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2015年12月24日  

第7回 海上保安大学校女子学生インタビュー

第7回 海上保安大学校女子学生インタビュー
四方を海で囲まれた海洋国家である日本は、貿易や漁業により海の恵みを得る一方、海難や密猟・密航といった海上犯罪、領土や海洋資源の帰属について国家間の主権主張の場となるなど、様々な事案が発生しています。これら海上の安全確保を任務としているのが海上保安官です。海上保安官の仕事は、海の上で行われているため一般の方にはあまり知られていない存在でしたが、映画「海猿」、尖閣諸島領有権問題、小笠原諸島沖で中国漁船によるサンゴ密猟のための領海侵入などで海上保安官の活躍が報道され、海上保安官の存在が知られるようになりました。
海上保安大学校は、海上保安庁の幹部職員を養成するための機関であり、全寮制を基盤とした独自の教育環境の下、広範囲にわたる海上保安業務を全うできる人材育成のための教育訓練を行っています。
海上保安官を目指す海上保安大学校3年生の女子学生にお話を聞いてきました。

★1日のスケジュール

6:30に起床、6:35までにベッドメイクをして起床整列します。

6:35から体操、掃除をして7:10から朝食です。

8:15に課業整列となります。

午前の授業は8:45から開始され12:00~12:45が昼食
午後の授業は13:00~16:15となります。

水曜日と金曜日は、14:30に授業が終わるので、その後は部活動へ行きます。
   
課業終了が17:15ですので、そこから18:15までに夕食を取り、その後19:00から22:15まで自習時間が設けられています。17:15からは、外出も認められています。22:15からは、掃除を行い22:30から消灯巡検となります。その後、特に必要と認める場合は1:00まで勉強が認められているので、希望者は自習室で勉強しています。

■海上保安大学校を選んだ理由を聞かせてください

竹本: 将来やりがいのある仕事をしたいと思っていて、父が商船学校で船に乗っていたため当時の話しを聞きながら、海上保安官に憧れを持ち全寮制で規律ある寮生活が送れ必ず海上保安官になれるので希望しました。

村松: 小さいころから水泳を習っていて、海上保安官に役立つかなと間違った解釈をしていたのかもしれませんが、水泳が好きだったので海上保安官になりたいと思いました。

坂東: 「海猿」を観て人の役に立つ仕事に就きたいなと漠然と思っていたのですが、高3のとき公安職を受験していく中、海上保安庁で将来働きたいと思い選びました。

川合: 小学校、中学校と剣道をしていたのですが、その時、指導に来られていた方の中に海上保安官がいて、初めて聞く職業だったので海上保安官とは何をしているのかと思いました。指導に来られていた方は船に乗っていましたが、そのような職業もあるのだと思いました。子どもの頃に巡視船の体験航海をしたことがあり、その際に「海ってすごいな」と思い、その当時の作文は何でも船のことについてよく書いていたので、海に関係する仕事が良いのかなと思い受験しました。


神田: 小さいころから公安職に憧れていて消防士や警察官はカッコいいなと思っていました。私の父が海上保安官なので小さいころから父の姿を見て育ち、弟が海上保安官になろうとしていたので私も志望しました。


今岡: 小さいときにアメリカに住んでいたのですが、その時アメリカの沿岸警備隊の方を拝見する機会があり、子ども心にカッコいいと思いそのイメージをもったまま日本に帰ってきました。日本でも同じ職業があることに気づき高校生の時、海上保安大学校があることを知り目指しました。

■海上保安大学校の魅力をあげるとしたら何ですか?

竹本: 他の大学では経験できないようなことができ、同期も友達より仲間という関係が築けることが魅力だと感じます。オリエンテーションの時、何も分からず全力でやりきった一週間ですが、助け合えるのは同期だけだと感じました。また、その後の訓練、乗船実習も同期の絆を感じる機会となりました。

村松: 同期が仲間というのもありますし、寮生活をしていると規律正しい生活ができるのでとても良いと感じています。

坂東: 縦横の繋がりが強いと感じます。毎日の生活の中で何をするにしても、いつも一緒で何かあった時に助けてくれるのは、同期であり先輩後輩なので同世代の大学生よりも濃い人間関係で生活しています。それが一番の魅力ですね。

川合: 自分がやりたいと思えば何でもできるところですね。勉強、部活などは時間がきちんと決まっていて終われば、その後は寝るまで何をしていても自由なので、使い方次第で自分がやりたいと思えば何でもできます。お給料をいただいていることもあり、資格が取りたいと思えば自由に取りに行けますので、自分のやる気さえあれば何でもできることが魅力だと思います。

神田: 規律正しい生活をしている分、勉強をする時間が取りやすく、勉強の機会が与えられているので自由に勉強ができ、教官の数も多いのですぐ相談に行けます。やりたいと思えば教官と相談の上でやりたいことは何でも教えていただけます。

今岡: 海上保安大学校という少し特殊な学校ですので、全国から同じ目標に向かっている仲間が集うという点では、切磋琢磨し合える仲間でもあり、ライバルでもあり、いろいろな面で互いを刺激し合える仲間が集う場所というのは一般の大学よりはやりたいことを追求し合え、また、自分ができないところを助け合える仲間は大事だと思いますし、助けてほしいときに支えてくれる仲間ができることが魅力ですね。

