『どうして海のしごとは大事なの?』目指せ「海のしごと」!海洋国日本を支えるプロフェッショナルたち 【第4章:守るしごと】

『どうして海のしごとは大事なの?』解説の4回目は、「守るしごと」を解説します。日本は、漁業や外国との貿易を行うなど、海ととても深い関わりを持っています。海の上には、海難事故や、密輸・密航という海上犯罪、領土や海洋資源に関する周辺国との衝突等、様々な危険があります。こうした危険から国と国民を守るのも、大切な海の仕事です。

また、船は海での活動に欠かせないものです。船に欠陥があってはなりませんので、厳しい検査基準があります。こうした「船を守るしごと」もまた、「守るしごと」といえるでしょう。今回は、こうした危険から国や国民を守る仕事、海に欠かせない船を守る仕事のお話です。“海の警察”海上保安官、海上自衛隊の艦長、船舶検査員をご紹介します。

【守るしごと#01 海上保安官】

海の安全と治安をつかさどる“海上の警察”。海に囲まれた日本にとって、海難救助とともに、領海警備や海洋資源の保全なども行う大切な仕事です。

《どんな仕事をしているの?》

海上保安官は、巡視船艇や航空機に乗り込み、海難事故の救助や密輸・密航といった海上犯罪の捜査・取り締まりを行っています。海の消防士であり、警察官なのです。

《海上保安官の6つの仕事って?》

海上保安庁の仕事は、大きく6つに分かれています。

  1. 治安の確保:海上の治安を守るため、日本周辺海域の監視・警戒を行っています。
  2. 生命を救う:海の事故によって毎年多くの生命が失われています。事故が起きないよう、様々な指導を行っています。
  3. 青い海を守る:油や廃棄物による海洋汚染の大半は、人の故意や不注意で起きています。調査と監視・取り締まりを行っています。
  4. 4.災害に備える:海上災害には、衝突などの事故災害と、台風などによる自然災害があります。その両方について、他の機関とも協力して備えています。
  5. 海を知る:船が安全に航行できるよう、測量船や航空機を使って海底地形の調査を行い、海図を提供しています。
  6. 交通の安全を守る:船の事故が発生しないよう、海の交通ルールを定め、灯台などの航路標識の整備を行っています。

海上保安庁の仕事は、これら6つ以外にもたくさんあります。海上保安庁は日本政府の機関ですので、外国大使館などに外交官として勤務する海上保安官もいるんですよ。

《なぜ海上保安官は必要なのですか?》

日本は他の国と陸地で接していないので、国境線が存在しません。そのかわり、国際条約や法律で定められた12海里の領海線がいわゆる国境線となります。密輸や領海侵犯等を取り締まるため、国境警備は日本の主権を守る重要な仕事なのです。

【守るしごと#2 海上自衛官(艦長)】

海上自衛隊は、国や国民を外からの脅威から守り安全を保ち、生活のための海上交通の安全などを守る重要な役割をもっています。

《どんな仕事をしているの?》

日本にとって、外国からの「脅威」はすべて空や海を経由してきます。海上自衛隊は、海からの侵攻に対処する第一線の「部隊」ということになります。また、日本の資源の大半は海を経由した輸入に頼っていますので、海上交通路の安全を確保することもとても重要です。これも、海上自衛隊の重要な任務です。海上自衛隊の艦艇部隊は、海上自衛隊の第一線です。海からの侵攻に備え、海上交通路の安全を保つためには、艦艇部隊の存在は欠かせません。

艦艇を取り仕切る「艦長」は、海上自衛隊に入ってから様々な経験を積む必要があります。大学卒業から様々な経験や訓練を重ね、平均して40歳くらいで初めて「艦長」になれる厳しい道のりです。

《海に自衛隊はなぜ必要なの?》

日本の海を守る訓練も、海上自衛隊の仕事のひとつです。もし海上や海中から攻撃を受けることがあれば、それに対処しなくてはなりません。そのため、訓練弾等を使って実戦に近い訓練を行っています。また、もし攻撃を受けた場合、日本だけでは対処しきれないことも考えられますので、同盟国・友好国などとの共同・親善訓練を行います。これらはすべて日本を守るための大切な訓練です。

訓練のほかに重要な仕事は、警戒監視です。日本の周辺海域で、他の国の艦艇などの動きを監視し、日本を守るための情報を集めます。一方で、世界の国々への国際貢献活動も行い、他国との相互理解に努めています。

《艦長の仕事とは》

艦艇は通常、複数隻が集合体・部隊となって作戦行動・任務行動に従事します。その「部隊」のなかで、それぞれの艦艇の役割はとても重要です。艦長の任務は、野球やサッカーの監督のように、あらゆる任務にいつでもすぐに対応できる「強い艦」を作り上げることです。

【守るしごと#03 船舶検査員】

船が安全に運航するためには、いろいろな検査を行うことが法律で義務づけられています。船の設計図や整備、使われている材料や機器の検査や安全管理のための検査などが、船の建造中から就航後まで定期的に行われます。これらの検査を行うのが船舶検査員です。

《どんな仕事をしているの?》

船には安全な航海が求められるため、作られた船が一定の基準を満たしているか検査する必要があります。検査団体である船級協会が、船体・機関・艤装品(機器・部品)の検査を行いますが、その検査を行う人を船舶検査員といいます。船を造る造船所でも、船を運航する海運会社でもない中立の立場の船級協会が検査するという仕組みは250年以上前に英国で始まり、日本でも110年以上も続いています。

船の検査は、設計図の審査から始まります。その次は、造船所で船が設計図通りに造られているかどうか、溶接がしっかり行われているか、船を造る工程ごとに検査を行います。最後に、船を実際に走らせてみて、問題がないかを検査します。検査は造船所だけではなく、製鉄所、船に搭載されているエンジン、船を構成する機器(艤装品)についても検査します。

検査に合格すると「船級証書」が発行され、造船所から海運会社に引き渡されます。海運会社に渡ったあとも、船の検査は定期的に行われます。3年に1度は船を修理造船所のドック(船の病院)に入れて、徹底的な検査を行うのです。

《なぜ、船の検査は必要なの?》

自動車が事故を起こさないよう定期的に「車検」を受けてその証書を車に積んでおくように、船も事故を起こさないために定期的に検査を受け、その証書を船に積んでおかなくてはなりません。

しかし、船は自動車と違って、海を通って外国と行き来をします。そのため、検査を正しく受け、合格したことを証明するには国際的な共通の基準が必要です。世界の国々の政府は、人名と船の安全、海洋環境保護の観点から、全世界で平等に守られる国際条約を定めています。この国際条約に従った検査も、船舶検査員の重要な仕事です。

今回は、「守るしごと」についてご紹介しました。海に囲まれた日本は、海と船の安全を守ることが国と国民を守ることにつながるのです。

次回は、「調べる・採るしごと」に迫ります。海は私たちの地球の一部で、表面の多くを占めていますが、実はまだ知られていないことでいっぱいです。海は私たちの生命を守る地球環境を作り、それを維持する重要な役割を担っています。その役割を解明するため、調査が行われています。また、船の地図である「海図」を作るためには、海の地形を知らなければなりません。石油などに替わる新しいエネルギー資源が海に眠っていることが明らかになってきました。過去も未来も私たち人間を含む生命を支えてくれる海をもっと知り、豊かな恵みをこの先も得ていくために、海を調べ、海から採取する仕事にはどんなものがあるのでしょうか。