地球を救うメタルバイオテクノロジー -微生物と金属資源のはなし-


著者名: 山下光雄・清 和成 編著
ISBN: 978-4-425-80001-8
発行年月日: 2014-06-20
サイズ/頁数:
在庫状況: 在庫あり
価格(本体価格)

3,456円 (3,200円)

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「産業のビタミン」といわれるレアアースから、土壌汚染が問題となっている放射性セシウムまで、ベースメタルや半金属の回収技術に着目した最新の研究事例を一挙公開。

【巻頭インタビュー・山下光雄先生】
一石二鳥の新技術が地球を救う!


 本書の代表編者の1人・芝浦工業大学の山下光雄教授に、メタルバイオテクノロジーについてうかがいました。新しい技術の応用方法や学問としての魅力とは・・・。さらに、これから学ぶ学者へのメッセージも語ってくださいました。

◆金属は生命を構成する重要な元素
ーまず、タイトルにもなっている“メタルバイオテクノロジー”とはどんな技術ですか。

山下光雄教授(以下、山下):
メタルバイオテクノロジーとは我々研究者が創作した造語です。メタル(金属)とバイオテクノロジオー(生物工学)という一見関係がなさそうなものを1つにしてどう表現できるかと考えました。微生物や植物など、有機物である生物も、無機物である金属に対して多様な代謝作用(吸収・備蓄、酸化・還元、メチル化などの有機化、抽出、不溶化、揮発化、吸着・結合など)を持っています。これらの生物作用を環境浄化、資源回収、金属加工、材料劣化防止、新金属材料開発など幅広い分野で活用する技術がメタルバイオテクノロジーです。

そもそも、バイオテクノロジオー(生物工学)とはどんな学問なのでしょうか。
山下:
生物工学とは生物やその機能(遺伝、成長、物質代謝、情報認識)を産業社会に効率よく利用する技術です。生物利用工学とか、生物資源利用学というように言い換えることもできます。生物反応は未開拓な分野で、制御することが難しいという反面、日々新しい反応、情報や材料を得る可能性を秘めています。

ー可能性が広がりますね。ところで、なぜ微生物は金属を代謝するのでしょうか。私たち人間は金属なんて食べませんよね。
山下:
実はヒトにとっても半金属であるセレンが生命の維持に必要な元素(必須微量元素〕の1つです。海水中には多種多様な金属や元素が存在していますが、生物は海から誕生したと言われており、金属は生命・生物の一部を構成している重要な元素なのです。

◆生物と金属の関係性を探求し、駆使する
ー先生が思うメタルバイオテクノロジーのおもしろさは何ですか。

山下:
私がメタルバイオテクノロジーに興味をもったきっかけは、マメ科植物とその根にすむ微生物(根粒菌)の共生関係を利用して土壌中の重金属を浄化するという研究でした。社会に役立てるために身近にある植物や環境微生物を育てることに興味を持ちました。一見無関係と思われる生物と金属が、相互関係を深め合っています。その関係を探求し駆使することは、魅力的な研究テーマだと思います。

ー他の金属回収に比べ、微生物を利用するメタルバイオテクノロジーの優れている点は何ですか。
山下:
既存の物理・化学的プロセスは一概に省資源・省エネルギー性や経済性が高いとはいえません。高温・高圧下や強酸・強塩基等の厳しい反応条件を用いることから環境適合型でもありません。これに対して、特異的な生物学的プロセスを用いるメタルバイオテクノロジーは標的とする金属類が低濃度・低含量であり、複雑な物質が混入しているような環境中や排水・廃棄物中での反応では、物理・化学的プロセスに比べて明らかに有利であると思います。

ー金属は人間社会にどのように関わっているのですか。
山下:
昨今のハイテク産業を支えるレアメタルは「産業のビタミン」と呼ばれており、重要な元素です。燃料電池などにも使われているので、普通に暮らしていても知らずしらずのうちに私たちは多種多様な金属元素と関わっています。

