気象予報士のしごと-未来の空を予想して-


978-4-425-51501-1
著者名:気象予報士・防災士 片山美紀 著
ISBN:978-4-425-51501-1
発行年月日:2023/3/28
サイズ/頁数:四六判 224頁
在庫状況:在庫有り
価格¥1,980円(税込)
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NHK首都圏ネットワーク気象キャスター片山美紀さん、初の著書。
前半は、気象予報士を目指す人へのアドバイスや自身の受験体験、気象キャスターの仕事についてのエッセイ。後半は、天気図の見方から四季の天気の特徴、最近の異常気象などの気象現象をプロの立場から解説する。




【目次】

第1章 気象予報士という仕事  空を見れば天気がわかる?「気象予報士」ってどんな資格?
 実はこんなところでも!様々な分野で活用される天気予報
 気象予報士試験ではどんなことが問われるの?
 合格率は5% でもその数字についてよく考えてみて!
 「文系だから気象予報士は無理」は間違いです
 天気予報に興味ゼロだった私 「気象予報士」の資格との出会い
 目の当たりにしたプロの気象キャスターの姿 いつか災害報道に携わりたいと決意
 気象予報士試験にリベンジ 二度目は本気の受験生に
 働きながら受験に挑戦する方へ 勉強を始めるハードルを下げるには
 東京へのスクール通い 恩師との出会い
 ほんとにあった奇跡みたいな話 最後まであきらめないで
 受験勉強は「計画錯誤」に注意 サステナブルな計画を
 試験勉強のモチベーションの保ち方 “最高”の未来と“最悪”の未来をイメージしてみる
 合格するためのコツは完璧を目指さないこと
 相棒は失敗した問題を集めたオリジナル問題集
 気象庁ホームページを活用して知識のアップデートを
 総仕上げにおすすめ 白紙まるっと書き出し方法
 合格してからの道のりは?
  コラム 春のおいしい天気予報 「春はパン作りにぴったりな季節?!」

第2章 気象キャスターという仕事  気象キャスターの仕事とは? 天気予報コーナーの舞台裏
 気象キャスターのオーディションって?
 どんな人が向いている? 気象キャスターに必要な力とは?
 私の気象キャスターとしての原点 毎日全力で楽しんだ静岡時代
 とっておきのお天気ネタを作るために
 イベントは中止に 記憶に残る台風解説
 生放送よりも緊張する!?
 講演会のお仕事
 コロナ禍で変わった天気予報の伝え方
 気象予報士の必須道具
 SNSを活用した天気予報の伝え方
 気象予報士になってからがスタート 常に勉強は必要
 天気予報も「何を言うか」より「誰が言うか」の時代に
 信頼される気象キャスターになるために あすの空を「見える化」した天気予報を
 気象予報士試験対策講座の講師になった理由
 これからの時代の気象キャスターとは 私が考える未来予想図
  コラム 夏のおいしい天気予報 「猛暑を乗り切る薬膳レシピ」

第3章 四季の天気、天気のしくみ  天気図の基本の見方をおさえよう
 空を見上げて「十種雲形」をマスターしよう

 ・春の天気
  変わりやすい春の空
  日本人の3人に1人が悩む花粉症
  春は気を付けたいことがいっぱい 「5つのK」にご用心
  時に嵐となる春 「春一番」「メイストーム」
  春こそ見たい! 絶景の富士山
  サクラの開花には冬の寒さが欠かせない!?

 ・夏の天気
  日本の5つ目の季節 「梅雨」末期には集中豪雨も
  梅雨入り・明けの発表はなぜあるの?
  梅雨には特に便利な「信頼度」
  夏は「南高北低」で暑くなる クジラの尾型は猛暑のサイン
  気象予報士の不養生? 油断大敵の熱中症
  冷夏を引き起こすのは冷たい高気圧?
  夏によくある!?
  天気予報へのクレーム 降水確率と雨の強さは関係なし
  「大気不安定」は要注意ワード 気象キャスターのことばにも耳を傾けて

 ・秋の天気
  前半と後半で大きく変わりやすい
  そもそも台風とは?
  正しく知って活用したい 台風の進路予想図
  台風はどうして急カーブするの?
  「熱帯」低気圧化と「温帯」低気圧化は違う?
  台風シーズンは要警戒 スーパーセルに伴い発生する竜巻
  秋の防災週間 日頃の備えの見直しを
  冷え込みが強まると生まれる錦秋
  秋は表情豊かな空と出会えるチャンス
 
