シップリサイクル条約の解説と実務


978-4-425-27071-2
著者名:大坪新一郎・加藤光一・仲條靖男・成瀬健 共編著
ISBN:978-4-425-27071-2
発行年月日:2014/6/20
サイズ/頁数:A5判 342頁
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シップリサイクル条約の
・条約策定までの背景や経緯
・採択に日本が果たしてきた役割
・関連する国際規則との関係
・条約に基づく手続きの実務
・リサイクル施設の要件と手続き
・必要な様式の解説と作成例
・各国リサイクル施設の情報
などを4名のエキスパートが執筆。
船舶の安全な解体と環境保全の見地から、2009年5月に「安全かつ環境上適正な船舶のリサイクルのための国際香港条約(シップリサイクル条約)」が採択されました。
船舶リサイクル施設での死傷事故や環境への悪影響をできる限り無くしていくには、条約の早期発効が重要であります。またシップリサイクル条約を確実に履行するには、行政機関や船級協会はもとより、船主、リサイクル施設、舶用機器サプライヤー、造船所、インベントリ作成専門家などの理解と準備が求められます。
本書は、このようなシップリサイクル関係者の理解と条約発効前の準備に資するため、シップリサイクル条約の策定に直接かかわった関係者が共同して執筆しました。
さらに本書では、国際海事分野での政策研究のケーススタディとしても活用できるよう、「規制の最終結果」だけではなく、国際交渉の経緯や日本がとってきた交渉戦術、交渉に影響を与えた主要プレイヤーの立場とその変遷についても詳述しています。

【はじめに】より 船舶はそのほとんどが鉄からできており、平均30年にも及ぶ商業運航を終え、解体されても、鉄はまた再利用されるため、環境上もっとも優れた製品の1つと言われている。一方で船舶は世界の海を自由に移動できる特徴を有していることから、商業運航を終え、解体される際にも解体場所を選択できる。労働コストが安く、鉄の再利用ニーズが高いアジアの国々で1990年代頃より解体される船舶が急増した。しかし。そのような解体場では船舶のガス爆発に伴う死傷事故やアスベストなどの有害物質による健康被害への懸念、廃油などによる海洋汚染などが多発し、世界から問題視されるに至った。
これを解決するため、複数の国連専門機関が任意のガイドラインを策定したが、状況は改善には向かわなかった。国連専門機関のうち海事分野に特化した国際海事機関(IMO)は、問題を解決するため、2005年12月にガイドラインの一部を強制化する新たな国際規律の作成作業を決議し、2009年5月に「安全かつ環境上適正な船舶のリサイクルのための国際香港条約(以下、「シップリサイクル条約」という)」が採択された。
日本は、世界トップクラスの海運国であり、かつ世界有数の造船国でもあるため、官民が一丸となって、リサイクルに伴う問題解決のための制度のあり方の検討に早くから着手し、シップリサイクル条約の起草や主要ガイドラインの策定や調整にも積極的に関与するなど、国際的な議論を主導してきた。
シップリサイクル条約の基本的な枠組みは、船に搭載される有害物質を管理し、「インベントリ」と呼ばれる船上有害物質の一覧表を、船の一生を通じて維持し、船舶の解体前には解体場(船舶リサイクル施設)にインベントリを確実に渡し、船舶リサイクル施設には安全環境管理体制を構築させ、かつシップリサイクル条約の要件を満足しない船舶は受け入れさせないというものである。
シップリサイクル条約の要件を満足するためには、船舶とリサイクル施設以外での取り組みが必要である。船舶に対する要件は船主に課される訳であるが、実際には、船舶を構成する舶用機器のサプライヤーは、機器の製造工程で有害物質を適確に管理し、販売する機器毎の詳細情報を造船所に提供しなければならない。また造船所は、舶用機器サプライヤーから提供される膨大な有害物質情報をもとに個船毎にインベントリを作成しなければならない。
世界の船舶が適切にリサイクルされ、船舶リサイクル施設での死傷事故や環境への悪影響などをできる限り無くしていくには、シップリサイクル条約の早期発効が重要である。またシップリサイクル条約を確実に履行するには、行政機関や船級協会はもとより、船主、リサイクル施設、舶用機器サプライヤー、造船所、インベントリ作成専門家などの理解と準備が重要である。
本書は、このようなシップリサイクル関係者の理解とシップリサイクル条約発効前の準備に資するため、シップリサイクル条約の策定に直接関った関係者が共同して執筆した。
本書の全体構成としては、まず第1章としてシップリサイクル条約策定の背景や経緯について述べ、第2章ではシップリサイクル条約に基づく基本的手続きを概説した。第3章から第6章では有害物質の管理とインベントリの作成要領、さらには船舶の検査と証書について記した。第7章では船舶リサイクル施設の要件と手続き、第8章では運航を終える船舶のリサイクル準備からリサイクルまでの手続きについて解説した。第9章では、まとめとして、条約の今後の展望と実施に向けての課題を紹介した。また、シップリサイクル条約をEU域内に規則として取り入れるEU域内法が最近採択されたことから、条約実施の動向に大きな影響を与えると思われる本法律の内容と審議経緯を第9章で付け加えた。最後に、付録として、リサイクル施設が作成しなければならない「船舶リサイクル施設計画(SRFP)」及び「船舶リサイクル計画(SRP)」の見本及び各国のリサイクル施設及び産業の状況を添付した。
本書では、国際海事分やでの政策研究のケーススタディとしても活用できるよう、産業界の実務者が関心を有する「規制の最終結果」だけでなく、国際交渉の経緯や日本がとってきた交渉戦術、及び、交渉に影響を与えた主要プレイヤーの立場とその変遷について、第1章と第9章において詳述している。
シップリサイクルは、海事産業の発展に必要不可欠な要素であることから、日本の海事クラスターを構成する多くの関係者の協力を得ることができ、これにより、シップリサイクル条約と関連ガイドラインの策定を日本が主導することが可能になった。日本船主協会においては、シップリサイクルが国際的な問題として取り上げられ始めた当初から継続して、日本政府との間で戦略と情報を共有し、民のルートを通じて国際交渉の側面支援を行ってきた。また、日本財団の全面的支援による日本船舶技術研究協会による4年間に亘る調査研究事業の成果は大きく、これによってインベントリの作成方法などが確立できたと言ってよい。同協会はいち早く現存船のインベントリ作成事業にも着手し現在も努力を続けている。また、日本海事協会においても、早くからシップリサイクル対策の必要性に注目し、特に新船向けインベントリの作成支援ソフトの開発に取り組み、いち早くソフトを完成するとともにこれを無料航海し、シップリサイクル条約への円滑な対応に注力している。最後に、国際交渉、特に対欧州作戦においては、JETROロンドンのジャパンシップセンターの人的資源を活用したが、これも日本財団の支援によるものである。ここに改めて関係者の弛まぬ努力に敬意を表したい。

