よくわかる高層気象の知識(2訂版)ーJMH図から読み解くー


978-4-425-51303-1
著者名:福地 章 著
ISBN:978-4-425-51303-1
発行年月日:2022/4/28
サイズ/頁数:A5判 176頁
在庫状況:在庫有り
価格¥2,860円(税込)
数量
気象現象は、地上から圏界面までの対流圏における大気の運動であれば、大気の動きを立体的にとらえる必要があります。したがって、地上の気象現象を知るには高層気象が重要であることがわかります。
近年、高層の観測が進んだこともあり、天気予報の精度が格段と高まりました。高層気象は、気象を勉強する者にとって欠かせない、そして気象予報士試験や海技試験においても、その重要性ゆえに、必ず取り上げられる分野になっています。
本書では、第1編を「高層気象」とし、問答形式で分かりやすく解説しているので、これで基礎固めをし、読み進めるうちに土台が身につきます。そして、第2編は「JMH図の知識」として、現在放送されているいろいろな種類の気象図を使って解説し、第1編で学んだことを踏まえて、実践形式での実力を高めて行くことをねらいとしています。
海技試験、気象予報士試験受験者はもとより、気象情報をよく利用する人にとって、高層気象を知るための格好の参考書となるでしょう。
なお、JMH図とは、各種の気象・海象図のことで、JMHスケジュール(気象庁船舶向け気象無線模写通報)によって送られてくるので気象庁のホームページから検索できます。


【はしがき】

本書はJMHスケジュール(気象無線模写通報)によって送られる気象・海象図を元にそれらの図の読解法を述べ,それらについて解説して理解の一助としている。放送図はインターネットで検索できる。
JMH図の特徴は高層気象に関する図が豊富であり,地上気象の解析に重要な役割をなすことから,気象予報士は言うに及ばず,海技試験でも最近は高層気象に関する出題が多くなってきた。そこで,本書では,高層気象の基礎知識を身につけるための基礎編として、問答形式の第1編「高層気象」とした。類似問題などで,重複している場合もあるが,繰り返し学習することによって実力の向上を目指している。
第2編はJMHスケジュールによる各種放送図の解説をした「JMH図の知識」としてまとめた。第1編で学んだことが,ここで生かされるだろうし,天気図の見方も面倒でなくなれば,多くの気象図を利用することができるので,船舶の安全運航はもとより,それぞれの分野で役立つはずである。
今まで改版ごとに,現状に満足することなく少しずつ手を加えてきた。今回の改訂版では,前回から6年が経過したので,もう一度全体を見直した。そして説明不足と思われる個所をいくつか加筆して理解しやすくしている。
またJMH図ではいくつか図の表現法が変ったものがあり,それらを差し換えてより内容の充実につとめている。
今後とも、変わらないご支援をお願いする次第です。
なお、執筆に際して、本書の出版に深い理解を寄せて頂いた成山堂書店の方々に対し、また参考にさせて頂いた多くの文献,書籍の執筆者に対しこの場を借りて謝意を示します。

【2訂版発行にあたって】

この度,第2編、第3章「雲写真と雲画像図」を「気象衛星画像」と改題した。従来に比べひまわり8号,9号での観測精度があがり現在8種類のカラー合成画像が得られる。これらの概要を解説しているがより詳しく知りたい向きはひまわりに関する専門書を開くことをすすめる次第である。

【目次】

第1編高層気象
 第1章大気の大循環
  1 対流圏と気象現象の関係
  2 上昇する空気塊の断熱冷却
  3 気温減率
  4 大気の安定度
  5 フェーン現象
  6 大気の大循環(1)
  7 大気の大循環(2)
  8 大気の大循環(3)
  9 熱帯海域の天気
  10 偏東風波動
  11 貿易風逆転
  12 寒冷高気圧と温暖高気圧(1)
  13 寒冷高気圧と温暖高気圧(2)
  14 上層の気圧の谷と峰
  15 偏西風波動
  16 長波と短波
  17 長波の谷と冬の気候
  18 長波(プラネタリ波)
  19 低気圧家族と偏西風波動
  20 プラネタリ波(惑星波)と気圧の谷
  21 切離高気圧・切離低気圧
  22 ブロッキング現象(1)
  23 ブロッキング現象(2)
  24 ブロッキング高気圧
  25 寒冷渦
  26 寒冷低気圧
  27 上層の寒気
  28 ジェット気流(1)
  29 ジェット気流(2)
  30 ジェット気流(3)

