コラム

2022年2月18日  

押したり牽いたり、世界を走る!『電気機関車とディーゼル機関車』

押したり牽いたり、世界を走る!『電気機関車とディーゼル機関車』
機関車というと、どんなものを思い浮かべますか?煙を吐いて走る勇壮な蒸気機関車?それとも貨物列車の電気機関車やディーゼル機関車でしょうか。旅行好きな方なら、豪華寝台列車を牽く専用塗装の機関車をイメージするかもしれません。
日本では、現役の機関車はほとんど貨物列車に使われていて、一部が観光列車等の旅客列車を牽引しているというのが現状です。その貨物輸送もトラック輸送と海運に押され、機関車の数は減ってしまいました。しかし、海外では多くの国で、貨物輸送と同様旅客輸送の両面で機関車が活躍しています。
列車による輸送は、自動車での輸送に比べてエネルギー消費が6分の1といわれています。海運や自動車輸送と、日本の発達した鉄道網をうまく組み合わせれば、貨物列車による輸送は今後も生き残ることができるでしょう。より環境負荷の少ない車両を目指し、機関車も進化しています。
今回ご紹介する『電気機関車とディーゼル機関車』では、日本の機関車について、電気機関車とディーゼル機関車それぞれの技術史に加え、ハイブリッド機関車等の新しい技術についても解説しました。多くの項目で日本と世界の比較を行い、終わりの2章では機関車市場の今後の見通しと課題についても考察しています。
貨物列車や観光列車の姿が変わっても機関車が走り続けていくためには、何が必要なのでしょうか。

この記事の著者

スタッフM:読書が好きなことはもちろん、読んだ本を要約することも趣味の一つ。趣味が講じて、コラムの担当に。

『電気機関車とディーゼル機関車(改訂版) 交通ブックス124』はこんな方におすすめ!

  • 鉄道ファン
  • 機関車の技術史に興味のある方
  • 鉄道輸送、鉄道車両業界に興味のある方

『電気機関車とディーゼル機関車(改訂版) 交通ブックス124』から抜粋して5つご紹介

『電気機関車とディーゼル機関車』からいくつか抜粋してご紹介します。本書は冒頭で機関車の基礎知識を解説した後、電気機関車、ディーゼル機関車、新しい方式の機関車といった個別の解説に移ります。後半では粘着特性、電機、車体と台車の技術についての踏み込んだ解説を行っていますので、技術面に興味のある方は是非ご参照ください。

機関車の基礎知識

機関車には多くの種類があります。登場順に紹介します。

1.蒸気機関車:1804年にイギリスで走り出し、日本でも1872年から活躍した。現在はほぼ観光列車のみ。

2.電気機関車:1879年にシーメンスが開発したのが最初。1888年にアメリカGEによって実際に線路を走り出した。直流と交流があり、交流の登場は1902年。最近ではディーゼルエンジンも積んで非電化区間も走れるデュアルパワー機関車も登場した。

3.ディーゼル機関車:エンジンは車輪と直結しては動かせないので、変速機の開発を待って登場した。電気式とトルクコンバータを使う液体式がある。現在は電気式が優勢。自動車同様、エンジンとバッテリーを積んだハイブリッド機関車が最近登場した。

4.その他の機関車:1950年から頃からガスタービン機関車の開発が始まり、何度か実際に投入されたが、燃費の悪さや騒音のために継続的に使われず、ほとんどが廃車となった。

電気機関車とディーゼル機関車を比較すると、列車数が多ければ電気機関車が車両コストとエネルギー費用が安くつくため有利です。排出ガスについてもディーゼルは不利になっています。しかし、災害からの復旧に関しては、架線を必要としないディーゼル機関車が有利です。電化区画の設備維持費とディーゼル燃料のコストを比較した場合、ディーゼル車が有利になる場合もあります。環境性能において劣るディーゼル機関車の開発においても、規制に対応したエンジン開発等の努力を続けています。

