コラム

2022年3月30日  

満足度世界トップクラスの秘密『進化する羽田空港』

満足度世界トップクラスの秘密『進化する羽田空港』
空港で、皆さんは何をしますか?旅行のために空港に向かい、搭乗前の様々な手続きを済ませて出発ロビーでひと息つき、何かお腹に入れながら旅先に思いを馳せる?時間勝負のビジネス移動で、できるだけ並ばずにスマートに手続きをし、搭乗直前まで仕事を進める?あるいは旅行ではなく、飛行機を眺めるためだけに空港に行くという人もいるでしょう。
そういった様々な利用を支えるため、空港では色々な会社、設備、システムと従業員が動いています。今回ご紹介するのは、国際・国内双方で日本を代表する羽田空港の解説書『進化する羽田空港』です。羽田空港は、旅客満足度で世界トップクラスに輝く魅力的な空港です。多くの人々を惹きつけてやまないこの巨大空港を、歴史、運営、設備と施設、運用の実績データ、空港を支える人々といったあらゆる面から徹底解剖しました。特に、羽田空港で働く人々をストーリー仕立てで隅から隅まで紹介した第6章は、読んでいるだけでワクワクします。
この本を読んだあと羽田空港から飛び立つ機会があったら、印象的な項目を思い出してみてください。空港までの交通機関や道路、駐車場、チェックインや荷物検査等の諸手続き、搭乗した飛行機が滑走路に向かい、離陸し、どこを通って高度を上げていくか、そのすべてに「羽田空港ならでは」の仕組みや努力が隠れているのです。

この記事の著者

スタッフM:読書が好きなことはもちろん、読んだ本を要約することも趣味の一つ。趣味が講じて、コラムの担当に。

『進化する羽田空港 交通ブックス313』はこんな方におすすめ!

  • 航空ファン
  • 航空業界を目指す人
  • 羽田空港ファン

『進化する羽田空港 交通ブックス313』から抜粋して5つご紹介

『進化する羽田空港』からいくつか抜粋してご紹介します。本書の内容は多岐にわたり膨大なので、ご紹介できるのはほんの一部です。しかも随所に著者の知る裏話がコラムとして挟み込まれています。特に羽田空港史について充実していますので、歴史に興味のある方は是非本書をご覧ください。
特にお勧めの第6章「羽田空港で働く人々」は、ある架空の航空会社のとある便が飛び立つまでに関わる人々の仕事を紹介していて、ドラマのようですよ。

世界評価No.2の羽田空港

羽田空港は世界空港の中で総合評価が2番目にランクされています。航空関連格付け会社スカイトラックス社によるワールド・エアポート・アワード2020で、羽田空港は2年連続で第2位に輝きました。評価方法は世界中の航空旅客に対するアンケートです。評価項目はアクセス、旅客ターミナルビル、出入国管理、保安検査、チェックイン施設、サイン、搭乗コール、フライト情報システム、空港スタッフ、エアラインラウンジ、洗面所とシャワー設備等々、40を超える項目による総合評価です。ちなみに第1位は例年、シンガポールのチャンギー国際空港です。

総合評価では2位ですが、部門別の評価では、ベスト国内線空港、ベスト清潔空港、ベスト移動サポート空港という評価を受けています。

国内線空港という部門は、国内線機能部分だけを取り出して評価するものです。羽田空港は、元々は日本の国内航空ネットワークの中心を担う首都圏の国内線空港です。この部門 No.1 の評価は、その国内線施設とそこで提供されているサービスの品質の高さを反映したものといえます。世界で最も清潔な空港という評価は、羽田空港旅客ターミナルビル会社のビル運営に対して与えられた素晴らしい評価です。特にトイレの清潔さは際立っています。

現在の日本の空港におけるユニバーサルデザインは、中部国際空港において意欲的に導入されたのですが、その後の羽田空港の旅客ターミナルビル設計でも積極的に取り入れられました。広く様々な機能の備えられたトイレ、段差のない手荷物台や搭乗橋、前後両扉のエレベーター等が備えられています。

羽田空港は飛行機に乗るための通過点としてだけ利用するにはあまりにも魅力的な空港のひとつです。冒頭で述べた飛行機を見るためだけに空港へ行く、というのは私(担当M)のことですが、一日いても飽きません。旅の安全と快適さを支える機能に加え、レジャー施設としての機能まで備えた羽田空港が世界2位というのは、非常に納得のいく評価です。

