読めば出かけたくなる!「潮干狩り」の極意を伝授! 【第3章:家に帰ってからの疑問】

  • 2021.04.09 

『潮干狩りの疑問77』の内容解説も、第3回目となりました。前回までは出かける前の準備からアサリを中心とした貝の知識、ポイントの選び方等を解説しました。貝を沢山掘って帰ってきたら、是非おいしく食べたいですよね。今回は持って帰った貝を上手により分けで砂抜きし、おいしく料理する方法をお教えします。手順の写真等も載っていますので、是非本書を参考になさってください。

【貝を食べるときの大ハードル:賢い砂抜きとは?】

「貝を獲って食べる」ことを考えたとき、まず「面倒だなあ」と思うのは砂抜き作業ではないでしょうか。食べているときに砂を噛んでしまった感覚は、特に子どもにとっては好き嫌いにつながりかねません。しっかり砂抜きすることが、おいしい貝料理の大前提です。本書ではQ&Aの中で解説していますが、ポイントを挙げていきます。

  • アサリを元気なまま持ち帰る
  • 砂の9割はアサリの殻に!まず十分にガラガラ洗う
  • 使う塩水はアサリが獲れたところの海水が一番!
  • 砂抜き時間の上限は3時間!

砂抜きには平らな網付きの容器を用い、アサリが重ならないようにします。まずガラガラ洗って砂を落としたら、アサリがぎりぎり隠れるくらいに塩水を注ぎます。その上に新聞紙を被せて暗くして、砂を吐かせます。

砂吐きが終わったら、網だけを持ち上げて塩水から出し、1時間程度室内に置いて海水を吐かせます。そのあと流水で再度洗い、吐かせた砂を落とします。

すぐに料理しない場合は、ポリ袋に入れて冷蔵庫で4~5日は生で食べられます。

砂抜きの時間は、3~5月なら3時間程度、6月以降は2時間程度です。それ以上おいてもアサリが弱るだけです。海水に余裕があれば、2時間程度で海水を替えるとより完全に砂抜きができます。

砂抜きには、海水が一番です。人工海水とは砂の吐きが圧倒的に違います。もし家で3%の塩水を作って行う場合は、2時間では全部の砂は抜けにくいです。途中で新しい塩水に替えて、もう一度砂抜きを行うとよいでしょう。

アサリが元気で、室温の海水を使えば、砂抜きのときアサリは元気に足や水管を動かしますが、塩水や冷たい水を使った場合はあまり動きません。しかしそういう場合も、アサリが元気でさえあれば、砂は抜けます。

潮干狩りの現場である程度元気なアサリを厳選しておきたいものですが、砂抜きのときに水管を出したものだけをより分けてしまえば、確実に元気でおいしいものだけを選べて、死んだアサリや弱ったアサリを取り除けます。弱っているアサリも、出汁を味わう味噌汁などの、砂がそれほど気にならない料理にしてしまえばちゃんと食べられます。

砂抜きとともに、忘れてはならないのが塩抜きです。スーパー等にパックされて売っている水に浸かっていないアサリは塩抜きも済んでいますが、海水とともにビニール詰めになっているものに関しては砂抜きのみで、塩抜きはされていません。家で砂抜きをしたら、そのあと水から上げて室温に置き、1時間程度塩抜きを行うのを忘れないようにしましょう。

ちなみに、足の部分が「アオヤギ」として珍重されるバカガイは、砂抜きが非常に難しい貝です。足が大きいために貝殻が完全には閉じにくく、そのため多くの砂が入り込んでいるのです。体内だけではなく身と貝殻の隙間に大量の砂が入っているので、その砂が最後まで残ってしまいます。そのため、バカガイの砂抜きは茹でてから身を洗うことで行います。

【保存と賞味期限:自宅でフリージング!】

アサリの賞味期限は、アサリを元気に持って帰れるかどうかにかかっています。前の項でお話したように、元気なアサリをクーラーで持ち帰って適切に砂抜きすれば、冷蔵庫で4~5日は保存できます。冷蔵保存は最長で1週間と考えてください。数日で食べきれそうもなかったら、冷凍してしまいましょう。

冷凍保存の方法は、次の通りです。砂抜きと塩抜きを済ませた元気なアサリの殻からぬめりをよく落とします。その後ポリ袋に小分けにして冷凍しましょう。一度冷凍したものは、料理の直前まで冷凍し続けてください。途中で温度が変わると、料理しても口を開かなくなります。

調理の際は、アサリを冷凍庫から出したらすぐに熱湯に入れ、口を開くまで温度が下がらないように沸騰させつづけてください。アサリの口が拓いたら、すぐに火を止めることが大事です。炒め物や蒸し物の場合も、冷凍から高熱で一気に口を開かせ、すぐに火を止めることです。冷凍保存できる期間は、約3か月程度です。それ以上保存すると、段々口を開きにくくなってきます。

本書ではご飯ものや麺、炒め物等のレシピも掲載していますので、是非挑戦してみてくださいね!ハマグリやマテガイの料理も載っています。

【アサリに潜むカニ】

貝を食べていて、貝殻に小さなカニを見つけることがあると思います。このカニは何なのでしょう?Q&Aをご紹介しますね。

Q:アサリの中からカニが出てきました

A:これはアサリに食べられたものではなく、アサリなどの二枚貝の貝殻の中に規制するカニで、カクレガニといいます。カクレガニは幼生のときに貝の水管から入り込み、アサリのおこぼれをちょうだいしながら一生アサリの中で過ごしますが、アサリの中に棲むのはメスだけです。繁殖期になると、小さなオスが水管から入ってきます。

元気なアサリを上手に砂抜き・塩抜きすれば、あとは腕次第。この本に載っているレシピも参考にして、おいしい食卓を囲んでください。潮干狩りに出かけるときは、できれば空のペットボトルを持参し、アサリが棲んでいたところの海水を持ち帰って砂抜きをしてみてください。著者によれば、塩水とは塩の抜け方が圧倒的に違うそうですよ。

次回は最終回「もっと知りたい潮干狩りの疑問」です。アサリ以外の貝のこと、浜辺の生物たち、アサリの「生きざま」について、潮干狩りの語源問題まで、潮干狩りに関する様々な疑問にお答えします。たとえ収穫が少なかったとしても、太陽の下で自然と触れ合う喜びは大きなものです。干潟の雑学もチェックしておけば、準備は万端です!