 第2章 高層天気図   1 高層天気図の重要性
  2 上層気象観測
  3 等圧面天気図
  4 等高線(1)
  5 等高線(2)
  6 高層天気図の記入型式
  7 等高線と等温線
  8 風と等高線
  9 高層天気図の実線と破線
  10 等圧面天気図(1)
  11 等圧面天気図(2)
  12 等圧面天気図(3)
  13 500hPa等圧面天気図(1)
  14 500hPa等圧面天気図(2)
  15 500hPa等圧面天気図(3)

 第3章 高層天気図と天気予報   1 気圧の谷と天気
  2 高層天気図と地上天気図(1)
  3 高層天気図と地上天気図(2)
  4 上層の気圧の谷・峰と地上の高・低気圧
  5 低気圧の発生・発達
  6 ジェット気流と前線
  7 ジェット気流と低気圧
  8 高層天気図と低気圧
  9 低気圧の移動・発達
  10 上層の気圧の谷と低気圧の発生・発達
  11 等高線と等温線の谷
  12 上層の気圧の谷と台風の進路
  13 高層天気図と台風の進路
  14 台風の移動
  15 船体着氷
  16 層厚天気図
  17 渦度分布図・鉛直流分布図
  18 渦管

第2編 JMH図の知識
 第1章 FAX図の知識
  [1-1] 世界の主なFAX放送センター
  [1-2] 模写通報の冒頭符について
   1-2-1 TT(内容・種類)について
   1-2-2 AA(地域)について
  [1-3] JMH放送図
   1-3-1 JMH放送図
   1-3-2 放送スケジュールと電波

 第2章 地上天気図   [2-1] 地上解析図(ASAS,第2・2図)
  [2-2] 台風予報図(WTAS12,第2・3図)
  [2-3] 海上悪天24時間予想天気図(FSAS24,第2・4図)
  [2-4] 地上気圧・降水量,48,72時間予想図(FSAS04,07,第2・5図)

 第3章 気象衛星画像   [3-1] 静止気象衛星雲写真(GMSPicture,第3・1図)
  [3-2] 可視画像と赤外画像(第3・3図)
  [3-3] カラー画像

 第4章 高層天気図   [4-1] 高層天気図
  [4-2] 850hPa 等圧面解析図(AUAS85,第4・1図),700hPa 等圧面解析図(AUAS70)
  [4-3] 500hPa 等圧面解析図(AUAS50,第4・2図)
  [4-4] 300hPa 等圧面解析図(AUAS30,第4・3図)
  [4-5] 850hPa・200hPa 流線解析図(AUXT85,AUXT20,第4・4図(1),(2))
  [4-6] 500hPa 温度,700hPa(T-Td)の24時間予想図(FXFE572,第4・5図)
  [4-7] 850hPa 温度・風,700hPa 上昇流解析図(AXFE78,第4・6図)
  [4-8] 500hPa 高度・渦度解析図(AUFE50,第4・8図)
  [4-9] 500hPa 高度・渦度,地上気圧・降水・風24時間予想図(FUFE502,FSFE02,第4・9図)
  [4-10] 旬平均500hPa 高度・偏差予想図(FEAS,第4・10図)

 第5章 北半球天気図   [5-1] 北半球天気図
  [5-2] 北半球月平均地上気圧図(CSXN,第5・1図)
  [5-3] 北半球月平均地上気圧偏差図(CSXN,第5・2図)
  [5-4] 北半球500hPa 高度・気温解析図(AUXN50,第5・3図)
  [5-5] 北半球5日平均500hPa 高度図(CUXN,第5・4図),同偏差図(CUXN,第5・5図)
  [5-6] 北半球月平均500hPa 高度図(CUXN,第5・6図),同偏差図(CUXN,第5・7図)
  [5-7] 北半球500hPa超長波・長波合成,空間平均偏差図(AXXN,第5・8図)
  [5-8] 北半球半旬平均100hPa 高度図(CUXN5,第5・9図)

 第6章 海況図   [6-1] 外洋波浪解析図(AWPN,第6・1図)
  [6-2] 外洋波浪24時間予想図(FWPN,第6・3図)
  [6-3] 外洋波浪12・24・48・72時間予想図(FWPN07,第6・5図)
  [6-4] 沿岸波浪図(AWJP,第6・6図)
  [6-5] 北西太平洋海流・表層水温図(SOPQ,第6・7図)
  [6-6] 海氷図(STPN,第6・8図),海氷48・168時間予想図(FIOH04,16,第6・9図)
  [6-7] 北西太平洋海面水温図(日平均)(COPQ,第6・10図),同偏差図(COPQ,第6・11図)
  [6-8] 太平洋海面水温図(旬平均),同偏差図(COPA,第6・12図(1),(2))

