向にできる傾向があります。南から衝突した伊豆半島が押してくるので北西一南東方向の裂け目ができ、その場所を利用して溶岩が出てきやすくなり、火口が形成されます。

過去の割れ目噴火の火口を見ると、山頂から一番遠い火口まで約13.5 km です。今後、富士山で噴火が起きる場合、山頂を中心として、直径約 27 km の範囲は火口ができる可能性が高いと考えるのが妥当です。

世界の火山噴火を参照すると、数百年ほど休止したのちに噴火した場合、大噴火になりやすい傾向があります。富士山では1707年の宝永噴火以来、300年あまりが経過しているので、大規模噴火が起こる可能性があります。

噴火の予兆を捉えることも大切です。富士山ではさまざまな方法で火山観測が行われています。GNSS、傾斜計、歪み計、全磁力計、空振計、監視カメラ等を気象庁や各種研究機関、大学等が協力して運用しています。

地震計も設置されています。観測している地震は2種類あり、1つ目は、富士山の火山活動に起因する小さな地震(専門的には低周波地震と呼ぶ)です。マグマだまりの天井付近にあたる深さ10〜20kmで起きています。

2つ目は断層運動に起因する通常の地震です。東日本大震災の直後に、山頂直下から見て南側で活発になりました。この通常の地震がマグマだまりに刺激を与えるのではと危惧されましたが、富士山の火山活動に起因する地震は特段活発になったわけではありませんでした。

火山活動に起因する地震の活発化が必ず噴火に先行して起こるのかどうかは不明です。観測開始以来富士山が噴火していないからです。しかし、この地震はマグマだまりの動きと直結していると考えられることから、富士山噴火の兆候を掴める可能性があるとされ、注意深く観察されています。

富士山は火山ではありますが、孤立した最高峰という条件は、数々の観測に非常に好都合です。気象学や火山学はもちろん、天文学、環境科学、高所医学、等の様々な研究が富士山頂で取られたデータをもとに行われています。研究者たちは富士山を注意深く見守りつつ、富士山から地球を見渡してもいるのです。

南海トラフ地震とは何だろう

南海トラフ地震は、フィリピン海プレートと陸のユーラシアプレートの境界で必ず起きる巨大地震です。ユーラシアプレートの先端部が引きずり込まれ歪みが蓄積し、限界に達した時にユーラシアプレートが跳ね上がることで地震が発生します。地震のマグニチュードは8〜9、30年以内に発生する確率は70〜80%と言われています。

M9 クラスの地震が起きれば、東日本大震災の原因となった 2011 年の東北地方太平洋沖地震と同程度の規模となります。その場合、沖合の海の下のプレート境界だけではなく、沈み込んだ陸の下の深いプレート境界まで破壊すると考えられています。古文書や地質の研究から、連鎖して地震が起きる可能性も考えられます。

地震の歴史を振り返り、南海トラフ地震でいつどの地域が破壊されたか確認してみました。西暦600年代の白鳳地震から、1940年代に起きた昭和東南海・南海地震まで、10回を超える地震が起きています。発生間隔100~200年で、地震は繰り返し発生しています。一度に南海トラフ全体が破壊されるのではなく、時間をおいて半分ずつ破壊される地震も起こっています。

南海トラフで次に起こるのは、半分だけ破壊する地震かもしれないし、一度に南海トラフ全体を破壊する地震かもしません。また、全体を破壊するにしても、東側が最初か、西側が最初か、どのくらいの時間差があるのかなど不確実な要素がたくさんあります。

また、歴史的に駿河湾周辺のみを震源とする南海トラフ地震はありませんが、ここで地震が起これば、日本の大動脈である東海道新幹線や東海道本線、国道1号線、東名高速道路が寸断されるなど、多大な影響が考えられます。

最後に南海トラフで起きた地震から約80年が経過しました。このまま駿河湾周辺で地震が起きない状況が続けば、駿河湾周辺以外も次の地震の発生地になり得ます。このため現在では、東海地震に着目した防災対応ではなく、南海トラフ全域を対象とした防災対応へ移行しています。

地面がプレートに乗っている以上、どこかで必ず引っかかっていつか必ず跳ね上がって地震は起こるのですが、私たちが失うものはあまりにも多いのです。予測技術も日々進歩してはいますが、「必ず来るもの」として常日頃から備えておくしかなさそうです。

