北極読本ー歴史から自然科学、国際関係までー


978-4-425-94841-3
著者名:南極OB会編集委員会 編
ISBN:978-4-425-94841-3
発行年月日:2015/10/22
サイズ/頁数:A5判 220頁
在庫状況:在庫有り
価格¥3,300円(税込)
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北極の疑問に何でも答える“ 北極ペディア” 北極はどんな場所なのか。南極とはどう違うのか。今、何が起こっているのか。
探検の歴史から、気象、地理、生物、物理観測、北極域に暮らす人々の営みに至るまで、北極の専門家がビジュアルに解説。
北極の温暖化や北極海航路など、いま注目の話題が満載。

【はしがき】より  北極域の自然現象はわが国の自然、とりわけ気候や気象の成り立ちに深いつながりがあることはよく知られている。しかし、それでは「北極域とは全体としてどのような地域か」となると、一般的には十分理解されているとは言い難い。その理由の一つは北極域の中心である北極海に関する情報が希薄ということもあろうが、われわれが日常目にする世界地図の上端域(北極域)はやたら広いシベリアと極北カナダに占められているというメルカトール地図によって、実際の姿からはかけ離れたものであることにもよるのではないか。
 これに対して、南極域は中心に巨大な南極氷床があり、周囲を南極海が取り囲んでいるため、イメージを包括的に理解しやすい(南極域については姉妹書の「南極読本」を参照していただきたい)。南北二つの極域は、ともに「冷源域」として地球の気候システムを駆動するエンジンの役割を果たしている。しかし、北極域の中心が海洋であるのに対し、南極域の中心は大陸(氷床)と、成り立ちが対照的で、しかもその面積はほぼ同等である。
 極域諸現象の発現の仕組みという観点から、南北両極域の対比は地球化学的に重要な研究の課題であるが、北極域はその多様な海陸分布を反映して、自然の仕組みに地域的特性が見られ、全体として理解することは容易ではない。
 しかも、1990年の東西冷戦体制の終焉以前は、北極海とその周辺域は、米ソ以外の国にとっては旅行はもとより科学観測や調査の空白域であった。そうした事情を反映してか、わが国ではこれまで、北極域の自然全体への理解に資する解説書は残念ながら多くはなかった。
 本書では、「北極域」の自然を全体として理解できるよう、常に北極域全体を視界に入れるべく、視座を北極点上空に定めることを心がけた。
 執筆者の多くは南極観測の研究者であるが、極域科学の研究者として北極域においても積極的な研究活動ーいわばグローバルスケールの観測、研究ーを行っており、解説がローカルスケールに偏らないことを執筆の心得としたが、その評価は読者に委ねられる。
 また、本書では北極における地球科学、生物化学の分野に限らず、北極探検・観測の歴史、観測の設営的背景、最近および今後の北極研究、社会的活動の動向についても解説を試みた。北極域の人文科学的情報に関しては民族分布とその変遷について解説されているが、本書が全体として自然科学的解説に偏ったことは否定できまい。
 最近の北極域の著しい気候変動によって、北極海の自然環境の変化が予測され、それに関連して北極海の資源開発、通商航路開発などへの関心が、沿岸の高緯度の国ばかりかわが国を含む中〜低緯度の国々でも、高まってきている。本書がそうした最近の北極域情勢への理解に資することをも願うものである。

執筆者を代表して
渡辺興亜

【目次】
1 北極地域の概説
  北極圏 、北極帯、北極域
  北極海
  北極域の気候特性
  地球の冷源域としての北極域
  北極域の気候変動

2 北極地域の地理   多様性を持つ北極地域
  北極地域の範囲
  北極地域の景観と地域区分
  地域区分ごとの地理的特徴

3 北極の氷床、現在と過去   北極の氷床
  北半球氷床の始まりと盛衰
  最終氷期最盛期の北半球氷床とその融解過程
  第四紀のグリーンランド氷床変動史

4 グリーンランド氷床の雪氷学   グリーンランド氷床の概要
  グリーンランドのアイスコアからわかること
  次世代の調査

5 北極域の気候   北極気候の地域特性
  北極の雪氷分布
  北極温暖化増幅
  変わりゆく北極の気候

6 北極域の気象・水象   北極域の温暖化
  北極層雲
  北極域の降水量と積雪
  北極域の河川
  河川氷の融解

7 北極域の永久凍土   永久凍土の発見
  永久凍土の分布
  変動する永久凍土
  氷と有機物を多量に含む永久凍土、エドマ層
  マンモスの眠るエドマ層
  幻の島、サンニコフ島
  エネルギー資源の宝庫、北極圏

8 北極海と海氷域   海氷
  海洋構造
  北極海の海流と周辺海域との海水交換

9 北極域の地質構造   プレートテクトニクス
  北極海の地質と海底地形
  北極域の地質構造の形成過程
  北極域の地下資源

10 地球物理観測   地磁気
  オーロラ現象
  国際観測網

11 北極の生物   北極の陸上生物
  北極の海洋生物

12 北極探検史   15世紀以前の探検から大航海時代
  大西洋北方海域の探検
  オランダ人による北東航路探検の開始
  英国人による北西航路の探検
  19世紀以降の北東航路探検
  ロシア人によるシベリア探検
  北極点到達の挑戦

13 北極海航路   北極海航路とは
  北極海航路の現状ー四つのトピックス
  技術的課題

14 北極民族の歴史と分布   地帯の民族分布
  極北民族の移動
  極北民族に由来と人口
  シベリアの民族と言語
  カムチャツカ半島の民族
  中央・東シベリアの民族と言語
  西シベリア・北欧
  現代社会の先住民族

コラム   スバールバル条約
  セーベルナヤ・セムリャ諸島
  スピッツベルゲン島における周氷河地形
  国際極年
  北極の中谷宇吉郎
  日本人による北極雪氷コア研究の事始め
  最近のわが国の北極研究の動向
  世界最北の観測村、ニーオルスン
  オホーツク海の流氷、最も低緯度の海氷
  日本の北極研究の先駆者、太田昌秀博士
  地磁気共役点観測
  元祖“ペンギン”は、北半球の鳥だった
  日本の北極研究の前夜ー北方探検から北極研究の嚆矢まで
  北極の地政学
  北極域のバイキング
  世界最北の先住民集落、シオラパルク村


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