 第7章 JJC 放送図と解説   [7-1] 天気図(第7・1図)
  [7-2] 北太平洋波浪概況図(第7・2図)
  [7-3] 海流推測図(第7・3図)
  [7-4] 北太平洋海況図(第7・4図(1),(2))
  [7-5] 第2編に関連した問題



この書籍の解説

私たちの暮らす地上には山や谷、高層建築物で、かなり凸凹しています。この凸凹のために雲が発生したり、空気の移動が滞ったりして局地的に様々な気象の変化が起きますが、しかし気象現象のすべてがそういったいわば「スケールの小さい」原因によって生じているわけではありません。大気圏の上の方で起こっていることも、地上の気象を大きく左右しているのです。
気象現象を全地球的にとらえるには、地上から圏界面までの対流圏における大気の動きを立体的に把握する必要があります。地上の気象現象を知るには高層気象も重要なのです。近年では、構想を観測する技術が向上し、高層で起こっていることの把握がより正確にできるようになり、気象における高層気象の重要性の認識も高まりました。従って、気象予報士や海技士試験での出題も増えています。
今回ご紹介する『よくわかる高層気象の知識』は、こうした試験に役立つ問答式の前半で高層気象に関する基礎知識を固めます。続く後半では、高層気象を多く扱う気象図・海象図の読み方をマスターするため、様々な気象図を紹介し、その特徴と読み方を解説します。これにより、現場で使えるより実践的な知識を高めていきます。
高層気象を理解し、試験突破を目指す人、様々な場面での気象予測の実力を磨きたい人、気象図の読み方をマスターしたい人、隙間時間に手軽に学べる本書で、少しずつ「高いところに手が届く」知識を身に着けていきましょう。

この記事の著者

スタッフM:読書が好きなことはもちろん、読んだ本を要約することも趣味の一つ。趣味が講じて、コラムの担当に。

『よくわかる高層気象の知識』はこんな方におすすめ!

  • 海技士、気象予報士を目指している方
  • JMH図の読み方を学びたい方
  • 学生を指導している方

『よくわかる高層気象の知識』から抜粋して3つご紹介

『よくわかる高層気象の知識』からいくつか抜粋してご紹介します。高層気象は地上気象の解析に重要な役割を果たします。近年では、海技士試験や気象予報士試験でも取り上げられるようになりました。この高層気象を前半では問答形式で基礎から学びます。その後後半では、高層気象の理解に役立つJMH図の読み方を解説します。気象図の読み方をマスターすれば、実際の現場でも役立つでしょう。

偏西風波動

上層で極を中心にして、西から東へ向かって吹く帯状流が偏西風です。偏西風は直線的にではなく、南北にうねりながら移動して地球を一周しています。このうねりの状態を、偏西風波動といいます。
中緯度では高温な低緯度と寒冷な高緯度地方にはさまれて、南北の気温傾度が大きく、温度風の関係により偏西風が吹きます。南北の温度差の大きい冬によく発達し、地表から次第に風速を増して圏界面付近で最大風速となります。

偏西風帯では天気の変化が激しく、天気が西から東に変わります。これは高気圧や低気圧のじょう乱が偏西風に流されるからです。
偏西風波動に注目すれば、気圧の谷の東側では気圧が低く、地上の低気圧が発達しやすいため、悪天候になりやすくなっています。気圧の谷の軸は地上から上空へ行くにつれて後方に傾いていて、地上の低気圧は上層の気圧の谷よりも少し東にずれています。

天気が周期的に変わるのは、上層の谷の動きの周期に支配されるからからです。この動きを見ることによって、天気予報が可能となります。

《長波と短波》
長波とはプラネタリ波ともいい、波長が長く6,000km以上、経度にして90°〜120°で、3~4個の波数で地球を取り巻いています。振幅が大きく、1日に東へ1°〜2°経度移動しますが、まれに西に進むこともあります。

