読了『常設展示室』原田マハ

すっかり原田マハさんの物語に魅了されて、3冊目。美術に世界に引き込んでくれた、『たゆたえども沈まず』。読み進めていくうちに、文章中に出てくる作品を見に行きたくなる表現は、読む者をその世界へ誘ってくれる。

そうやって、原田マハさんのファンになったり、美術への興味を深めた方も多いのではないだろうかと思う。だって、美術にまったく興味のない僕が引き込まれてしまったのだから。

この本の中に出てくるのは、特別展示で見られるような作品ではなく、美術館で常に見られる作品たちを元に、6つの物語が描かれている。思わず涙が溢れてしまった、「デルフトの眺望」。作中の父と自分の祖父が重なった。描かれている風景と祖父がいた場所が似ていたのだろうか。境遇も似ている部分も多かっただからだろうか、電車の中で涙しながら読んだ。

この作品を今すぐに見に行くことはできないけども、いつか見てみたい。

この本を読んでいて、二つの文章に惹かれた。物語は違うけども、大切なことが書かれている。

この世でもっとも贅沢なこと。それは、豪華なものを身にまとうことではなく、それを脱ぎ捨てることだ。

 

全部捨てた。そうしたら、道が見えてきた。この絵を見ていると、そんなふうに感じます。

生きていくと、様々なことが起こり、様々な経験をしていく。その中で、良いこともあるけども、背中に何か重いものを背負うこともある。それを一度下ろして、もう一度、身軽な身体で進むことも必要ではないかと思わされた言葉。

あれこれと考えるのではなく、ただただ前に進むだけでもいいのかもしれない。

このタイミングで、この本に出会えたことに感謝。