交通インフラの運営と地域政策


978-4-425-92951-1
著者名:西藤真一 著
ISBN:978-4-425-92951-1
発行年月日:2020/3/8
サイズ/頁数:A5判 240頁
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価格¥3,300円(税込)
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鉄道、空港、道路それぞれのインフラ事業における制度、政策、資本、運営について、その仕組みや構造、それぞれの課題や問題点なども示しながら、民間と行政という両方の視点から分析、これからの交通インフラ運営に対して公・民双方が取るべき戦略とその実現について解説する。イギリスやアメリカなど各国の交通インフラ政策について取り上げ、日本のインフラ政策との違いを示し、日本の交通インフラ政策の現状と今後のあり方についても述べている。交通インフラ全般について、その現状、課題などが概観できる一冊。

【はじめに】 交通インフラをめぐる社会経済環境は、高齢化の進展とともに大きく変容しつつある。老朽化した施設の維持管理、スプロール化した都市をコンパクト化するための交通網の再構築、さらには激甚化する災害に備えるための機能強化など、課題はますます多様化している。これらのいずれの問題も、単に新しいインフラの造成だけでは対応できず、一朝一夕に解決しがたい問題である。
他方、地方に目を転ずれば、人口の社会減や過疎化、高齢化は進展の度を増している。さらに、一部地域ではインバウンド旅行者の急増のほか、景気の持ち直しがみられるが、総じて厳しい状況にあることはいうまでもない。こうし
た環境下で、いまや交通インフラを維持すること自体が厳しくなっている。
本書は、筆者が大学院時代から進めてきた研究成果をとりまとめたものである。筆者が大学院に進学した当時は、高速道路改革や電気事業改革などが行われていたが、その当時から、インフラの維持管理をどう進めるかは課題であった。上下分離は代表的な改革手法であったが、いくら競争を導入しようとも顧客にサービスを提供するためには交通インフラを利用しないわけにはいかない。その場合、そのインフラは誰が責任を持って維持管理するのか。これが筆者の最初の研究の動機であった。
転じて、民間が交通インフラの維持管理を担えるように制度を改革するとしても、受け皿になる民間事業者は出現しうるのか、仮に出現するとすればどのような事業者が参入しうるのか、これもひとつのテーマであった。また、アメリカでは空港や道路のいわゆる民営化を実施していない事実に触れたとき、改めて政府所有とする意義はなにか。さらに、過疎地などを多く抱える地域では競争導入などいうに及ばず、サービスの維持自体が危機に陥っているが、これをどうすべきなのか。このように、関心は徐々に広がっていった。
本書は4部構成としたが、筆者の研究の関心が鉄道や空港を中心としていたことから、それぞれの部に分散して章が配置されることになった面はある。確かに、事業分野ごとにまとめるという方法もあったかもしれない。ただ、規制改革の延長上にある交通インフラの経営改革に関する研究と、地域政策をめぐる研究は、学際的な分野として個別に論じられることが多かった。そのため、
本書ではその接点を政策論から探り、あるべき制度設計を検討しようとしたがゆえに、あえて筆者の関心・切り口として4 つの部を設け、それぞれの観点から各分野を検討するアプローチをとった。
もちろん、本書で取り組もうとしたテーマは現代の大きな政策課題でもあり、本書だけですべてを網羅できたわけではない。研究課題も依然多く残されている。しかし、この時点で研究成果をとりまとめ、自分の研究成果を見つめ直すという目的もあった。
こうした筆者のわがままを許し、本書の刊行を快くお引き受けいただいた成山堂書店の小川典子社長には、とりわけ厚くお礼を申し上げたい。

2020年2月
西藤真一

【目次】
第1部 民間運営の期待と課題
第1章 民間活用の政策潮流と制度設計の課題
 1-1 民間活用の政策潮流と問題意識
 1-2 民間参画の多様性
 1-3 サービスの安定供給に向けた課題
 1-4 制度設計上の示唆

第2章 イギリスの鉄道改革の失敗と再編  2-1 上下分離による構造改革と政策課題
 2-2 上下分離の実施
 2-3 改革の実施による成果と課題
 2-4 鉄道再改革の模索
 2-5 政府による関与の必要性

第3章 わが国における空港改革の進展  3-1 空港運営の課題
 3-2 これまでのわが国における空港整備
 3-3 わが国における空港改革の背景
 3-4 空港運営の実態
 3-5 民間運営への期待と地方空港の現実

第2部 多様化するインフラ事業の担い手
第4章 空港の民間運営と出資者の姿勢
 4-1 空港民営化の推進と新たな運営の担い手
 4-2 イギリスの空港所有者の多様化
 4-3 空港経営に対する姿勢
 4-4 民間投資家の獲得に向けた空港運営

第5章 イギリスの鉄道改革と出資者の多様化  5-1 鉄道民営化と事業環境の変化
 5-2 フランチャイズをめぐる政策変更
 5-3 鉄道事業をめぐる混乱と政府介入
 5-4 鉄道運営会社への出資者の多様化
 5-5 鉄道路線維持と民間活用の課題

第3部 政府関与と民間資金の活用
第6章 公共所有のもとで進めるアメリカの道路インフラ整備
 6-1 わが国のインフラ整備との接点
 6-2 アメリカのインフラ整備と維持管理
 6-3 インフラ整備における地方債の活用
 6-4 地方債のイールドとデフォルト
 6-5 債券発行からみる公共所有の意義

第7章 アメリカのレベニュー債に対する市場の評価  7-1 地方債市場におけるレベニュー債
 7-2 地方債の発行とインフラ事業
 7-3 地方債に対する市場の評価
 7-4 民間によるインフラ経営の可能性

第8章 イギリスのPPP事業の政策変更と市場の評価  8-1 インフラ事業に対する政府関与
 8-2 民間による鉄道インフラ事業の破綻
 8-3 ネットワークレールへの政府関与と格付け評価
 8-4 ロンドン地下鉄事業の破綻と格付け評価
 8-5 政府による政策関与の効果と限界4 部サービス維持と地域政策

第9章 イギリスの小規模地方空港の運営  9-1 小規模な空港をめぐる視点
 9-2 小規模な空港の運営手法-3 民間空港の閉鎖と地域政策-4 民間による空港運営と地域との連携
 9-5 事業多様化と地域のコミットメント

第10章 わが国の地方空港の運営と地域  10-1 利用者が低迷する地方空港
 10-2 地方空港をとりまく課題
 10-3 地方における空港経営改革0-4 民間活用を選択できない地方の取組
 10-5 地域インフラとしての活用

第11章 イギリスの地域交通にみる自治体の役割  11-1 わが国とイギリスの社会的背景
 11-2 イングランドにおけるバスサービス
 11-3 国と地方のかかわりと分権化
 11-4 地方分権化とパートナーシップ
 11-5 権限と財源確保の重要性

終 章
カテゴリー:物流 
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