日本の国石「ひすい」ーバラエティに富んだ鉱物の国ー


978-4-425-95621-0
著者名:一般社団法人 日本鉱物科学会 監修/土山 明 編著
ISBN:978-4-425-95621-0
発行年月日:2019/4/28
サイズ/頁数:A5判 240頁
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価格¥3,300円(税込)
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(一社)日本鉱物科学会が2016年9月実施した「日本の国石」選定事業を導入部として、「石」の定義から「石」を調べて地球の歴史を探り宇宙とをつなぐ学問である「鉱物学」について、そして「国石」に選ばれた「ひすい」と日本・日本人との古くからの関わりや多様な地形をもち多くの鉱物が産出される日本の地質的な特異さ、資源としての利用や石との身近な楽しみ方まで、アカデミックな基礎知識を盛り込みつつ、日本の「石」「岩石」「鉱物」の魅力を存分に伝える。

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【はしがき】 一般社団法人 日本鉱物科学会が日本の石、すなわち国石を「ひすい」とすると決めたのは2016年9月のことでした。早いもので本書が刊行されるまでに2年半近くが経ちました。この間にいくつかの「ひすい」に関する本が出ていますが、本書はこれらとはやや趣を異にしたものになっています。
それは、単に国石「ひすい」を紹介するのではなく、国石となれなかったその他の国石候補も紹介し、さらにこれらの石を通じて、石とは何か、自然科学だけでなく、私たちの生活の中でどのような存在であるのかについても紹介していることです。これは、石について多くの方々に親しみをもっていただきたいということが、本学会が国石を定める目的の一つでもあったからです。
そのため、本書では、〝石〟すなわち鉱物やその集合体である岩石についての説明、これから何がわかるのか、社会との関わりや鉱物や岩石の見かたにも紙幅を費やしています。もちろん、「ひすい」の紹介には十二分に力を入れていますので、本書の読者の方々は立派な「ひすい博士」になれるはずです。
本書の構成は次のようになっています。第1章では、本学会が国石をどのように捉え、どのようにして国石「ひすい」を決めたのかについて述べています。第2章と第3章では、鉱物や岩石の説明とその科学について書かれています。この2つの章は少し難しいところがあるかもしれません。読み飛ばしていただいても結構ですし、また寝転がりながら気軽に読んでいただいて雰囲気を味わうのもいいかもしれません。一方、鉱物や岩石を学びたい初心者には、絶好の入門書となっているはずです。第4章は「ひすい」の章です。「ひすい」の科学はもちろんのこと、人との関わりにも多くの紙幅が費やされています。とくに、「ひすい」の再発見の話は、これをもとにミステリー小説でも書きたくなる気持ちになる方もおられるかもしれません。第5章では「ひすい」以外の「水晶」「輝安鉱」「自然金」「花崗岩」をはじめとする国石候補となった鉱物や岩石を紹介しました。日本の地質は多様であり、狭い国土にも関わらず様々な種類の石が産出します。「国石」として選ばれた一つの石だけでなく、どのような代表的な石があるのかも知っていただきたく、本書のサブタイトルを「バラエティーに富んだ鉱物の国」としました。第6章では、昔からの石の利用に加えて、様々な最新の石の利用法についても紹介しています。最後に、第7章では、石と接することの楽しみについて紹介しました。ここでは、石の採集ではなく、石をどのように観察するかに主眼が置かれています。石の採集についての本は多く出版されていますが、これとは違った観点です。石の世界でも、採集による希少な鉱物の枯渇が問題となっています。採集は楽しいものであり、科学としても必要なもので、すべての採集が悪というのではもちろんありません。これに関して「ワイズユーズ」という考えもあり、第4章の「ひすいの保護と活用」の項にも触れられているので、ぜひご一読ください。
本書の執筆にあたっては、多くの方々にお世話になりました。日本の石選定ワーキンググループのメンバーは、第1章の注⑦にお名前を挙げています。鉱物などの写真を提供していただいた個人や団体は、図のキャプションにそれぞれお名前を明記しましたので、これをもって謝辞に代えさせていただきます。また、貴重な情報を提供していただいた方や、様々な作業を手伝っていただいた方のお名前は、一覧として巻末に掲載しました。改めて、皆様にお礼申し上げます。
最後になりましたが、発行元の成山堂書店には大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。本学会で国石を選定した翌年の春に、成山堂書店からこの企画をいただき、我々としてはまさに渡りに船でした。本書を通じて、国石としての「ひすい」を一層定着させていくだけでなく、〝石〟すなわち鉱物や岩石の面白さにもっと気がついていただければと願っています。

2019年3月
執筆者代表
一般社団法人 日本鉱物科学会 前会長
土山明

【目次】 Chapter 1 日本の「国石」を決める  「国石」とは?
 「国石」は「水晶」であるとの説
 なぜ「国石」を選定するのか?
 「国石」の条件
 選定方法
 22の候補
 最終候補5選
  花崗岩、輝安鉱、自然金、水晶、ひすい
 いざ投票へ!「国石」の決定
 投票を終えて―“Gem sparkles deep”

