南極海に生きる動物プランクトンー地球環境の変動を探るー極地研ライブラリー


978-4-425-57081-2
著者名:福地光男・谷村篤・高橋邦夫 共著
ISBN:978-4-425-57081-2
発行年月日:2014/3/27
サイズ/頁数:四六判 224頁
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価格¥2,640円(税込)
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小さくて大きい、プランクトンの世界をみてみよう。
南極海にすむ動物プランクトンの多様な生存戦略と、
そこから見えてくる地球環境の将来を徹底解明。
流氷の妖精、クリオネに存亡の危機?
地球温暖化が南極海にもたらす影響とは?

【はじめに】より  本書は国立極地研究所からの情報発信活動の1つとして、「極地研ライブラリー」シリーズの一冊として出版される。本シリーズの主な読者は高校生ないし大学初年級を対象とし、一般の方々にも、南極や北極のサイエンスを分かりやすく紹介するものである。
 今回は、「プランクトン」を話題に取り上げ、国立極地研究所に所属する3人の研究者自身がこれまで北極海や南極海の海洋観測航海や昭和基地の越冬観測において、直接自分達で経験してきた現場の調査に基づいて解説する。ところで読者は「プランクトン」についてこれまでにどのくらい学校で学んだだろうか? 多分、プランクトンという名前を聞いたことはあると思われるが、プランクトンには実にさまざまな仲間がいることや、氷の海にも、また、その氷の中にもいることは知らないのではないだろうか?
 プランクトンには大きく分けると植物プランクトンと動物の2つのグループがいる。植物プランクトンは陸上の植物と同じように光合成を行い、無機物から有機物を生産する。この植物プランクトンを動物プランクトンが餌とする。本書では、特に「動物プランクトン」とはどのような生き物であるかを解説し、その不思議な生態を説明する。
 さらに、本書では単にプランクトンを取り上げるだけではなく、海洋生態系と陸上生態系の違いを説明し、海洋生態系の中で南極や北極の氷の海に生きる動物プランクトンがどのように生きているのかを解説する。氷の海の世界へ行く前に、まずは一般的な海洋や生態系を知っていただき、その次に氷の海のプランクトンの不思議な世界を解説する。
 本書の第1章では一般的な海洋生態系と動物プランクトンを解説する。海中に生きるプランクトンは、海洋生態系の中で重要な役割を演じている。また、陸上の生態系と比べるとその違いに驚くであろう。
 第2章では動物プランクトンが生息する海洋そのものについて一般的な解説をする。「プランクトン」は海、湖、池など、いわゆる水の中に生きている。特に海の中のプランクトンを説明するために、まずは海そのものについて簡単に説明する。北極海や南極海は表面が海氷で覆われるが、海の水が凍るときにできる冷たく重い海水は地球上の海を一めぐりするのに約2000年かかるといわれている。
 第3章から第6章にかけては、著者らが実際に南極海の現場で調査観測した経験に基づき、氷の海に生きる動物プランクトンの生態を解説する。我々が南極・昭和基地で一年間江藤観測を続けた結果、動物プランクトンの一種の海中と海氷の中を行ったり来たりする不思議な生態を初めて観測し。読者は「流氷の妖精、クリオネ」をご存知であろう。流氷の海で妖精のようにかわいらしく泳ぐ動物であるが、肉食性の動物プランクトンである。その捕食の様子はかわいい姿からは想像もできないどう猛なものである。また、クリオネは近年問題となっている海洋酸性化の影響を受ける恐れがある動物プランクトンの一種である。第5章ではこのクリオネを取り上げ、海洋の酸性化の現状を解説する。第6章では日本南極地域観測隊が南極・昭和基地への物資輸送の往復航路に沿って、長年にわたり定常的に継続してきたプランクトン観測の成果に基づく、動物プランクトン群衆の中長期的変動について解説する。
 そして、最後の第7章では著者ら3人から将来へのメッセージをまとめた。本書を読み終えるころには、動物プランクトンという生物が地球という大きな生態系の中でどのような役割を演じていいるのかなど、読者はすっかり知識人になることを期待する。読者に少しでもプランクトンへの興味を持っていただき、特に若い世代の中から近い将来にプランクトンの研究者が生まれることを願っている。海の中はまだまだ知らないことだらけであり、実に面白いことや不思議なことであふれている。
 また、本書では各章の内容に関係がある「コラム」を設けた。各コラムはそれぞれが独立しており、動物プランクトンに関する豆知識をまとめた。
 簡単に3人の執筆者を紹介する。
 福地光男(国立極地研究所・名誉教授):37年間南極と北極のプランクトンを研究し、植物プランクトンと動物プランクトンの時空間変動を調べてきた。昭和基地にて2回越冬し、海氷の下のプランクトンの季節変化を調べた。
 谷村篤(国立極地研究所・教授):極地研にて南極・北極のプランクトン観測を行い、昭和基地の動物プランクトンの研究で学位を取得した。一時、三重大学で教育活動を行った後、再び南極海における国際共同プランクトン研究計画を推進している。
 高橋邦夫(国立極地研究所・助教):総合研究大学院大学極域科学専攻にて北極域の動物プランクトンの生活史の研究で学位を取得し、その後、オーストラリア南極局にて共同研究に従事した。現在は南極海の動物プランクトン国際共同研究計画を推進している。

