海事仲裁がわかる本


著者名: 谷本裕範 著
ISBN: 978-4-425-31311-2
発行年月日: 2013-08-07
サイズ/頁数: A5判 240頁
在庫状況: 在庫あり
価格(本体価格)

3,024円 (2,800円)

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知ってるようで知らなかった海事仲裁のことが全部丸わかり!!
今まで誰も書けなかった!
半世紀を海事仲裁とともに歩んだからこそ書ける!!

★裁判とは違う、当事者同士による話し合いとも異なる。海 事仲裁って一体何なの?
★早い・安い・秘密保持が仲裁の良いところって聞くけど本当のところはどうなの? 他にメリットはあるの?
★海事仲裁が商事仲裁より先に普及したのはなぜなの?
★わが国の海事仲裁の更なる発展のためには、どうしたらいいのだろう?

【著者紹介】
谷本 裕範(たにもと・ひろのり)
兵庫県西宮市出身。昭和32年(1957年)関西学院大学経済学部卒。
昭和41年中央大学通信教育学部卒(法学部卒業資格取得)。 昭和32年社団法人日本海運集会所入所、
同56年常務理事に就任、平成10年(1998年)6月専務理事をもって退職し、翌7月、有限会社ポシブルを設立、
海運契約コンサルタント。同年10月、同社でクルージング専門旅行業を開業。
平成6〜17年、国士舘大学法学部にて私的紛争処理法、同法ゼミを担当、
平成13〜15年、中央学院大学法学部で保険・海商法を担当。
『傭船契約』(「海法大系」、商事法務、平成15年)、「判例から学ぶ仲裁」(日本海運集会所、平成5年)、
海外海事図書の翻訳、図書、論文多数。
平成11~19年東京簡易裁判所司法委員。鑑定人、仲裁人を務める。

【はじめに】より
 仲裁は裁判に代わる民事上の紛争解決手段でありながら、それを律する法律は1890年(明治23年)に制定された民事訴訟法の第八編「仲裁手続」であり、不備が指摘されながら平成8年の現行民事訴訟法制定では、「公示催促手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律」に組み込まれたままであった。
 1985年(昭和60年)に国際連合国際商取引法委員会(UNCITRAL)が国際商事仲裁模範法(モデル法)を制定したことで各国の仲裁制度は一段と進歩をとげていき、このままではわが国の仲裁制度の近代化が遅れるため仲裁研究者による仲裁法試案の作成が行われ、わが国でも仲裁法の制定が急がれていた。
 こうした事情の下、2003年(平成15年)8月、「仲裁法」(法律第138号、以下、「新法」という)が公布され2004年(平成16年)3月1日に施行をみた。
 新法はできる限りこのモデル法に沿った内容になっており、仲裁は当事者自治に根拠を置く制度であるところからその点にも十分な配慮が図られ、わが国の仲裁法制は一気にグローバル化を成し遂げたのである。
 この新法の施行によって、わが国における仲裁の利用も海事を含め商事全般では増えるであろうと思っている。たが、海事紛争には従前に比し、技術的な例えば機器類の欠陥や性能に係る紛議や航法に関するものが増えて行く傾向がみられ、その筋の職業的仲裁人の存在が求められる。しかし、弁護士法が非弁護士の仲裁を業とすることを禁じていることや、それ以前の問題として職業的仲裁人が育つだけのマーケットが日本でも生じているかという疑問がある。
 ところで、私の仲裁への関わりは、1961年(昭和36年)9月に社団法人日本海運集会所東京支部(当時の本部は神戸)仲裁部に配属されたことに始まる。海運集会所の方は1998年(平成10年)6月に専務理事をもって退職し、その後は海運契約コンサルタントとしてポシブル社を立ち上げ、個々の契約書の作成や社員教育に関わり、仲裁人や鑑定人を委嘱されればそれを受け、数年前までは国士舘大学で「私的紛争処理法」なるゼミ等を担当し、東京簡易裁判所では、司法委員として幾多の訴訟中の和解を扱った。
 今回、ポシブル社の解散を決め、仲裁に関わった半世紀を、仲裁機関の内と外の経験を整理し、関心がおありの向きのご参考に供するべく、思いつくまままとめた次第である。
 本書によって海事仲裁への関心を高めていただければ、望外の喜びである。

