鉄道車両・保守設備プロジェクトマニュアル(RAMS規格対応)


978-4-425-96321-8
著者名:佐藤芳彦 著
ISBN:978-4-425-96321-8
発行年月日:2021/11/28
サイズ/頁数:B5判 320頁
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¥4,620円(税込)

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国内外の鉄道プロジェクトに必須な情報を1冊にまとめました!

海外に鉄道技術を展開するためには、「RAMS」という世界基準になりつつある規格に、対応することが求められています。
それにどう対応すればよいかを記した、唯一無二のマニュアル本。
鉄道従事者はもちろんのこと、鉄道ファンの方も興味を持つ内容です。

RAMSとは?
Reliability(信頼性)、Availability(アベラビリティー)、Maintainability(保全性)、及びSafety(安全性)の4つの頭文字をとった新しい概念を現した用語です。

【まえがき】 コロナウイルスが2020年に蔓延し世界を変えた。人と人とのつながりを破壊し、インターネットによるテレワークやテレビ会議が普及し、通勤や出張などビジネス目的の移動は大幅に減少し、帰省やレジャーの自粛と合わせ、鉄道事業に大きな打撃を与えた。前年度から90%以上減となった新幹線輸送量が象徴的であり、旅客輸送量は大幅減、ホテルやショッピングも減収となり、JR 各社や大手私鉄は2020年度決算で軒並み赤字を計上した。コロナウイルスによるパンデミックは、従来から言われてきた「少子高齢化による鉄道事業の縮小」を大幅に加速した。20~ 30年の長期スパンで考えられていたものが、準備の整わないうちに一挙に押し寄せて来たといえる。鉄道事業者の減収、投資減、鉄道産業全体の規模縮小が短期間に終息し、その後にV 字回復するとの希望は、働き方を含めた社会構造や利用者の意識変化により打ち砕かれるであろう。それから次の五つのシナリオが考えられる。
一つ目は、鉄道事業者がコスト削減を推進する。
列車運行本数の削減や終電車の繰上げで対応しようとしても、かつてのような通勤電車の混雑は許容されず、ソーシャルディスタンス確保の観点から大幅な削減はできない。混雑率目標150%どころか、100%も難しいかもしれない。残る手段は、運賃値上げ、要員削減及びコスト削減となる。運賃値上げには自ずと限界があり、ポストコロナでは車掌省略、ドライバーレス運転導入、駅の無人化や保守の省力化がより一層推進されるであろう。それらと並行して、管理部門の要員削減も必須であり、技術部門も例外ではなく、むしろアウトソーシングの標的となりかねない。同時に、JR 各社からの資金拠出に頼っていた公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下「鉄道総研」という)も深刻な影響を受け、鉄道事業者共通の技術基盤をどのように維持するかも問われる。
二つ目は、鉄道事業の機械化、システム化が推進される。
少ない要員で従来からの技術を継承し、さらなるコスト削減、要員不足に対応した機械化・システム化の推進、パンデミックの影響を最小限とするレジリエントな列車運行システム導入及び新たな需要開拓のための技術開発を進めなければならない。主なものとして、アウトソーシングに対応した技術管理手法の開発、清掃・保守作業の機械化、ドライバーレス運転、駅の無人化やチケットレス化などが考えられる。
三つ目は、新たな技術の安全評価が要求される。
上記の機械化・システム化推進と合わせ、工事や列車運行も含めたトータルの安全確保のため、鉄道システム全体を対象としたハザード分析、リスクアセスメント及びマネジメントが必要となる。詳しくは本文中で述べるが、現行の技術規制は個々の技術分野を対象とし、システム全体の安全評価に課題を残している。
四つ目は、市場変化に適応する鉄道システム及び車両の新しい調達ルールが必要となる。
EUとのEPA協定発効に伴い、鉄道車両及び鉄道システムの調達は欧州企業に開放された。RCEP やTPP もそれに続くので、鉄道事業者のコスト削減が進めば、外国企業からの調達も選択肢となる。それらに加え、鉄道事業規模の縮小により鉄道事業者の投資額即ち発注額も減るので、国内の鉄道産業の再編成は避けられなくなる。その結果、車両や鉄道システム調達のルールも参加者も大きく変わり、それに合わせた調達方法が求められる。
五つ目は、鉄道システムのハード及びソフトの海外への輸出を促進する。
地球温暖化対策は待ったなしであり、パリ議定書で削減目標が提示され、日本も2050年カーボンニュートラルを打ち出している。それを実現するため、大都市圏の交通を自動車から鉄道に転換する必要が多くの国で認識され、多くの都市交通プロジェクトが計画されている。
鉄道事業者、車両メーカーをはじめとする鉄道産業も、国内での事業規模縮小を補うため、その存続をかけて拡大する海外案件受注にしのぎを削ることとなる。そのための体制整備が急がれており、日本の技術が海外で通用するかが課題となる。
上記のシナリオに対応して、「日本の鉄道技術は世代を超えて継承・発展が可能か」、「コロナ後の新しい要求に応える技術をどのように実現するか」、「新技術及び新工法の安全評価をどのように行うか」、「海外企業も対象とする新しい調達方式と設計・製造監理のルールはどうあるべきか」、「日本の鉄道技術は世界に通用するか」の課題が提示される。
本書は最初に国内の技術規制、次に欧州の技術規制を紹介し、コロナ後に要求される技術体系を示した後、上記課題について考察する。その中で、日本の鉄道市場の特異性と変化、既存の技術規制によらない新技術の登場、品質確保のための鉄道事業者及び請負者による設計から完成検査に至るプロセス監理及び事前安全計画の重要性、プロセス監理のツールとしてのRAMS 規格の概要を紹介し、車両を例に、鉄道システム開発プロセスの各段階にRAMS 規格によるプロセス監理の手法をどのように適用するかを示す。特に、RAMS規格はRAMとS(安全)の二つに分かれ、S に係る作業プロセスが事前安全計画の骨子となっており、セーフティケース(安全証明、Safety Case)作成の手順を示している。
本書は拙著『海外鉄道プロジェクト1』及び『鉄道システムインテグレーター2』の続編として、上記五つの課題を考察したものである。ここでは車両と車両基地設備を例としているが、電力供給や信号システムの設計・製造・設置のプロセスにも適用可能であり、細部はそれぞれのシステムで用いられている手順及び手法に置き換えて読んでほしい。
本書の読者として、二つのグループを想定し
ている。一つは、既に国内鉄道事業もしくは産業に従事し、新たな技術導入を計画している方。次は、海外鉄道プロジェクトに参画し、技術仕様書及び提案書作成を計画している方。もちろん、それ以外で、車両開発プロセスやRAMSに興味をお持ちの方も大歓迎である。

