| 著者名: | 公益社団法人 日本地下水学会 編 |
| ISBN: | 978-4-425-98361-2 |
| 発行年月日: | 2020/6/28 |
| サイズ/頁数: | 四六判 272頁 |
| 在庫状況: | 在庫有り |
| 価格 | ¥1,980円(税込) |
私たちは、古くから地下水・湧水を飲料・農業・工業用水や神事などに利用してきた。世界に目を向けると、現在でも日本の井戸掘削技術が開発途上国等で求められている。また、近年は「水循環」という視点に立った総合的な地下水政策も注目されている。本書は、地下水・湧水の成り立ちから民俗・利用・環境問題・法令に至る50の疑問と10のトピックスを地下水の研究者たちがわかりやすく解説しています。
足元の「見えない巨大な水瓶」の謎を解き明かす、知的好奇心を刺激する一冊
私たちが普段何気なく使っている水。実は、地球上に存在する淡水のうち、河川や湖沼の水はわずか0.01%にも満たず、人間が利用可能な淡水の大部分は「地下水」であることをご存知でしょうか。
本書『地下水・湧水の疑問50』は、公益社団法人日本地下水学会の設立60周年を記念して編纂された、地下水と湧水に関する決定版ガイドブックです。「井戸から水が湧き出る仕組みは?」「地下水はどこから来てどこへ行くのか?」「災害時に井戸は本当に役立つのか?」といった素朴な疑問から、専門的なメカニズムまで、50のQ&A形式でわかりやすく解説しています。
専門家が執筆しながらも数式などの難しい表現は極力避け、豊富な図版と写真を交えているため、専門知識がない方でも楽しく読み進めることができます。自然科学の不思議に触れたい方から、防災や環境問題に関心のある方まで、幅広い層の知的好奇心を満たす充実の内容となっています。
■本書のみどころ
地下水・湧水・井戸の不思議に迫る、本書の魅力的なトピックをいくつかご紹介します。
- なぜポンプもなしに水が噴き出すのか?「自噴井」のメカニズム 井戸といえばつるべやポンプで水を汲み上げるイメージがありますが、地面に穴を掘るだけで水が勢いよく噴き出す「自噴井(じふんせい)」という井戸があります。本書では、この不思議な現象を「飲み物の入った紙パックにストローを差して横から押す状態」に例えて解説しています。地下の粘土層に挟まれた「被圧帯水層」にかかる圧力が、どのようにして水を地上へ押し上げるのか、そのメカニズムを図解で直感的に理解できます(P.68 図14-1)。また、千葉県君津市の上総掘りなど、歴史的な井戸掘りの技術についても触れられています(P.63)。
- 海の底にも真水がある?「淡水レンズ」と海底湧水 四方を海に囲まれた小さな島でも、井戸を掘ると真水が出ることがあります。なぜ塩辛くないのでしょうか。その答えは「淡水レンズ」という現象にあります。海水よりも比重が軽い真水(雨水)が、地下の塩水の上にレンズ状に浮いている様子を示した図(P.27 図1)は必見です。さらに、海底から真水が湧き出す不思議な現象や、かつての氷河期に陸地だった場所が海に沈み、当時の淡水が海底下に閉じ込められている可能性など、地球規模のダイナミックな水循環のドラマが描かれています(P.30)。
- 「夏は冷たく冬は温かい」地下水の熱利用 井戸水や湧水が、夏は冷たく冬は温かく感じるのはなぜでしょうか。それは地下の温度が年間を通してほぼ一定だからです。本書では、深さ20m以深の地温が外気温の影響を受けにくいデータ(P.102 図21-1)を示しつつ、この温度差を利用した「地中熱利用システム(ヒートポンプ)」の仕組みを解説しています。省エネルギーで環境に優しい冷暖房システムとして、近年注目を集めている技術の基礎を学ぶことができます(P.106)。
- 災害と地下水、そして文化 地震大国日本において、地下水は「諸刃の剣」でもあります。地震発生時には地盤の液状化を引き起こす一方で、断水時には貴重な生活用水の供給源となります。本書では、災害時に役立つ「防災井戸」の活用法や限界(P.208)、さらには「名水百選」に選ばれるような湧水がどのように地域文化や信仰と結びついてきたか(P.150)など、社会学的な側面からも水と人との関わりを掘り下げています。
私たちの足元に広がる、知られざる「水の世界」へ。本書を手に取り、その奥深さをぜひ体感してください。
■どんな人におすすめか
- 自然科学や地理、地学に興味がある方:見えない地下の世界がどのようになっているのか、図解を通じて楽しく学びたい方に最適です。
- 「名水巡り」や湧水スポットの散策が好きな方:旅先で出会う湧水や井戸の成り立ちを知ることで、風景がより深く味わえるようになります。
- 防災意識が高く、井戸の設置や活用を考えている方:災害時の水源確保として井戸を検討している個人や自治体担当者にとって、基礎知識が得られる実用的な資料となります。
- 環境問題やSDGsに関心のある学生・社会人:水循環の仕組みや地下水汚染、地盤沈下などの環境問題を正しく理解するための入門書としておすすめです。
中身を見てみる
【はしがき】
水は,私たち人類の生存にとって不可欠なものであり,また,私たちの周りを取り巻く環境を構成する重要な要素の一つです。その中で,地下水は,私たちの足元の地下を極めてゆっくりと流れていくという特徴を持つため,湧水や井戸などでは,その存在を知ることができますが,多くの場合,それほど意識されないのではないでしょうか。特に,私たちの生活が極めて豊かになり,水道や下水道等の発達を通し,水の由来や行く末を考える機会が少なくなってきた最近では,地下水の存在は,私たちの生活から,さらに遠くなっているのかもしれません。
本書では,地球表層における水循環の中の地下水という科学的な観点から始まり,地下水の利用や保全に関わる政策や法律・条例,地下水・湧水と文化・信仰,災害時における地下水利用の可能性といった幅広い内容が,平易な表現を用いて紹介されています。その中には,地震に伴う地下水の挙動に関する最新の成果や,今後,社会において考えることが必要となる地下水のよりよいマネジメントといったトピックも含まれています。したがって,50 の項目の中に,興味を持つものがきっと見つけられるものと思います。まずは,そのような項目をご覧になり,そのうえで,周辺の項目についても読み進めてみてはいかがでしょうか。その結果,地下水が持つ奥深さとともに,地下水が私たちの生活に強く関わっているということについて,理解を深めていただけることでしょう。もちろん,最初から読んでいくという読み方もあります。
本書は,公益社団法人日本地下水学会の60 周年記念事業の一つとして企画されたものです。この企画が,地下水に関して少しでも興味を持っていただくことにつながれば,それは,大変に素晴らしいことだと感じています。地下水に限らず,日本には,今でも,自然環境と強い関わりを持った生活があります。
そこでは,自然の恵みを享受する機会とともに,自然がもたらす災害を被るということもあります。地球環境が大きく変化しているといわれる現在,また,私たち人類の生活も常に変化する中,本書を読むことを通し,今一度,私たちと自然との関連を考える機会として,楽しみながら知識を深め,考えるきっかけとしていただければと思います。
2020年6月
公益社団法人 日本地下水学会
代表理事・会長
德永 朋祥
【目次】
Section 1 地下水・湧水のきほん
Question 1
地下水とはどのようなものですか?