戦前戦後の日本の抵抗制御直流電気機関車

日本で初期に電気機関車を作ったのは鉱山や私鉄が中心でした。日本国鉄の最初の電気機関車は1912年の碓氷峠線電化のときにドイツから輸入されたアプト式機関車EC40です。その技術を参照し、1919年に日本で最初の大型電気機関車ED40が製造されました。

通常の電気機関車は1922年から輸入され、その後国産化されるようになりました。日立のED15は、計画開始から関東大震災を挟んで1924年に完成しました。ED15は寿命も長く、その後1959年まで使用され、2011年には機械遺産にも認定されています。

これを受け鉄道省は1925年に国産の方針を固め、機関車メーカーとの協同設計でEF52、ED16を設計製造しました。EF52の特徴は、3軸台車の他に先台車があり、曲線通過時に発生する摩耗等の対策としています。この方式はその後の機関車にも踏襲されました。

EF52の後に旅客用のEF53、54、55、56、貨物用のED16、EF10、12、13が開発されました。出力強化を図ったEF12とEF57は、戦前を代表する電気機関車です。戦時中には、凸形のEF13が作られました。
戦後の輸送力強化のために、1949年まで蒸気機関車が製造されていました。1948年に生産が止まっていたEF58は、1952年に大改良を行って生産を再開しました。EF58は「あさかぜ」などのブルートレインを牽いた花形機関車で、2011年まで現役を続けました。

貨物用としては、EF15がEF58の1年後に開発されています。202両製造され、貨物列車用の主力機関車でした。

国鉄最初の電気機関車は碓氷峠を走っていたのですね。横川駅と軽井沢駅を結んでいたこの部分は現在廃線となっていますが、アプト式から粘着式に変わって以降峠越えを担当していた「峠のシェルパ」EF63も非常に個性的な機関車です。碓氷鉄道文化むらに動態保存されています(講習を受けて認定されると自分で動かすこともできます)ので、ご興味があれば是非。
また本文中に登場するEF55も特徴的な顔立ちで「ムーミン」と親しまれ、2009年1月まで現役でした。こちらは大宮の鉄道博物館に展示されています。

電気式DF50から液体式機関車DD51へ

1961年、国鉄はそれまでの電気式のディーゼル機関車DF50から、液体式のDD51への転換を決定しました。DF50の出力では支線用には不足なこと、国産エンジンと液体変速機の開発の見込みがつき、これまでより高出力の機関車がより安く作れる目処が立ったためです。

この機関車はそれまでの本専用ディーゼル機関車とは異なり、エンジンを低い位置に置いたため、運転室が中央にあるセンターキャブのボンネット型となっています。この形は国鉄の液体式ディーゼル機関車で標準化されました。車体はH形鋼2本を全体に通して構成されており、3個の台車で剛性を大きくしています。

開発当初は勾配での引き出し性能や非常ブレーキの性能等の課題がありましたが、空気ばねやブレーキ機構の追加等の改良を重ね、1962年から1978燃料までに649両が日立、三菱、川重で製造されました。

凸の形が特徴的なDD51形は、かつて「SLの敵」とみなされたこともありました。しかし私(担当M)にとっては「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」等の寝台列車を重連で牽く憧れの機関車でした。東日本大震災の被災地に燃料を届けるため、各地から集められたDD51が石油輸送を行った感動的な逸話は、『はしれ ディーゼルきかんしゃ デーデ』(童心社)という絵本にもなっています。2021年ダイヤ改正で、このDD51も定期運用から引退してしまいました。

日本のインバータ機関車の開発

交流車両はドイツ・スイスでは交流整流子電動機式、日本では位相制御による直流電動機式で発展しましたが、いずれも整流子の保守と出力に限度があるという問題を抱えていました。そのためインバータを使って三相誘導電動機で駆動する方式が期待されていました。