代表 福地光男

【目次】
はじめに

第1章 海洋生態系と動物プランクトン  1-1 海洋生態系とは
 1-2 海洋生態系と陸上生態系の違い
 1-3 動物プランクトンとは
 1-4 動物プランクトンを採集するには
  コラム 切って・絵画になったプランクトン
  コラム 南極海のプランクトンはどのくらいいる?
  コラム 日本のプランクトンネット考案者

第2章 海洋の環境
 2-1 地球上の海と陸の割合
 2-2 深度別の海洋の割合
 2-3 海を取り巻く光環境
 2-4 両極に広がる海氷の海
 2-5 南極海の特徴
 2-6 両極を源流とする海洋大循環
  コラム 海の水が凍るとき?

第3章 海氷に生きる動物プランクトンの不思議
 3-1 海氷の生成と海氷ー海水境界領域の環境
 3-2 海氷生物群集(Sea ice biota)
 3-3 海氷のスペシャリストーパララビドセラとは?
 3-4 海氷のスペシャリスト達の未来

第4章 季節海氷域の動物プランクトンの生態戦略  4-1 海氷縁のパイオニアー植食性カイアシ類
 4-2 季節海氷域の開拓者ーナンキョクオキアミ
 4-3 海氷の忌避者ーサルパ
 4-4 生態系の変化のきざしー「オキアミ生態系」から「サルパ生態系」
  コラム 南極大陸の湖で動物プランクトンを発見!
  コラム 極海のプランクトンは肥満児か?
  コラム ナンキョクオキアミと寄生虫

第5章 海洋の酸性化とクリオネの仲間
 5-1 二酸化炭素の増加と海洋の酸性化
 5-2 海洋の酸性化と炭酸カルシウム
 5-3 炭酸カルシウムを生成する海洋生物
 5-4 翼足類とは?
 5-5 翼足類に迫る危機
 5-6 カルサイトをもつ円石藻と有孔虫
 5-7 その他の影響
 5-8 JAREの取り組み
  コラム 南極海と北極海には同じクリオネが生息する!
  コラム オキアミが雲を作って温暖化を減速させる!?

第6章 動物プランクトンから探る地球環境変動  6-1 モニタリングの重要性
 6-2 なぜ動物プランクトンか?
 6-3 JAREによるモニタリング観測
 6-4 ノルパックネット
 6-5 CPR
 6-6 氷海でのモニタリング
  コラム アリスター・ハーディー卿とCPR

第7章 南極海における動物プランクトン研究の将来
 7-1 どこまで分かったのか?
 7-2 これからの変化の予測は?
 7-3 新たな観測手法・解析手法は?
  コラム 南極海の調査航海の歴史
  コラム 「海鷹丸」と南極観測
カテゴリー:極地研ライブラリー 
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