安全運転は「気づき」から−ヒヤリハット・エコドライブから歩行者まで−


978-4-425-92821-7
著者名:春日伸予 著
ISBN:978-4-425-92821-7
発行年月日:2013/8/23
サイズ/頁数:四六判 116頁
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メンタルヘルスを専門とする著者は、ストレス予防に重要な「自分への気づき」を事故予防に応用し、ドライバーの心理面からの交通事故防止を長年研究している。自動車事故は、安全システムの進歩や道路インフラの整備で減りつつあるとはいえ、痛ましい重大事故が後を絶たないのが現状である。そこで、いっそうの事故防止のためには、ドライバー側の「気づき」が重要なことが多角的に説明されている。また本書を読み進むにつれて、気づきに基づく安全運転の励行が、エコドライブや運転マナーの向上に繋がり、ひいては安全・安心なクルマ社会の実現に大きく貢献しうることが示唆される。

【おわりに】より
 2011年3月11日、日本を襲った東北地方太平洋沖地震は多くの尊い命を奪い去り、残された人びとの心に大きな傷を残しました。戦後最大の未曾有の大災害は、その後も私たちの生活に多くの影響を与えつづけていますが、こうした一度に多くの死傷者を出す震災がある一方で、日常的に継続して死傷者を出している現象があります。それが交通事故です。近年でも交通事故によって、日本国内で年間約5,000人の命が失われ、約90万人が負傷しています。
 震災直後、電力が不足して、関東各地で計画停電が実施されました。鉄道への影響も大きく、電車の本数削減によって道路は車で渋滞しました。もちろん、停電によって多くの信号機も止まることになります。しかし、本格的な計画停電がスタートした3月15日に関しては、事故多発というニュースが目立つことはありませんでした。
 16日付の「桐生タイムス」によると、群馬県では、15日の夜間停電による事故は発生しませんでした。人手不足で警察官が配置できない交差点もあったのですが、そうした交差点では、ドライバーどうしが一時停止や譲り合いによって秩序と安全を保っていたようです。唯一、昼間の停電直後(午前10時半ごろ)に1件だけ事故が発<生したのですが、夜間になると、各ドライバーがより慎重な運転を心掛けたため、事故が発生することはありませんでした。
 一方で、17日、18日ごろになると、事故多発の記事が目立つようになりました。信号が止まり、警察官の配置もない見通しの悪い交差点での事故がほとんどだったのですが、これを、初日の緊張感を忘れた気のゆるみによる事故とみるか、特殊な環境上あまりドライバーを責められない事故とみるか、人によって意見は異なるかもしれません。しかし、少なくとも15日の群馬県での状況は、交通事故がドライバーの心掛けによって避けうる出来事であることを明示しています。
 震災の被災者である少女が「これまでの生活がいかに幸せだったか、よくわかった」といっている映像を目にしました。何事もない平穏な暮らし、それは私たちにとって最高の宝物といえます。しかし、日々の生活のなかで、宝物は「当たり前のこと」として受け止められ、失って初めて価値を知ることが多いのが現状です。交通
事故を起こして「何事もない平穏な日々」を失い、その価値を知っても遅いのです。
 人間の力で防ぐことが困難な天災に比べ、運転ミスや違反行為など、人間の安易な行動が原因のほとんどを占める交通事故は、人間の心掛けで予防することが十分に可能なはずです。すべてのドライバーはそのことを肝に銘じ、「何事もない平穏な日々」という宝物を守るべく安全運転を行うことを忘れてはならないのです。

平成25年7月
著 者 

【著者紹介】 1958年、島根県出雲市生まれ。
お茶の水女子大学大学院修了後、東京慈恵会医科大学にて医学博士を取得。
心身医学を専門分野とし、コンューターによるストレスである「テクノストレス」を中心にストレスマネージメントを研究。
芝浦工業大学就任後は、交通安全の領域において、ドライバー心理を中心とする「ヒューマン・ファクター」の研究に従事。
ストレスマネージメントにおける「気づき」を応用して、「気づき」を利用した安全教育と支援を推進している。
さらに、安全と環境の両面に好影響を及ぼすエコドライブの推進にも力を入れている。
現在、芝浦工業大学工学部教授。

【目次】
巻頭インタビュー
○春日伸予先生に聞く「本書の執筆意図」
「社会のあらゆる安全は,機械がつくるものではなく”人”がつくるものであること。」
「人の行動の基盤となる“心”は安全の重要なキーであること。」
?芝浦工業大学工学部教授:医学博士・春日伸予

1.「気づき」によるリスクマネージメント
 1.安全運転に必要な気づき
 (a)気づきの副次的効果
 (b)気づきと適応能力

2.「気づき」の効果を妨げる心理的要因
 1.心理的要因と事故の危険性との関係
 2.運転中の心理状態の運転への影響
  【ケース1】 出発前の夫婦ゲンカによる心理状態が事故につながったケース
  【ケース2】 失恋による心理状態が事故につながったケース
 (a)ヒヤリハットによる心理的動揺の影響
 3.性格特性や気質の影響
 4.ストレスの影響
 (a)ストレスと事故の危険性
 (b)ストレスと事故原因
 (c)事故時および事故後の心理状態
 (d)心理的マネージメント

3.「気づき」の効果が薄れてしまう要因
 1.身体機能の問題
 (a)加齢による身体機能の低下
  1.高齢ドライバーの事故・違反の特徴
  2.高齢ドライバーの運転視野
  2.ドライバーが運転能力をみずから低下させている場合
 (a)疲労・睡眠不足・健康状態
  1.疲労・睡眠不足と視線の動き
  2.居眠り運転
  3.睡眠時無呼吸症候群
  4.乗車後居眠りしやすい経過時間
 (b)飲 酒
  1.飲酒運転の背景
  2.少量の飲酒の影響
  3.飲酒運転と環境
  4.飲酒後の運転目的
  5.アルコール依存症
  6.アメリカ・サウスダコタ州の飲酒運転対策
  7.携帯電話

4.「気づき」の効果を妨げる心理的要因  1.道路環境や運転状況が運転に与える影響
 (a)速度感覚が狂う状況
 (b)運転時間などによる影響
 (c)無意識に集中力が低下する状況
 2.運転支援に関するまちがった認識

5.気づきを促進するエコドライブ  1.気づきを得る方法
 2.エコドライブの利点
 3.エコドライブの成功例
 (a)成功の秘訣
  1.燃費の算出と記入方法
  2.組織全体の情報の共有
  3.管理者の育成
 (b)エコドライブ活動の効果
  1.燃費の向上
  2.事故低減
  3.ドライバーの成長
  4.管理者の成長
  5.社内コミュニケーションの活発化
  6.組織力の向上

6.交通弱者にも必要な「気づき」  1.世界的な高齢化と交通事故事情
 2.日本の高齢者と世界の高齢者の事故状況
 3.日本の高齢歩行者の事故原因
 4.高齢歩行者の違反行動の背景
 5.高齢歩行者の事故に関する詳細分析
 6.日本の高齢自転車乗用者に事故原因
 7.高齢自転車乗用者の違反行動の背景
 8.自転車乗用者の事故に関する詳細分析
 9.海外の高齢者の交通行動
 10.イギリス・オランダ・ドイツの高齢歩行者の行動


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