新幹線実現をめざした技術開発


978-4-425-96281-5
著者名:下前哲夫 著
ISBN:978-4-425-96281-5
発行年月日:2019/1/18
サイズ/頁数:A5判 384頁
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世界初の高速鉄道である東海道新幹線。本書はそれを実現させた技術開発に焦点を当て、旧国鉄時代の記録や研究論文、専門誌の記事などを調査し、重要な役割を担った技術者たちの情熱や努力をたどったものである。コンピュータのない時代に実験装置を自作しながらも、世界に誇る高速鉄道技術を生み出した先人たちの発想や苦労を記した貴重な技術開発史である。

【まえがき】より
東海道新幹線は世界で初めての高速鉄道として、東京オリンピックが行われた1964(昭和39)年に開業しすでに50余年経ちました。
鉄道の新線建設はいつの時代でも大事業ですが、殊に東海道新幹線は、広軌新線に反対が多いなかでの、また鉄道斜陽論という逆風のなかでの建設決定、世界銀行借款を含む巨額の資金調達、鉄道の速度を飛躍させた技術開発、極めて短い期間での用地買収・建設工事・車両製造など多くの難関を克服して実現したものであります。
新幹線はその後山陽新幹線、東北・上越新幹線、九州新幹線、北陸新幹線と続き、直近の北海道新幹線(2016年、年新青森−新函館北斗)の開業で全営業キロは約3,000km に達しました。この間多くの改良が加えられ、今では速度、快適性、運行安定性、運行本数、環境保全性のいずれにおいても開業時とは比較にならないほど進化しています。
一方欧州では、フランスが東海道新幹線の17年後(1981年)に、続いてイタリア、ドイツが1988年、1991 年に、またアジアでは韓国が2004年、台湾、中国が2007年に高速鉄道の運転を始めました。
2012年時点で高速鉄道を運行している国は21か国におよび、その総延長キロは2万キロを超えるに至っています。
このように世界の高速鉄道は東海道新幹線から始まりましたが、本書はそれを実現させた技術開発に焦点を当てたものです。
本書では新幹線の技術開発を大きく、
  第1 段階: 主に終戦後から昭和33年東海道新幹線の建設が決定されるまでの10余年
  第2 段階:建設決定から開業までの6年間
  第3 段階:開業から国鉄の民営分割までの25年
  第4 段階:JR発足以降の30余年
に分け、第1段階と第2段階に焦点を当てています。
第1段階と第2段階は新幹線を生んだ技術開発、第3 段階、第4 段階は育てた技術開発とすれば、技術史的な意義はまず第1段階と第2段階にあると思うからです。
さてこの段階での技術開発の中心は、終戦後陸海軍等から鉄道技術研究所に移籍した人たちであったことはよく知られていますが、彼らが行った技術開発の中身についてはあまり知られていません。
そこで本書では、戦後から昭和30年代にわたって行われた鉄道技術に関する各種研究委員会の記録、鉄道技術研究所による上記第2段階の記録、そして研究者諸氏が残した論文などを元に「鉄道高速化のためには何が問題だったのか、それを克服するためにはどのような発想、苦労があり、どのような経過をたどったのか……」を改めてたどってみました。
もちろんコンピュータのない時代であり、測定器や試験装置を自作しながら始まった研究がやがて高速鉄道の基礎技術になっていく過程は、先人たちの非凡な能力、情熱、エネルギーを十分に感じさせてくれるものでした。
本書は4つの区分で構成されています。
第1編は上記第1段階の記述であり、いまだ高速鉄道の実現という目標が定まっていなかった状況のなかで、研究者がそれぞれの分野で行っていた研究をたどりました。
第2編は鉄道技術研究所に新しく着任した所長が、第1 段階の研究成果を統合すれば今までにない高速鉄道を実現できると感じ、講演会を開催してその構想を世に問うまでの経過をたどっています。
第3編では、戦後経済の復興のなかで東海道本線の輸送力を増強する必要性から、上記講演会の発表も取り込み、東海道新幹線の建設が決定されるまでの経過を略記しています。
そして第4編では、高速鉄道の「可能性」から「実現」に向けて東京オリンピックに間に合わせるため、一斉に立ち上がった広範囲な技術開発のなかから主な事柄を選びその経過をたどっています。
数式も残っていますが、これらは研究者諸氏が現象を解明していった手段の一部なので、こんな風に考えたのかという程度に見てもらえれば良いと思います。
高速鉄道の技術分野は広く、著者の浅学非才ゆえにでき上がったものは満足なものとは言えませんが、諸兄が新幹線技術の生い立ちについて理解を深めようとされる際、本書がその一助になることができれば望外の喜びであります。