 ・冬の天気
  冬によく聞く「西高東低」の気圧配置って?
  日本海側と太平洋側 冬に天気の違いが生まれるワケは?
  日本海側の雪のパターンは2種類 山雪型・里雪型
  太平洋側の冬はカラカラ 火の用心の季節
  予想外れの原因になりやすい 風のぶつかり合いとは?
  予想がとっても難しい 関東に大雪をもたらす南岸低気圧
  おまけ 四季の心得「令和版・枕草子」
   コラム 秋のおいしい天気予報 「アレンジレシピで楽しみながら備蓄を」

第4章 最近の気象事例  異常気象の原因になることも 「エルニーニョ現象」「ラニーニャ現象」とは?
 平成三十年七月豪雨(西日本豪雨)
 川の氾濫から身を守るには直接様子を見に行くことは絶対に控えて!
 土砂災害から命を守るには 普段との違いに気付くために前兆現象を知る
 令和二年七月豪雨
 増える都市型水害 命を守るためには
 令和元年房総半島台風 台風の中心から右側で猛烈な風に
 令和元年東日本台風 いざという時は「キキクル」の活用を
 2018年台風21号 高潮により関西国際空港で滑走路が浸水
 異例の進路をとった「逆走台風」
 2018年・2022年「災害級の暑さ」が話題に 猛暑の記録は塗りかえられ続けるのか
 猛暑をもたらすフェーン現象とは?
 猛暑は世界全体で問題に 地球温暖化も原因
 JPCZに伴う大雪 大規模な交通障害が発生
 雪が降った後にも災害は起きる 雪崩や落雪、除雪作業中の事故にも注意
 誰もが陥る正常性バイアス
 変わりゆく防災気象情報
 地球温暖化が進む未来 気候難民も
 私たちの地球を守るために 「カーボンニュートラル」の実現に向けて
  コラム 冬のおいしい天気予報 「冷え込む夜はお鍋でほっかほかに」



この書籍の解説

今日雨が降るなんて、聞いてないよ!急な天候悪化に出会ったとき、私たちは天気予報をちょっと恨んだりします。でも思い返してみたら、天気予報のキャスター氏は「大気の状態が不安定です」と言っていたような?
天気予報の難しさは、気象が刻一刻と変わりゆき、その変化のもとを辿ると非常に些細なものだったり、離れた場所での現象だったりすることにあります。従って、その変化を読んで気象予報を行う仕事、気象予報士も、難関として知られる資格なのです。年齢制限はないので、時々天才少年少女が合格して話題になったりしますね。
空を見て未来の気象を読む難しい仕事に、どうやったらつけるのか?効果的な勉強法はどんなもの?気象予報士に合格しても、気象キャスターになるにはどうしたら?気象予報士を目指し、その資格をもとに仕事に就こうと考えている方、既に活躍している先輩の話を聞いてみたくありませんか?
今回ご紹介する『気象予報士のしごと』は、現在NHK総合で気象解説を担当している片山美紀さんが、合格までの苦労や、試してみた勉強方法、モチベーションの保ち方などの試験対策や、合格してからの気象予報士・気象キャスターの仕事について紹介しています。また後半では、専門家の立場から、日本の四季の天気についてのポイントや、最近の気象情報についても解説しています。
憧れの仕事の秘密を知ることで、より熱意をもって勉強に取り組めるようになったり、その専門性や重要性について考えるきっかけになったりすることもあると思います。この本を読んだあとは、朝や夕方の天気予報のキャスターさんの言葉が、より深く理解できるようになるかもしれません。

この記事の著者

スタッフM:読書が好きなことはもちろん、読んだ本を要約することも趣味の一つ。趣味が講じて、コラムの担当に。

『気象予報士のしごと』はこんな方におすすめ!

  • 気象予報士を目指している方
  • 気象に興味のある方
  • 著者のファン

『気象予報士のしごと』から抜粋して3つご紹介

『気象予報士のしごと』からいくつか抜粋してご紹介します。現在NHKの番組で活躍している気象キャスターの著者が、気象予報士になるまでや、気象予報士の勉強法、気象予報士になってからの仕事の様子を紹介します。後半では、四季の天気の注目ポイントや最近の気象現象についても解説します。

片山さん式気象予報士合格のコツ

《完璧を目指さない》
気象予報士試験のバイブル『一般気象学』(東京大学出版会)は、気象学の知識を網羅していますが、最初から完璧に理解するのは難しいので、ある程度勉強を進めてから読むのがおすすめです。 最初は試験対策専用の参考書や過去問題集を選び、書かれている範囲をマスターしましょう。
合格を最優先するためには、まずは試験で求められる範囲をしっかり習得することが一番です。試験本番でも、できるところを確実に取るのが鉄則です。

