水族育成学入門


978-4-425-83121-0
著者名:間野伸宏・鈴木伸洋 共編著
ISBN:978-4-425-83121-0
発行年月日:2020/5/28
サイズ/頁数:A5判 318頁
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水生生物の育成(養殖・増殖・希少種保全)の魅力や課題全般を学ぶことができる入門書。魚貝類の繁殖や発生・清澄を学べる基礎編を設けた他、水族生態・海洋環境・生物保全・食品・経済分野のコラムも充実。水族を学ぼうとする初学者から指導者必携の教本。

【はじめに】
2000 年代に入り,多くの大学・学部・学科の名称から水産の名が消え,海洋や水圏という言葉に置き換わった。何を学ぶ場か分り難い組織名になった,というお叱りを受けることもあるが,海洋という名がついて以降,少なくとも編者が勤める学科には,より多様な分野に興味を有する学生が入学してくるようになったと感じている。本書の主題である魚介類を育てる学問領域をみても,水産との名が付いていた時代の学生は,養殖産業や水産資源の生産を学ぶことを目的として,水産養殖学や増養殖学といった科目を受講した。しかし,現在は良くも悪くも水産という意識が希薄となり,水族館や希少魚の保全といったいわゆる水産以外の水族関連分野に関心を示す学生も多くみられる。
このような状況を背景に,本書は対象生物を水族(水生生物全般)とした上で,養殖や増殖分野の魅力や可能性も伝わるよう,水族の育成や課題などを学ぶ入門書として作成した。主な読者層は水産・海洋系の大学等に属する1~2年生やその指導者とし,執筆を担当していただいた先生方には,平易な文章や分かりやすい図表に加え,専門用語に脚註を付ける,コラムを設けるなど,初めて本分野を学ぶ方の理解が進みやすいように様々な工夫をしていただいた。指導者にも役立つ書籍となることを意識し,養殖や増殖事業を支える法律に関する内容も加えた。
なお,水族の育成には,水産学,生物学,生態学,海洋環境学,保全学,食品学,経済学など,いくつもの学問分野が関与している。また,育成の対象となる生物も多種多様である(口絵−1)。一方で,初めて本書を開く方の多くは,上記の一部の分野や生物種にしか最初は興味がないかもしれない。高校等で生物学を学んだことがないような方もおられるかもしれない。よって本書は,水族の繁殖や成長などの基礎(1~4章),養殖(5~11章),増殖(12~16章),希少種保全(17~18章)の4部構成とし,どの章からでも読み進めることができるものを目指した(口絵−2)。
本書が,入門書として読者の知的好奇心を刺激し,新たな分野を知るきっかけとなり,さらに専門的な書籍を開かせるものになれば,望外な喜びである。
本書の刊行にあたり,多忙の中,各章・項の作成に尽力してくださった執筆者の皆様,供に本書の作成に取り組んでいただいた編者の鈴木伸洋先生,㈱成山堂書店の小川典子社長と本書の企画段階からお世話になった担当編集の宮澤俊哉氏に心からお礼申し上げる。

令和2年3月末日
編者を代表して
日本大学 生物資源科学部 海洋生物資源科学科
准教授 間野伸宏

【目次】
1章 水族の産卵様式・生殖様式と性決定のしくみ

1.1 産卵様式
(1)魚類の産卵様式
(2)甲殻類・軟体動物の産卵様式
1.2 生殖様式―無性生殖と有性生殖―
(1)無性生殖
(2)有性生殖
 コラム1 異常な雌雄同体(奇形的雌雄同体)
(3)単性生殖
1.3 雌雄の性決定機構
(1)水族の性徴の不確実性
(2)水族における性の人為的統御
より詳しく学ぶために役立つ書籍・文献

