ASEANの流通と貿易ーAEC発足後のGMS産業地図と企業戦略ー


978-4-425-93131-6
著者名:石原伸志・魚住和宏・大泉啓一郎 編著
ISBN:978-4-425-93131-6
発行年月日:2016/12/18
サイズ/頁数:A5判 256頁
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ASEAN経済の現場を知る執筆陣が、アジアの流通と貿易を分析・展望!

2015年AECが発足し、域内関税の撤廃に加えて、東西経済回廊や南部経済回廊が整備され、現在新たな生産拠点として注目を集めているGMS新興国。さらに近年、中国への一極集中による生産リスクを回避し、労働集約型の産業の生産拠点として見直されているCLMVやバングラディッシュ。
本書は、その経済概況、ロジスティクス、輸出入通関、自動車、家電、繊維、食品、小売、経済回廊、工業団地など多岐の分野について、それぞれ第一線で活躍している専門家が一同に会した誌上シンポジウムの形で構成しました。

【はじめに】より ASEAN(東南アジア諸国連合)の中で、本著のテーマであるGMS(Greater Mekong Sub−region)経済圏(新興国)とは、タイ、ラオス、ミャンマー、カンボジア、ベトナムに中国雲南省と広西チワン族自治区を加えたメコン川流域に位置する国・地域のことを指します。
2015年12月31日にASEAN経済共同体(AEC:ASEAN Economic Community)が発足したことに加えて、東西経済回廊や南部経済回廊が整備されたこともあり、新たな生産拠点としてGMS新興国が注目されています。
GMS新興国が注目されている理由は、?中国における生産拠点の一極集中へのリスク回避、?AEC の発足、?ASEAN と日本・中国・インドなどとのEPA の発効、?GMS各国の安価な労働力、?潜在的市場としての期待、?ADB(アジア開発銀行)やODA(先進国の開発援助)による社会インフラの整備などです。
なかでも、1992 年にADB(アジア開発銀行)がイニシアティブをとって策定したGMS計画に基づく農業、エネルギー、環境、人材育成、投資、通信、観光、貿易、交通の9分野への開発援助、ODAや隣接国の経済協力による橋梁建設、道路インフラの整備、CBTA(Cross Boarder Transport Facilitation Agreement:越境交通協定)による通関などの越境交通手続きの簡素化を背景に、東西経済回廊や南部経済回廊の使い勝手が大幅に改善したことが重要です。実際、GMS域内の陸上輸送による物流の円滑化、リードタイムの短縮などが図られるようになったのです。
さらに、近年中国沿海部の人件費の高騰と人手不足、尖閣諸島の国有化に伴う頻発する反日暴動や工場ストライキなどもあり、中国への一極集中による生産リスクを回避し、生産コスト削減を図るために、繊維製品や日用雑貨、プリンターや携帯電話のような労働集約型の産業の生産拠点としてCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)やバングラデシュが改めて見直されるようになったこともあります。このような現象はチャイナプラスワンまたはポストチャイナと呼ばれます。
ところで、ASEANは、陸のASEANと称するタイ、ラオス、ミャンマー、カンボジア、ベトナムと、海のASEANと称するシンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ブルネイの10か国によって構成されています。
また、ASEANは、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ブルネイの先発ASEANと、カンボジア、ベトナム、ラオス、ミャンマーの後発ASEANとに区分されることがあります。
さて、ASEAN は1967 年にシンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイの5か国によって結成されましたが、その起源はベトナム戦争による共産化を恐れたフィリピン、インドネシア、マラヤ連邦によって策定された1961年のマフィリンド構想を基盤としています。
その後、1975 年のベトナム戦争の終結、1985年のプラザ合意による急激な円高に伴う日系企業の生産拠点の移転、タイ、マレーシア、インドネシアなどの投資奨励策などを背景に先発ASEAN諸国が高度経済成長を実現すると、ASEANは政治的色彩よりも経済的色彩を濃くするようになりました。特にその転換点となったのは1995年にベトナムがASEANに正式加盟したことで、ASEANの発足当時の課題であった反共産主義的同盟の意味がなくなり、東南アジアの地域共同体について、経済連携の強化が意識されるようになったことです。
ASEAN の特徴は、政治、経済、民族、宗教などが多様であることだけでなく、図表1 からも明らかなように、一人当たりGDPをみても、シンガポールのように5万ドルを超えるような国から、カンボジアのように1,156ドルと所得の格差が大きいことにあります。
ところで、近年ASEANの中で、GMS新興国が注目されている理由はすでに述べましたが、AECの発足や域内経済格差(人件費格差)を利用して、最近はタイプラスワンと呼ばれるタイと近隣諸国の間で新たなサプライチェーンが形成される動きが出てきました。
国際物流がグローバル・ロジスティクスからグローバル・サプライチェーンと進化する一方、これらのシステムやグローバル・マーケティング戦略の構築に際しては、国・地域によって規則や商慣習などの条件が異なるために、産業別、国別、企業別、地域別に考えていく必要があります。人件費格差や産業集積の現状を考えるとアジア域内での国際分業はさらに深化することは間違いありません。円安が進んでも、一部の特殊製品を除いて、工業製品の生産拠点が日本国内に回帰してくると考えるのは現実的ではありません。
むしろ、ASEAN域内にすでに保有する生産拠点を日本国内の生産工場の一部とみなし、日本を含むグローバル・ロジスティクスやグローバル・サプライチェーンの中に再編、一体化させて考えていく必要があります。
本書は、現在注目を集めているGMS新興国の経済概況、ロジスティクス、輸出入通関、自動車、家電、繊維、食品、小売、経済回廊、工業団地など多岐の分野について、それぞれ第一線で活躍している専門家が一同に会した誌上シンポジウムの形で構成しました。
内容は、業界の歴史、裏話、現状と今後の方向性を著す実務書を目指しています。
社会人、研究者、学生などの皆様方の参考になれば幸いです。なお、データや情報は特に記載のない場合、2016年3月末時点のものです。