短波は波長が短く1,000〜300kmで、7〜12の波数で地球を取り巻いています。振幅は小さく、1日に東へ10°経度くらいで移動します。
高層天気図の500hPa面では長波と短波の重なった状態で波動が現れるため、長波と短波を分析する必要があります。短波の谷が長波の尾根に重なると、短波の谷は打ち消されて不明瞭になりますが,その後の動きを注視すると、通りぬけた短波の谷が再び見えてきます。逆に短波の谷と長波の谷が重なると,谷の振幅はいっそう大きくなります。

短い期間の予報であれば、短波の動きと気圧の谷の振幅に注目します。地上の低気圧は短波の動きにつれてほぼ1日に10°くらいの割合で移動しますし、地上の低気圧が発達すると、短波の振幅も大きくなります。
一方長波は停滞性の波で、長期にわたって波の動きを予測できるため、長期の予報に適しています。長波の存在する位置は地理的に大体決まっており、多くの場合、長波の尾根はヨーロッパ西岸やアメリカ大陸西岸等、大陸の西側に存在します。長波の谷はアジア大陸の東側,アメリカ大陸の東側に存在します。つまり日本付近は、長波の谷が存在しやすいところにあたるのです。

日本は、偏西風波動のうち長波の谷の影響を受けやすくなっています。この影響がもっとも強く表れるのが、冬の気候です。寒い冬となるとき、長波の波数は3つであり、長波の谷が日本の東海上に存在します。そうなると寒気が南下しやすくなるため、寒い冬になるのです。冬の天気図で見慣れているように、太平洋上で低気圧が発達します。この波数が4になると、長波の谷が西に寄って寒気はあまり南下しないため、暖冬になります。

台風と高層気象

《上層の気圧の谷と台風の進路》
上層の気圧の谷(トラフ)は、晩夏~初秋に日本に来襲する台風に影響を与えます。真夏には小笠原高気圧が強く張り出していて、上層の偏西風波動の気圧の谷も弱くなっています。しかし秋になると小笠原高気圧も弱まって上層の偏西風も強くなり、トラフも深くなって日本の西岸まで南下してきます。北上してきた台風は上層の谷に吸いこまれて向きを変え、偏西風の流れにのって北東進するようになります。
台風は背の高い渦巻きで、台風の進路を左右するのは上空の一般流です。低緯度にいるときは背の高い小笠原高気圧のもたらす偏東風に流されますが、中緯度にくると偏西風の影響を受けるようになります。このとき台風を偏東風の領域から偏西風の領域に乗せる役をするのが、上層のトラフです。

《台風の進路予測と高層天気図の利用》
台風の進路を予測するために、高層天気図を使うことができます。台風を移動させる一般流を探すために、500hPa等圧面天気図を利用できます。しかし非常に背の高い台風では、300hPa等圧面天気図の方が有効なときもあります。
台風は亜熱帯高気圧の周辺を進む傾向があること、台風の転向には、上層の気圧の谷が関わっていることに注目しましょう。台風は500hPa等圧面天気図上で、5,820〜5,860mの等高線に沿って進む傾向があり、東西に伸びる気圧の峰の南3〜5°緯度で転向しやすくなっています。

《台風の移動のまとめ》
台風の運動には持続性があるので、通常12時間ぐらいの進路を予想する場合は外挿法(既知のデータの傾向から近似直線を描いて予測を行う)によればよいでしょう。台風は一般流に流され、また小笠原高気圧の周りを特定の等圧線に沿って進む傾向があります。500hPa天気図の東西に伸びるリッヂラインの南方3〜5°(緯度幅)付近で転向しやすく、転向後偏西風帯に入ると加速します。台風の前面に寒域が現れると、停滞するか転向するかのどちらかになります。台風は、気圧の下降区域に向かって進む傾向があります。

台風の進路を見守っているとき、「なぜこんな方向転換を?」と驚くような進路変更をすることがあります。そんなとき台風は、偏東風の中を西に移動してきたところを、上空の気圧の谷に引っ張られて偏西風の中に入っています。奇妙なコースを気まぐれに動いているように見える台風の振る舞いにも、高層気象の影響があったのですね。

高層天気図

高層天気図は,上空を流れる大気の構造を表す天気図です。上層と下層の大気の関連がわかってくると、重要性が増してくるはずです。
集中豪雨などの激しい気象現象、低気圧や台風の発生や発達などは、上層の大気の流れの変化と深い関係があります。気圧の谷や峰、ジェット気流の追跡には、上層の気流の状態を知る必要があります
上層の大気の状態は、地形や熱の影響を受けやすい下層に比べると単純で変化が少ないので、上層の大気の動きを予想して、地表の天気予報に役立てることができます。高層天気図は、長期予報の解析には必要不可欠です。

