南極観測60年 南極大陸大紀行ーみずほ高原の探検から観測・内陸基地建設・雪上車の開発ー


著者名: 南極OB会編集委員会 編
ISBN: 978-4-425-94861-1
発行年月日: 2017-05-28
サイズ/頁数: A5判 264頁
在庫状況: 在庫あり
価格(本体価格)

2,592円 (2,400円)

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前人未到の南極大陸内陸地域。気象条件が厳しく、生物が生息せず、目印さえほとんどない地域を、どのように切り開き、どんな成果が得られたのか。苦難の探検から衣・食・住に至るまで、隊員自ら語った貴重な記録。

【はしがき】より
本書は南極観測60周年を記念して、観測開始以来の南極大陸内陸域探査、観測の歴史をまとめたものである。
 1912年1月、日本の白瀬南極探検隊は野村直吉船長の卓越した航海指揮によってロス海奥のロス棚氷に到達し、上陸に成功したが、当時、ロス海周辺は南磁極探査に赴いた英国海軍のジェームス・C・ロスの1839~43年の探検によって、南極大陸の中でも地理・地形・海図が詳しく明らかにされた特別な地域であった。当時の地図によると、南極大陸の海岸線の60%はその位置も不明であった。こうした状況は第二次大戦終了時まで続き、戦後1946~47年に行われた米国海軍による歴史上最大の南極探検(ハイジャンプ作戦)によって初めて大陸の正確な輪郭を人類は知ったのである。
 南極大陸が地球科学上の空白域として残されていることは当時の地球科学の進歩からみて放置されざる状況であった。1882~83年から始まり、50年毎の国際極年の第三回目を二五年に縮め、1957~58年を「国際地球観測年(International Geophysical Year )(IGY))」として国際共同観測を行うことになり、わが国も南極にIGYのための観測隊を送り込んだのである。
 1957年1月、昭和基地が東南極大陸リュツォ・ホルム湾のオングル島に建設されたとき、そこから東方に望まれる宗谷海岸の氷縁とその奥の氷原は前人未踏の地「地図の空白部」であった。
 IGYは全地球的観測計画であるが、特に南極大陸の地球物理学的解明に重点が置かれた。中でも南極大陸内陸部の地理、地形、気候、氷床の状態に関する情報を得ることが最大の課題であった。こうした国際共同観測への対応がわが国の南極観測開始時に課せられていたのである。
 昭和基地は気象、地磁気、極光・夜光、潮汐等の海洋情報など地球物理学的定常的観測を行う観測点であることが
第一の目的であり、基地設立後、現在に至るまで高精度観測が実施されてきた。
 IGYで計画された南極大陸内陸域自然の解明は当時のわが国にとって容易な課題ではなかった。その理由の第一は内陸探査に必要な設営的設備、知識が当時の我が国の観測隊にとっては十分に備わっていなかったのである。雪国を擁すわが国には国産の雪上車があり、南極に持ち込まれたが、耐寒性、牽引力は南極の厳しい自然条件に対応したものではなかった。
 特に「宗谷時代」にあっては南極観測船「宗谷」の氷海航行能力は十分ではなく、たまたま第一次観測隊はリュ
ツォ・ホルム湾の氷状が砕氷航行にとって有利な状態であり、「宗谷」はオングル島近くまで接近できた。しかし、第二次隊以降は観測船の進入を許さず、第三次隊以降は輸送をヘリコプターに委ね、辛うじて越冬隊の送り込みを果たせたような状況であった。こうした状況は内陸探検隊にとって、雪上車不足、燃料不足等をもたらし、「宗谷時代」の内陸探査、調査は大変な苦労を強いられたのである。
 現在、「宗谷時代」の内陸探査に従事された方々の多くは鬼籍に入られ、本書では当時の関係者が直接執筆された
紀行を含むことはできなかった。しかし、この時代の内陸探査、調査はその後の内陸探査、観測に大きな影響をもたらした。Ⅰ章では当時の活動の詳しい記録が『総説』の形で記されている。
 南極観測再開後は南極観測船「ふじ」、「しらせ」などの輸送能力も高まり、また高性能な国産雪上車の開発も進
み、内陸調査の活動域も飛躍的に拡大し、内陸基地も南極大陸気候系に対応した観測プラットフォームとして整備さ
れた。
 本書にはこうしたわが国南極観測60年の、昭和基地南方に広がる「みずほ高原」の自然解明の足跡を、内陸探検から観測の歴史として、それぞれの時代の内陸旅行隊のトラバース記録を紀行の形で示した。トラバースとは本書では内陸横断施行を意味する。多様な活動を実態に沿った記録として残すために紀行の組み立てには様々な工夫が凝らされている。コラムには内陸トラバース中のエピソード、オペレーションの様々な仕組みなどが記されている。それらを通し本書の全体から南極大陸内陸域での60年にわたる当時の若者たちの活躍を読み取っていただければ幸いである。

平成29年4月
渡辺興亜(編集委員を代表して)

【目次】
Ⅰ 『宗谷時代』の内陸探検から昭和基地ー南極点旅行(渡辺興亜)
 コラム1 内陸装備(横山宏太郎)
Ⅱ 白瀬氷河流域測量トラバース(成瀬廉二・横山宏太郎)
 コラム2 トラバース航法(横山宏太郎)
 コラム3 内陸旅行の食料(横山宏太郎)
Ⅲ みずほ高原東部広域トラバース(渡辺興亜・吉村愛一郎)
 コラム4 ナビゲーターの記録1
     ーサンダーコック・トラバース(ナビゲーター)ー(石本惠生)
 コラム5 ナビゲーターの記録2
     ーサンダーコック・トラバース(医療︑気象観測︑映像記録担当)ー(福嶋泰夫)
 コラム6 ナビゲーターの記録3ーハイランド・トラバースと天測ー(佐藤和秀)
 コラム7 霧岳発見(吉村愛一郎・渡辺興亜)
Ⅳ ランバート氷河源頭トラバース(佐藤和秀)
Ⅴ 等高線トラバース(大前宏和)
Ⅵ ドームふじ頂上探査トラバース(神山孝吉・奥平文雄・上田 豊)
Ⅶ ドームふじ基地建設旅行(庄子 仁・白岩孝行・齊藤隆志・斎藤 健)
 コラム8 旅行隊医療(大日方一夫)
Ⅷ 日本︱スウェーデン共同トラバース(榎本浩之・福井幸太郎)
Ⅸ 氷床コア掘削旅行(成田英器・山田知充・奥平文雄)
Ⅹ 内陸トラバースに使われた雪上車(石沢賢二・竹内貞男)
 コラム9 内陸旅行中の事故(渡辺興亜・大前宏和・安仁屋政武・成瀬廉二)
Ⅺ セールロンダーネ山域調査(岩田修二・安仁屋政武)
 コラム10 隕石採集(成瀬廉二・小島秀康)
Ⅻ わが国の南極雪氷広域観測計画の歴史(渡辺興亜・成瀬廉二)
ⅩⅢ みずほ高原広域雪氷観測の成果(渡辺興亜・成瀬廉二・高橋修平)
 引用・参考文献一覧
 資料:内陸探査・調査一覧(佐藤和秀・渡辺興亜
 編集後記

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