船の種類を知ろう~用途に着目した船の分類と、その仕組み~『新訂 ビジュアルでわかる船と海運のはなし(増補改訂版)』

  • 2021.01.07 

前回に引き続き、『新訂 ビジュアルでわかる船と海運のはなし 増補改訂版』の内容についてお話していきたいと思います。

前回は本書の導入部、船と航海の歴史について解説しましたが、今回はいよいよ現在使われている船の分類と、それぞれの仕組みを解説していきます。ここで用いられる分類法に着目すると、本書の機能がよりはっきりと理解できると思います。船舶工学の本であれば、材質や動力、燃料から船を分類するかもしれません。航行区域によって分ける見方もあります。こういった分類については小社刊『船舶知識のABC』が詳しいので、興味のある方は是非ご参照ください。

しかし本書は海運について知っていただくことが目的なので、船をまず【用途】で分けます。

2:船の種類について~用途は何?~

多彩な船をその用途で分けてみると、軍艦。漁船、商船、特殊船の4つに大別できます。軍艦や漁船はわかりやすいですね。最後の特殊船は、クレーン船等の各種作業船、水先船、警備船、プレジャーボートなどを指します。本書では、商船を旅客船と貨物船に大きく分け、そのうち特に貨物船について解説していきます。

旅客船

海を越えて人々が移動するには、船を使うしかありませんでした。北大西洋航路を行き交う豪華客船には、ヨーロッパからアメリカを目指す多くの人々が乗っていました。近代客船の歴史は、そのまま移民の歴史に重なります。移動を目的とせず、船に乗ることそのものを楽しむのが旅客クルーズ船です。設備と船上レクリエーションの多彩さを競う豪華客船は、世界中で利用人口を伸ばしています。

また、島嶼域と本土を繋いだり大河を渡したり、生活の足として使われる旅客船もあります。また、カーフェリーも法律上は旅客船の一種です。フェリーと似ていますが、ランプウェイと呼ばれる橋で岸壁と船を結び、トレーラーやフォークリフトで荷を積むRORO船は貨物船です。

貨物船

貨物船は、コンテナ船、在来貨物船、タンカー等の特定貨物用の専用船に大別されます。コンテナ船はコンテナ貨物のみを積むフルコンテナ船と、コンテナ貨物と一般貨物の両方を積むことができるセミコンテナ船があります。コンテナの登場によって、貨物を戸口から戸口まで同じ荷姿のまま運ぶことが可能になり、現在では定期貨物船の貨物の約90%はコンテナ船によるものです。

在来貨物船はコンテナ船や専用船の登場以前から活躍している船で、クレーン等で雑貨を掲載して運びます。タンカーには石油製品を運ぶプロダクトタンカー、化学薬品を運ぶケミカルタンカー、LNGを運ぶLNGタンカー等があります。ばら積専用船は鉄鉱石、石炭、木材等のばら積み貨物を船倉に積んで運ぶ船で、船倉はいくつかの区間に分けられています。荷物の偏り対策として、大きめのバラストタンクを備えています。

また、自動車専用/兼用の自動車運搬船、プラントや鉄道車両等の大型重量物を運ぶ重量物運搬船、生鮮食品や冷凍物を運ぶ冷凍・冷蔵運搬船、貨物を積載したはしけを運ぶバージ・キャリア等も貨物船に分類されますが、世界各地で伝統的な船が様々な物資を運んでいます。

3: 船のサイズとスピード~船のサイズは何を指す?~

船の大きさを表すのによく使われるのはトン数です。実はこの基準も近年まで揺らいでいたのですが、1969年にようやく確定しました。①国際総トン数、②国内総トン数、③純トン数、④排水トン数、⑤載荷重量トン数の5つです、船の長さは、全長、登録長、垂線間長の3つを主に用いて表し、幅は最大幅、型幅、登録幅をよく用います。船の深さは型深さ、水線上の深さを表すには喫水という語を使用します。船の速力はノット(Knot)という単位で表しますが、これは1時間に1マイル進む速さを意味します。海上の1マイルは1.852mです。

4:船の構造と性能~船のかたちと動き、揺れ~

船の形の代表的なものには、平甲板船、三島型船、ウェル甲板船、全通船等があります。船楼のあるなしや数、場所で区別します。

船の構造は横式構造、縦式構造、両者の長所を混合した縦横混合式構造の3通りに大別されます。いずれの構造においても、船底部中心線には船首から船尾にかけて竜骨が張られています。船の背骨にあたるものです。外から船体にかかる力から船体を守る部材を強力部材と呼びます。また、船首部分は激しい衝撃を受けやすいことから、特に強度を持つように作られています。

船が浮くのは、船の重量よりも大きな浮力を受けるからです。船が揺れたとき基に戻そうとする復原力は、浮力の中心と船の重心に関係します。船が舵を切ると、前方からの水流と舵の向きの間に迎角ができ、揚力が発生します。それによって船は曲がります。

船が受ける抵抗の中で圧倒的に大きいのは、船首尾で作られた波による造波抵抗です。それ以外には、造渦抵抗、空気抵抗があります。また、船の揺れには上下、前後、左右、縦、横、船首揺れの6種がありますが、船の転覆をもたらしやすいのは横揺れ、船酔いを起こしやすいのは上下揺れです。

5:船の機関と設備~何が船を動かし、何を備えているのか?~

船の推進力を作り出す機関を主機といいます。外燃機関、内燃機関、原子力機関に大別されます。従来は重油を用いたディーゼル機関を採用した商船が多かったのですが、環境への影響を考慮して見直す動きが出ています。補機は主機に付随する機械と推進以外に使用する機械の総称です。ボイラーや発電機、ポンプ類が相当します。

船舶において最も広く使われている推進装置はスクリュープロペラです。プロペラを回転させる仕組みには様々な種類があります。帆船においては、帆が推進装置です。他には、旅客や荷物を積載するための設備である艤装品、船の進路を保ち方向を変える舵、舵を操作する操舵装置、船を岸壁に繋ぐ係留装置、貨物の積み下ろしを行うための荷役装置等が備わっています。

忘れてはならないのが、救命装置です。タイタニックの悲劇をもとに、海上における人命安全会議が開かれ、SOLAS条約が締結されました。その後1982年に締結されたSTCW条約と合わせて、救命設備の備え付けと使用法の基準が国際的に統一されています。

日本に船籍を置く船は、これらの設備や船の機能について、船舶安全法及びその施工規則に基づき、各種の試験を定期的に受けなければなりません。こうした法定検査とは別に、船級協会による検査も行われています。

今回は、船の分類と仕組み、設備についての項目を解説しました。次回は、『航海について知ろう』です。船が海に出たとき、どのようなことを行っているのか、どのようにして船の位置を知り、気象や波、事故の危険にどのように対処しているのかに迫ります。