2章 水族の生殖腺形成とホルモン
2.1 生殖腺の形成と性分化
2.2 生殖腺やその付属器官でつくられるホルモン
(1)内分泌とホルモン
(2)腺性内分泌ホルモン
2.3 卵巣
(1) 卵巣の形成
(2) 魚類の卵巣構造
(3) 卵形成過程
(4) 卵黄形成と排卵の内分泌調整
 コラム2 人工的に完熟卵を採卵する方法
2.4 精巣
(1) 精巣の形成と構造
(2) 精子形成過程
(3) 精子形成と排精の内分泌調整
2.5 生殖腺の成熟と環境
(1) 生殖腺の成熟状態の視標
(2) 成熟・産卵と環境
 コラム3 繁殖行動とフェロモン
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3章 水族の発生
3.1 初期発生
(1)受精
(2)卵割期
(3)胞胚期
(4)原腸胚期
(5)体節形成期
(6)咽頭胚期
 コラム4 初期発生の共通性を利用する
3.2 初期発生と環境の関係
(1 水温
(2)溶存酸素量
(3)塩分
(3)pH
(4)機械的刺激
(6)太陽光
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4章 水族の成長
4.1 成長と発育段階
(1)生活史と成長
(2)成長とは
 コラム5 成長曲線
(3)発育段階
(4)成長のエネルギー論
4.2 各器官の発達
 コラム6 浸透圧調節
4.3 変態
 コラム7 初期減耗
4.4 成長と環境
(1)水温
(2)塩分
(3)水質
(4)光
(5)生物要因
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5章 養殖
5.1 養殖の歴史
5.2 養殖の特性
 コラム8 養殖ならではの工夫「柑橘系養殖魚」
5.3 養殖対象種
5.4 養殖生産量
(1)世界の養殖生産量
(2)日本の養殖生産量
5.5 養殖形態
5.6 養殖に関連する法律
5.7 養殖産業の課題
(1)漁場環境 
(2)養魚飼料
(3)養殖種苗の確保
 コラム9 養殖種苗の持続的な利用のために
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6章 養殖形態と関連施設
6.1 養殖形態の分類
(1)給餌様式による分類
(2)水域による分類
(3)用水による分類
(4)養殖生産方式による分類と養殖施設
 コラム10 養殖網地の防汚塗料
6.2 防疫施設
(1)防疫の考え方
(2)養殖施設間の防疫対象と関連施設
 コラム11 鳥類による被害
(3)養殖施設内の防疫対象および施設・用具類
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7章 生物餌料
7.1 生物餌料とは
7.2 シオミズツボワムシ
(1)種苗生産への導入のきっかけ
 コラム12 ワムシの生物餌料としての凄さ
(2)ワムシの種類と生物学的特性
(3)大量培養方法
7.3 アルテミア
(1)種苗生産への導入のきっかけ
(2)アルテミアの種類と生物学的特性
(3)耐久卵の孵化と栄養強化での注意点
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8章 配合飼料
8.1 水族の栄養学
(1)魚類栄養学と配合飼料開発の歴史
(2)水族の栄養要求
 コラム13 動物の必須アミノ酸
 コラム14 飼料の摂取調整能力
 コラム15 タウリンの役割
8.2 配合飼料
(1)配合飼料の種類
(2)配合飼料の原料
8.3 配合飼料の課題
(1)原料の確保
(2)魚粉の少ない飼料で生じる生理障害の改善
 コラム16 胆汁酸の排泄を促進する大豆タンパク質
(3)家魚化の促進
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9章 魚病
9.1 魚病学の特徴
9.2 魚病の発生原因(病因)
(1) 病因の種類
(2) 魚類病原体の特徴
(3) 魚病の伝搬様式
コラム17 魚病と公衆衛生
9.3 魚病対策
 コラム18 海外由来の病原体
9.4 魚病診断
(1) 魚病診断の考え方
(2) 魚病診断の手順
(3) 病原体の検査手法
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10章 水産育種
10.1 育種とは
(1)育種の歴史
(2)水産分野における育種
10.2 選抜・交配による育種
(1)選抜育種
コラム19 借り腹による世代促進
(2)交雑育種
10.3 バイオテクノロジーを用いた育種
(1)染色体操作
(2)遺伝子操作
 コラム20 遺伝子組換え魚の安全性
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11章 養殖事例
11.1 ニジマス
(1)サーモンとトラウト
(2)国内における状況
 コラム21 外来種問題におけるニジマスの立場
(3 養殖生産過程
 コラム22 海外から侵入する病原体
(4)生産・消費の動向
(5)今後の課題
11.2 マダイ
(1)マダイの生物学
(2)養殖の歴史
(3)産地と生産実績
(4)養殖用種苗
 コラム23 天然種苗と人工(選抜育種)種苗
(5)養殖施設
(6)養殖生産過程と飼育密度
(7)餌飼料と給餌
(8)魚病
(9)出荷と販売
(10)今後と課題
11.3 カキ
(1)養殖の歴史
(2)カキの種類
(3)マガキの生態的特徴と構造
(4)マガキの養殖
(5)カキ養殖における問題点
 コラム24 カキ養殖漁場の基礎生産力
11.4 クルマエビ
(1)養殖の歴史と現状
(2)養殖形態と育成管理
(3)稚エビの育成管理
(4)放養管理
 コラム25 クルマエビの配合飼料
(5)集出荷
(6)人工種苗の量産体制とその展望
11.5 ノリ
(1)ノリの分類
(2)ノリの生活史
(3)養殖の歴史
 コラム26 ノリのタネはどこから?(ノリ養殖のブレークスルー)
(4)品種改良の歴史
(5)養殖方法
 コラム27 ノリの生長には細菌が必須
(6)養殖生産の状況
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12章 増殖の概念と法律
12.1 増殖とその目的
12.2 増殖の歴史と発展
コラム28 増殖関連用語の移り変わり
12.3 増殖と法律
(1)漁業法
 コラム29 漁業権にも更新がある
 コラム30 内水面の共同漁業権
(2)漁業法の改正
(3)水産資源保護法
(4)沿岸漁場整備開発法
(5)内水面漁業の振興に関する法律
 コラム31 ウナギ養殖(養鰻)業の許可制に至る経緯
より詳しく学ぶために役立つ書籍・文献・情報

