『社長の覚悟ー守るべきは社員の自尊心ー』

  • 2015.04.14 

「社長の仕事は人を育てること」、多くの社長が言っている言葉だけど、実際はどうだろうか? 中小企業の場合、人が一人かけると、周りへのしわ寄せは大きい。いいと思って採用しても、すぐに辞めたり、思ったよりも仕事ができなかったり。入れ替えがしょっちゅうなんていう会社は多いだろう。それでも採用できればいいけど、なかなか応募がないところも多いと聞く。

中小企業でしかもオーナー企業だと社長の色が全面に出る。良くも悪くも社長の気持ち一つで、会社が動く。良い方向に動いてくれればいいけど、必ずしもそうではない。そんな社長に限って言うのが「社員が自発的に動かない」と。そりゃ、社長の気持ち一つであれやこれやと動いて、そしてあっちにもこっちにも首を突っ込んでいれば、社員は「社長がやってるから」となって、言われたことだけをやるようになる。原因は明らかなのである。

本書ではそんな「動きすぎの社長」への警笛を鳴らしている。特にオーナー企業で20年、30年以上と長く続いている会社によく当てはまるのではないだろうか。「自分が動かないと会社は回らない」と思っているオーナー社長は多い。本当にそうだろうか? では、社長が突然倒れたらどうするのか? そのまま会社も倒産? それでは会社というよりも、「私物」と言ったほうがいい。会社は社会に貢献してはじめて意味をなす。それが社長一人が倒れただけで、会社も倒れてしまうようでは、なんと貧弱な組織だろうか。

そうならないためにも、社員を育て、社員自ら動いていけるような環境づくりをしようというのが、この本の内容。方針は打ち出すけど、方法は社員が考える。仕事を任せるけど、口は出さない。見守るということ。そして大事なことは、「社長と社員では土俵が違う」という認識を、社長は持つべきである。社員はそれはわかっている。わかっていないのは、社長一人なのである。

社員にも自分と同じ目線を求める社長は多いけど、社員にはわからない。よく「経営者マインドをもって」というけど、それは無理な話。そんなマインドを持っていたら、とっくに起業しているだろう。ここで大事なのは社長は社員の目線へと下りていくことなのである。社員たちが何を考え、どう思っているのか察してあげること。そして問題があれば、寄り添ってあげること。口は出さないけど見てるという姿勢が必要なのである。

働きやすい環境、話をしやすい環境、楽しい環境をつくることが社長が社員にしてあげる大事なこと。あれもこれも口出さない。グッとがまん。中小企業のオーナー社長は、これをきちんとできれば、会社は安定していき、常に社員に社内に厳しい視線を送る必要がなくなるだろう。