コラム

2022年5月20日  

定刻到着は天候とパイロットの腕次第?『飛行機ダイヤのしくみ』

定刻到着は天候とパイロットの腕次第?『飛行機ダイヤのしくみ』
10連休も可能だった今年のGW。久しぶりにどこかへ出かけたという方も多かったと思います。
初校で気になるのが移動時間です。目的地に向かう途中や疲れた帰り道、予定以上の時間をとられるのは困りますね。列車は事故がなければ比較的時間通りに運行しますが、自家用車は渋滞につかまるかもしれませんし、飛行機は遅れるかもしれません。空港でフライトボードを見ながら、搭乗手続きはまだかな?と思った経験はないでしょうか。
飛行機にももちろんダイヤは存在します。しかし、列車のものと飛行機のダイヤは性格が違います。滑走路はそんなにたくさんないのに、同じ時間に離陸する便が複数重なる場合もあるのです。一気に飛び立つことは不可能なのに、なぜこのようなダイヤが組まれるのでしょう?
今回ご紹介する『飛行機ダイヤのしくみ』は、こうした飛行機ダイヤの特徴と、飛行機ダイヤの作られ方、飛行時間に影響する要素は何か、鉄道ダイヤとの違いは何か等、あまり知られていなかった飛行機ダイヤについて解説します。実際の飛行機時刻表や、元機長である著者が経験した出来事を紹介したコラムも掲載しています。
この本を読んだら、待ち時間について納得できるかもしれません。

この記事の著者

スタッフM:読書が好きなことはもちろん、読んだ本を要約することも趣味の一つ。趣味が講じて、コラムの担当に。

『飛行機ダイヤのしくみ(改訂版) 交通ブックス310』はこんな方におすすめ!

  • 航空ファン
  • 航空旅行が好きな方
  • 時刻表が好きな方

『飛行機ダイヤのしくみ(改訂版) 交通ブックス310』から抜粋して5つご紹介

『飛行機ダイヤのしくみ』からいくつか抜粋してご紹介します。最初に鉄道やバスのダイヤと飛行機ダイヤはどこが違うのか解説し、続いてその特徴と作り方、作るための約束事について説明します。飛行時間を左右する要因、路線ごとのダイヤの特徴を述べたのち、エアライン各社の定時出発率・到着率ランキングも紹介します。

鉄道やバスと大きく異なる飛行機ダイヤ

フライトボードを見ると、同時刻に数多くの便が飛び立つことがわかります。多くの航空機が同時に離陸できるわけがありませんが、国際線、国内線を問わず大空港ではよくあることです。
このようなことは鉄道のダイヤではありえません。時刻はダイヤで決められた定時出発ですし、遅れた乗客を待つこともありません。

対して航空の場合は、乗客が揃わないと出発できません。セキュリティ上の理由と、不搭乗者が多い場合は重量分布表を作成し直す必要が出てくるという理由です。また到着時刻については、鉄道ではダイヤ通りに着くのが当然とされていますが、空では大きく異なり、様々な理由で到着時刻は左右されます。ダイヤはあくまで目安です。

飛行機ダイヤで定められている出発時刻は、ドアが閉められて飛行機が動き出す時刻を指し、滑走路を離陸する時刻ではないのです。到着時刻も同様に、目的空港のゲートについてパーキングブレーキをセットする時刻であり、滑走路に着陸する時刻ではありません。ゲートと使用滑走路との間の地上滑走にかかる時間は毎回異なるため、正確な予測が難しいのです。

トラブル発生時は、鉄道やバスは振替が比較的容易にできる代わりに、出た駅へその列車やバスが逆戻りすることはありません。対して航空機は、離陸した空港へ戻ったり、別の空港に着陸したりすることがあります。航空機は途中下車ができない上に、命に関わりそうなトラブルに見舞われることもあります。重大トラブル以外にも、航空機は風の影響を日常的に強く受けています。
飛行機のダイヤは鉄道やバスのダイヤとは異なりますが、実はこうした航空機の運航は、パイロット個人の考え方やテクニックでかなり飛行時間が変わってくるという側面もあります。

秒刻みの鉄道ダイヤとは違って、航空機のダイヤは不確定要素が多く、ぴったり決めることが難しいのです。確かに、乗ってから飛び立つまでの時間や、着陸してからゲートに着くまでの時間が同じ空港なのに随分違うなと感じることが時々あります。