13章 栽培漁業
13.1 栽培漁業の歴史と形態
(1)栽培漁業の歴史
(2)栽培漁業の定義と形態
(3)栽培漁業の形態
(4)栽培漁業の工程
13.2 親魚養成
(1)親魚養成の目的
(2)親魚養成の留意点
(3)採卵方法-受精卵の確保-
 コラム32 放流した魚は誰のモノか
13.3 種苗生産
(1)種苗生産とは
(2)我が国で種苗生産されている魚介類の種類
(3)種苗生産工程における死亡(減耗)原因
13.4 中間育成
 コラム33 奇形に対する認識
13.5 放流(資源添加)
(1)放流方法
(2)放流効果の評価 
(3)標識の種類
 コラム34 放流の適正とは
13.6 栽培漁業の事業効果の評価
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14章 環境改善
14.1 環境改善の歴史および概要
14.2 環境改善の手法
(1)人工魚礁
(2)藻場・海中林造成
(3)他の環境改善法
 コラム35 環境改善の有効性を評価するのは難しかった
14.3 人工魚礁の実施例
(1)事例1:広島県豊島
(2)事例2:山形県温海沖
 コラム36 人工魚礁の課題と今後
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15章  漁業管理
15.1 漁業管理の概念
(1)水産資源管理と漁業管理
(2)漁業管理のさまざまな目的
コラム37 漁業管理のさまざまな目的
15.2 漁業管理の手法
(1)どのようなルールを作るのか
(2)だれが管理するのか:共同管理
15.3 漁業管理の事例
(1)沿岸漁業
(2)沖合漁業
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16章 増殖事例
16.1 マダイ
(1)漁獲量の減少
(2)資源を回復するために
(3)人工大量種苗生産技術の開発
(4)資源生態と漁業の調査
(5)標識放流
(6)放流効果の推定
(7)遊漁によるマダイの捕獲量
(8)資源管理の必要性
 コラム38 放流する種苗経費はだれが負担するのか
(9)マダイ栽培漁業(増殖)事業の課題
16.2 ニシン地域型系群の増殖
(1)ニシンの系群タイプと増殖事業
(2)日本沿岸のニシン地域型系群と増殖事業
(3)宮古湾におけるニシン増殖試験
 コラム39 魚に標識を付ける技術
(4)ニシン増殖事業に期待される効果
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17章 希少生物の保全と育成
17.1 希少生物とは
17.2 希少生物の保全と保護
17.3 希少生物保全の課題
 コラム40 コウノトリの例
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18章 希少魚の保全および育成事例
18.1 ミヤコタナゴ
(1)ミヤコタナゴとは
(2)減少要因
(3)繁殖研究の試み
 コラム41 人工二枚貝による繁殖
18.2 ホトケドジョウ
(1)ホトケドジョウとは
(2)種内の遺伝的系統関係
 コラム42 分類の再評価
(3)生息地レベルでの遺伝的多様性
(4)保全にむけて
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