海洋高校生たちのまちおこしーコンブとサカナで地方創生ー


978-4-425-88701-9
著者名:渡邊憲一 著
ISBN:978-4-425-88701-9
発行年月日:2017/6/8
サイズ/頁数:A5判 198頁
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価格¥1,980円(税込)
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全国の3割に相当する523市町村では、子供を出産する割合の高い20〜39歳の女性人口が、2040年までに5割以上減少するとされています。結果として、地方自治体の経営破綻が起きる恐れがあります。この人口減少や高齢化などの地方衰退の波は、日本海の自然豊かな糸魚川市にも確実に押し寄せてきています。
その糸魚川市の海洋高校が行う、地域や企業と連携した学習を通し「地域活性化に貢献できる学校」「地域活性化を担える人材育成」を目指した取組みを紹介。地方創生の切り札ともいえる水産高校の可能性を示すとともに、高校生たちが地域のなかで存在意義を高めている姿を描くことで、水産高校をはじめとする実業高校のあり方を考えるうえでの参考となります。

【まえがき】より 本校がある糸魚川市は、フォッサマグナの西縁にあたる糸魚川―静岡構造線上にあり、稀少鉱物であるヒスイを産出することでよく知られています。平成21年には、その特異な地質構造と保全・利用活動などが認められ、世界ジオパークネットワークによって日本最初の世界ジオパークに認定された地域であり、その豊かな自然が多くの人々に親しまれています。その一方、市内には推定埋蔵量50億トンといわれる全山石灰石の黒くろひめやま姫山があるおかげで、セメント製造やカーバイド、アセチレン化学などの鉱工業が盛んなところでもあります。
また、この地方の海域は沖合わずか20キロメートルの地点で、水深1000メートルに達することから、『魚類相が豊かで、漁場も近い』という恵まれた漁業環境にあります。そのため、ホッコクアカエビやベニズワイガニをはじめとして、春はマダイ、ウスメバル、夏はアカムツ、タチウオ、冬はブリにアンコウと、1年を通して様々な日本海の味を堪能することができます。このような豊富な海の幸に支えられ、市内にある能の生う漁港は県内でも屈指の水揚げを誇る港になっています。
このように豊かな自然と食に恵まれた糸魚川市ですが、昭和55年に6万1000人(市町村合併地域)あった人口も、平20年には4万7000人にまで減少してしまいました。年齢階級別にみると、20代までの若年層の割合が低い一方で、60代の割合が高くなっており、出生率の低下や若年層の都会への流出などによって、今後も人口減少が続くと予想されています。このことは、市の将来にかかわる重要な問題であるとともに、一朝一夕で解決することのできない何とも悩ましい問題です。同じ悩みを抱えている地方自治体は他にも数多くあるに違いありません。
そのような状況が懸念される最さな中か、絶妙とも言うべきタイミングで『消滅する市町村523〜壊死する地方都市〜』という衝撃的なレポートが、中央公論(平成26年6月号)に掲載されました。523市町村といえば、全国1800市区町村の3割に相当する数です。これらの自治体では、子供を出産する割合の高い20歳から39歳の女性人口が、2040年までに5割以上減少するとされ、結果として、地域が崩壊したり、自治体の経営が破綻したりする懸念があるらしいのです。これには、多くの人々が衝撃を受けたのではないでしょうか。現在、日本が直面している少子高齢化による地方衰退の波は、日本海の自然豊かな町にも確実に押し寄せてきているのです。
この問題の詳細に関しては、中央公論に数回にわたって掲載された論文が加筆・再構成され、「地方消滅」として中公新書から出版されています。もちろんそのなかには、地方都市の破綻を回避し、活性化を図るための様々な施策が盛り込まれています。その施策のひとつに、現在、担い手不足や経営上の問題から、厳しい状況にある農林水産業の振興があります。すなわち、これら1次産業の6次産業化を図って農林水産物の付加価値を高め、地域固有のブランド商品を創出すると同時に、海外への売り込みにも積極的に取り組むことによって、地方活性化の足掛かりにしようというのです。
実際、このレポートに先立つこと1年前、農林水産省は平成25年農林水産物・食品の国別・品目別輸出戦略のなかで、平成32年までに農林水産物の輸出額を1兆円規模にまで拡大する戦略を描いていました。
これを裏付けるかのように、平成27年には、平成26年の6117億円を更新して7452億円(水産物は2757億円)に達し、過去最高を更新するとともに、なんと目標年度を待たずして早々に1兆円規模を達成する勢いなのです。
もちろん国だけではなく新潟県と糸魚川市が作成した地域振興プランにも、多様な担い手の育成と地域特産物の開発および企業と連携した販路開拓による農林水産業の振興が謳われています。
まさに、地方の人口減少に歯止めをかけ破綻を回避して創生を成し遂げるために、農林水産業の振興が重要な鍵のひとつとして、国と地方、両方の施策に上げられているのです。ひとえに、農林水産業が大きな可能性を秘めているからこその提言であるといえます。言い方を変えれば、農林水産業の新しい可能性を引き出せなければ、また、魅力ある産業として進化を遂げることができなければ、地方の創生はできないと言っても過言ではないかもしれません。
地方創生の切り札として農林水産業に大きな期待が寄せられている今、私たち水産・海洋高校にも水産業の担い手を育成するだけでなく、水産教育を通じて地方創生に貢献するという新たな役割が加わったのではないでしょうか。
これまで、本校では地域と連携した学習を通して、「地域活性化に貢献できる学校」「地域活性化を担える人材の育成」を目指してきました。公立学校としての取組には、自ずと様々な制約や限界もありますが、本校のささやかな取組の一部が、これからの地方の問題や水産をはじめとする専門高校のあり方を考えていくうえで、参考になれば幸いです。
本書を刊行するにあたり、関係者には実名で表記することを了承していただくとともに、写真を提供いただきました。なお、役職名は当時のものです。

渡邊憲一

【目次】
第1章 マコンブ ― 産学連携「まこちゃんうどん」の誕生 ―
 収穫の喜び
 日本海の荒波
 静かな海域を求めて
 産学連携 「まこちゃんうどん」の誕生
 マコンブ出前授業と海洋リテラシー
 マコンブの故郷を訪ねて
 佐渡でマコンブ完全養殖

第2章 ヒラメ ― 産学連携「レストランとコラボレーション」―  ヒラメと栽培漁業
 シオミズツボワムシを増やす
 変態開始
 放流でお別れ
 標識放流
 新製品の開発とハサップ認証
 産学連携「レストランとコラボレーション」

第3章 チョウザメ ― 産学連携「チョウザメ養殖」に挑戦 ―  産学連携「チョウザメ養殖」に挑戦
 チョウザメ稚魚の到着
 第1回目の測定
 ミズカビ病発生
 ジオパーク発表会
 養殖池の新設
 屋外水槽へ移動
 新たな雇用
 生徒の思い

第4章 シロサケ ― 産学官連携「魚醤工場」の設立 ―  サケの人工受精実習
 産学連携「すもう君サーモン」の誕生
 「最後の一滴」登場
 産学官連携「魚醤工場」の設立
 満天☆青空レストランに出演
 地方創生加速化交付金
 「最後の一滴」の意義
 夢の海外販売活動
カテゴリー:水産 
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