高層天気図はある特定の気圧が各地点で占める高さで表すため、等圧線のかわりに高度の等しいところを結んだ等高度線が引かれています。見方は等圧線とほぼ同じで、高度の低い部分が低気圧や気圧の谷に相当し、高度の高い部分が高気圧や気圧の峰に相当します。地上天気図を等高度面天気図というのに対して、高層天気図は等圧面天気図といわれています。
JMHで放送されている等圧面天気図は、850hPa面(高さ約1,500mの気象状態)、700hPa面(高さ約3,000mの気象状態)、500hPa面(高さ約5,500mの気象状態)、300hPa面(高さ約9,000mの気象状態)、100hPa面(高さ約16,000mの気象状態)の解析図があります。各等圧面解析図に共通した天気図の記入型式は次のとおりです。

(1)記入の要素
観測値の記入型式は、風向、風速、気温、湿数が記入される。温度が負のときは−をつける

(2)等高線が実線、等温線は850hPa、700hPa、500hPaが破線、300hPaでは地点毎に表示される。その他寒域(C)、暖域(W)、高気圧(H)、低気圧(L)、弱い熱帯低気圧(T.D)、台風(T.S,S.T.S,T)が必要に応じて記入される
等高線は850hPa、700hPa、500hPaでは60m、300hPaでは120m毎に引かれる。等温線は6℃毎で,必要に応じて3℃毎に表示される。300hPaでは等風速線が破線で引かれている

《高層天気図を見る場合の基本事項》
① 高層風は摩擦の影響がなく地衡風に近いので、等高線は風向とほぼ平行になる
② 等高線間隔が狭くなるほど風が強く、同じ等高線間隔であれば低緯度ほど風が強い
③ 地上の低気圧の中心や気圧の谷は高層に行くほど寒気側に移る。逆に高気圧の中心や峰は暖気側に移る
④ 温暖高気圧は高さと共に顕著になり、寒冷高気圧は高さと共に消える
⑤ 等高線が北に張り出している方が気圧の峰、南に張り出している方が気圧の谷
⑥ 上層の気圧の谷の西側は北西流の場であり,寒気は気圧の谷の西方から谷に向かって南下してくる。気圧の谷の西方の等高線と等温線の交わりが大きいほど、気圧の谷が深まるほど寒気は南下しやすい。寒気が南下すると谷の東方で地上の前線が活発になり、低気圧が発生・発達する
⑦ 気圧の谷の東側は南西流の場で、暖気が流入する。暖気が流入することも低気圧の発生・発達には欠かせない。ここでは低気圧が北上する傾向にあり、速度も早くなることが多い

高層天気図には色々な種類がありますが、それぞれ適した使用方法があります。例えば850hPaの等圧面解析図は下層雲の分布に対応しており、寒気や暖気、水蒸気の流入状態を知るのに役立ちます。700hPaの等圧面解析図は中層雲の高さなので、降水現象の予測や前線や低気圧の規模の推定に役立ちます。

『よくわかる高層気象の知識』内容紹介まとめ

海技士や気象予報士試験での出題も増えてきた高層気象。地上の気象現象の理解に不可欠な高層気象を、一問一答形式の前半でコンパクトに解説します。後半では、JMH図の種類や読み方を具体的に解説し、現場で活かせる知識を身に着けます。

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大気の巡りとその影響 おすすめ3選

『高層気象の科学』
『よくわかる高層気象の知識』で得た知識を支える一冊です。対流圏と成層圏を対象とした高層大気の観測について、初学者向けにやさしく解説しました。高層大気の物理的・化学的な基礎、高層大気の観測に重点を置いて、三部構成で解説しています。

『新 百万人の天気教室』
気象を専門的に学ぼうとする人のための、最初の一冊。できるだけ難しい数式を使わずに、天気の基礎理論や気象現象の理解を導きます。第一部「天気の要素」の最初で、大気圏の構造に触れ、第二部「天気の構成」の最初では大気の大循環について解説しています。

『越境大気汚染の物理と化学』
上層の気流によって国を越えて運ばれる大気汚染物質。大気のどのような構造と運動によって微粒子が運ばれるのか?地球上での広がり方はどのようになっている?PM2.5や黄砂にも、大気の動きが深く関係していました。その仕組みを、物理と化学の専門家たちが解説します。


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カテゴリー:気象・海洋 タグ:気象 
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