2016年11月吉日
執筆者一同

【目次】
第1章 ASEAN 経済の現状とビジネスチャンス
 1.1 現状 ― 購買力ベースでは日本を超える
 1.2 経済共同体 ― 事実上の経済統合が進む地域
 1.3 生産体制 ― 新興国・途上国向けの生産拠点へ
 1.4 購買力 ― 新興市場をどう開拓するか
 1.5 今後の課題

第2章 ASEAN におけるロジスティクス発展の経緯と現状  2.1 ASEAN への生産拠点移転の経緯
 2.2 域内の物流形態
 2.3 ASEAN における物流上の課題
 2.4 LPI にみる物流のレベル比較
 2.5 日本政府によるASEAN 支援
 2.6 ロジスティクス・サービスの展望

第3章 家電産業をとりまく環境  3.1 家電産業におけるものづくりのパラダイムシフト
 3.2 世界のダイナミズムの変化とASEAN
 3.3 サプライチェーン戦略とマーケティング戦略
 3.4 ASEAN における家電業界の将来

第4章 ASEAN の自動車産業の現状と今後の方向性  4.1 ASEAN の国別自動車市場
 4.2 インドの自動車市場
 4.3 自動車産業におけるインドとASEAN の関係
 4.4 自動車業界の今後の展望

第5章 ASEAN の繊維産業の現状と課題  5.1 繊維産業の現状
 5.2 日本の繊維製品の輸入概況
 5.3 繊維製品の生産管理
 5.4 主要国における繊維製品の生産概況
 5.5 主要国における繊維産業の将来性

第6章 ASEAN の加工食品市場  6.1 加工食品市場をとりまく環境
 6.2 加工食品市場の状況
 6.3 ロジスティクス上の課題

第7章 ASEAN の小売業  7.1 小売業の概況
 7.2 小売業に対する規制
 7.3 小売業の将来

第8章 ASEAN の工業団地  8.1 工業団地を取り巻く環境
 8.2 主要国の工業団地の概況
 8.3 主要国における主な工業団地
 8.4 AEC発足による主力4 か国への影響
 8.4 CLM 諸国への影響

第9章 陸のASEAN をつなぐ経済回廊  9.1 ASEAN 経済回廊の概況
 9.2 タイを中心とした3 つの経済回廊の現状
 9.3 クロスボーダー輸送における課題と将来展望

第10章 GMS 主要国の輸出入通関手続  10.1 通関とは何か
 10.2 主要国の通関手続
 10.3 AEC とTPP
カテゴリー:物流 
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