コンテナ港湾の運営と競争


978-4-425-39461-6
著者名:川?芳一・寺田一薫・手塚広一郎 編著
ISBN:978-4-425-39461-6
発行年月日:2015/11/26
サイズ/頁数:A5判 260頁
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日本の港湾の低迷ぶりが話題になって久しい。これはわが国港湾そのものに起因するものであろうか、そして港湾自体に起因するとすれば、何が問題であったのであろうか。
本書では、このような問題意識のもとに港湾とは何か、また競争や競争力とは何を意味するのかに考察を加え、その評価体系、そして運営の主体や仕組みのあり方を論じ、わが国港湾の将来像を構築するための方策を示す。

【はじめに】 わが国港湾の低迷ぶりが話題となって久しい。その際指摘される多くは、近隣諸国の港湾とのコンテナ取り扱い個数の比較に関するものである。しかしこれはわが国港湾そのものに起因するものであろうか。そして港湾自体に起因するものとすれば、何が問題であり、また問題であったのであろうか。
港湾はさまざまな機能を通じて、わが国の地域社会ひいては国全体の経済活動を支えている。コンテナ取り扱い個数の比較を離れても、筆者らはわが国港湾が時代の潮流に乗り遅れ、劣化しつつあるのではないかと、わが国の経済社会を支える基盤としてその行く末を懸念している。本書は、こうした現状認識をもとに、コンテナ港湾を対象にわが国港湾の問題をその淵源に遡り明らかにするとともに、そもそも港湾とは何か、またその評価はいかにあるべきか、そして運営の主体や仕組みはどのようにあるべきかなどについて論考を加え、わが国港湾の将来像を描きかつ構築するための方策を示そうとするものである。
本書の題名『コンテナ港湾の運営と競争』にある「コンテナ」、「港湾」、「運営」そして「競争」の4つの用語は港湾やその政策を巡る議論にしばしば登場する。しかしこのうち、概念がほぼ定着し共有されているのはコンテナだけといってよく、ほかの3つの用語は曖昧なまま使われることが多い。
このうち港湾については、港湾法で法文上の定義はあるが、その概念を確定させることは決して容易ではない。水の戸あるいは門がミナトの語源ともいわれ、運輸の概念である。その一方港は水辺の巷とも読め、都市の概念をも示唆している。このように考えると港湾はミナトと都市の両方の概念を持っているようであり、奥の深いインフラである。しかし時として、枢要ではあるが港湾の一部に過ぎないターミナルと混用されることも少なくない。
運営、競争や競争力も同様で、幅広く俗語的に使われることもあれば、内容を具体化しにくいために単にコンテナ取り扱い個数や港湾費用に焦点があてられる場合もある。さらに多種多様の施設、設備から構成され、多くの関係者がさまざまな分野で係わって機能するという港湾の特性から、主語つまり「誰が」が明確にされないまま論議されるきらいがある。
こうした実情を念頭に置き筆者らは、問題意識を同じくしながらも異なる研究領域を持つ多彩なメンバーで3年間にわたる研究グループを構成した。その成果をまとめたのが本書である。
研究会では、まずわが国の港湾とはどのようなものかを、自然的・地形的条件や歴史的経緯さらには政策の根底をなす港湾法の特徴から考察した。ついでコンテナ化前後の港湾の課題とその取り組みを整理し、わが国コンテナ港湾が今日なお持つ問題と課題について論じた。さらに変貌する国際物流を概観し、利用者の港湾選択要因について分析するとともに、平成に入ってから策定された中枢・中核国際港湾構想(1995年)、スーパー中枢港湾構想(2004年)および国際戦略港湾構想(2011年)の3構想について分析、評価した。
これらを踏まえ港湾の評価はいかにあるべきかを、先行研究を踏まえつつもわが国港湾の特性に即して考察し、対策の枠組みを提案するとともに、港湾の運営はいかにあるべきかを事例研究をもとに論じた。また近年世界的にも注目され、適用されているPPP(Public Private Partnership)の考え方およびその手法の応用について考慮すべき事項を論じた。
以上の研究をもとに、わが国港湾とコンテナターミナルの管理や運営の主体のあるべき姿、およびその主体がそれぞれの将来像を描く際の視点、ならびに将来像実現への工夫や支援のあり方を提案したのが本書である。全国の港湾関係者になんらかのお役に立つことができればと願っている。
なお、本書のベースとなる分析は、科学研究費補助金(基礎研究(B)「国際物流の構造変化とわが国コンテナ港湾の競争力強化策に関する研究」、課題番号24330138、代表川?芳一、2012〜14年度)の成果物である。また、本書の出版に際しては、2015年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)の交付を受けた。研究と出版の機会を戴いたことに対して、深甚なる感謝の意を表したい。

2015年11月
編著者を代表して
川?芳一

【目次】
第1章わが国における港湾の特性
 1−1 はじめに
 1−2 欧米諸国と比較したわが国港湾の特色
 1−3 インフラとしての港湾の特色
 1−4 港湾法について
 1−5 本章のまとめ

第2章コンテナ化の史的過程  2−1 はじめに
 2−2 荷役効率論とコンテナ化
 2−3 外貿埠頭公団の設立
 2−4 コンテナ化が提起した課題
 2−5 本章のまとめ

第3章国際物流の変貌と港湾  3−1 はじめに
 3−2 国際物流の構造的変化
 3−3 利用港湾の選択とその要因
 3−4 本章のまとめ

第4章近年のコンテナ港湾構想とその問題点  4−1 はじめに
 4−2 中枢・中核国際港湾構想
 4−3 スーパー中枢港湾構想
 4−4 国際戦略港湾構想
 4−5 本章のまとめ

第5章港湾の競争力とその評価体系  5−1 はじめに
 5−2 港湾の競争に関する先行研究
 5−3 港湾間競争のモデルと帰結
 5−4 港湾における“効率性”と“生産性”についての研究動向
 5−5 競争力の評価体系
 5−6 本章のまとめ

第6章港湾運営のガバナンス  6−1 はじめに
 6−2 港湾のガバナンスと港湾改革の潮流
 6−3 北九州港と徳山下松港のケーススタディ
 6−4 港湾のガバナンスに関する定量分析
 6−5 管理形態などの効率性決定要因
 6−6 本章のまとめ

第7章港湾運営へのPPP の適用  7−1 はじめに
 7−2 PPP の概要と期待される効果
 7−3 PPP 事業の基本的な仕組み
 7−4 わが国のPFI 事業の実態と諸問題
 7−5 わが国港湾でのPPP/PFI の適用事例
 7−6 本章のまとめ

第8章新しい時代のコンテナ港湾と運営  8−1 はじめに
 8−2 管理・運営主体および目的の明確化
 8−3 基礎としての港湾像と強化策
 8−4 必要な工夫と支援策
 8−5 本章のまとめ

補章コンテナターミナルと背後圏輸送―東京港大井コンテナ埠頭を例として―  補−1 はじめに
 補−2 東京港における背後圏輸送の実態
 補−3 東京港での背後圏陸上輸送の費用試算
 補−4 ゲート前長時間待機問題の解消方法に関する検討

【海事図書】


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カテゴリー:海運・港湾 
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