船体運動(耐航性能 初級編) 船舶海洋工学シリーズ5


978-4-425-71471-1
著者名:池田良穂・梅田直哉・慎燦益・内藤林
ISBN:978-4-425-71471-1
発行年月日:2013/6/20
サイズ/頁数:B5判 288頁
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価格¥5,060円(税込)
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耐航性能の初級知識を徹底管理! 荒れた海の中でも船体、機関、積荷などに損傷を受けることなく予定通り航行できる能力を「耐航性能」という。本書では、この船舶の耐航性についての基礎として学んでおくべき基本的な事項、理論的アプローチなどについてわかりやすくまとめた。船舶の耐航性能の初級の知識を徹底整理する上で最適な1冊。

【まえがき】より  大洋を航海する船舶にとって、荒天でも本来の機能を発揮することがもっとも重要である。荒れた海の中でも船体、機関、積荷などに損傷を受けることなく予定通り航行できる能力を耐航性能という。本書では、この船舶の耐航性についての基礎として学んでおくべき基本的な事項、理論的アプローチ、設計時の活用法などについてわかりやすくまとめている。船舶の耐航性能については、この30年ほどで理論的な手法がほぼ確立しており、本シリーズの姉妹編である「船体運動 耐航性能編」では、その理論的な手法の詳細を紹介しているので、本書で学び、さらに理論的な理解を深めるためには、ぜひこの「船体運動 耐航性能編」も学んでいただきたい。
 本書では、まず第1章で、波浪中の船体運動の運動スピード、波と運動の基本的関係、実用的理論計算法について概説している。ここで、船舶の耐航性についての概要を知ることができる。
 第2章では、船の波浪中での運動解析のベースとなる運動方程式(微分方程式)のたて方について学び、その運動方程式を構成する流体力について、単純かした2次元断面を対象にしてその特性と理論計算手法についての知識を習得し、さらに船を揺らす波の特性についても学ぶ。
 第3章では波浪中の船体運動の実用的な計算法として広く使われてるストリップ法について、主に縦波中の事例を例にとって理解する。
 第4章では船舶の復原性に直結する横揺れについて学ぶ。特に横揺れの同調は転覆にもつながるために、その時の振幅を減らすことが重要となる。また、追波中での復原力喪失、危険なパラメトリック横揺れ、ブローチングなどについても最新の知識を得る。
 第5章では、船舶の運航経済性にとって重要な、風波浪中での抵抗増加について学ぶ。この抵抗増加が発生するメカニズムから、理論計算法の概要、そして実際の海での船速低下についての基本的な知識を習得する。
 第6章では、実際の海域に発生する不規則波の中での船体運動の統計的予測法について学ぶ。船舶の設計においては不可欠な知識である。
 第7章では、船舶設計の応用として、耐航性能の理論計算手法を甲板上海水打ち込み、スラミング、プロペラレーシング等の荒天中の危険な現象を把握する手法について学び、同時に国際・国内規則についての基本的な知識も得る。
 第8章では、船舶の耐航性能を把握するための模型実験法について学ぶ。船舶の設計時には、要求される耐航性能を満足するために、いろいろな理論的手法を駆使しての検討が行われるが、さらに実験的な確認が必要なこともある。そのためには、試験水槽を使った模型実験が有用である。

【目次】
第1章 波浪中での船体運動概説
 1.1 運動モード
  コラム 運動を表す記号
 1.2 波浪の向きと船体運動
 1.3 波浪の高さと船体運動の大きさ
 1.4 船速と出会い周期
  コラム 波の位相速度
 1.5 船体運動の理論計算
  1.5.1 線形理論の概念
  1.5.2 非線形運動の理論解析
  コラム 追波中の復原力喪失による海難
  コラム 造船屋と操船者で違う波向きの表現
  1.5.3 船体運動と転覆
  コラム 安定とは

第2章 船体運動方程式入門
 2.1 質点の運動方程式
  2.1.1 ニュートンの三法則
  コラム 力をz、?、?z に分解するのは何故か?
  2.1.2 座標系の設定と簡単な質点運動方程式
  2.1.3 力積と衝突問題
  コラム 「速さ」と「速度」
  2.1.4 エネルギー、仕事、仕事率、パワー
  2.1.5 単位系
 2.2 剛体の運動方程式
  2.2.1 回転運動の方程式
  コラム 孤度法と度分法
  2.2.2 慣性モーメント
  2.2.3 遠心力(centrifugal force)と向心力
  コラム 「コロンブス賞」
  2.2.4 簡単な剛体の運動方程式
 2.3 二次元浮体の運動
  2.3.1 上下揺運動方程式?いろいろな考え方-
  2.3.2 上下揺運動方程式係数の決定
  コラム ラディエイション問題とディフラクション問題
  コラム 位相の進み、遅れ
  2.3.3 波浪強制力と発散波振幅比の関係
  2.3.4 フルード・クリロフ力
  2.3.5 二次元浮体の上下運動方程式と周波数応答関数
  2.3.6 横揺れの運動方程式
 2.4 水波とその基礎
  2.4.1 水波の数式表現
  2.4.2 二次元波の並進座標系における表現と出会い円周波数
  2.4.3 波の群速度と位相速度
  2.4.4 波のポテンシャル、位置エネルギー、運動エネルギー
  2.4.5 進行波に関する具体的な計算例
  2.4.6 応用例:二次元物体の造波抵抗

