未来の食卓にもおいしい魚を!今の漁業にできること 【Section2:天然魚について知ろう!】

  • 2021.02.11 

前回では、従来通りに自然の資源にだけ頼っていては漁業の存続は難しいということについて解説をしました。第二回となる今回は、漁獲の対象となってきた天然魚について取り上げます。「スーパーの店頭でよく見かけるけど、同時に絶滅危惧だという話も聞こえてくる」有名なあの魚の話ももちろん出てきますよ。本当に減っているんでしょうか?だとすればどのくらい?

Q:どんな魚が獲れていますか?

A:現在、私たちは多様な魚介類を漁獲しています。魚類に加え、貝やイカ・タコといった軟体動物、クラゲ等の刺胞動物、ウニやナマコといった棘皮動物等です。最も多い魚類では、現在知られている約3.5万種の中で、漁獲対象となっているのは約1600種です。これらの魚介類の多くは内湾や沿岸、河川・湖沼で獲れるものです。冷蔵・冷蔵技術が発達したことで、多彩な魚介類が人々の食卓に上るようになりましたが、人類の歴史においてはごく最近の出来事です。

Q:イワシが減ってサバが増えているって本当ですか?

A:マイワシとサバ類はプランクトン食で餌も競合し、広い海域を回遊する小型浮魚という共通点があります。このグループにはアジやサンマ等も含まれ、これらの魚の漁獲量は大きく変動し、大きな漁獲を上げる種が次々と後退していきます。これを魚種交代と呼びます。生息海域が異なっても、同一魚種は同じ漁獲量変動を示します。これは、大気・海洋・海洋生態系から構成される地球環境システムの基本構造(レジーム)の転換=レジーム・シフトが起こった結果だとみられています。影響を受けて漁獲量が減った際にこれまでと同じ漁獲をすると、資源枯渇を引き起こす可能性があります。

Q:ウナギはどのくらい減っていますか?なぜ減りましたか?増やす方法はありませんか?

A:天然ウナギの漁獲量は1961年以降減少を続け、最近では10トン以下に減っています。一方、養殖生産量は年々増え1968年には年間2万トン以上にもなりました。しかし1990年以降、養殖生産量は減少を始め、代わりに輸入量が増えていきました。これには中国がヨーロッパウナギのシラスウナギを輸入して養殖を始めたことが大きく効いています。しかし2000年以降、日本国内のウナギ供給量は年々減り、2014年には4万トンを割り込みました。2013年のデータでは、世界で消費されているウナギの7割は中国、1割が日本という状態です。ニホンウナギ・ヨーロッパウナギ・アメリカウナギともに資源量は大きく減っていますが、原因は①乱獲、②汽水域や河口域の環境悪化、③シラスウナギを運ぶ海流の変化、が挙げられますが。最初の二つは人間の努力で改善が可能です。

Q:天然魚が好まれる理由は何ですか?

A:自由に泳ぎ回る天然魚は余分な脂肪もなく身が引き締まり、加えて旬の磁気には美味しさが増すため、消費者の嗜好にマッチします。漁獲で得られる天然魚は食物連鎖を潜り抜けた健康な個体です。日本では天然魚は自然に育っているというよいイメージがもたれ、逆に輸入魚や養殖魚は敬遠されるという傾向があります。また、天然魚は多彩なため、色々な味を楽しめます。今後さらに養殖が進んだとしても、養殖で利用できる魚種は天然魚に比べて少なくなってしまうでしょう。

今回は漁獲の対象となってきた野生魚のことについてご説明してきました。次回は、こうした野生魚の漁獲慮に影響する海の仕組みについて説明します。魚はどんな場所で増え、どうなると魚が減ってしまうのでしょう。人間がそれに対してできることは何か、を探る前提として、魚が暮らす場所としての海について知っておきましょう。