尾崎裕哉『二世』

  • 2016.10.03 

尾崎豊が特別好きだったわけではない。その存在を知ったのは、中学2年のときだったからな。同級生が熱烈なファンで、尾崎豊の死を悲しんでいた。「どんな曲なんだろう」とCDを手に取り、熱狂する人たちの気持ちがなんとなくわかった。

ストレートな歌詞内容。歌い方、メッセージ。彼の内なる思いにビビッときたことを覚えている。カラオケでも歌ったな。

この前、尾崎豊の息子、尾崎裕哉がテレビに出ていた。お父さんと同じミュージシャンの道を歩み、お父さんの歌「I LOVE YOU」を歌っていた。どんな感じで歌うのか見ていたら、声がお父さんそのもので鳥肌がたった。

ここまで似ているのか!? それほどの衝撃であった。その後、ラジオにも出ていて、自身の本の紹介をしていた。それが『二世』。自身の生い立ちをそのままに書いている。お父さんが亡くなり、母と共に渡米。高校生のときに帰国。大学へ進み、音楽の道へと進み始めた26歳。

カリスマミュージシャンのお父さんを持つ息子は、どんな気持ちで今まで生きてきたのだろうか。本当の部分までは触れていないけど、お父さんがいない寂しさ、日本を離れての暮らし。大変だったことだろう。

プレッシャーもあり、やりにくことだらけなんだろう。それでも、自分が選んが音楽という道をすすみ、お父さんの後を継ぐ。そんな強い意志を感じた。

文章も表現豊かで、読んでいてなんだか温かい気持ちにもなった。

今、注目を集めている尾崎裕哉のことを知るには、よい1冊だった。美談ではなく、現実の彼の姿がこの本に詰まっている。