2013年7月
元社団法人 日本海運集会所専務理事
谷本裕範

【目次】
第1章  仲裁制度の存在意義

 第1節 仲裁制度と利用者の意識
  Ⅰ 仲裁制度の社会的理由
  Ⅱ 利用者の経済的自治の精神の欠如
 第2節 仲裁導入の環境を生んだ海運業界
  Ⅰ 海事仲裁第一号
  Ⅱ 個別(ad hoc)仲裁で始まった初期の海事仲裁
  Ⅲ 個別仲裁と制度(機関)仲裁
  Ⅳ 海運業の進展と海事仲裁導入への地固め
 第3節 常設海事仲裁機関の誕生
  Ⅰ 日本海運業同盟会の誕生
  Ⅱ 常設海事仲裁機関としての神戸海運組合
  Ⅲ 組合における仲裁人選任方法
 第4節 仲裁は想定外だった神戸海運集会所の設立
  Ⅰ 株式会社としての発足
  Ⅱ 新会社の構成と業務の推移
  Ⅲ 仲裁業務の新設で基盤を固める
  Ⅳ 株式会社から社団法人へ改組
 第5節 戦時下の仲裁活動と船価鑑定
  Ⅰ 戦時下の船舶徴傭と運送契約不履行
  Ⅱ 戦時損傷船の評価に船価逓減曲線を利用
  Ⅲ 平時船価基準とその後
  Ⅳ リベット打ちからブロック建造移行で鑑定方法も変わる

第2章 海運集会所、常設仲裁機関として地盤固める
 第6節 仲裁するには当事者間に仲裁合意が必要
  Ⅰ 仲裁合意(仲裁契約)
  Ⅱ 仲裁合意の独立性
  Ⅲ 単独仲裁と時効中断効果
  Ⅳ 印刷された仲裁約款の効力(機帆船ふさ丸海難損害賠償請求事件の顛末)
  Ⅴ 大審院の仲裁判断基準
    (汽船三千丸紛議仲裁判断の理由の是非)
    (汽船三千丸紛議仲裁判断の概要)
    (実体法よりは広く慣習法、取引慣行も考慮されうる)
  Ⅵ 海運集会所により判断寄託数、神戸地裁が全国でトップ
 第7節 海事仲裁法で海運集会所仲裁制度が存続
  Ⅰ 「海事仲裁等に関する法律」について(資料1)海事仲裁に関する法律
  Ⅱ 国際商事仲裁協会の設立
  Ⅲ 対比賠償協定で無視された海運集会所
 第8節 海事(商事)仲裁制度の特性(効用)
  Ⅰ 海事仲裁の特性
   (1)仲裁判断の国際的効力
   (2)非公開性
   (3)予見可能性
   (4)専門性
   (5)手続の柔軟性
   (6) 中立性
   (7)迅速性
   (8)経済性
  Ⅱ 仲裁は本当に経済的か?(アドホック仲裁との比較)
  Ⅲ 非弁護士に支払われる仲裁人報酬
  Ⅳ 商事仲裁協会における海事仲裁
  Ⅴ 商事仲裁協会が結ぶ商事仲裁協定
 第9節 国際化のための仲裁人選任規定と仲裁委員会
  Ⅰ 商事と違い海事仲裁はグローバル化が先行
  Ⅱ 長年の戦争と配船が海事仲裁の国際化を遅らせる
  Ⅲ 「仲裁事件取扱規則」を整理し「海事仲裁規則」を制定
  Ⅳ 先進国仲裁と一線を画す仲裁委員会の存在
  Ⅴ 仲裁人選任に外国人当事者の関与をどこまで認めるか
  Ⅵ 現行規則の原典とされる海事仲裁規則の制定
    (資料2)
    社団法人日本海運集会所海事仲裁規則
    社団法人日本海運集会所海事仲裁委員会規則
    社団法人日本海運集会所鑑定書・証明書発給に関する規則

第3章 仲裁に関わって半世紀
 第10節 神戸から東京仲裁部配属で超多忙に
  Ⅰ 編集業務の東京移転による転勤
  Ⅱ 所内融和に期待され突然の仲裁部への配属を受ける
  Ⅲ 国家補助金申請に努力
  Ⅳ 国家女性と所内事情
  Ⅴ 国家女性事業の難しさ
  Ⅵ 仲裁事件は掘り起こすものか
 第11節 アナログからデジタルへの路を拓く
  Ⅰ 海運振興会による助成と本部東京移転
  Ⅱ 当事者自治の原則に反する政府の仲裁助成はよくない
  Ⅲ 「日本船舶明細書」の電算写植成功でデジタル化へ向かう

