『どうして海のしごとは大事なの?』目指せ「海のしごと」!海洋国日本を支えるプロフェッショナルたち 【第6章:環境保全のしごと、「海のしごと」に就くための学校】

『どうして海のしごとは大事なの?』解説も、今回で最終回となります。これまで紹介してきた仕事は、もちろん海があるからこそ成り立つものです。ではその海を守り、未来へ残していくために、私たちは何ができるでしょうか。ここにも大切な「しごと」があります。

海遊びに出かけた際やテレビなどで、海岸にごみが漂着している様子を見ることがあります。ごみを捨てないこと、ごみが落ちていたら拾うことは大切ですが、海の環境問題はそれだけでは解決しません。最後にご紹介する海の環境を守る仕事は、大人になって就くだけではなく、今日からでも始めることができます。

最後に、この本でご紹介したような海の仕事に就くための近道となる学校をご紹介します。日本各地の海に面した地域に、こういった学校があります。学校公開等も行われることがあるので、見学できる機会があったら覗いてみるのもよいですね。

【環境保全の仕事 海洋環境保全】

海洋の環境を守るために、まず私たちができることは、海岸のごみをなくしていくことです。海のごみ問題は、拾うだけでは決して解決しません。海洋の保全のためには、私たち自身がごみを減らし、海を汚さない意識をもって行動していくことが大切です。

《どんな仕事をしているの?》

海洋レジャーのシーズンである夏、海岸は地元やボランティアの方々に清掃されているので、きれいな環境が維持されています。しかし、人がいない時期や場所では、ごみが漂着しています。海には思った以上にたくさんのごみが流れているのです。

1986年に、アメリカの海洋環境保護団体が、海岸のごみを減らすため、清掃で集めたごみを調査する国際海岸クリーンアップという活動を始めました。海からごみをなくし、海の生きものや海の環境を守ろうという活動です。この活動は誰でも参加することができます。

海洋ごみは、古くて新しい環境問題です。昔から海岸にごみは漂着していましたが、現在のごみのほとんどが、自然に還らないプラスチックのごみです。そのため、プラスチックによる海洋汚染という環境問題が発生してしまったのです。プラスチックごみは、回収して処理しない限りずっと残り続けます。これらのごみは、レジャーで発生するものよりも、流域で使われた生活用品等が多いことがわかりました。

《環境保全はなぜ必要なの?》

海のごみにはどんな問題があるのでしょうか。化学繊維でできた漁網やロープなどはウミガメやアザラシなどの生物に絡まり、彼らを傷つけたり殺したりしてしまいます。また、プラスチックごみを餌と間違えて食べてしまって、生物が命を落とすこともあります。

プラスチックごみは、海を流れているうちにどんどんもろくなり、小さな破片になりますが、目に見えないくらい小さくなっても分解されずに海の中に残り続けます。こうした「マイクロプラスチック」が、世界中で大問題になっています。マイクロプラスチックをすべて回収することは難しいので、海にプラスチックごみを出さないようにすることが大切なのです。

《仕事のやりがいを感じるのはどのようなときですか?》

海のごみ問題は、残念ながらますます深刻になる一方です。海のごみ問題の現状はとても厳しいものですが、問題の解決のためにたくさんの人が集まるとき、そうした場で出会う仲間たちと一緒に解決策を考えることは、活動を続けるためのエネルギーになっています。

【付録 海のしごとに就くための学校】

これまで紹介した「海のしごと」に就くためには、専門の勉強をしたり、技術を身につけたり、資格をとったりする必要があります。ここでは、専門技術などを学ぶいろいろな学校を紹介します。

  1. 海技大学校:船員になりたい人たちに対して、船を運航するための色々な知識や技術を教えるための学校です。実際の船に乗って行う実務教育・訓練もあります。
  2. 海上技術学校・海上技術短期大学校:海上技術短期大学校は、中学校・高校を卒業した人が、船員になるために必要な勉強をして、海技士の免許を取るための教育を受ける学校です。学校では、航海と機関の両方を勉強します。乗船実習もあります。
  3. 水産大学校:水産の基礎から応用までを大学レベルで学びます。水産の現場で活躍できる専門的な知識と技術が身につきます。船員の資格を取ることもできます。
  4. 商船高等専門学校:「商船」というのは、貨物船や客船、フェリーなど、荷物や人を運ぶことで商売をする船の総称です。商船高専はこれら商船に乗る船員を育てる学校です。
  5. 工業高等学校・工業高等専門学校:工業高校や工業高専の中には、造船や船のエンジンなどについて学ぶコースがあります。
  6. 水産・海洋高等学校:漁業、水産業についての専門知識を身につけるための学校です。「漁船」に乗るので、船員の資格も必要です。
  7. 海上保安大学校・海上保安学校:海上保安官になるための学校です。海上保安大学校では幹部職員候補を、海上保安学校では一般職員候補を養成します。
  8. 防衛大学校:自衛官になるための学校です。陸・海・空各自衛隊の幹部自衛官となる者を教育訓練する防衛省の機関です。
  9. 大学:海や船について専門的に学ぶ大学もあります。「東京海洋大学」「神戸大学海事科学部」等が有名です。他にも色々な学校に、「海」を専門的に学ぶコースがあります。

6回に渡って「海のしごと」をご紹介してきましたが、気になる仕事はあったでしょうか?または、もうすでに海の仕事を目標にしてこの本を手にとってくださった方もいるかもしれませんね。

『どうして海のしごとは大事なの?』本のタイトルにもなっているこの疑問の答えが、この本を1冊読み通せばきっとご理解いただけると思います。地球の表面は海に覆われていて、その中でも日本は四方を海に囲まれた海洋国です。他の国と交易をし、食べ物やエネルギーを得て、危険から国を守るためには、海に出て、海を知ることが不可欠なのです。

この本で紹介したほかにも、水産業など、海と関わる仕事はたくさんあります。成山堂書店は海に関係する本を色々出版していますので、気になるものがあったら是非手に取ってみてください。将来を考える若い方々に。当社の本が少しでもお役に立てましたら幸いです。