2018年10月
下前哲夫

第1編 終戦からの技術開発
 第1章 台車と車体の振動防止
  1.1 高速台車振動研究会の発足
  1.2 第2回研究会
  1.3 第3回研究会
  1.4 第4回研究会
  1.5 第5回研究会
  1.6 第6回研究会
  1.7 昭和24〜32年

 第2章 車体の強度、軽量化、空気抵抗
  2.1 抵抗線歪みゲージによる応力測定の実現
  2.2 車体強度計算法の確立
  2.3 車両の軽量化
  2.4 東京−大阪間4時間半の構想
  2.5 小田急3000系SE車の実現

 第3章 軌道
  3.1 ロングレールの実現
  3.2 軌道力学の進歩

 第4章 信号保安
  4.1 軌道回路計算法の簡易化
  4.2 疑似軌道回路装置の完成
  4.3 キロサイクル軌道回路

 第5章 集   電
  5.1 集電研究委員会の発足
  5.2 測定装置の開発
  5.3 三島−沼津間120km/h速度向上試験
  5.4 架線方式比較試験
  5.5 新しい集電理論

第2編 鉄道技術研究所50周年記念講演会
 第6章 鉄道技術研究所50周年記念講演会
  6.1 記念講演会まで
  6.2 記念講演会の開催

第3編 東海道新幹線建設決定に至る過程
 第7章 新幹線建設決定に至る過程

第4編 建設決定から開業までの技術開発
 第8章 研究体制

 第9章 蛇行動の克服
  9.1 1/5模型台車による実験
  9.2 実物大実験台車の転走試験
  9.3 蛇行動解析の条件拡大
  9.4 試作電車用台車の転走試験
  9.5 ボギー車全体の蛇行動計算
  9.6 衝撃的横圧の評価法
  9.7 試作電車のモデル線走行試験
  9.8 量産車用台車の仕様決定

 第10章 高速集電
  10.1 高速架線の開発
  10.2 高速パンタグラフの開発
  10.3 新幹線用パンタグラフすり板の開発
  10.4 開業後の問題

 第11章 高速軌道
  11.1 軌道構造の決定
  11.2 モデル線における振動、応力の測定
  11.3 座屈試験
  11.4 車輪フラットによる衝撃
  11.5 レール溶接破断時の安全性確認
  11.6 ロングレールと橋梁桁座配置

 第12章 車両の強度
  12.1 軽量・高強度・気密化車体の製作
  12.2 車軸の強度

 第13章 車両振動・乗り心地
  13.1 空気ばねの開発
  13.2 乗り心地判定基準
  13.3 量産車の乗り心地

 第14章 ブレーキ
  14.1 ブレーキ方式の決定
  14.2 粘着限界、ブレーキ減速度
  14.3 ディスクブレーキの構成と材料
  14.4 モデル線試験
  14.5 量産車による試験

 第15章 空気力学に関する事柄
  15.1 車体形状
  15.2 非定常的な空力問題
  15.3 走行抵抗

 第16章 き電系(セクションアーク対策)
  16.1 BT(吸上げ変圧器)き電方式
  16.2 BTセクションのアーク対策
  16.3 抵抗式セクションの抵抗値の決定
  16.4 AT(単巻き変圧器)き電方式への変更

 第17章 信号保安、進路制御
  17.1 ATC
  17.2 CTC

第5編 開業後の故障
 第18章 開業後の故障

 資料1.摩擦とクリープ(高速台車振動研究会資料)
 資料2.架 線パンタグラフ系の限界速度の考察(集電第四専門委員会資料)
 資料3.振幅変調、復調について
 索引



【著者紹介】
1941年、和歌山県に生まれる。
1966年、名古屋工業大学修士課程修了(電気工学)、国鉄入社。
1967年から国鉄鉄道技術研究所において集電関係の技術開発などに従事。
1981年から国鉄本社・鉄道管理局において、
1987年からは東海旅客鉄道(株)において鉄道電気設備の保守・改良などの業務に従事。
1996年から同社鉄道事業の安全管理などに従事。
2000年から新生テクノス(株)、2008年から(社)日本鉄道電気技術協会に勤務。
2012年、退職。現在、(一社)日本鉄道電気技術協会顧問。
カテゴリー:海事 タグ:技術 新幹線 鉄道 
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