船体運動 操縦性能編(改訂版) 船舶海洋工学シリーズ3


978-4-425-71452-0
著者名:安川宏紀 芳村康男 共著
ISBN:978-4-425-71452-0
発行年月日:2022/7/28
サイズ/頁数:B5判 180頁
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価格¥3,960円(税込)
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「真っ直ぐ走る」、「曲がる」、「止まる」に代表される操縦性能は、一般に、平水中を航行する船の操舵ならびにプロペラの操作に対する運動応答性能を指します。
本書は、加減速を伴う直進運動、プロペラ逆転停止運動、針路変更時の運動、大舵角時の旋回運動、zig-zag運動、港での離着桟運動等の操縦運動について、できるだけ統一的に理解できるように整理しています。

【まえがき】より 本書は、船の操縦運動について述べたものである。船の操縦運動についての知識は、船の運航者や設計者にとって不可欠である。
船の運動性能は、耐航性能(seakeeping performane)と操縦性能(maneuverability)の2つに大別される。耐航性能とは、一般に、船が波浪中を航行するときの性能全般(動揺性能、抵抗増加性能)を指し、その中には船の強度問題と関わりの深い波浪荷重の問題も含まれる。一方、操縦性能とは、一般に、平水中を航行する船の操舵ならびにプロペラの操作に対する運動応答性能を指す。それは、「真っ直ぐ走る」、「曲がる」、「止まる」に代表される性能のことである。船の操縦性能を議論するとき、通常、水面の波は取り扱わない。それは、基礎となる理論が大変複雑になるためであり、本書でも、従来からの方針に従い、波は考えないこととする。
船の操縦運動と呼ばれるものには、次に示すような種々の運動がある。加減速を伴う直進運動、プロペラ逆転停止運動、進路変更時の運動、大舵角時の旋回運動、zig-zag運動、港での離着桟運動等。また、それぞれの運動に及ぼす風、潮流等の自然環境の影響も無視できない。さらに、港湾内では、水深が浅く、浅水影響を受けるとともに、岸壁や他船から影響を受ける。このように種々の運動パターンと複雑な環境要因が存在することが、操縦運動を統一的に議論することを難しくしている。ここでは、港湾内における船の離着桟運動は取り扱わないこととし、ある程度の前進速度を有して航行する場合のみを考える。
船の操縦運動を議論するとき、船は力学的に剛体とみなすことができる。従って、操縦運動の理解のためには、剛体の力学が基本となる。力学は、Newton以来、微分・積分学を用いて理解することが王道である。また、運動方程式の外力項の大部分は、船体や舵に作用する流体力成分からなり、そこでは流体力学の知識を必要とする。本書では、これら基礎的な学問(微分・積分学、力学、流体力学) の知識はある程度備わっていることを前提としている。その上で、船の操縦運動をできるだけ統一的に理解できるよう整理した。本書によって、船の操縦運動の理解が進むことを期待している。

【目次】
第1章 船の操縦運動方程式
 1.1 船の概要
 1.2 船の操縦運動の基本
 1.3 船の運動の呼び方
 1.4 基礎となる運動方程式

第2章 船に作用する力とモーメント  2.1 船に作用する力とモーメントの考え方
 2.2 付加質量
  2.2.1 円の付加質量
  2.2.2 船の付加質量
 2.3 船に作用する流体力の数学モデル
  2.3.1 直進時の船体抵抗
  2.3.2 斜航・旋回時の船体に作用する流体力
  2.3.3 干渉流体力係数
  2.3.4 プロペラ推力
 2.4 舵力
  2.4.1 2次元平板翼の揚力係数
  2.4.2 3次元平板翼の揚力係数
  2.4.3 舵直圧力の数学モデル
 2.5 船に作用する横力と回頭モーメントの線形表示
 2.6 補遺:舵の種類

第3章 船の操縦運動の基礎  3.1 船の操縦運動の基本特性
  3.1.1 運動方程式の線形化
  3.1.2 操舵をしない場合の解
  3.1.3 ステップ状操舵時の解
  3.1.4 正弦操舵時の解
 3.2 操縦運動の近似モデルとzig-zag運動
  3.2.1 K-Tモデル
  3.2.2 zig-zag運動の概要
  3.2.3 zig-zag運動の理論解
 3.3 斜航角変化と船体横力:準定常近似
 3.4 補遺:SR108コンテナ船の概要

第4章 旋回性能  4.1 旋回運動発達の概略
 4.2 旋回運動の基本特性
  4.2.1 旋回力の指数
  4.2.2 旋回運動指数の近似式
 4.3 旋回運動の数値計算法
  4.3.1 運動方程式
  4.3.2 定常旋回特性の計算法
  4.3.3 旋回運動の時刻歴計算法
 4.4 旋回運動におけるロール運動との連成影響
  4.4.1 旋回運動時の横傾斜
  4.4.2 旋回性能に及ぼすロール運動との連成影響

第5章 針路安定性  5.1 運動安定性の理論
 5.2 船の針路安定性の基礎
 5.3 針路安定性に及ぼす舵の影響
 5.4 船の主要目と針路安定性
 5.5 船尾フィンによる針路安定性の改善
 5.6 定常旋回時の船の運動安定性
  5.6.1 基礎となる運動方程式
  5.6.2 式の線形化と運動安定性

第6章 加減速運動とプロペラ逆転停止性能  6.1 プロペラ推力の4象限特性
 6.2 基礎となる運動方程式
 6.3 直進時の加減速運動
 6.4 プロペラ逆転停止性能
  6.4.1 プロペラ逆転停止運動の概要
  6.4.2 プロペラ逆転時の理論解
  6.4.3 プロペラ逆転停止運動の時刻歴計算
 6.5 減速時の船の針路安定性
  6.5.1 加減速時の針路安定性の基礎式
  6.5.2 プロペラ逆転時の針路安定性の計算例

第7章 風圧下における操縦性能  7.1 基礎となる運動方程式
 7.2 風圧下における針路安定性
  7.2.1 線形化された運動方程式と風圧力微係数
  7.2.2 風圧下での針路安定性
  7.2.3 計算例
 7.3 一定風速の風を受けたときの運動
  7.3.1 線形化された運動方程式とその解
  7.3.2 計算例
 7.4 補遺:芳村による自動車運搬船の操縦流体力微係数と風圧力係数

第8章 制限水域における操縦性能  8.1 浅水域における旋回性能
  8.1.1 流体力係数に及ぼす浅水影響
  8.1.2 旋回運動に及ぼす浅水影響
 8.2 狭水路における針路安定性
  8.2.1 運動方程式とその線形化
  8.2.2 側壁に近接して航行する船の操船
  8.2.3 狭水路中心を航行する船の針路安定性
  8.2.4 狭水路における流体力特性
  8.2.5 操船限界の計算例
  8.2.6 針路安定性の計算例
 8.3 船体沈下(スコット)
 8.4 補遺:藤野によるマリナー船型の操縦流体力微係数

第9章 曳船・被曳船系の操縦性能  9.1 基礎仮定と座標系
 9.2 曳船・被曳船系の運動方程式
  9.2.1 被曳船の運動方程式とその線形化
  9.2.2 曳船・被曳船系の運動方程式とその線形化
 9.3 針路安定性
  9.3.1 被曳船の針路安定性
  9.3.2 曳船・被曳船系の針路安定性
  9.3.3 計算例:針路安定性に及ぼす諸影響
 9.4 定常旋回
  9.4.1 定常旋回に関する基礎式
  9.4.2 計算例:曳船の定常旋回性能特性に及ぼす諸影響
 9.5 補遺:対象とした曳船と被曳船

(海事図書)


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