ーメタルバイオテクノロジー身近なところにも応用できる技術なのですね。先生がいま特に注目されているトピックスはありますか。
山下:
排水や廃棄物中に含まれている有価金属を生物作用によって新素材に変換する技術です。実用化できれば、資源の乏しい日本の基幹技術になるでしょう。循環型社会形成が構築でき、世界各国のお手本となると思います。
ーまさに「地球を救う」技術ですね。

◆金属資源ときれいな環境、一石二鳥を目指す
ー先生はこの本を誰に読んでもらいたいと思いますか。

山下:貴金属や稀少金属を含むメタルに興味を持っている社会人や学生さん達がバイオテクノロジオーを勉強するため、反対にバイオテクノロジオーに興味を持っている社会人や学生さんたちがメタルを勉強するために手に取っていただければと思います。

ー学生さんも読者ということですし、将来的な展望について聞かせてください。メタルバイオテクノロジーが目指す未来は、どんなものですか。
山下:
メタルバイオテクノロジーの具体的な応用の出口は、金属含有排水・廃棄物処理、土壌等汚染環境の修復などの環境保全技術、および排水・廃棄物や汚染環境中からの有価金属類の回収・資源化であると思います。排水や廃棄物からの金属類の回収・資源化は、環境保全と資源回収の両立を可能とする一石二鳥の技術であり、地球環境に優しい生物学的プロセスを用いるメタルバイオテクノロジーで代替することができれば、持続産業の構築にも貢献することができると思います。

ー最後に、本書を読んで学ばれる方にメッセージをお願いします。
山下:
メタルバイオテクノロジーは既存の思考プロセスからでは想像できないような新しい反応や材料を獲得できり可能性を秘めています。日々新しい微生物が発見され、さらに代謝反応、遺伝子や酵素の存在も明らかにされています。若い方々によってメタルバイオテクノロジーがより一層、研究開発・実用化されていくことで、環境悪化と資源枯渇問題が解決されることを大いに期待しています。

【目次】
巻頭インタビュー
第1章 プロローグ

第2章 メタルバイオテクノロジー
 2.1 メタル
 2.2 レアメタル
 2.3 メタルと環境
 2.4 メタルリサイクル
 2.5 メタルバイオテクノロジー

第3章 メタルバイオテクノロジーの応用
 3.1 レアメタル回収
  3.1.1 インジウム
  3.1.2 微生物代謝を用いた水中からのセレン・テルルの回収
  3.1.3 貴金属
  3.1.4 ウラン
  3.1.5 公募の細胞表層デザインによるレアメタル吸着・回収システム
  3.1.6 微生物によるマンガン酸化物の形成とレアメタル回収への応用
  3.1.7 バイオマテリアルを利用したレアアースの回収
 3.2 環境修復
  3.2.1 金属による土壌汚染の現状
  3.2.2 自らの金属除去~上水と廃水
  3.2.3 放射性同位体
  コラム 植物による放射性セシウムの浄化は実用的か?
  3.2.4 環境汚染金属
 3.3 新素材創出
  3.3.1 セレン・テルル半導体材料
  3.3.2 バイオマシニング
  3.3.3 磁性細菌の機能を利用したナノ磁性材料の合成技術
  3.3.4 バイオナノ分子材料
 3.4 その他・分析技術
  3.4.1 転写スイッチの機能に基づく有害金属バイオセンサー
  3.4.2 重金属用バイオメタルセンサー~遺伝子組換え酵母を用いたカドミウムバイオセンサー~
  3.4.3 ゲノム情報とアルカリ金属カチオンの輸送タンパク質
  3.4.4 金属タンパク質
  3.4.5 バイオメタルの状態解析

第4章 効率化・事業化への課題と展望
 4.1 はじめに
 4.2 バイオリーチング
  4.2.1 バイオリーチングとは
  4.2.2 バイオリーチングプロセスの実態と普及した理由
  4.2.3 カセロネス鉱山
  4.2.4 バイオリーチングの今後の課題
 4.3 メタルバイオテクノロジーの実用化にむけて

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