伊豆半島は南からやってきた

伊豆半島はフィリピン海プレートの上にあり、日本列島周辺にある4つのプレートのうち3つが交わる場所にあります。フィリピン海プレートの動きにより、伊豆半島の大地は東から太平洋プレートが沈み込んでマグマをたくさん発生させるところの上を常に北上し、今もまさに本州に衝突しています。

伊豆半島は大昔海底火山でしたが、本州に近づくにつれて陸地になり、本州との間にできた海峡が閉じて、現在の半島になりました。この歴史が、陸上で地層として見えています。海底火山は実際の観察が難しいのですが、伊豆半島では陸上で海底火山の地層が多く見られるので、世界中の海底火山の研究者から注目を浴びています。

火山の名残は伊豆半島の名所になっています。火山は、マグマだまりから火道と呼ばれる通り道を通って噴出したマグマによってできています。時間が経つと山は浸食されますが、火道にマグマが残っていると、周りと比べて硬い岩になるので削られにくく、一方、周りは火山噴出物からできているので、削られやすくなっています。このため、火道の部分が残って突き出た山になります。

火道から横にマグマがはみ出ると、亀裂を作ってマグマが移動し、その先で噴火したり、噴火しきれずにマグマが残ったりします。残った場合、マグマが周りから冷やされ固まり、岩脈と呼ばれる板状の岩石になり、その岩脈ができる過程で体積が縮まり、六角柱を敷き詰めたような亀裂(柱状節理)が生じます。これは下田市の海岸で見られます。
何気ない伊豆半島の風景には意味があり、火山噴火の産物です。その意味が分かれば、目に映るものが違って見えるかもしれません。

本書の元になったのは、静岡県で開催された防災講座です。従って紹介されている事例も静岡県のものが多いのですが、伊豆半島の地学的な特殊性には、静岡県民でなくても大いに驚かされます。そういえば、昔地学好きの友人とみんなで旅行したとき、彼女の勧めにより目的地は伊豆になりました。温泉ではしゃぐ我々を尻目に、彼女は岩をうっとりと眺めていたものです。

被災時に困ること

大災害が発生すると、懸念されるのがライフラインの停止です。被災地では、電気、水道、ガスのすべてが不通になる場合もあります。復旧の順番は電気、水道、ガスの順番になることが多く、電気1日、水道3日、ガス1週間と言われます。電気の復旧に1週間かかる場合は、水道は1カ月、ガスは3カ月程度かかるでしょう。

2018年の北海道胆振東部地震では、北海道全域の停電が起きました。大型の火力発電所は自前で再稼動ができません。再稼動には、その発電所の所内機器を運転する必要があります。そのために小さな水力発電所を稼動して、その電力を大きな発電所の再稼働に使います。一度ブラックアウトが起きると通常の電力状態に戻るには数日かかります。この地震では、ブラックアウトから復旧に2日程度を要しました。

電気は他のインフラへの影響が大きく、ガスも水道も通っているのに停電のせいで給湯器が動かないという事態も考えられます。
企業としても被災時に困ることはたくさんあります。建設業では道路と電力など、製造業では工業用水などが挙げられます。

南海トラフ地震では大津波が来る可能性が非常に高いので、港の備えも必要です。地震発生時に隆起の可能性がある港を管轄する港湾局などは、事前に大型船の航路の水底をさらい土砂などを取り除くことが望まれます。

すぐ避難できるような船の停泊の仕方も各港で検討する必要があるでしょう。また、大規模地震の起きる可能性が高まっている時に、無理に南海トラフに面した港に入港させず、日本海側の港に接岸させ陸揚げしてトラック輸送するなどの方法も考えられます。

ライフラインが繋がるまでどう生き延びるか、というのが個人レベル・家族レベルの被災時対応ですが、インフラレベルの対応は国や自治体と企業が協力して当たらなければなりません。大きな災害の度にエネルギー問題や運輸問題が取り沙汰されますが、近い将来必ず起こる災害を前に、過去の教訓を確実に活かしていかなければ国としての生き残りは難しくなってしまいます。

『地震と火山と防災のはなし』内容紹介まとめ

日本列島は、その成り立ちから自然災害を避けては通れない場所です。日本列島のできるまでとその特徴、富士山に代表される火山の特徴、富士山噴火の可能性とその防災、近い将来に起こると考えられる南海トラフ地震とその予測について解説しました。続いて、伊豆半島を例に、災害列島での暮らし方を考えます。終盤では「必ず起こる」災害への心構えと、家庭でできる様々な防災ミニ知識を紹介しました。

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