第3章 波浪中の船体運動の理論計算
 3.1 6自由度の運動
 3.2 縦運動の理論計算
  3.2.1 縦揺れと上下揺れの連成運動方程式
  コラム 流体力係数の表示
  3.2.2 運動方程式の解
  3.2.3 流体力係数の求め方
  コラム 完全流体
  3.2.4 ストリップ法の改良
  3.2.5 縦運動の特性
 3.3 横運動の理論計算
 3.4 斜め波中の運動特性
  付録1 縦運動方程式の解法(上下揺れと縦揺れ)
  付録2 OSM(Ordinary Strip Method)の導出
  コラム 遠心力

第4章 横揺れ
 4.1 横環動半径
  コラム 環動半径か慣動半径か?
 4.2 横揺れ減衰力
  4.2.1 横揺れ減衰力の特性
  コラム 粘性影響が大きいのはなぜか
  4.2.2 非線形横揺れ減衰力の表示法
  コラム B44と減滅係数N との関係
  4.2.3 横揺れ減衰力の計測法
  コラム 減衰力が消費するエネルギーの見える自由横揺れ試験
  4.2.4 横揺れ減衰力の推定法
  4.2.5 横揺れ軽減法
  コラム ビルジキールの威力
 4.3 横波中の横揺れ
  4.3.1 一自由度横揺れ方程式
  4.3.2 横波中線形横揺れ
  4.3.3 横波中非線形横揺れ
  コラム 減滅係数と横揺れ減衰係数の関係
 4.4 斜め追波中の同調横揺れ
 4.5 縦波中の復原力減少
 4.6 追波中復原力喪失現象
 4.7 パラメトリック横揺れ
 4.8 ブローチング
  コラム 波乗り条件の研究
 4.9 海水打ち込みとの関係

第5章 風波浪中の抵抗増加
 5.1 平水中を動揺しながら進行する周期的特異点の造る波
  5.1.1 素成波:k1 波系とk2 波波系
  コラム ケルビン波(Kelvin wave)とグラスゴー大学
  5.1.2 素成波の伝播限界角
 5.2 丸尾の抵抗増加理論式の三つの構成要素
  5.2.1 k 1 波系、 k 2 波系と抵抗増加式の積分範囲
  5.2.2 素成波伝播角と抵抗増加寄与率(重み関数)
  5.2.3 波浪中で運動する船の造る波:振幅関数(Amplitude function or Kochin Function)
  5.2.4 漂流力(速度0 の場合の抵抗増加)
  5.2.5 まとめ:図を使った総合解説
 5.3 不規則波中の抵抗増加
  5.3.1 フーリエ級数
  5.3.2 時系列と自己相関関数とスペクトル
  5.3.3 不規則波中平均抵抗増加の推定
  5.3.4 不規則過程の計算機上での再現とスペクトルの定義
  コラム 過渡水波(transient wave)
  コラム スペクトラムの単位
 5.4 実海域における船速低下
  5.4.1 自然減速(nominal speed loss or involuntary speed loss )
  5.4.2 意識的減速(deliberate speed loss : voluntary speed loss)
 5.5 風による抵抗増加と船速低下
  5.5.1 風圧力による抵抗
  5.5.2 風による横流れに伴う抵抗増加

第6章 船舶性能の統計的予測
 6.1 統計的予測
  6.1.1 確率過程の平均値(期待値)、分散値、確率密度関数、分布関数
  6.1.2 スペクトル解析から得られる分散値と確率的諸量
 6.2 船体応答の短期予測と長期予測
  6.2.1 短期予測とレーリー確率密度関数
 6.3 長期予測理論と波浪発現頻度表
  6.3.1 長期波浪発現の確率密度関数 
  6.3.2 波と船との出会い角の確率分布
  6.3.3 長期予測
  6.3.4 超過確率と分散値
  6.3.5 長期予測の計算例
  コラム 対数
  
第7章 船舶設計への応用
 7.1 波面と船体との相対水位変動
  7.1.1 波面の船側での上下変位ζw
  7.1.2 船体の動揺による船側の上下変位
  7.1.3 船体の動揺に基づく動的水位変動
  7.1.4 船体の存在による入射波の攪乱に基づく動的水位変動
  7.1.5 波面と船体との相対水位変動[ 2 ][ 3 ][ 7 ]
 7.2 甲板上海水打ち込み
  7.2.1 甲板上への海水打込み限界波高
  7.2.2 海水打込みと最小船首高さ
  7.2.3 海水打込みと船首部予備浮力
  7.2.4 海水打込みとハッチカバーと設計荷重
  7.2.5 海水打込みと打込み荷重
 7.3 スラミング
  7.3.1 楔理論による衝撃圧の計算法
  7.3.2 設計用スラミング衝撃圧推定法
 7.4 プロペラレーシング
  7.4.1 プロペラレーシングの運動学
  7.4.2 プロペラレーシングの回避
 7.5 運航限界
 7.6 船酔い

第8章 模型実験
 8.1 造波方法と波の計測
  8.1.1 入射波の発生法
  8.1.2 入射波の計測法
 8.2 波浪中船体運動の水槽実験(直接法)
  8.2.1 入射波の状態
  8.2.2 模型船
  8.2.3 模型船の状態の調整
  8.2.4 重心位置(GM あるいはKG)の求め方
  8.2.5 模型船の環動半径の合わせ方
  8.2.6 模型船の重量および重心位置の調整
 8.3 船体強制動揺試験と波浪強制力計測試験
  8.3.1 船体強制動揺法の考え方
  8.3.2 強制動揺試験装置
  8.3.3 流体力係数の求め方
 8.4 耐航性に関する諸現象の計測
  コラム IMO の模型実験法ガイドライン

(海事図書)


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