第4章  最善の仲裁人選任方法を求めて
 第12節 新ルールでの仲裁人選任方法を検証する
  Ⅰ 国際仲裁での仲裁人当事者指名主義の難しさ
    (汽船マリア・ロセロ号航海傭船契約紛議仲裁事件)
    (外国人当事者が在日外国人を仲裁人に指名したケース:汽船アルマ号
     航海傭船契約紛議仲裁と汽船ブルーシャーク号航海傭船契約紛議仲裁)
  Ⅱ 当事者による仲裁人指名と委員会選任主義の狭間で
 第13節 アンケートで究極の仲裁人選任方法を探す
  Ⅰ 被申立人の反対請求は本請求に併合する
  Ⅱ 仲裁人選任規定を国内と国際を統一
  Ⅲ 仲裁利用者に対し大々的なアンケートを実施
  Ⅳ 仲裁人候補者開示制度の創設
  Ⅴ 仲裁人候補者開示制度への評価と運用上の問題点
  Ⅵ 希望仲裁人制と仲裁人名簿からの当事者指名主義
    (多数当事者仲裁)

第5章 ロンドンと東京の仲裁について
 第14節 ロンドンに集中する海事仲裁
  Ⅰ 圧倒的に多い英国法による仲裁
  Ⅱ 何故契約は英国法で、紛議はロンドン仲裁なのか?
   (1)何故、英国法なのか?
   (2)何故、仲裁なのか?
   (3)何故、ロンドンなのか?
  Ⅲ ロンドン海事仲裁人協会(The LMAA)について
  Ⅳ 自分たちは方の確かさを求める
 第15節 数値からみた国内海事仲裁の推移
  Ⅰ 海運集会所における海事仲裁
  Ⅱ 海運集会所仲裁判断交付実績にみる国際海事仲裁
    (別表1) 海運集会所仲裁判断種類別交付状況
    (別表2) 海運集会所国際仲裁判断種類別当事者国(地)別一覧表
  Ⅲ 海運集会所における国内仲裁
    (別表3) 海運集会所国内仲裁判断種類別交付状況
    (別表4) 海運集会所取扱注歳児件数の年度別推移
  Ⅳ 海運集会所以外で行われた海事仲裁
  Ⅴ アドホック仲裁手続の実際について
 第16節 内航仲裁と書式
  Ⅰ 内航とは
  Ⅱ 事業区分が内航仲裁の伸びを抑える
  Ⅲ 内航取引も口頭から書面化へ
  Ⅳ 「よりよい契約のために」が内航紛議を抑える
  Ⅴ 書式は海産研、内航仲裁は新機関で

第6章 出版物の充実と国際活動を人材育成につなげる
 第17節 仲裁への関与と人材確保
  Ⅰ 仲裁廷への事務局の関与
  Ⅱ 海商法担当享受に当たって新卒者採用の路を拓く
  Ⅲ 所詮、裏方でしょ!
  Ⅳ 職員の将来を考える
 第18節 定期刊行物の編纂と翻訳による知識の共有
  Ⅰ 海事法研究会誌
  Ⅱ 翻訳を通じ知識の共有を図る
 第19節 知らせることから始めよう
  Ⅰ 英文パンフレット、無名の東京仲裁を海外に知らせる
  Ⅱ 英文による契約書式の制定が順調に進む
  Ⅲ 英文による定期刊行物、ブレティンの発行
  Ⅳ BIMCOとの協力関係樹立
  Ⅴ 国際的に知らしめるには売り込みを欠かせない
 第20節 国際活動と協力、その限界
  Ⅰ 何故、そんなに急ぐのか
  Ⅱ まず参加し、印象づけること
  Ⅲ 仲裁PRの場は国際商事仲裁会議
  Ⅳ ICMA会議に初の団を派遣
  Ⅴ 「日中海事仲裁制定」の締結
  Ⅵ AALCC、地域仲裁センターと仲裁協力協定を締結
  Ⅶ TOMACの名が意外と受ける
 第21節 仲裁会議の共催とその意義
  Ⅰ ICCA東京会議、商事仲裁協会と共催
  Ⅱ 第11階ICMA香港会議
  Ⅲ 仲裁機関に求められる国際協力とは

第7章 記憶に残る仲裁事件の数々
  Ⅰ 中間当事者省略仲裁で判断の統一、迅速性、費用の節減を可能に
    (機船山亀丸定期傭船契約紛議仲裁裁定)
  Ⅱ 両当事者の来日で集中審理
    (汽船ワールド・キム売買契約紛議仲裁判断)
  Ⅲ 造船契約書中の「経済事情の変動」条項の解釈
    (U造船所S五四〇番船造船契約紛議仲裁判断)
  Ⅳ 海運集会所の仲裁は大手偏重ではないのか(天洋丸事件の顛末)
  Ⅴ 業界大手間には海運集会所仲裁は不要か
    (機船シー・ワイ・エス・フォーチュン号定期傭船契約紛議仲裁事件)
  Ⅵ 債権者参加で守秘義務の限界を知る
    (機船越水丸定期傭船契約紛議仲裁判断)
  Ⅶ 傭船先の切替えや本船の予想外の高値海外売船で八方円満解決
    (S汽船倒産関連仲裁紛議)
  Ⅷ 単独仲裁人として多数当事者仲裁に取組む
    (積荷保障契約紛議仲裁事件)
  Ⅸ ロンドン仲裁を停止し1カ月間の調停で解決