■現在の学生生活で苦労していることを教えてください

竹本: 高校時代まで何も運動したことがなく、受験する前もジムに通って体力をつけて腹筋ができるようになり受験しました。それほどに運動ができないのでスポーツに苦労しています。それでも、自分が一生懸命になれる場所があって、同期の助けがあって、苦労も多少あるのですが、頑張って乗り越えることができています。5キロの遠泳が行われる前は、プールで先輩が夜の8時まで練習に付き合ってくれ、お蔭様で泳ぎ切ることができました。部活では逮捕術部に所属しています。もちろん、武道経験もなく、うまくいかないことがほとんどですが、一所懸命頑張っています。

村松: 勉強が苦手なので3年生まで上がるのに苦労しました。でも、今回の乗船実習を終えて船のことが分かってきたのでこの先、勉強を頑張っていけるかなと思っています。苦手なのは法律と数字です。機関科なので数字が多く出てくるのですが、ため息がでて「は~」となってしまいます。


坂東: 体格にも恵まれていて、体力的には苦労したことはないのですが、勉学の方で苦労しています。分からないことがあるといつも同期に聞きに行くのですが、やっていることの手を止めてまで教えてくれ、良い同期を持てたことで仲間を頼りつつ、助けられています。

■乗船実習では、座学との違いを感じましたか?

川合: 大学校の座学では電気回路などを教わるのですが、乗船して機械の故障を直したりするのに座学の内容が役に立ちました。また、座学では教わらない通信科がどのような仕事をしているかが分かり、卒業したらどのような仕事を行うのかが分かりました。今は、苦手な座学で緻密な計算をしたりプログラムを書いているのですが、将来に活かせると思い乗船した時のモチベーションを維持しながら勉強を頑張っています。

神田: 乗船した際は、「こじま」のように大きな船を操船したことがなく、初めてのことばかりで大変だったのですが、座学で学んだ法律等を使って航行するので、授業で教わったことが乗船実習でこのようなところで活かせるのだと思い、理解が深まりました。

今岡: 座学と乗船実習のリンクが取れたかなと思います。座学で習っていたことはすべて頭に入っているわけではなく乗船実習に入るのですが、乗船している際にあの時習ったこと、勉強したことがここで使われているのだという発見が楽しいと思えました。自分が座学で習ってきたことが実習で使えることに感動しました。

■実際に乗船してみてどうでしたか?

竹本: 先輩方が苦労されていたので本当にやりきれるのか不安でしたが、実際に乗船してみると乗組員の方が丁寧に教えてくれ、自分が努力すればちゃんと見ていてくれるので、やる気が上がりました。

村松: 私も乗船する前は、怒られっぱなしなのかとマイナスのイメージを持っていて、いざ乗船してみたら主任の方達も怒るのですが、それは私たちができるようになるためであって結局は教えてくださり、ただ怒られるということではなかったので自分のためになりました。怒られたときも自分ができていなかったことだと思い、あとで反省しました。

坂東: 乗船する前は楽しみ2割不安8割だったのですが、始まってしまうとやるしかないなと思えてきたので、何事も怒られてなんぼかなと思いました。よく現場に出られた上級生の方から「怒ってくれる人がいる内が花だよ」というお話しを伺っていたので、3学年は何度怒られても、怒られている間にこそ、いろいろ失敗をして、できるだけ多く吸収できればいいなと思います。自分ができなさすぎて悔しい思いもしましたが、それも今後に活かせればと思っています。

川合: 通信科なので外が見えないところで天気図を書いたり無線を聞いていたりしていたのですが、南回りで寄港した際に夜、外へ買い物に出て戻ってくるとき、停泊灯が点いていた「こじま」がきれいだなと思いました。乗船実習が終わりに近づくと、自分たちでここまで動かしてきたのだなという達成感と共に夜、ライトアップされている「こじま」を見て、きれいだな~という新たな発見がありました。

神田: 夜、航海で見張りをするのですが、その際に星空がとてもきれいで星が灯台の光と間違うくらいきれいに見えました。昼間の見張りでは、乗組員の方が「イルカが見えるぞ~」と教えてくださり、イルカの大群に遭遇しました。

今岡: 私も航海科なので星がきれいでした。船の最上部に出て空を見渡し、雲量や天気を見て航海日誌に記入するのですが、星空が本当にきれいで見入ってしまいました。

■乗船中は、緊張の連続ですがその中での楽しみはありましたか?

竹本: 何回か寄港地に入るのですがそちらでの食が楽しみです。

■現場へ出て目指すこと、夢は何でしょうか

竹本: 英語をもっと勉強して海外へ出て世界のコーストガードと訓練し、いろいろな人と接することができるよう頑張りたいと思います。

坂東: 現場に出たら言うことと行動が一致している人になりたいです。上からも下からもこの人に任せておけば大丈夫だろうという人になりたい。

■船での仕事は危険を伴いますが、女性保安官として働くことについては、どのように思いますか?