平成26年5月
編著者一同

【目次】
第1章 シップリサイクルに関する国際的議論の経緯
 1.1 検討の開始と3つの国際機関の取り組み
 1.2 バーゼル条約について
 1.3 バーゼル条約とシップリサイクルの関係
 1.4 国際的枠組み作りに関する日本の基本方針
 1.5 IMOでの取り組み
 1.6 新条約作成に向けての進展
 1.7 条約条文案の提出
 1.8 「安全かつ環境上適正な船舶のリサイクルのためのシップリサイクル条約」の採択へ

第2章 シップリサイクル条約の概要  2.1 条約の構成
 2.2 船舶に関する要件
 2.3 リサイクル施設の要件
 2.4 リサイクル手続き
 2.5 条約の発効要件
 2.6 ガイドライン

第3章 有害物質の管理とインベントリ  3.1 有害物質の管理
 3.2 インベントリの目的と構成
 3.3 インベントリに記載すべき物質等
  3.3.1 インベントリ第1部に記載すべき物質
  3.3.2 インベントリ第2部及び第?部に記入すべき物品
 3.4 インベントリ作成上の留意点
  3.4.1 閾値及び均質材料
  3.4.2 インベントリへの記入が要求されない物質
 3.5 IMOにおける閾値及び適用除外の議論

第4章 新船インベントリ作成要領
 4.1 新船インベントリ第1部の作成(造船所の役割)
  4.1.1 インベントリ第1部作成の基本手順
  4.1.2 インベントリ第1部の記入方法
 4.2 材料宣誓書及び供給者適合宣言の作成(舶用機器メーカー等供給者の役割)
  4.2.1 材料宣誓書(MD)の作成
  4.2.2 供給者適合宣言(SDoC)の作成
  4.2.3 舶用機器供給者における化学物質管理
 4.3 「PrimeShip Green/SRM」によるインベントリ作成
  4.3.1 「PrimeShip GREEN/SRM」の概要
  4.3.2 ユーザー登録
  4.3.3 造船所の作業(インベントリ第?部の作成)
  4.3.4 供給者の作業(造船所からの調査依頼への回答)
  4.3.5 MDライブラリ管理