飛行機ダイヤの作り方

飛行機ダイヤは、各航空会社が自由に設定しています。航空会社は往復別の路線距離、風向きや風速、使用機材の巡航速度などから正味の飛行時間を割り出し、地上滑走時間を加味して実フライトタイムを算出します。最後に各航空会社の需要動向や乗務員の運用効率から、最適な出発時刻や到着時刻を設定しています。
日本や欧州では5分刻みでの設定が一般的ですが、米国の過密路線では例外的に分刻みになっています。

航空機の運航上のルールは、国連の航空部門であるICAOによって定められています。これらのルールに強制力はないので、各国がそれをもとに法制化を行っています。
航空業界のための団体がIATAで、業界団体の利益の調査やコードの統一を行い、航空約款を定めて加盟会社間の調整を行っています。

ICAO、IATAがそれぞれ定めたコードが、空港や航空会社、機種等にふられています。IATAのコードは細かく、国、地域や時間帯、機内食にもつけられています。
飛行機ダイヤは夏と冬に分かれています。最も大きな理由は偏西風と日出没時刻です。ダイヤの切り替えはIATAが決定し、3月最終日曜日と、10月の最終日曜日に切り替わります。航空会社によっては、これに加えて2〜3か月単位でダイヤ改正を行うことがあります。

こうして決定されたダイヤが乱れることは、特に風の影響を受けやすい季節の変わり目にはよくあることです。しかし乗客への補償が行われないこともあるので、一度は航空会社の規約を読んでおきましょう。

乗り継ぎできなくて宿もなく、空港のロビーで寝る羽目になる。目的地から離れた空港に降ろされてしまう。しかもそれが外国だったら、途方に暮れてしまいそうです。ダイヤだけをもとに計算するとトラブル発生時に困ることになるので、乗客の側も色々心構えが必要ですね。

飛行機ダイヤを作るための約束事

各社で自由に設定できる飛行機ダイヤですが、実現するまでにはハードルがあります。

1.相互の航空協定(国際線) 国際線の運行には、乗り入れを希望する国と受け入れる国、二国間での航空協定が必要です。使用可能空港や乗り入れ航空会社には、交渉次第で様々なパターンがあります。EUにおいても独自の基準があり、安全基準を満たさない航空会社に対して、EUは乗り入れと領空通過を認めていません。

2.領空通過の承認と通過料の徴収 国際線の場合は、目的地までに通過する関係国の認可も必要です。ATCクリアランスと呼ばれる飛行承認は、通過するすべての国々が飛行許可を出して初めて有効になります。一般的にはどの国も上空通過料を課していますが、具体的な内訳は明らかにされていませんし、国際的な取り決めもありません。

3.空港のキャパシティ 一日にどのくらいの航空機が離着陸できるかは、各空港で決まっています。航空機同士の間隔を十分に取らなければならないという管制上の制約と、航空会社のゲート数からくる便の調整等が大きな理由です。ゲート数による調整は、悪天候時の緊急避難等にも影響を与えています。

4.航空機の種類 航空会社は、使用機材が目的地の安全保安基準に適合しているかどうかも確認しなければなりません。たとえば超大型機のエアバスA380では、その理由で就航できる空港が限られています。

5.国交省の認可(日本の場合) 日本で国内線の新路線を開設する場合、国交省の認可が必要です。新興会社やLCCが大都市へ乗り入れようとする場合、様々な利害関係が絡むため、調整は極めて厳しいのが現状です。

上空通過料の基準が存在しないというのは驚きました。日本では上空を通過する外国機に約4万円を課しています。また、国内情勢が不安定な国が、通過料目当てに危険情報を出さず、国際線の飛行ルートを閉鎖しない例もみられ、撃墜事件も起こっています。

飛行時間を左右するさまざまな要因

航空機の飛行時間は、天候や管制上の制約など、さまざまな要因によって変化します。季節やその日の条件によって変化し、パイロット自身にも予測がつかないことがあります。

《ブロックタイムとフライトタイムと TAXIタイム》 一般に飛行時間とは、航空機がゲートから動き出す瞬間から目的地のゲートに到着してパイロットがパーキングブレーキをセットした瞬間まで(ブロックタイム)を指します。
一方パイロットの使う飛行時間(フライトタイム)とは、飛行機が離陸してから着陸するまでを指しています。

ブロックタイムとフライトタイムの差は、地上での走行時間です。これを TAXIタイムと呼びますが、毎回変動が激しいのです。出発や到着のゲートから当日使用されている滑走路までの距離、空港内の混雑度に加え、パイロットの地上走行の速度やテクニックにも左右されるのです。TAXI速度に規定はなくパイロットに任されており、お国柄や航空会社、パイロットの性格によって違いがあります。

