著者名: | 鈴木尊喜 著 |
ISBN: | 978-4-425-929016 |
発行年月日: | 2019/5/28 |
サイズ/頁数: | A5判 208頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥2,860円(税込) |
東京オリンピックを前に、日本は「観光立国」を掲げて海外からの観光客4,000万を目標とした政策を進め、訪日旅行者に対しても、政府、自治体、業者などがさまざまなアプローチをかけている。こうした状況のなか、近隣かつ親日国とされる台湾の訪日旅行者は、ここ数年爆発的に伸びてきている。本書は、台湾の訪日旅行産業を今日まで発展させた背景にある、日台関係の歴史や台湾の旅行業の制度や仕組み、歴史を解説するとともに、近年の旅行形態の変化を考察するもの。旅行事情や制度、歴史的背景を分析し、台湾訪日旅行産業を理解することで、日本側インバウンド事業者が、これからの旅行者への対応、旅行会社としての取組み、現地の旅行産業との接触のあり方などを考察する。
【はじめに】より
人生のなかで著書を出版する機会はそうあるわけではない。
自身に文章を書く才能があるか、内容が読者の求めるニーズに合ったものかにもよる。そうした前提のなかで、私が本書を執筆し世に送り出せたことは大変幸運に恵まれたと思う。
本書は2017 年に東洋大学の大学院に提出した修士学位請求論文「台湾訪日旅行産業の考察」をベースに、さらに内容を加筆し編集したものである。この論文に長年身を置いた航空会社での経験、台湾の旅行会社での経験、帰国後に転職した広告宣伝会社でインバウンドプロモーション事業に携わった経験などを反映させ、現在の台湾訪日旅行に関するさまざまな内容を、コンパクトに一冊にまとめたものである。通読していただければ、台湾インバウンドに関する基礎知識が身につくよう構成している。
そもそも本書を執筆するきっかけは、いまから13年前の春、日本航空の子会社であった日本アジア航空に所属しているときに、現地旅行会社の事業責任者として台湾に赴任し、ビジネスを展開するなかで芽生えた問題意識であった。
当時、日本側インバウンド関係者に台湾の訪日旅行事情を説明する機会が多くあったのだが、その際の気づきとして、旅行業界の内容だけでなく、もう少し台湾や台湾人について「深く掘り下げた理解」が必要ではないか、と感じ始めていた。ここでいう「掘り下げた理解」とは「歴史や社会的背景からくるメンタリティーやインサイト(心の憧憬)」のことである。
2013年に帰国すると、アベノミクスとともに訪日外国人旅行者に注目が集まっていた。いかにして訪日外国人旅行者を増やすか、について盛んに議論されるようになったが、政府、地方自治体、企業、マスコミ、大学研究を含め、こうすれば訪日外国人旅行者の動向を分析できるといったビッグデータ利用による解析手法や、こうすれば増やすことができるといった成功事例によるテクニック手法が多かった。本書では台湾の旅行業やマーケット、広告宣伝、について実際のデータに基づき分析を行っているが、もうひとつ底流にあるのは、自身の経験から得た教訓に台湾マーケットを深く理解することであり、それを読者の方に披露し示唆を与えるのが目的である。
実際に海外マーケットを深く知るには、現地で生活し、その空気を吸い、人と交流し、多くの失敗と成功の体験をして、はじめて身に着くものである。調査の数字だけでは得られない、台湾人のインサイトが理解できるようになれば、さらに深いコミュニケーションが可能になろう。よって、本書は台湾(発地国)側に寄り添って執筆した。私は日本人なので、完全に現地(台湾人)目線というわけにゆかないが、台湾に長年身を置き、台湾人の本音(インサイト)部分を本書のなかにできるだけ反映している。
本書が、いままでとは視点を違えた研究として、また実用書として、関係各位に役立つ内容であれば、著者として望外の喜びである。
2019年1月
鈴木 尊喜
【目次】
序章 インバウンド政策と訪日旅行者
1 訪日外国人旅行者の推移
2 インバウンド事業者の理解不足
3 台湾との関係と本書の目的
第1章 台湾人の訪日意識と観光行動
1-1 台湾人の訪日意識調査
1-2 日本に対する意識とイメージ
(1)国別好感度
(2)世代別好感度
(3)国別将来親近度
(4)世代別将来親近度
(5)世代別信頼度
(6)選好国別信頼度
(7)世代別信頼理由
(8)世代別不信理由
(9)世代別意識格差と教育