Question 2
地下水はどこから来て,どう流れているの?
【Topics 1】 水なし川(水無川)
Question 3
地下水はどのくらいあるのですか?
Question 4
地下水はどのくらいの速さで流れているのですか?
Question 5
湧水とはどのようなものですか?
【Topics 2】 鍾乳洞と地下水
Question 6
地下水に海水が混じっていることはありますか?
【Topics 3】 離島の地下水: 淡水レンズとは
Question 7
海の下にも地下水はあるのですか?
【Topics 4】 砂州に湧く真水の磯清水
Question 8
地下水の水位や利用可能量はどのようにすれば調べられますか?
Question 9
湧水の湧出量や地下水の水位が変化するのはどうしてですか?
【Topics 5】 幻の池や季節海
Question 10
温泉も地下水ですか?
【Topics 6】 間欠泉の仕組み
Question 11
地下水の中にも生物はいるのですか?
Section 2 井戸による地下水の利用
Question 12
井戸にはどのようなものがありますか?
Question 13
井戸はどうやって掘るのですか?
Question 14
水が湧き上がる井戸があるのはどうしてですか?
Question 15
井戸をどんどん深くしていくと地下水はどうなりますか?
【Topics 7】 沙漠の下の地下水
Question 16
井戸水が枯れるのはどうしてですか?
Question 17
井戸水や湧水が濁ったり,異臭がしたりするのはどんなときですか?
Section 3 地下水・湧水の利用と保全
Question 18
地下水や湧水はどのようなことに利用されているのですか?
Question 19
地下水や湧水は飲んでも大丈夫なのですか?
Question 20
地下水や湧水はミネラルが豊富でおいしいというのは本当ですか?
【Topics 8】ミネラルウォーター
Question 21
地下水や湧水は夏に冷たく,冬に温かいといわれますが,なぜですか?
Question 22
地下水を使って冷房や暖房をするってどういうことですか?
Question 23
地下にダムを作って地下水を貯めているって本当ですか?
Question 24
地下水は誰のものですか?
Question 25
地下水は自由に使ってよいのですか?
Question 26
地下水や湧水を使うには何か手続きが必要ですか?
Question 27
地下水や湧水を守るためにできることはありますか?
Section 4 地下水・湧水に関わる観光・信仰・文化
Question 28
湧水や井戸水が観光名所になっているところはありますか?
Question 29
名水百選とはどのようなものですか?
【Topics 9】 日本にある地底湖
Question 30
湧水や井戸の名称はどのように付けられたのですか?
【Topics 10】 湧水と小説
Question 31
水神様や水信仰は地下水や湧水に係わりがありますか?
Question 32
地下水や湧水と食文化に関係がありますか?
Section 5 地下水の汚染
Question 33
地下水汚染を起こす物質にはどのようなものがありますか?
Question 34
地下水汚染はどうして起こるのですか?
Question 35
地下水が汚染されるとなぜいけないのですか?
Question 36
地下水汚染が起きたらどうやってきれいにするのですか?
Question 37
硝酸性窒素による地下水汚染にはどのような特徴がありますか?
Section 6 気候変動・災害と地下水
Question 38
地球温暖化が進むと地下水や湧水に影響はあるのですか?
Question 39
地盤沈下は地下水と関係しているのですか?
Question 40
地下水位が上がって駅が浮き上がったって本当ですか?
Question 41
地震が起こると地下水や湧水に影響はありますか?
Question 42
地下水や湧水の異常は地震や噴火が起こる前触れであるって本当ですか?
Question 43
崩壊や地すべりの発生に地下水は関係しているのですか?
Question 44
災害があったときに井戸があると役立つって本当ですか?
Section 7 地下水・湧水に関わる法制度
Question 45
地下水に関する法律にはどのようなものがありますか?
Question 46
用水二法とはどのような法律ですか?
Question 47
水循環基本法は地下水や湧水にどのように関係していますか?
Question 48
環境基本法は地下水や湧水にどのように関係していますか?
Question 49
地下水や湧水について特徴的な条例はありますか?
Question 50
日本の地下水政策はどのように変遷してきましたか?
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