第5章 現存船用インベントリ第?部の作成要領  5.1 インベントリ第1部作成の基本手順
 5.2 必要な情報の収集(ステップ1)
  5.2.1 例示リスト
 5.3 収集した情報の評価(ステップ2)
 5.4 目視/サンプリングチェック計画の作成(ステップ3)
 5.5 船上における目視/サンプリングチェック(ステップ4)
 5.6 インベントリ第1部及び関連文書の作成(ステップ5)

第6章 インベントリ第?部の検査と証書  6.1 検査
  6.1.1 新船の初回検査
  6.1.2 現存船に対する初回検査
  6.1.3 更新検査
  6.1.4 追加検査
  6.1.5 船籍の変更
 6.2 インベントリ国際証書
  6.2.1 証書の発行と裏書
  6.2.2 検査と証書の調和システム
  6.2.3 証書の様式
  6.2.4 証書の失効
 6.3 条約の発効前の船舶の検査
 6.4 市場調査

第7章 リサイクル施設の要件  7.1 船舶リサイクル施設への基本的要求事項
  7.1.1 船舶リサイクル施設へ適用される規則の概要
  7.1.2 政府(締約国)及び所管官庁への要求事項
  7.1.3 船舶リサイクル施設への要求事項
 7.2 船舶リサイクル施設計画(SRFP)の作成
  7.2.1 用語の定義
  7.2.2 SRFPに記すべき内容
 7.3 船舶リサイクル施設の承認
  7.3.1 船舶リサイクル施設の承認プロセスとSRFP
  7.3.2 船舶リサイクル施設の承認プロセス

第8章 リサイクル手続き  8.1 リサイクル手続きの流れ
 8.2 インベントリ第2部及び第?部の作成
  8.2.1 インベントリ第2部及び第?部の標準様式
  8.2.2 インベントリ第2部及び第?部に記載する品目及び記載例
 8.3 船舶リサイクル計画(SRP)の作成
  8.3.1 一般事項
  8.3.2 SRPの作成時期
 8.4 最終検査
  8.4.1 最終検査の申請に必要な情報
  8.4.2 最終検査の申請に必要な書類
  8.4.3 最終検査の準備
  8.4.4 検査事項

第9章 今後の展望と課題
 9.1 条約発効の見通し
 9.2 バーゼル条約との関係とEUの動き
 9.3 シップリサイクル条約実施のためのEU域内法
  9.3.1 EU域内法の思想と審議経緯
  9.3.2 採択されたEU域内法の規則と適用時期
 9.4 全世界的な解撤能力の確保
 9.5 シップリサイクル条約発効に向けての準備

付録  付録1 船舶リサイクル施設計画:SRFP
 付録2 船舶リサイクル計画:SRP
 付録3 世界各国のシップリサイクル状況
  1 世界のリサイクル能力とリサイクル需要動向
  2 欧州における船舶リサイクルの現状
   2.1 欧州連合(EU)内の船舶リサイクルの概要
   2.2 トルコにおける船舶リサイクルの現状
    2.2.1 トルコにおける船舶リサイクルの概要
    2.2.2 トルコにおける船舶リサイクルの手法
    2.2.3 トルコ船舶リサイクル施設
  3 南西アジアにおける船舶リサイクルの現状
   3.1 バングラディッシュにおける船舶リサイクルの概要
    3.1.1 バングラディッシュにおける船舶リサイクル産業の位置づけ
    3.1.2 バングラディッシュにおける船舶リサイクルに関わる法令等
    3.1.3 バングラディッシュ政府のシップリサイクル条約への対応
    3.1.4 バングラディッシュにおける船舶リサイクル手法
    3.1.5 バングラディッシュの労働安全・環境対策
   3.2 インドにおける船舶リサイクルの現状
    3.2.1 インドにおける船舶リサイクルの概要
    3.2.2 アラン・ソシヤ地区の現況
    3.2.3 アラン・ソシヤ地区における船舶リサイクル手法
    3.2.4 リサイクルのための機材、施設等
    3.2.5 環境保護のための設備、機材(ヤード内外)と手法
    3.2.6 労働安全のための施設、機材(ヤード内外)
    3.2.7 インド政府のシップリサイクル条約への対応
    3.2.8 インドの環境対応船舶リサイクル施設
  4 中国における船舶リサイクルの現状
   4.1 中国の船舶リサイクル概要
    4.1.1 中国の船舶リサイクル企業の概要
   4.2 中国のシップリサイクル条約批准の動向
   4.3 中国の主な船舶リサイクル施設
 付録4 リサイクル実施のための承認文書の様式
カテゴリー:法令 海事 タグ:IMO シップリサイクル リサイクル 有害物質 法律 海事法  船舶 
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