随想集 嘯風弄花(しょうふうろうか)


978-4-425-94389-0
著者名:石橋 正 著
ISBN:978-4-425-94389-0
発行年月日:2013/11/28
サイズ/頁数:四六判 178頁
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生死の狭間をさまよった旧海軍時代の思い出。
戦後の復興に力を尽くした船員・船長時代。
未来を担う若者を育てるために長きにわたって
務めてきた水産高校の熱血教員時代。
己の生き様を、星・音楽・花・船・自然などを題材に語る。

【まえがき】より  家の前に小さい空き地がある。ある明け方、空の様子を見ようと窓を開けると、夜明けの薄闇の中、その空き地に一面に星が降りていた。白くかそけく、ひしめき合うように煌いている。まだ夢の中なのか、と思いながら、音楽さえ聞こえて来そうな星の群れに見惚れていた。
 少しずつ薄闇が消えていくに連れて星たちの煌きが褪せ、やがてそれらは白い花に変わった。?草(どくだみ)の花であった。どこにでも蔓延(はびこ)り、嫌われ者の雑草の代表格のような?草である。陽が上ってから、空き地に立って見廻したが、その逞しき生命力に感心するばかりで、星と見粉った先刻の繊細さは、かけらさえも感じ取ることができなかった。
 しかし。薄明の中、幻想のような美を見せてくれたのも、この花なのである。置かれた環境、出会う時節・時間、同じ花が折々でこれほどまでに違って見える。新たな発見であった。
 人もまた、同じであろうか。いつもまっすぐ相手を見、真正面からぶつかって行くことを身上として生きて来たが、異なる環境に相手を置いて考えれば、老境と言われる年齢になってもまた、新しい何かを発見していけるかもしれないと思う。
 末尾になってしまったが、令名高い黛まどか先生の作品を文中にお借りすることができた。篤く御礼申し上げる次第である。


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カテゴリー:趣味・実用 
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