造船工作法 船舶海洋工学シリーズ9


978-4-425-71511-4
著者名:奥本泰久・大沢直樹・青山和浩・後藤浩二・尾田 逸人・田崎泰博・津川博光・中山祐蔵・野口千年、濱田雄二 共著
ISBN:978-4-425-71511-4
発行年月日:2012/10/15
サイズ/頁数:B5判 246頁
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価格¥4,620円(税込)
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造船工作の全体的流れ、工作・造船の要素技術、各種の工場設備、生産管理の概要と工程計画・管理の技法、造船における品質管理について説明。さらに、進水工作法、安全衛生、現図について詳説。
若手造船技術者の自習教材、船舶工学を学ぶ学生に最適のテキスト。


【まえがき】より 造船は、鋼板構造の部品切断・接合・組立て・ブロックの搭載、ならびに部品・機器・装置等の配置・据付けを行う総合組立産業である。1975?1977年に日本造船学会鋼船工作法研究委員会(以下で「工作法研究委員会」と呼ぶ)が編纂した「新版 鋼船工作法」(以下で「原版」と呼ぶ)は、造船の組立て・建造技術を総覧する標準教科書として産報出版社から出版され、造船技術者に広く読み継がれてきた。しかし、発刊から35年以上が経過し、その間の鋼船工作技術の進歩や国際規則等の造船業を取巻く世界の変化により、原版 の内容が今日の造船所の実態と異なる記述になっている部分も多い。
工作法研究委員会およびその後継組織である日本船舶海洋工学会建造確信研究会(以下で「建造革新研究会」と呼ぶ)は、原版を適時改訂することにより「鋼船工作法」の名称で最新情報を反映した総合教本を整備し続けてきた。最近では、2005?2006年に、日本船舶海洋工学会に「鋼船工作法改定プロジェクト研究委員会」(以下で「改訂プロジェクト委員会」と呼ぶ)が設置されて全面改訂がなされ、総ページ数が本編・資料編を合わせて1000ページを超える大部の教本が製作された(以下で、この版を「改訂版」と呼ぶ)。
改訂版では、改訂プロジェクト研究委員会に参加した各造船所の個別情報が詳説され、貴重な技術資料となっている。しかし。それゆえに部外者への内容公開は困難であり、大学学部や大学院、および一般の企業内教育等で利用することも適わなかった。また、記述が詳細を極め、自学自習が困難な分量になったため、各造船所での新人研修等における使用に不具合が生じていた。このため、改訂版の内容を、大学における半年?1年の講義に適切な分量に圧縮した教科書の出版を求める声が高まっていた。
2009年に日本船舶海洋工学会能力開発センターで教科書編纂委員会が発足し、鋼船工作法の新たな教科書を作成することになった。これを受けて、建造革新研究会の有志メンバーによって教科書編纂委員会・造船工作法ワーキンググループが結成され、かねてから要望ののあった、改訂版の内容を圧縮した公開版教科書を作成することになった。
新教科書の執筆にあたっては、若手技術者の自習教材として適切なレベルに調整する目的で、経験10年前後の若手技術者が中心となって、改訂版のうち新教科書に残すべき内容を選択して草稿を作成した。若手技術者が作成した草稿は、建造革新研究会において各社のベテラン技術者による入念な査読を経て修正され、さらに関連分野の有識者による校閲を受けて原稿案が作成された。この原稿案に、大学側委員が内容調整を行って最終原稿を完成させた。この意味で、本書の著者は、建造革新研究会参加造船所の工作技術者全員であるといえる。
本書では、第1章において鋼船工作の全体的流れを概説した後、第2章で工作・建造の要素技術、すなわち鋼板の切断・曲げ加工、組立て、ブロック搭載、進水、溶接、塗装について解説し、第3章で各種の工場設備について紹介する。そして、第4章で生産管理の概要と工程計画・管理の技法を解説するとともに、第5章で造船における品質管理について説明する。さらに、第5章までの内容に関連して補足説明が必要と判断した進水工作法、安全衛生、現図について、第6章?第8章で詳説する。各章の内容は、基本的には改訂版に準拠しているが、2.7節(塗装)が「鋼船工作法」の改定後に発効したIMO塗装性能基準に対応した内容に変更されるなど、2011年時点の最新情報を反映させるべく多くの変更が加えられている。
本書の執筆に当たっては、多数の有識者からのご指導を賜った。大阪大学非常勤講師(工程管理論担当)山内昌彦先生(元川崎重工業)、および造船技術者社会人教育コース5(造船工作と生産計画)講師の伊勢本幸雄先生(元石川島播磨重工業)、富樫修太郎先生(元石川島播磨重工業)からは、全体構成および4章?5章の内容についてご指導をいただいた。造船技術者社会人教育コース8(塗装)講師の相川久雄先生(中国塗料)、岡重信先生(中国塗料) には塗装技術に関する記述を校閲いただいた。(社)日本溶接協会溶接施工委員会幹事会の宮崎建雄博士(ユニバーサル造船)、山下泰生博士(住友重機械マリンエンジニアリング)には。溶接技術に関する記述を校閲いただいた。原稿査読作業は建造革新研究会参加の全造船所に分担いただいた。原稿査読および編集会議の手配等は水口直氏(アイエイチアイ・マリンユナイテッド)、成松久雄氏(常石造船)をはじめとする建造革新研究幹事会の皆様にご尽力いただいた。原稿や図面の整理、清書などでは亀井久美氏にお世話になった。
本紙面をかりて、ご指導・ご助力をいただいた方々に衷心より感謝の意を表したい。

