スマート農業


978-4-425-98561-6
著者名:国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 編著
ISBN:978-4-425-98561-6
発行年月日:2023/11/28
サイズ/頁数:A5判 184頁
在庫状況:在庫有り
価格¥2,420円(税込)
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農業従事者の高齢化と若手の減少、食糧需給の増大と耕地の荒廃、脱炭素化の追求の対策として期待されている「スマート農業」の入門書。 農林水産省が推進しているスマート農業の概要と実例、課題と対策、将来展望まで解説しています。

【まえがき】
「スマート農業」という言葉が耳にされるようになり10年ほどが経ちました。数多くの技術が研究開発から実際の農業に活用される社会実装の段階に進みつつあります。筆者自身の話になりますが、15年ほど前に農林水産省において、自動化技術を活用した「ロボファーム構想」の企画立案に従事していました。ちょうど耕うんロボットやロボット田植機のプロトタイプが開発され、構想の具体化が5年単位で進むことが期待された頃です。その後イチゴ収穫ロボットの実用化を図る研究プロジェクトに参画し、機能やコスト面でも実用に耐えうるものが開発されましたが普及と言える状況には至りませんでした。
一方で、この間に3枚以上の回転翼をもつマルチロータータイプのドローンが登場し、農業場面で上空から観測を行うリモートセンシングや病害虫防除に活用され始めました。このドローンの普及によりスマート農業の導入が加速している感があります。防除では作業時間を80%削減できるなど省力化技術として注目される一方で、今後は画像データの取得により作物の生育状況や、土壌の状態を効率的に把握できるようになりデータ駆動型農業を推進するツールになることが期待されています。
農林水産省では2021年5月に「みどりの食料システム戦略」を公表し、2050年の食料生産のあるべき姿として、農林水産業のCO2ゼロエミッション化(脱炭素化)など高い目標を掲げ、生産性と持続性の両立を目指すこととしています。その実現のためにはスマート農業技術がツールとして不可欠です。専門書やWebでスマート農業に関する数多くの情報が入手できるところですが、本書は筆者が所属していた農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)の情報を中心に、スマート農業に興味のある方の入門書として活用してもらいたいと思い執筆いたしました。
現在は農林水産省で、行政の立場から改めて日本の食料生産の基盤づくりとしてスマート農業の重要性を認識しています。その思いを生産者はじめ農業の未来を考えるすべての方と共有できれば幸いです。

2023年10月
執筆者  長崎裕司

【目次】
第1章 スマート農業とは
 1.1 日本の農業の現状と問題点
   コラム① スマート農業とスマート〇〇
  環境保全・持続型農業の観点から
  日本が提唱するSociety5.0と海外への展開
 1.2 精密農業からスマート農業への展開
  精密農業とは
  海外での取組み
  日本におけるスマート農業の展開
   コラム② 農林水産業のスマート化
 1.3 スマート農業と脱炭素
  スマート農業とSDGs~脱炭素
  これからの研究開発の方向性
   コラム③ SDGsとSociety5.0

第2章 スマート農業の技術的な要素  2.1 ロボットと農業
  農業におけるロボット技術の適用
   コラム④ サービスロボットと「愛・地球博」
 2.2 データと農業
  データ活用から農業DXへの展開
  データ活用の事例
  篤農家が有する技能データを超えるには
 2.3 情報通信技術と農業
  農業の中でのICT
  農業と5G
   コラム⑤ 自動走行農機の安全性検査について
  スマートフォンの農業用アプリの展開

第3章 スマート農業の事例  3.1 トラクタ、収穫ロボット、ドローン
  ロボット種別の事例
  作物別の事例
   コラム⑥ 「アシストスーツ」に見る農作業軽労化の取組み
 3.2 農業データ連携基盤(WAGRI)
 3.3 各種農業支援サービス

第4章 スマート農業の課題と対策  4.1 「スマート農業実証プロジェクト」等で明らかになった課題
 4.2 農業機械の安全対策
  安全対策に向けた取組み
  社会制度の中でスマート農業を位置づけていくには
  標準化に向けた取組み
 4.3 スマート農業の担い手の育成と体制づくり
  ミレニアル世代とスマート農業
  国等の機関や「スマート農業実証プロジェクト」にみる担い手育成の可能性

第5章 スマート農業の将来  5.1 新たなビジネスモデル構築
  フードチェーンの構築での取組み
  動き始めたビジネスモデル
  集落営農
  生産から加工まで扱うモデルケース
  都市型農業での展開
   コラム⑦ 自動運転技術の「レベル」について
 5.2 技術伝承と新たな生産形態
   コラム⑧ 食料安全保障の動向
 5.3「みどりの食料システム戦略」での展開
  環境対応への貢献
  化学農薬・肥料の低減への貢献
  温室効果ガス削減への貢献
  「みどりの食料システム戦略」に挑戦する新しい農作業研究
  水稲での温室効果ガス削減に向けて
  電動農機の可能性
   コラム⑨ リモコン式草刈機の進化と可能性
  有機農業の拡大には雑草対策が重要
  物理的手段による病害虫対策の可能性
  スマート農業での展開と今後の農作業のあり方
   コラム⑩ 農業主産県におけるスマート農業あれこれ
  「みどりの食料システム戦略」の推進におけるスマート農業の役割
   コラム⑪ 「みどりの食料システム戦略」とスマート農業

第6章 スマート農業技術を導入してみたら  6.1 中山間地域での集落営農で水田フル活用に挑む
 6.2 大規模畑輪作で世界と勝負できる生産性に挑む
   コラム⑫ 自動直進技術に見るスマート農業展開の可能性
 6.3 果樹生産で高品質果実の周年供給に挑む
 6.4 特長ある施設園芸で高収益生産に挑む


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