1-3 日本旅行と旅の情報源
(1)国・地域別海外旅行希望先
(2)「旅行希望先日本」世代別比較
(3)関心領域
(4)日本のイメージ
(5)日本の魅力
1-4 世論調査と消費動向
1-5 訪日旅行の情報源
1-6 日本語教育世代の観光行動と意識
(1)訪日旅行の観光行動
(2)次世代に対する訪日意識
1-7 台湾人の訪日行動と意識傾向
第2章 台湾の歴史と経済
2-1 台湾はどのような地域なのか
2-2 台湾の歴史と経済
(1)先史時代
(2)オランダ統治時代
(3)鄭一族統治時代
(4)清国統治時代
(5)日本統治時代
(6)中国の蒋介石国民党統治時代
(7)民主化時代
2-3 歴史的背景に見る親日意識
第3章 台湾の観光行政
3-1 台湾の観光政策・行政・法規
(1)観光政策・行政・法規の定義
(2)発展観光条例
(3)専門用語の定義
3-2 戦後観光政策、行政、法規の沿革
3-3 観光組織
(1)行政院観光発展推進委員会
(2)交通部
(3)交通部観光局
3-4 台湾行政の取り組みの成果
第4章 台湾の旅行業
4-1 台湾の旅行業の沿革
4-2 日本統治時代の旅行業
(1)黎明期(清国旅行業の台湾進出)
(2)黎明期(日本旅行業の台湾進出)
4-3 戦後の旅行業
(1)萌芽期
(2)開創期
(3)成長期
(4)拡張期
(5)統合期
(6)チャネル期
(7)再構築期
(8)革新期
4-4 旅行業管理と法規
(1)定義と法制度
(2)旅行業のサービスの特性
4-5 旅行業の種類
(1)業務範囲
4-6 旅行業の登記
(1)設立準備
(2)運営
(3)支社設立
(4)インターネット旅行社
(5)外国旅行業
4-7 旅行業の経営
(1)開業、停業、変更、解散
(2)定価、値段設定
(3)保証金
(4)経営責任
(5)委託、代理、譲渡
4-8 旅行業の従業員
(1)経理人
(2)セミナー試験
(3)領隊人員
(4)導遊人員
4-9 旅行契約と保険
(1)旅行契約
(2)民法による規定
(3)消費者保護法による規定
(4)公平取引法による規定
(5)発展観光条例と旅行業管理規則による規定
(6)旅行保険
(7)保険法による規定
(8)発展観光条例と旅行業管理規則
4-10 旅行品質保証と海外渡航危険情報
(1)中華民国旅行業品質保証協会
(2)海外渡航危険情報
4-11 台湾の旅行業の発展
第5章 台湾の訪日旅行
5-1 訪日旅行の沿革
5-2 訪日旅行の現況
5-3 日本と台湾路線の現況
5-4 旅行会社
5-5 旅行会社の概況
(1)売上規模
(2)経営スタイル
(3)オンラインビジネス
(4)人材
(5)募集時期
(6)ランドオペレーター
5-6 旅行業界の商習慣
5-7 個人旅行
(1)個人旅行の現況
(2)個人型パッケージ
(3)個別手配
(4)レンタカー旅行(ドライビングツーリズム)
(5)これからの個人旅行
5-8 団体旅行
(1)団体旅行の現況
(2)募集型企画旅行
(3)チャーター旅行
(4)團體自由行
(5)インセンティブ旅行
(6)教育旅行
(7)クルーズ旅行
(8)富裕層向け旅行(ハイエンドマーケット)
5-9 S.I.T.(スペシャル・インタレス・トツアー)
(1)サイクリング(サイクルツーリズム)
5-10 台湾旅行業のさまざまな取り組み
第6章 台湾の訪日旅行プロモーション
6-1 旅行業界に対するプロモーション(B to B)
(1)セミナー・商談会
(2)セールスコール(個別営業)
(3)エージェント招請旅行(familiarization tour)
(4)広告宣伝支援
(5)送客に対する補助金
6-2 一般消費者向けプロモーション(B to C)
(1)プレスリリース(報道発表)
(2)メディア(ブロガー)招請
(3)テレビ番組
(4)オウンドメディア(WEB/SNS)
(5)動画制作
(6)消費者イベント
(7)旅行博覧会
6-3 広告媒体
(1)台湾における広告媒体概況
6-4 媒体別特性
(1)テレビ(電視)
(2)新聞(報紙)
(3)雑誌
(4)ラジオ(廣播)
(5)野外広告・交通広告(戸外)
(6)インターネット(網路)
6-5 コミュニケーションコンセプト
6-6 プロモーション戦略
6-7 さまざまなプロモーションと宣伝
第7章 台湾訪日旅行者と旅行業
7-1 インバウンド研究への提言
7-2 今後の課題
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