1990年代になって半導体が進歩し、デジタル化によってインバータ技術も発展したため、直流電動機から三相交流誘導電動機への転換が急速に進みました。その結果コストも下がり、電動機の整流子もなくなりました。この技術は直流車両、交流車両、ディーゼル車両に共通するもので、それらの距離を縮めることになりました。ヨーロッパではそのため、車体、台車、部品の共有化が進みました。

日本ではバブル経済時に、JR貨物に対して機関車の老朽化対策と輸送能力向上が求められました。この頃にちょうど電気機関車に応用できる技術としてVVVFインバータ制御が開発され、主電動機に三相交流誘導電動機を採用できるようになりました。これらの技術を活用し、EF200、EF500が登場しましたが、量産化には至りませんでした。その後はEF210、EH200、EH500、EF510が量産されています。また、DD51に代わるインバータ式ディーゼル電気機関車としてDF200も開発されました。このDF200の専用塗装車が、豪華列車「ななつ星in九州」を牽引しています。

このあたりまでくると現役で走っている面々が登場します。JR貨物のEF210「桃太郎」EH500「金太郎」は、車体に愛称やイラストが書いてあるのでわかりやすいですね。コロナ禍で中止が相次いで残念ですが、基地公開イベントではこうした機関車たちを間近に見ることができます。隅田川駅の貨物フェスティバルでは、貨物列車が北海道から運んできた玉ねぎやじゃがいもが安く買えます。

これからの課題

インバータが全面的に採用され、清造各社の再編がヨーロッパで大幅に進んで機関車が標準化されました。しかしこの先も新しいシステム、IT技術の高度化、通信、自動車技術の導入促進、安全・環境・防災などの課題が残っています。

1.新しいエネルギーや蓄積技術との組み合わせ
ハイブリッド、マルチエンジン、デュアル燃料などの方式を組み合わせることにより、より効率的で用途にマッチした機関車の実用化を進める

2.自動車技術の導入
鉄道車両技術より進歩の速度の速い自動車技術を積極的に取り入れる。電気、機械、ITの技術が融合して進化する自動車技術の導入により、無線通信や燃料電池などについて強化が望める

3.振動、曲線への操舵制御
重心が高いのが機関車の欠点。揺れを減らし、車輪の寿命を伸ばす操舵制御が求められる

4.車体の軽量化と衝突時の保護
プラスチックや炭素繊維の使用により車体の軽量化が進んでいるが、同時に強度に対する対策が必要

5.エンジンの燃費、省エネ、エミッション
ハイブリッドディーゼル車両は未だ課題が多い。マルチエンジンは燃費とエミッションの改善に役立ち、アメリカ、ドイツで製品化されている

6.制御の高度化
急速に進歩する通信技術、AI、ロボット技術に対応し、異常検知、故障予知、運転指示等を改善する

7.保守の合理化と安全
車両と軌道を常にオンラインでリアルタイム監視し、事故の予知と保守の合理化に役立てる

8.各国の法律・基準・規格について
EU内で様々な規格が定められ、体系が整備されてきたのと同時に、安全・環境に関する規制が厳しくなった。その場での対応でなく、鉄道車両のシステム自体を変えていかなければならない局面にある

自動車がまるでひとつの人工知能を備えたロボットのような進化の仕方をしている一方で、鉄道車両については車両本体というよりは基地とのネットワーク込みで発達してきた印象を受けます。通信技術をより活かしつつ、車両本体の制御や異常検知システム、省エネ性能を上げていくことが望まれるでしょう。鉄道車両開発・保守における国際規格への対応については、当社の新刊『RAMS規格対応 鉄道車両・保守設備プロジェクトマニュアル』でも詳しく触れています。

『電気機関車とディーゼル機関車(改訂版) 交通ブックス124』内容紹介まとめ

電気機関車とディーゼル機関車について、導入から現在までの技術の発展を踏まえつつ、最近の技術と各国での利用状況についてまとめました。最近では技術の急速な進歩と業界再編が起こり、新しい課題も出てきています。1冊読み通せば、機関車業界と機関車技術の近況がご理解いただけるでしょう。

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