都心上空飛行

1.従来の飛行経路
羽田空港は、沖合展開事業、また再拡張事業の時代から、航空機騒音影響が市街地に及ばないことを基本としてきました。環境省が定めた環境基準が達成されるように、飛行経路とその運用を設定してきたのです。

騒音コンター図で描くと、着陸機の騒音影響範囲は細長く、離陸機のものは太く短い形状となります。着陸は小さいエンジン出力で行われて低い降下角度で進入し、離陸はフルパワーに近いエンジン出力で行われ急角度で上昇することが理由です。

再拡張事業後の4本の滑走路の運用方法は、それらの離陸・着陸における騒音影響特性を考慮して設定されました。着陸時はB・D滑走路に着陸することによって、基準値の航空機騒音コンターを東京湾内に収めました。離陸は基本的にC滑走路を北側に離陸後すぐに右旋回して海上に出て、A滑走路の北方への離陸は行わず、D滑走路を東側に離陸して東京湾上空を飛行する、という基本的な設定が行われました。

しかしこの運用方法の採用によって、滑走路離着陸容量の拡大数は抑制されてしまいました。A・C滑走路に北側から同時着陸することができれば、空港全体の滑走路容量をさらに向上させることができるという課題が残っていました。

2.新飛行経路
国交省の有識者会議による検討の結果、2014年に時間限定で都心上空を飛行するという提案が行われました。15 時から19時までのうちの3時間程度に限定した A・C滑走路に対する北側(都心上空側)からのILS進入を含む新飛行経路計画が作成され、調整と修正の結果2016年に事実上認知されました。2020年3月からこの離着陸飛行経路による運用が開始されたのです。
羽田の発着容量は従来年間44.7万回(このうち国際線は9万回:昼間6万回、深夜早朝3万回)ですが、これにより3.9万回増加させることを目標にしたのです。

当社は新宿区の南元町にありますが、退勤時、信濃町駅に向かう途中で空を見上げると、道の先の上空を横切って飛んでいく飛行機が見えます。新飛行経路によって、夕刻に都心部上空を飛行するようになったものです。最初に見たときはあまりの近さに驚いたものですが、今では夕焼けを背景に飛ぶ飛行機もすっかり見慣れてしまいました。

航空管制を支える施設:管制室

1.飛行場管制室
飛行場管制室は管制塔の最上階にあります。ここの役割は羽田空港に離着陸する航空機に対する、空港周辺部と地上における管制です。
管制塔の高さは116m、背の高いガラス面で全周を囲まれた管制室は見通しが大変良く、少し高くなっている中央部の床構造はその視認性を一層向上させています。強風や地震による管制室の横揺れを減少させるため、管制塔の RC 構造採用や管制室の独立構造化など、免震構造にも独自の工夫が取り入れられています。

レーダー管制室や管制官事務室との往来を円滑にするため、間を走る構内道路を横断するための地下連絡通路、管制室直下までのエレベーターが設置されています。
管制塔は空港機能の要の一つであるため、管制室に行くまでの各ポイントに侵入者を防ぐためのさまざまなセキュリティ機能が配置されています。

羽田空港には四方に離着陸経路、滑走路・誘導路があるため、管制室にはさまざまな方向を視認することができるよう、卓が円形に配置されています。基本は目視による管制ですが、上空を監視するレーダー(ASR/SSR)や空港地上面を監視するレーダー(ASDE)のモニター画面も配置されています。

2.レーダー管制室
羽田空港から離れた空域にいる進入・出発機に対しては、レーダーを使った航空管制が行われます。それを行う場所が庁舎内にあるレーダー管制室です。管制対象の空域がいくつかに分けられ、それぞれの管制官が担当するので、管制卓が横一列に並んでいます。デジタル化された鮮明な映像画面のレーダーモニターが並んでいます。このスコープには、レーダー装置で得た飛行中の航空機の情報に FDMSや飛行情報管理システムを通して得た飛行計画情報などを加え、ARTS(ターミナルレーダー情報処理システム)で処理した情報が映し出されます。

出発機が航空交通管制圏から進入管制区へ移ると、飛行場管制室の管制官からレーダー管制官にバトンタッチされます。到着機については逆のバトンタッチが行われます。羽田空港では成田空港の進入管制区を飛行する航空機のレーダー管制も行っています。