《失敗した問題を集めたオリジナル問題集》
片山さんの受験勉強の相棒は、過去問の中から3回以上間違った問題だけを集めたノートでした。間違った問題をコピーして、同じページに解き方と正解を書き込み、自分用のオリジナル問題集を作ったのです。
こうしてまとめたものを、問題文を暗記してしまうくらい何度も解き直しをしました。片山さんは計算問題が弱点だったので、計算問題は以下のような攻略法を用いたそうです。

① 問題を一通り読み、自分の知っている公式が使えないか考えてみる
② 使えそうな公式に問題文中の数字を当てはめてみる
③ 具体的な数字が分からない箇所はxやyなどの文字を代わりに置く

こうした解答の流れを自分の中でいくつか持っておくと、初めて見るような計算題にも恐れずに当たれるかもしれません。

《白紙まるっと書き出し方法》
もう一つのおすすめは、白紙に自分の覚えている知識をすべて書き出す方法です。これは時間のある時に、総復習として行います。
たとえば「降水過程」の分野を復習したい場合は、白紙に自分で「降水過程」のストーリーを書いていきます。エアロゾルが水蒸気とくっついて雲の粒になり凝結過程や併合過程を経て雨粒として落下していく流れを、自分で教科書を作るようなイメージで書き連ねてみるのです。自分の中にある知識を書き出したら、テキストなどで確認します。
この方法は、知識の抜け漏れに気付き、しっかりと地盤を固めるために有効です。時間がある時や、ある程度勉強が進んだ時の総復習としてやってみることをおすすめします。

気象予報士試験に合格するまでのお話は、「この難関試験をこの激務の中で!?」と驚いてしまいますが、忙しい仕事の合間に試験勉強をする方々のヒントになるような点がたくさんあります。参考書としては当社の『新 百万人の天気教室』も是非よろしくお願いします!

気象キャスターになるには?

《気象キャスターのオーディション》
気象キャスターの多くは、テレビ局が開く気象キャスターのオーディションで採用された人達です。同じ局に出演している気象キャスターでも、所属先は様々です(片山さんは気象情報を提供する民間会社「ウェザーマップ」に所属しています)。

気象キャスターのオーディションでは、天気図を解析して、自分のことばで天気予報の解説を行うのが基本です。カメラの前で用意された天気予報の画面を見ながら、決められた時間内にコメントをおさめます。
求められる気象キャスターは番組によって異なりますが、視聴者が安心して情報を受け取れるかどうかを見られていることが多いようです。
与えられた時間の中で的確にポイントをおさえて情報を伝えられるかどうかも大事です。気象キャスターは災害報道を行うので、情報の優先度を正しく把握し、分かりやすく伝える能力は必須です。
番組のスタッフから質問を受けることもあります。内容は、志望動機、天気予報で伝えたいことのほか、一般的な就職活動でも聞かれるようなことが多いです。特にどんな思いで天気予報を伝えたいかについては、事前に何度もシミュレーションしておきましょう。
一番重要なのは「可能な限りの準備をする」ことです。典型的なパターンの天気の解説はできるように練習をしておきましょう。 地方局の場合は、その地域の気象や地形について基本的なことは知っておくといいですね。

気象キャスターのオーディションは「気象の専門家」として解説を行う人を選ぶ場ですので、視聴者が疑問に思うことに対して分かりやすく説明ができることがポイントです。しかし番組の雰囲気と合うかどうかも大事なので、あるオーディションで落ちてしまったからといってもうチャンスがないと落ち込む必要はありません。

《どんな人が向いている?》
気象キャスターに備わっているといいなと片山さんが考えている要素は、「想像力」「好奇心」「自己管理力」の3つです。
まず、「想像力」は未来のことを考える天気予報の仕事をするには欠かせません。空の様子や天気図などのデータをもとに、今後どんな天気になるだろうか、そしてその時、生活している人はどんな行動を取るだろうかとイメージすることで、より役に立つ情報を伝えられるでしょう。

