『陸王』 池井戸潤 著

  • 2016.08.03 

ランナーには読んでもらいたい1冊。そして、子を持つ後継者社長にも読んでもらいたい。

約600ページの長編小説だけども、あっという間に一気に読むことのできる内容でした。創業から100年経つ老舗の足袋製造会社。ジリジリと売上が落ちていく中、新規事業のランニングシューズづくりをはじめる。しかし、技術もない、ツテもない、お金もない、という中、うまい具合に人が現れ、技術を導入し、お金も入ってくるという、先が分かる内容ではあるけど、のめり込んで読んでしまった。

それは自分もランナーであると共に、子を持つ親というのもあるのだろう。主人公の息子が就活に苦戦し、将来に不安を持つということも、なんとなく理解できるからかもしれない。それを心配する親心。最後は息子を思う親心に涙した。

現実にはうまくいかないことも多いけど、夢を持ち、それに向かって諦めず、しっかりとした志を持てば、それは絶対に叶うんだなとも思わせてくる1冊であった。文中に「覚悟」という言葉が何度か出てくる。現実の世界でも、覚悟をもってやっているかどうか。その覚悟が本気かどうかで、その後の結果が随分と違ってくるものである。

本気で覚悟をもってやれば、必ず支援者は出てくる。覚悟は裏切らない。中途半端な覚悟だから、うまくいかないのであろう。

どの業界も先行きは明るいところばかりではないはず。しかし、その中にも夢をもって覚悟をもって取り組んでいけば、必ず道は開ける。厳しいからといって、「そうですよね〜、厳しい業界ですよね。うちも厳しいんです」なんて言っててもはじまらない。

先輩経営者のブログで、

先行き悪い業界でも、がんばって、楽しんでやればいいことはある

というようなことを書いていました。本当にその通りだと思います。周りの人たちが「この業界、悪いですよね」と言っても、それに同調せずに、「うちはがんばってやっていますよ!」と言えばいいだけなんです。例え今の状況が悪くとも、同じようなことは言わずに「今のがんばりが将来につながっていくんですよ!」とでも言えば、その言ったことが現実になる可能性が高いんです。「悪いですね。もう、大変ですよ」なんて言っているようでは、この先も良くならないでしょう。

ちょっと話はそれましたが、この本はそんな不安を持っている経営者に元気を与えてくれる本だと思います。低迷している業界であっても、必ず突破する道はある。それが今の事業の延長線上かもしれないし、まったく違うことかもしれない。その会社の伝統を守り続けたいという思いかもしれない。

主人公は「100年続くのれんを守りたい」と言っています。その思いの先に、新たな事業ができあがるのでしょう。そこには、「覚悟」が必要なんですね。この本では、覚悟と息子への熱い思いに感動しました!