Chapter 2 「石」ってなんだろう?  「石」とは
  鉱物、岩石、宝石、鉱石、化石、盆石、岩、砂、泥、土…
 「鉱物」と「岩石」の違い
 「鉱物」について
  化学組成/結晶構造/結晶の対称性/鉱物の性質/鉱物の分類
 「岩石」について
  火成岩/堆積岩/変成岩
 その他の「石」について
  鉱石/宝石/石材
 「石」はどうやって出来るの?
 「石」の調べ方〜身近な「石」から何がわかるか

Chapter 3 「鉱物科学」とは?  地球の歴史を探るワンダ―な学問!?
 地球と宇宙の声を聴く
 「石」を採集する
 飛んできた石を拾う〜「隕石」の起源
 「新鉱物」の発見
 「石」を作る

Chapter 4 日本の「国石」ひすい  ひすいはなぜ国石になれたのか
  国石の条件とひすい
 ひすいの基礎知識
  ひすいとは何か
  硬玉と軟玉
  ひすいを英語では何という
  ひすいとカワセミ
 宝石としてのひすい
  日本産の宝石の頂点に立つひすい
  琅?とは何か
  ひすいは緑色?
 ひすいの鉱物学・岩石学
  ひすい輝石
  輝石の仲間
  ひすい産地
  ひすいができる場所
  ひすいのできかた
  ひすいと蛇紋岩
  ひすいの年齢
  ひすいの中の新鉱物と稀産鉱物
 ひすいと日本人
  ひすい文化
  最初のひすいの利用
  大珠と垂飾
  勾玉
  ひすいの加工
  ひすい利用の終焉
 ひすい再発見の不思議
  ひすい問題
  クンツのひすいの研究
  大正時代の幻のひすい発見
  相馬御風とひすい再発見
  河野義礼の研究
  広まらなかった大発見
  御風の沈黙の理由
 ひすいの保護と活用
  ひすいの保護
  ひすいの採集
  ひすいの持続可能な活用“ワイズユース”

Chapter 5 バラエティーに富む「国石」候補たち  1. 最終選考に残った4候補
  水晶(日本式双晶、瑪瑙、玉髄、碧玉を含む)
   水晶と石英
   身近な鉱物
   社会生活と石英
   石英の結晶構造
   キラリティー(対掌性)
   さまざまな形の水晶
   さまざまな色の水晶
   石英の組織:双晶
   まりも入り水晶、草入り水晶 瑪瑙
   石英の仲間たち
   高温石英
   碧玉
  輝安鉱〜愛媛県市之川鉱山産輝安鉱・世界に誇る巨大で美しい結晶〜
   アンチモンと言う元素
   「アンチモンの里」市之川鉱山
   輝安鉱という鉱物
   博物館で輝安鉱を見る
  自然金
   自然金とは
   日本の自然金
   社会生活と自然金
  花崗岩(花崗岩質岩およびそのペグマタイト)
   花崗岩とは
   花崗岩はどこで出来るのか
   日本の花崗岩
   石材としての花崗岩
   ペグマタイト
 2. その他の1次候補
  桜石(菫青石仮像)−第6の国石候補
  トパーズ
  玄武岩
  黒曜石(黒曜岩)
  讃岐岩(サヌカイト)
  無人岩
 3. その他の候補
  安山岩
  かんらん岩
  大谷石
  石灰岩(古生代の化石入りおよび大理石と方解石結晶)
  さざれ石(石灰質角礫岩)
  硯石(黒色粘板岩)
  赤間石
  結晶片岩(とくに紅簾石石英片岩)
  黒鉱
  絹雲母(セリサイト)
  琥珀(コハク、アンバー)

Chapter 6 生活を支える「鉱物」とチャレンジする「鉱物科学」  昔から利用されていた岩石と鉱物
  石器
  土器
  建築材料(石材・レンガ)
  石薬
 身近な鉱物
  化粧品
  粘土
  岩絵具・顔料
  ガラス・硫黄・砥石
  陶土・陶石
 日本の鉱物資源
  ベースメタル(鉄・アルミニウム・銅・鉛・亜鉛・スズ)
  希土類元素(海底レアアース)
  メタンハイドレート
 巨大災害と地球環境問題
  放射性物質回収
  土砂災害
  重金属等の処理
  太陽熱利用冷房システム

Chapter 7 「鉱物」をみてみよう!  石で楽しむビーチ
  砂つぶは鉱物だ
  波でよりわけられた砂
  ビーチコーミング
 石で楽しむ川
  鉱物がつくる岩石の模様
  パンニング
 石で楽しむハイキング
  岩石からわかる地殻変動
  露頭ウォッチング
 石で楽しむ街歩き
  街は岩石博物館
  石垣ウォッチング
 石で楽しむ博物館
  石を楽しむための知識がいっぱい
  ジオパーク
付録 「県の石」(一般社団法人 日本地質学会 選定)
一般社団法人 日本鉱物科学会とその歴史

【執筆者一覧】 各章執筆担当。( )内は執筆時の所属等
1章、2章、3章:土山 明(京都大学)
4章:宮島 宏(糸魚川フォッサマグナミュージアム)、辻森 樹(東北大学)
5章:下林典正(京都大学)、長瀬敏郎(東北大学)、今井裕之(元山梨県立宝石美術専門学校)、
   豊 遙秋(元産業技術総合研究所)、坂野靖行(産業技術総合研究所)、土谷信高(岩手大学)、
   石橋 隆(益富地学会館)
6章:鈴木正哉(産業技術総合研究所)
7章:西本昌司(名古屋市科学館)


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