雲の博物館


978-4-425-51341-3
著者名:菊地勝弘・山田圭一
ISBN:978-4-425-51341-3
発行年月日:2013/12/3
サイズ/頁数:B5変形判・144頁
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価格¥2,750円(税込)
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世界中の空に広がる無数の雲、
類いまれな雲を、
余すところなく網羅した雲の博物館。
200点をゆうに超える圧倒的な雲の数々。
別天地の風景。

【はじめに】より  いらっしゃいませ。ようこそ『雲の博物館』にお出でくださいましてありがとうございます。御入館になる前に、何故私たちがこの博物館を開設(編集)するに至ったかと、博物館の展示内容を簡単に説明しておきましょう。
 著者の一人、菊地が雲の写真や雪の結晶の顕微鏡写真に携わるようになったのは、1957 年北海道大学大学院気象学研究室に入ってからです。1960 年北海道大学アラスカ氷河調査隊員として、やっと出始めたカラーフィルムを使った興奮は忘れられません。その後、1968 年日本南極観測隊員として、昭和基地での越冬観測を初めとして、南極点基地や北極域の各地で雲の写真を撮ってきました。また、山田は1950 年東京大学工学部で写真フィルムの感光機構に関する研究を行い、1956 年当時の西ドイツ政府交換留学生として渡欧以来ヨーロッパの各地を訪れる機会が多くなりました。また、アルピニストとしてマッターホルンやモンブランなどにも登頂し、航空山岳写真のパイオニアとしてエベレストをはじめ世界各地の名峰を撮影してきました。
 このように、私たち2人が別々の分野で、カメラと出会ってから50 有余年、今日まで撮りためた写真の多くは36枚撮りカラーフィルムで、その量は膨大なものになりました。そんな私たちに共通しているのは世界各地の千差万別の雲の写真であり、それらがある時は心を癒し、ある時は自然の不思議さを思い起こさせてくれました。このたび、それらを整理して従来の雲の写真集とは異なった切り口で、皆様方に何かを届けられたらと思い、博物館の開設に至ったというわけです。
 それでは博物館に入っていただき、展示室1からご案内いたしましょう。展示室1の「雲のABC」では、雲の基本形である十種雲形を紹介しています。展示室2の「雲の分類の特徴」では、十種雲形を従来のように「種」、「変種」、「副変種」という見方の他に、?高度(温度)、?形状、?降水の有無、?雲粒の状態、それと、?発生場所による特徴といった観点から紹介しています。展示室3の「雲の発生」では、?大気の冷却・飽和のメカニズムと、発生する雲の種類、?身近なペットボトルを使って微小水滴や氷晶を作る実験、?雲粒はどのようにして発生し、成長するのか、?雲粒の測り方、そうして?雲の立体構造などを紹介しています。展示室4の「世界の雲」では、大きく熱帯、温帯、極域、山岳域、それに富士山の雲を紹介しています。最後の展示室5の「さまざまな雲」では、立ち止まってもう少し見ていたいと思えるような雲、それらは極成層圏雲や、彩雲、飛行機雲、極域で出現する雲(霧)などを取上げてみました。このように著者らは、従来の雲の写真集とは一味も二味も違った世界中の雲を、その地域の情景を含めて編集しました。それは雲のミクロな構造から多面、多岐なマクロな特徴を理解できる博物館的な機能を持つものを意図して表題を『雲の博物館』としたのです。
 著名な物理学者であり、また随筆家でもあった寺田寅彦(冬彦)の言葉に「空は青、樹は緑と思って絵を画いてはいけない。その点物理の研究と同じだ」というのがあります。「青い空に白い雲」というイメージにとらわれることなく、雲の多様な形と色合い、そうしてそれぞれの特徴のあることが雲の本質、天気の本質を理解することに繋がると思っています。
 地下鉄や地下歩道、ビルの谷間やビルの中の生活が多い昨今の社会環境の中にあって、ほんのわずか数分間でも千差万別の雲を見ることによって、安らぎと潤いが得られればと思ってこの博物館を開設(編集)しました。
 きっと、お楽しみいただけると思っています。どうぞ、最後までごゆっくりご覧下さるようお願いいたします。

【目次】
はじめに
展示室1
 雲のABC
 展示室1 – 1 雲の観測

展示室2  雲の分類の特徴
 展示室2 – 1 高度(温度)による特徴
 展示室2 – 2 形状による特徴
 展示室2 – 3 降水の有無による特徴
 展示室2 – 4 雲粒の状態による特徴
 展示室2 – 5 発生場所による特徴

展示室3  雲の発生
 展示室3 – 1 大気の冷却・飽和
  3.1.1 対流
  3.1.2 伝導
  3.1.3 放射
 展示室3 – 2 雲に関する身近な実験
  3.2.1 ペットボトルで微細な雲粒を作る
  3.2.2 コップの表面に雲(水滴)を作る(結露)
  3.2.3 過冷却水滴を氷晶化させる
  3.2.4 ペットボトルを使って雪の結晶を作る
 展示室3 – 3 雲粒の生成
  3.3.1 雲粒の素(凝結核)
  3.3.2 雲粒の成長
 展示室3 – 4 雲粒を測る
  3.4.1 インパクター法(衝突法)
  3.4.2 ウォーターブルー法(濾紙法)
  3.4.3 プラスチック・レプリカ法(レプリカ法)
  3.4.4 PMS プローブ(ノーレンバーグ法)
 展示室3 – 5 雲の立体構造
  3.5.1 巻雲と風のシアー
  3.5.2 層積雲の雲頂構造
  3.5.3 層積雲の雲底構造

展示室4  世界の雲
 展示室4 – 1 熱帯域の雲
 展示室4 – 2 温帯域の雲
 展示室4 – 3 極域の雲
 展示室4 – 4 山岳域の雲

展示室5  さまざまな雲
 十種雲形の分類

【著者紹介】
●菊地勝弘(きくちかつひろ)
1934 年、北海道生まれ。北海道大学大学院理学研究科修了。理学博士。
北海道大学教授を経て、同大学名誉教授。秋田県立大学教授を経て、同大学名誉教授。
著書『実験気象学入門』(共著・東京堂出版)、『降雪現象と積雪現象』(共著・古今書院)、
『雪の結晶図鑑』(共著・北海道新聞社)など。
第9 次(1968 〜 69)日本南極観測越冬隊員。1975、1978 年アメリカ南極点基地観測隊員。
紫綬褒章(気象学研究功績)、日本気象学会賞・藤原賞、日本雪氷学会功績賞、北海道科
学技術賞、瑞宝中綬章、北海道新聞文化賞(学術部門)などを受賞。

●山田圭一(やまだけいいち)
1931 年、東京下町生まれ。東京大学工学部卒。工学博士。
東京工業大学教授、筑波大学教授を経て、同大学名誉教授。
『The Alps』、『ヒマラヤを飛ぶ』、『空撮・世界の名峰』、
『ゴシックの大聖堂』などの写真集をまとめ、
イタリア国立山岳博物館(トリノ市)で個展を開催した。
山岳航空写真のパイオニアとして、国際航空安全学会KO?(岡部)賞、日本航空協会・
航空功績賞、瑞宝中綬章などを受賞。


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カテゴリー:気象・海洋 タグ:気象 
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