同時刻に複数便の出発が設定されている場合、離陸の許可は、純粋に滑走路の端へ到着する先着順で発出されます。のろのろ走行していると、管制官は多くの航空機を処理するために、速く走行している航空機をどんどん前に割り込ませます。

混雑する大空港では、パイロットが航空機の動きを通して管制官にメッセージを送る技術が、飛び立つ順番に影響するといえるでしょう。

《出発地と目的地の天候の対処法》 予定通りに出発して目的地に到着できるかどうかの最大のリスクは、出発地と目的地の天候です。風雨によって地上作業が困難になり、出発に支障が出る場合もあります。離陸した後は、目的地の空港の天候が問題となります。

悪天候には視界、雲高、横風などの要素がありますが、現代では視界の程度が最も重要です。視界の程度によって運航のカテゴリーが細かく規定されていて、空港の滑走路と航空機の装備、パイロットの資格要件によって着陸可能な視界レベルがその都度変わってきます。
目的地の天候が悪く着陸が難しくなった場合、パイロットは以下の行動のどれかを選びます。

1.上空待機しながら天候の回復を待つ
2.代替空港に向かう
3.出発空港に戻る

最終的には機長判断ですが、多くの場合は、航空会社の運航管理者を通して会社の運航責任者と協議が行われます。
実は代替空港に向かうより出発空港に戻るケースが少なくありません。乗客と機材、乗員のハンドリングがやりやすいという理由によります。

滑走路に向かうまでに、パイロットと管制官の間でそのような攻防戦が行われていたとはびっくりです。うちが先だ!とアピールする効果的な走行の仕方は、やはりパイロットの経験からくるのでしょうか。

飛行機ダイヤにみる路線ごとの特徴:ハワイ便

現在では日本全国の空港から数多くの旅客便がハワイ諸島の各空港へ飛んでいます。日本とハワイとの航空便は、日本とアメリカ航空当局が毎日協議して決める2つのトラックと呼ばれる国際航空路を使用することになっています。このシステムはPACOTSと呼ばれています。決定されたトラックは航空会社などに通知され、2つのうち一方を使用することになっています。

行き帰りわずか2本のルートですが、ハワイ便は夜の広い時間帯に分散していて、同じルートでも高度間隔が2000フィートとなったことによって、遅れの少ないスムーズなダイヤ通りの運航となっています。

PACOTS は毎日の気象データから、日本→ハワイの場合は最も追い風を利用するように、逆にハワイ→日本の場合は向かい風の少ないところを計算して設定されています。ハワイ線のダイヤは風の影響の少ない夏期では行きも帰りも約7時間30分と設定されていますが、冬期の偏西風の強い時期は、行きは正味で5時間もかからないこともありますが、帰りは9時間を超えることも少なくありません。
最も向かい風が強い季節ではWFと呼ばれる1時間平均の平均向かい風が50ノット以上の日もあります。WFがマイナス50ということは1秒間に25mの向かい風がハワイから日本までずっと吹き続けている計算になり、航空機はなかなか進みません。

飛行機ダイヤは夏期と冬期の2つしかないのに、春や秋には上層の偏西風の強さによって夏期ダイヤでも実際には冬期のような風の影響を受けることも多いのです。ハワイ線のダイヤほど、真夏や真冬を除いて実際は大きく到着時間が変わってくる路線はないといっても過言ではないでしょう。

しかし、ここでパイロットの腕が活きます。ルートは決まっていますが、飛行高度の選択はパイロットに任されています。経験によって「コツ」を身につけたパイロットが運行管理者などとデータやノウハウを共有すれば、上手に燃料をやりくりしつつ飛行時間を短くすることができます。

この章の最初はヨーロッパ便の成立経緯や現在までの状況について触れられていますが、ロシア情勢の緊迫状態が続く今、航空路線も大きく変動しているかと思います。国家間の関係からも、飛行機ダイヤは大きな影響を受けます。

『飛行機ダイヤのしくみ(改訂版) 交通ブックス310』内容紹介まとめ

飛行機ダイヤの特徴と作り方、約束事について解説します。飛行機ダイヤを決める要素は何か、誰が決めているのか、飛行時間に影響する要素は何か、路線ごとの特徴は?等、飛行機ダイヤの仕組みを紹介し、安全な定時運航への各関係者の努力に対する理解を深めます。

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