読了『海の見える理髪店』

タイトルだけ見て買った本。そしたら「直木賞」受賞作品だったということを、テレビのクイズ番組で知りました。

みなさん、こんにちは。
成山堂書店という専門書をつくっている会社の三代目(専務)の小川啓人です。
海に関すること(船、海洋、水産)、気象、飛行機、鉄道などの物流の専門書から、
深海魚、釣り、海の生き物などの趣味的な本までを発行しています。

僕は普段、美容室ではなく床屋さんへ行く。短い髪のカットは、美容師よりも理容師のほうが上手。ギリギリまでカットしてもらうのでハサミの使い方が上手に人に任せたい。いま行っている床屋さんは、そのハサミ使いが上手。丁寧にカットしてくれるので3週間に1度は通ってるかな。カットしながらいろいろと話を聞いてくれるから、癒やしの場になっている。そんなこんなで、この本に手が伸びたのかもしれない。

中身は6つの短編小説。タイトルの『海の見える理髪店』からはじまる。場面が想像できる文章に、「こんな床屋さんへ行ってみたいな」と思わせてくれる。いろいろと小説を読んでいて思うが、「その場を思い描けるか」というのが文章力の高さなんだと思う。だからこそ、直木賞を受賞できるのだろう。場面が想像できない小説ほどつまらないものはない。

この本の中で一番印象に残ったのは2つ目の「いつか来た道」。何年かぶりに会う、母と娘。それまでいろいろなゴタゴタがあった二人。それは久々の再会でも変わらないが、最後に娘は気づく。「ほっといてごめんね」と。読んでいて自分のことのように思いながら、なにがあろうと親子は親子。老いていく親を見ながら、娘は何を思ったのだろうか? 僕も老いていく親を見ていると、後で後悔しないようにって思う。

例えは悪いが、今の世の中の状況で母との距離は、昔の距離感に戻った。僕が幼少期の頃と同じかも。仕事でぶつかることはあるけど、何かあると支え助けてくれるのが親というもの。その絆がより深まったのだろう。

そんなことを思いながら読んでいた。

読み終えると、何か温かい気持ちになれる1冊です。