次に「好奇心」です。天気予報コーナーでは予報を伝えるだけでなく、生活に密着した情報や季節の変化を感じられる話題を求められることがよくあります。思いがけないところに話題が隠れているかもしれないので、ぜひ好奇心を忘れずに日常を観察してみてください。
最後に「自己管理力」です。 気象キャスターは体力勝負の仕事です。短い出演時間に対して準備には長い時間がかかりますし、災害時は短時間で何度も解説しなければなりません。時には休日出勤もあります。朝の番組担当だと真夜中に起きなければならないので、体調管理はとても大事です。
また、精神的にも常に安定している人の方が向いています。ストレス解消法を見つけ、感情を整理するしくみを持っておくといいと思います。

生活の細かいところから天気の話題を拾ってきたり、天気にまつわる意外な知識を教えてくれたりする気象キャスターさんの間口の広さは、天気の専門家としての知識の他に、日常生活における心がけにも支えられているのですね。

春の天気

《変わりやすい春の空》
春の天気が変わりやすい理由は、日本の上空で強く吹く「偏西風」に乗って、晴れをもたらす高気圧と雨を降らせる低気圧が、日本付近を短い期間で次から次へと通過するからです。
高気圧の通過するコースによって、晴れるエリアは変わります。高気圧の中心がちょうど日本の真ん中を通ると全国的に晴れますが、高気圧の中心が北寄りになると北日本は晴れ、西日本や東日本は曇りになります。 高気圧の周辺では時計回りに風が吹いていて、この風に伴って、海から湿った空気が流れ込むと、雲が発生しやすくなるからです。

《日本人の3人に1人が悩む花粉症》
例年、2月のはじめからスギ花粉が飛び始め、ヒノキ花粉も含めると5月の大型連休の頃まで飛散が続きます。花粉症は年々増加傾向にあり、全国的な調査によると日本人のおよそ3人に1人がスギ花粉症だといわれています。
花粉の飛ぶ量を予測するには、前年の夏の天候がカギになります。前年の夏に晴れた日が多く気温が高かった時は、スギの雄花がたくさん作られるため、次の春に飛ぶ花粉の量は多くなりやすいのです。逆に、冷夏や長雨だった場合は、花粉の量は少なくなる傾向があります。前年夏の気象条件と、秋に調査された雄花の着花量のデータを組み合わせることで、花粉の予測精度が上がるといわれています。
花粉が飛びやすい気象条件は、雨上がりによく晴れて気温が上がり、風が強い時です。花粉の飛ぶピークの時間帯はお昼前後と日没後の1日2回です。

《春の「5つのK」にご用心》
花粉のほかにも、春になると大陸から黄砂が飛んできます。黄砂は中国大陸で低気圧が発達し、砂漠の砂が強い風に巻き上げられ、上空の風に流されて飛んでくる現象です。春に観測されることが多いのは、中国大陸ではまだ植物が地表を覆っていない季節であることに加え、暖かくなって低気圧が発生しやすくなるため、砂が上空に舞い上がりやすいからです。また、黄砂はPM2.5などの大気汚染物質と一緒に運ばれてくることもあります。

「花粉」「黄砂」に加えて「強風」「乾燥」「寒暖差(気温差)」のアルファベットの頭文字を取って、これらを春に気を付けたい「5K」と呼ぶことがあります。
春の天気においてはこの「5K」以外に「変わりやすい天気」「雷」「火災」も注意すべきです。春になると雨が降りやすく、低気圧が発達する時などは雷雨になることも増えます。それに、乾燥と強風が原因で、春は冬と同じく火災が多い季節なのです。

この紹介文を書いているとき(2023年4月13日)、まさに大規模な黄砂の飛来がありました。黄砂の粒が花粉の粒にぶつかることでより花粉の被害も強烈になるのだそうですね。衛星画像で日本列島の上がうっすら茶色く見えるほどで、それを見ただけで目が痒くなりました。

『気象予報士のしごと』内容紹介まとめ

難関資格として知られる気象予報士。気象予報士を目指す人に向け、現在活躍中の著者が勉強法や心構えを紹介します。その他にも、気象予報士の仕事や、気象キャスターになるまで・なってからのエピソードが満載。後半では、四季の天気の見るべきポイントや、最近の気象現象について専門家の立場から解説しています。著者のファンも、気象ファンも、専門家を目指す人にも楽しく読める本です。

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目指せ気象予報士!おすすめ3選

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『気象学の教科書』
「『百万人の天気教室』は少し難しいかも」という向きはこちらをどうぞ。大学の初年度でも使われている、まさに教科書です。前半の基本編では光、水、熱、風に関する理解を深め、後半ではその知識をもとに広い範囲の気象、局所的な現象といった観測スケールの異なる気象現象を解説していきます。


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カテゴリー:気象・海洋 タグ:電子書籍 
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