第1章 総論  1.1 鋼船建造の変遷
 1.2 艤装・塗装工作法
 1.3 鋼船建造の過程
  1.3.1 基本設計
  1.3.2 詳細設計
  1.3.3 生産設計
  1.3.4 加工
  1.3.5 組立て
  1.3.6 外業
  1.3.7 艤装・塗装工事
  1.3.8 先行艤装・ブロック塗装の拡大
  1.3.9 検査
  1.3.10 公試運転
  1.3.11 アフターサービス
 1.4 造船工作技術の将来
  1.4.1 効率化
  1.4.2 技術伝承
  1.4.3 安全衛生
  1.4.4 社会との関わり
   演習問題

第2章 工作法  2.1 加工
  2.1.1 鋼材準備
  2.1.2 罫書
  2.1.3 熱切断
  2.1.4 曲げ
  2.1.5 運搬と整理
 2.2 組立て
  2.2.1 組立作業
  2.2.2 ブロック組立法
 2.3 外業
  2.3.1 外業作業
  2.3.2 総組立
  2.3.3 船体支持法
  2.3.4 搭載
  2.3.5 足場
  2.3.6 船型決め方
 2.4 進水
 2.5 取付け
  2.5.1 取付作業
 2.6 溶接
  2.6.1 金属の接合法
  2.6.2 溶接部が有する問題点
  2.6.3 溶接法
  2.6.4 溶接用ロボット
  2.6.5 溶接法と金属材料
  2.6.7 ガウジング(gauging)
  2.6.8 特殊材料の溶接
 2.7 塗装
  2.7.1 塗装工程の概略
  2.7.2 表面処理
  2.7.3 防食塗装・上塗塗装
  2.7.4 IMO塗装性能基準
  2.7.5 IMO塗装性能基準の規定内容

第3章 工場設備  3.1 工場配置
  3.1.1 工場配置の基本的考え
  3.1.2 工場配置のタイプ
  3.1.3 立地条件と工場配置
  3.1.4 建造方式と工場配置
 3.2 工場の設備
  3.2.1 工場建屋
  3.2.2 加工工場の設備
  3.2.3 組立工場の設備
  3.2.4 外業ステージの設備
  3.2.5 電気設備
  3.2.6 配管設備
 3.3 設備の計画と保全
  3.3.1 設備計画
  3.3.2 設備保全
 3.4 工具
  3.4.1 工具の種類
  3.4.2 工具の管理
   演習問題