川合: 乗船実習ではそれほど苦労もしなかったので、それは同期だけということもありましたが、今、船の中では女性専用の場所もあるのでとくにそのような心配はありません。

神田: 力が弱いので作業の際に、女子では至らないこともあるので、どうしても男子にお願いすることになり、悔しいと思いますが男子も手伝ってくれるので不安はありません。

■最近は女性保安官の先輩方も各地で活躍されていますが、女性として将来への不安はありますか?

竹本: 入学する前は、このような職場なので結婚したら退職を考えていましたが、最近は結婚後の復職、転勤についてなど女性が働きやすい制度が整ってきていますし、最近、先輩の女性保安官からお話を聞く機会もあり、それについての不安はなくなりました。

■海上保安大学校を目指す方へ勉強方法も含めてメッセージをお願いします。

竹本: 私のように女子で体力がなくても入学してから頑張れるので、体力に自信がなくて諦めようかなと思っている人でも、自分の努力と周りの助けで続けられるところであるので、是非、目指してほしいと思います。

村松: 一般の大学では得られない同期との絆が見つけられる学校です。受験するときは、過去問を解いて公務員の試験勉強をしました。

坂東: 受験勉強としては、公務員の専門学校へ夜間通っていて対策はそちらの学校でしていました。でも、これだけ勉強していて本当に受かるのか、意味があるのか、ふと思うときが2・3回あって、勉強している中で何度も心が折れそうになりました。そのような時は、海上保安大学校のパンフレットを見て自分が制服を着ている姿を想像していました。自分が将来働いている姿をイメージすれば自然とやる気が出てきたので、心が折れた時は試してほしいです。公務員ということでお給料をいただいていますので実家へ帰省した時は、親を食事へ連れて行くことができ、離れている分、家族の大切さがよくわかり親孝行ができているかなと思います。

川合: 受験勉強に関しては、一般科目は高校の勉強を頑張れば大丈夫かなと思います。公務員関係の試験があるので、私は専門学校の無料セミナーに通っていました。とても分かりやすく情報もいただけるのでお薦めです。あとは過去問をひたすら繰り返すことかなと思います。訓練等は厳しいですがイベント事も多いのでその際は、学年問わず学校が一体となってひとつのことを成功させ、その後に「よかったね」と全員で分かち合えることができます。一般大学だと全校生でまとまって行うこともそれほどないので、そのような貴重な体験ができます。

神田: 私の勉強法は、公務員試験以外の部分は普通に国立大を受験する勉強を行い、公務員試験については予想問題集などを購入してたくさんのことを覚えました。やはり、いかに多くのことを覚えるかが大事だと思います。

今岡: 国公立大の勉強プラス国家公務員の資格を取るための本を購入して独学で勉強しました。私も心が折れそうになった時が幾度かあったのですが、オープンキャンパスに申し込み学校に直接来て、入りたいという思いを高め、戻ってまた勉強に取り組みました。海上保安官になりたい方は是非、来ていただきたいですし、様々な訓練もあり同期と協力しないと乗り越えられないような壁もありますが、自分がどういう人間なのかというのは、苦難に追い込まれたときに知ることができますし、自分の可能性もきっと知ることができるので自分を高められると思います。

【編集後記】

今年は、6名の学生がインタビューに応じてくれました。海上保安大学校を選んだ理由はさまざまですが、「人の役に立つ仕事に就きたい」「将来やりがいのある仕事をしたい」「公安職はカッコいいと思った」きっかけはみんな違っても入学後の目標は同じであるので、先輩後輩、同期に助けられ絆が深まっていき、幅広い分野で学べ、他の大学では経験できないことが多くあるとのこと、海上保安大学校の魅力はここにあるようです。全寮制なので24時間いつも共に行動していく中、何かあった時に助けてくれるのは学校の仲間だと話してくれました。海上保安大学校は、将来の海上保安庁の幹部職員として海上保安業務を遂行するために必要な学術及び技能を学び、学年ごとに勉強のレベルが上がっていきますので、その辺で苦労をしていることもあるようです。でも、そのような時も同期がいつでも教えてくれることで助けられているとのことです。
女性の活躍する場が広がっている中、海上保安庁では、女性保安官が長く働けるように様々な取り組みを行っています。育児休業申請期間の延長、出産後復職した際の時短勤務の利用など制度がかなり充実し、働きやすくなっていますが、実際に現場へ出ていない学生にとっては不安が残る中、最近、先輩の女性保安官からお話しを聞く機会があり、不安が解消されたと仰っていました。乗船中は、男子に助けられることもあるけど分け隔てなく同じ仕事を与えられるところであり、不安はありませんと話してくれました。
学生たちは、海の安全、人の命を守るという心をもち、将来の海上保安官を目指し学業、訓練に励んでいます。一人でも多くの若者が「海」への夢を抱いていただければと思います。

今回お話を聞かせてくれた竹本さん、村松さん、坂東さん、川合さん、神田さん、今岡さん、ありがとうございました。

聞き手:
成山堂書店 代表取締役社長
小川典子
本を出版したい方へ