なんと書き出したらよいのだろうか。読むスピードが速く、あっという間に読み終えた内容。そんな本は久しぶりであった。城山三郎著『官僚たちの夏』。国家のために突き進む主人公の風越信吾。人事カードを繰りながら、自分の目指す組織をつくり上げていく様がおもしろい。
今まで政治だ国家だといった内容は好きではなかった。これが描かれている時代背景もわからない。官僚たちがどんな仕事をしているのかも、よくわからない。小説だから現実そのもというわけではないだろうけど、その場面が想像できる文章は迫力がある。
内容の詳細は省くが、最後の最後で現代のことをいっているのではないだろうかと思うシーンがあった。
競走馬じゃあるまいし、全力で走りさえすればええというもんやない。いや、競走馬かて、毎日毎日全力で走らされりゃ、脚でも折るのが関の山や。競馬にたとえてわるいが、あんたの持ち馬は、みんな、死ぬか、けがしてもうた。死屍累々というところや。もちろん、ちょっとすると、ケガしかねん馬やが、片山ならケガはせん。牧が柏戸なら、片山は大鵬のようにやわらかい男や。これからはああいう男の世の中になるとちゃうか
自分の思うがままに突き進んできた風越。片山というのは仕事は仕事でやるが、当時の官僚にはない自由奔放さで、仕事よりも趣味を楽しんでいるという印象が強い男と。そして人を巻き込むのがうまい。一足飛びではないが、組織の中で確実にあがっていく存在。
風越のように我が強いと、一気に上り詰めることもできるが、落ちるときはあっという間。どっちがいい悪いというわけではないが、人の生き様を面白いように描いている。
現代は仕事も大事、プライベートも大事。むしろプライベートのほうが大事という人も多いのではないだろうか。世の中が不安定な中、どれだけ仕事をがんばっても報われることがない状態。せめても、好きなことだけには打ち込んで楽しみを見つけようという今に近いのだろうか?
政治の世界は力があっても、根回しが大事であったり、不要な一言で更迭されたり、ジェットコースターのような人生に見える。世渡り上手が一番無難なところだろうか。
まとまりのない文章になってしまったが、ジェットコースターのように右へ左へ上へ下への人生と、自分を大切にして生きていく人生、それを取り囲む人たち。今も昔も似たようなところがある組織模様が楽しい読書の時間であった。