第8章 わが国の海事仲裁の更なる発展を願って
  Ⅰ 仲裁業務を進める上で力になった事例
  Ⅱ 人材育成と仲裁人候補者として採用を
  Ⅲ 仲裁人の選任を当事者に任せては如何か
  Ⅳ 仲裁人名簿の維持管理と名簿からの仲裁人選任の徹底
  Ⅴ 仲裁手続きのフローチャートと改訂私案
〈巻末資料〉仲裁法/日本海運集会所仲裁規則/仲裁納付金規定/仲裁人倫理規程

【本書を推薦します】
株式会社松井商会 取締役会長
一般社団法人日本海運集会所 海事仲裁委員会副委員長
松井 茂
「海事仲裁制度導入に至る歴史的経緯の解説書」
 本書は、1890年(明治23年)に制定された民事訴訟法の仲裁手続から始まり、今日の社団法人日本海運集会所における海事仲裁に至るまでの歴史的経緯と記憶に残る数々の仲裁事件をわかりやすく執筆された大変貴重な「海事仲裁教本」であります。社団法人日本海運集会所専務理事を務めた後、ポシブルを起業し海運契約コンサルタントとして大活躍され、幾多の訴訟中事件の和解に尽力された谷本裕範氏ならではの鋭い視点でまとめられております。
 この書を手に取っていただいた、次代を担う若き海運実務家にとりまして、必ずや参考になるものと確信しております。

関西学院大学法学部教授
相原 隆
「わが国の海事仲裁制度を理解する上で必読の書」
 谷本氏は、40有余年にわたり、日本海運集会所を主な舞台として日本における海事仲裁の普及に尽くされてきました。その功績は十指に余りますが、とりわけ、海外における東京仲裁の認知を高めるために国際的な活動に継続的に取り組まれたことや、内航関係者を対象として契約の重要性と紛争解決における海事仲裁の優位性を懇切丁寧に説かれたことが特筆されます。
 本書は、同氏の海事仲裁にかける情熱と理論の集大成であり、谷本海事仲裁論のすべてが披瀝されています。わが国の海事仲裁制度の沿革、発展、そして課題を理解する上で必読の書であり、海運業界のみならず、学界にも裨益するところ大ですので、広く江湖にご推薦する次第です。

弁護士
岡部博記
「海事仲裁の法制度と実務に関する必携の書」
 我が国の海事仲裁は、柔軟な手続と運用により、専門性の高い海事紛争の有効な解決手段として機能しており、日本海運集会所は、常設仲裁機関として海事仲裁の豊富なノウハウを蓄積しながら今日に至っている。
 本書は、その常設仲裁機関設立の経緯から説き起こし、様々な仲裁事例を紹介しながら、我が国の海事仲裁の特性、機能、現状をロンドン仲裁との比較も交えて、分かりやすく記述している。さらに、海事仲裁の更なる発展を願う著者の強い思いが、具体的な提言として纏められている。我が国の海事仲裁の法制度と実務を多角的な視点から体系的に論述したのは、本書が初めての試みであり、海事仲裁の法制度と実務に関する必携の書といえる。
 海事取引に従事している全ての関係者、仲裁制度を専攻する研究者・学生にも是非お勧めしたい一書である。

一般社団法人日本海運集会所
理事長  清水 繁
「半世紀に及ぶ仲裁業務の集大成」
 日ごろ海事仲裁に携わっていても、改めて海事仲裁とは何かと説明を求められると、さてどのように答えたら良いものかと戸惑うものである。本書には日本海運集会所の辿ってきた歴史を縦糸にして海事仲裁の内容が平易かつ詳細に述べられその答えが用意されている。本書を読むと厳しい国際情勢の中でわが国の経済が大きく発展していく時代背景のもと集会所にかかわった先人たちの血の滲むような努力によって海事仲裁制度の礎が築かれてきたことが良くわかる。しかしながら海事仲裁制度は引き続き改良され時代とともに発展すべきものでもあろう。
 著者の谷本裕範氏は日本海運集会所一筋に海事仲裁を手掛け、専務理事をもって退職された後も仲裁に関わってきたエキスパートであり、本書は半世紀に及ぶ著者の仲裁業務の集大成である。

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