ここが変わった!釣り人のバイブル『イカ先生のアオリイカ学』

  • 2021.04.16 

釣り人が読んで面白い本ってどんなものでしょう?読んだら即実践に活かせるような秘伝の釣りテクニック満載の実用書?それとも対象魚をより深く知ることで、より刺激的なファイトが楽しめるようになる雑学書?釣った魚を100%おいしく味わえるような、海からキッチン直行派の料理書?

本書『イカ先生のアオリイカ学』は、そのすべてを兼ね備え、「科学」の視点から解説を試みています。アオリイカの一生、釣り人あるあるは科学的に正しいのか?あの調理法は実は間違いだった?等、豊富な話題の数々に、今までのアオリイカ観が覆されるかもしれません。

本書が特に注目しているのは、アオリイカの生態です。著者は現役の整形外科医にしてイカ釣りのスペシャリスト。イカを求めて日本のみならず世界中を旅する情熱的なイカマニアです。イカ釣りしすぎで魚釣りに出かける暇もないほどの著者が、有り余るイカ愛を1冊にぎゅっと詰め込みました。オールカラー約150ページがすべてアオリイカ!釣り人だけでなく海洋生物ファンにも好評で、生物学の棚に置いてくれる書店さんもありました。

大好評の本書が、2017年の初版発行から4年、満を持して改訂増補版の発行となりました!もちろんページ大幅増、新しい内容を加えてお送りします。今回は、『イカ先生のアオリイカ学 改訂増補版』の新しくなったポイントを解説していきますね!

【ここが変わったポイント1:地球温暖化の影響?】

近年、地球温暖化の影響で、アオリイカが北上しているのではないかという感触を掴んだ著者は調査に乗り出し、アオリイカの生息域が実際に北上していることを確認しています。著者本人が現地に出向いての調査はもちろん、SNSによる釣り人のネットワークから、実際に釣り上げた場所と画像で生息が確認できるようになったことも大きく貢献しています。以下に、その成果をご説明します。

【ここが変わったポイント2:アオリイカ3タイプの分布の変化】

日本に生息する3種類のアオリイカについて、初版発行後の分布の変化と、推測される要因を解説しています。最新の情報に合わせて動けば、今までは釣れなかった場所でも大漁を狙えるかもしれません。

  • シロイカ型:分布の変化ではなく生息期間が変化した。日本海側では12月に入っても暖かい日が続くようになったので、南下もしくは深部への移動のタイミングが遅くなっている。太平洋側では宮城県でも秋のエギングが楽しめるようになりつつある。
  • アカイカ型:日本海側に関しては変化がない。しかし太平洋側は、以前は確認例の記載されていない和歌山県や三重県南部でも確認されるようになった。特に和歌山県では毎年アカイカ型がみられるようになっている。水温と潮流について検証した結果、アカイカ型は単に水温が高ければいいという訳ではなく、黒潮そのものを生息域とするという生態が見えてきた。しかし、その原則によれば生息域に含まれるはずの伊豆諸島・小笠原諸島でこれまで吊り上げられたアオリイカはDNAからシロイカ型。その真相は?
  • クアイカ型:3種の中で最も分布が変化したのがクアイカ型。体が小さく、個体数も少ないため、漁業資源としての価値が低いとみなされており、調査が進んでいなかった。近年、四国南部、沖縄本島周辺、伊豆諸島、小笠原諸島周辺で確認されている、

【ここが変わったポイント3:釣り人の貢献?アオリイカの新たな可能性】

今回新たに加えられた項目は、著者をはじめとする釣り人たちの「現地釣査」によって実際に吊り上げられた個体をもとに、DNA等の研究が進められて判明した事実が多く含まれています。これまでのアオリイカに関する研究が、漁業資源としての有用性に軸足を置いたものだったために、漁業的価値が低いとみなされたクアイカ型の分布は詳しく調査されていませんでした。しかし、釣り人の釣果をきっかけに生物としてのアオリイカに注目が集まり、研究が進み始めています。

この改訂版の発行以降、さらに研究は加速していくことでしょう。

釣り人の常識を科学で塗り替えるエキサイティングな初版に、日々変化していく地球環境の中で生き方を変えていくアオリイカの「現在」を加えて、より面白く生まれ変わった『イカ先生のアオリイカ学 改訂増補版』。釣り人の方もそうでない方も一度お読みいただければ、釣りというレジャーが、ある生物種とその生き物が暮らす地球環境と向き合う真剣勝負であることを、より実感していただけることと思います。