【目次】
第1部 鉄道システムの調達と安全認証
 第1章 国内鉄道の技術規制
 第2章 欧州における技術規制
 第3章 コロナ後に要求される技術
 第4章 世代を超えた技術の継承・発展
 第5章 新技術及び新工法の安全評価
 第6章 日本の鉄道技術の海外展開
 第7章 鉄道システム調達ルールの変化
 第8章 RAMS規格の概要
 第9章 車両調達の概要
 第10章 車両保守及び設備計画の概要

第2部 RAMS規格のライフサイクルフェーズ  フェーズ1 構想(コンセプト)
 フェーズ2 システム定義及び適用条件
 フェーズ3 リスクアセスメント
 フェーズ4 システム要求事項
 フェーズ5 システム要求事項の割当
 フェーズ6 設計及び実行
 フェーズ7 製造
 フェーズ8 設置(インストレーション)
 フェーズ9 システム完成検査
 フェーズ10 システム受取
 フェーズ11 運転及び保守
 フェーズ12 性能監視
 フェーズ13 変更及び改修
 フェーズ14 使用終了及び廃棄
 ライフサイクルフェーズのまとめ

第3部 車両調達のステップ  ステップ1 計画
 ステップ2 基本設計(入札準備)
 ステップ3 安全認証方法選択
 ステップ4 入札図書作成
 ステップ5 入札及び契約
 ステップ6 設計準備
 ステップ7 設計基礎資料準備
 ステップ8 設計方針確認
 ステップ9 実施設計
 ステップ10 製造
 ステップ11 完成検査
 ステップ12 輸送
 ステップ13 受取
 ステップ14 安全認証取得
 ステップ15 運転及び保守
 ステップ16 変更及び改修
 ステップ17 使用終了及び廃棄

第4部 車両保守及び設備計画のステップ  ステップ21 計画
 ステップ22 基本設計(入札準備)
 ステップ23 安全認証方法選択
 ステップ24 入札図書作成
 ステップ25 入札及び契約
 ステップ26 設計準備
 ステップ27 設計基礎資料準備
 ステップ28 設計方針確認
 ステップ29 実施設計
 ステップ30 調達及び製造
 ステップ31 輸送
 ステップ32 設置
 ステップ33 受取
 ステップ34 運転及び保守
 ステップ35 変更及び改修
 ステップ36 使用終了及び廃棄

第5部 附属資料  アネックス1 用語の定義
 アネックス2 新幹線は何故半世紀以上事故を起こさなかったのか
 アネックス3 RAMS指標の意味
 アネックス4 予備ハザード分析と防災計画
 アネックス5 ワンマン運転/無人運転の条件
 アネックス6 システム間のインターフェース
 アネックス7 安全管理システム(SMS)
 アネックス8 輸送需要と車両編成及び性能
 アネックス9 車両設計要求事項
 アネックス10 車両基地のエンジニアリング
 アネックス11 車両の基本設計からPSへの展開
 アネックス12 車両基地設備の基本設計からPSへの展開
 アネックス13 JR東日本E231系の開発コンセプト
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