第4章 生産管理  4.1 生産管理とは
 4.2 生産計画
  4.2.1 人員計画
  4.2.2 設備計画
  4.2.3 予算計画
 4.3 建造指針
  4.3.1 建造方針の概要
  4.3.2 ブロック分割
 4.4 工程管理
  4.4.1 工程管理の概略
  4.4.2 線表
  4.4.3 山積み
  4.4.4 総合日程
  4.4.5 搭載日程
  4.4.6 中日程
  4.4.7 日程管理と能率管理
  4.4.8 小日程
  4.4.9 スケジューリング
 4.5 工数管理
  4.5.1 工事量と作業量
  4.5.2 作業能率と時数管理
  4.5.3 管理量と管理単位
  4.5.4 換算溶接表
 4.6 資材管理
  4.6.1 基本思想
  4.6.2 材料管理
 4.7 運搬管理
   演習問題

第5章 品質管理  5.1 品質管理の概要
  5.1.1 品質管理とは
  5.1.2 統計的手法
  5.1.3 組織と教育
  5.1.4 誤作の防止
 5.2 船殻工作における精度管理
  5.2.1 精度管理の概要
  5.2.2 各種作業における精度管理項目
  5.2.3 日本鋼船工作法精度基準(JSQS)
 5.3 検査
  5.3.1 検査の目的
  5.3.2 検査対象
  5.3.3 検査の方法
 5.4 船殻工作における特徴的な品質管理
  5.4.1 特殊鋼の管理
  5.4.2 表面処理の品質管理
  5.4.3 外業工程における品質管理
   演習問題

第6章 進水工作法  6.1 進水の種類
  6.1.1 船台進水の概要
  6.1.2 ドック進水の概要
  6.1.3 その他の進水
  6.1.4 進水時における海洋汚染防止(ISO-14001)
 6.2 船台進水計画
  6.2.1 船体据付位置の決定
  6.2.2 船台進水計算
 6.3 ドック進水計画
  6.3.1 一般事項
  6.3.2 設備関係
  6.3.3 注水準備
  6.3.4 注水、浮揚
  6.3.5 進水(出渠)

第7章 安全衛生  7.1 リスクアセスメントとOSHMS
 7.2 安全衛生のための取組み
 7.3 各種作業における労働災害と対策
  7.3.1 墜落・転落
  7.3.2 飛来・落下
  7.3.3 感電
  7.3.4 爆発・火災
  7.3.5 酸素欠乏症
  7.3.6 ガス中毒
  7.3.7 高温物との接触
  7.3.8 はさまれ・巻き込まれ
 7.4 健康障害と対策
  7.4.1 難聴
  7.4.2 じん肺
  7.4.3 放射線障害
  7.4.4 電光性眼炎
  7.4.5 溶接煙と金属熱
  7.4.6 熱中症
  7.4.7 アスベスト障害
  7.4.8 メンタルヘルス不全

第8章 現図  8.1 船殻工事における現図作業
  8.1.1 現図作業の意義
  8.1.2 現図作業の種類と変遷
 8.2 船体線図
  8.2.1 船体線図の意義
  8.2.2 船体線図の基礎
  8.2.3 線図フェアリング
  8.2.4 構造用正面図
  8.2.5 外板ランディング
 8.3 現図展開
  8.3.1 展開作業の現状
  8.3.2 外板の展開方法
  8.3.3 展開した板の曲げ方法
  8.3.4 現図作業における船殻工作上からの注意事項
  8.3.5 溶接上の注意事項
  8.3.6 部材の端末処理
  8.3.7 切抜き穴の注意事項
  8.3.8 フランジ折りおよび型鋼の曲げ加工
  8.3.9 その他
 8.4 現図の自動化
 8.5 現図システムの展開と高度統合システムへの期待
   演習問題

(海事図書)


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