飛行機に関わる憧れの職業のひとつが、管制官ではないでしょうか。管制官が働く場所が、空港でひときわ目立つ管制塔です。仕事の詳細が気になる方は、当社刊『航空管制のはなし』『航空無線と安全運航』をご参照ください。
細長くて独立した管制塔はとても揺れるので、様々な免震対策が施されていますが、かつては「船酔い」が管制官の悩みの種だったそうです。

空港で働く人々:航空機の運行支援を行う人々

航空機の運行支援を行う航空会社地上職員は、各便を定刻で出発させるため、出発機に関する様々な準備状況の管理・統制を行います。必要があればシップチェンジの調整を行って、出発時刻遅延の短縮を図らなければなりません。また航空機の重量バランス調整や適切な搭載燃料量の算出を行って、それを担当部門に伝えます。それらの情報、また本社運航管理部門から送られてきたフライトプランをパイロットに伝え、キャビンアテンダントには搭乗旅客関連の情報を伝えます。一方、羽田空港到着機の到着予定時刻を把握し、駐機スポット調整を行って、各担当部門に伝えます。

トラブルが発生した場合には、関連部署との間で臨機応変の調整を行うことになります。そのためパイロットと管制官の間で行われる無線交信のモニターも重要な業務です。出発に当たっては、座席・機内食・貨物などの調整を行い、機体バランスや機内サービスの確保を行っています。

乗客や荷物の重さを計算して航空機の総重量を推計し、それに従って最適な燃料の搭載量を算出する。また荷物や貨物の最適な配置も計算し、航空機の重心位置を決定する。それも運行支援の仕事のひとつです。大量の旅客と荷物を乗せた航空機を安全に飛ばすためには、綿密な計算が必要なのです。ギリギリに手続きをするのが申し訳なく思えてきました。

空港で働く人々:航空機燃料を供給する人々

航空機の運航には燃料が必要です。羽田空港において燃料を供給しているのは三愛石油㈱です。従業員の働きを見てみましょう。

1.航空燃料受入作業
航空燃料は毎月約 60 隻のタンカーによって運ばれています。タンカーは羽田空港の南端の桟橋に接岸します。作業員はローディングアームを受入口に取り付け、航空燃料を貯油タンクまで圧送します。燃料受入れ前には各種書類の確認、燃料の品質管理、積載量の数量確認や保存サンプル採取等を行います。万が一の燃料漏洩に備え、オイルフェンスを準備しておきます。

2.航空燃料供給運転監視・数量管理作業
受入桟橋から圧送された航空燃料は貯油タンクに入ります。貯油タンクから各スポットまで、ハイドラントシステムを用いてコンピューター制御で燃料供給が行われます。監視室のオペレーターは運転状況を集中監視し、数量管理・在庫管理等を行います。貯油タンクでは貯蔵航空燃料の品質検査、異物を除去するフィルターセパレーターの機能維持検査を毎日実施します。

3.航空燃料施設点検保守作業
羽田空港に設置されている埋設配管の総延長はハイドラントシステムを含め約40kmに及びます。担当職員は各種関連設備の定期点検を行っています。エプロンにある320か所以上の給油ビットの点検は、毎日実施します。給油車両の整備点検も行います。

4.航空機への給油作業
航空機への給油作業は55名で行います。作業員は各スポットに設置されたハイドラント給油バルブに給油特殊車両の給油ホースを繋ぎ、別の給油ホースを航空機の給油口に繋ぎます。航空燃料の最終品質検査を行い、20以上のチェック項目を確認しながら規定の時間内で給油作業を終わらせます。

運行支援担当の地上職員によって計算された最適な量の燃料を、給油作業に当たる人々が航空機へ給油します。旅客と受入荷物の重さによって供給量の微調整を繰り返された燃料は、燃料受入から貯蔵、給油に至るまでの厳しい管理のもと、無事航空機へ提供されるのです。

『進化する羽田空港 交通ブックス313』内容紹介まとめ

世界第2位の満足度を誇る羽田空港。この巨大空港の概要、歴史、管理運営、施設、運用、働く人々まで、読めば羽田空港のすべてがわかります。直近の情報までを網羅した決定版!

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