船体運動(耐航性能編) 船舶海洋工学シリーズ4


978-4-425-71461-2
著者名:柏木 正・岩下英嗣 共著
ISBN:978-4-425-71461-2
発行年月日:2012/10/11
サイズ/頁数:B5判 320頁
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価格¥5,280円(税込)
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自由表面船舶流体力学の理論は先達の努力によって築き上げられてきた大変「美しい」理論。それに気付き魅了され始めると船舶耐航性理論を理解するのは意外とた易いかもしれません。
本書は、波浪中での船体運動理論をこれから学ぼうとする大学生や大学院生、あるいは船舶海洋関連企業で船舶や浮体の波浪中性能の仕事に携わる人たちを対象として、必要な知識や理論をまとめたテキストです。


【まえがき】より 船の運動性能は、波浪中での耐航性能と平水中での操縦性能に大別されますが、本書は耐航性能について書かれており、波浪中での船体運動理論をこれから学ぼうとする学部学生や大学院生、あるいは船舶海洋関連企業で船舶や浮体の波浪中性能の仕事に携わる人たちを対象として、必要な知識や理論をまとめたテキストです。
船の耐航性能は難しいとよく言われます。それは、船体運動の特性を理解するためには微分方程式やフーリエ解析などの数学的な知識がある程度必要とされるし、船体運動の原因となる水波や船体に働く流体力のこと、さらにはその流体力と船体によって造られる波との関係などを理解するためには、流体力学に関する基礎知識が要求されるためと思われます。数式変形に苦手な人には確かにそうかもしれません。しかし、自由表面船舶流体力学の理論は先達の努力によって築き上げられてきた大変「美しい」理論であり、それに気付き魅了され始めると船舶耐航性理論を理解するのは意外と容易かもしれません。その「美しい」理論が分かって頂けるよう、説明に大きな飛躍がなく理路整然としたコパクとに説明するように努力したつもりです。したがって本書は寝っころがって読むような概論ではなく、理論の最前線へ初学者を比較的短時間で誘えるように意図した専門書だと考えて下さい。
本書の第1章と第2章は、著者の一人(柏木)が大阪大学の学部学生を対象として使っている「運動基礎論」の講義資料を基にして再構成したものです。また第3章から第5章は、性能運動分野の「夏の学校」や九州大学大学院で使っていた講義資料を基にしています。つまり本書の内容は、学部学生や大学院生のレベルです。第6章は3次元耐航性理論でやや難しいかもしれませんが、最新の計算結果や実験値との比較などを多く載せています。さらに第7章は横揺れ運動、第8章は不規則波中での船体応答を理解するための理論を取りまとめています。また本書には演習やNoteも多く付けています。演習問題は、講義での理解を深めるためにレポート課題としているような内容ですが、本書では巻末にすべての解答例を付けていますので、自学自習も可能となるはずです。
本書は「船舶海洋工学シリーズ」の他の本に比べるとややレベルが高いかもしれませんが、説明方法には独自性と丁寧さを心掛けて書いています。本書によって波浪中での船舶耐航性理論の美しさに魅了される方が一人でも多く出てこられ、それによって船舶海洋工学における学問の継承に少しでも貢献できることになれば、著者にとって望外の喜びです。

【目次】
第1章 波浪中での船体運動方程式
 1.1 運動方程式の組み立て方
  1.1.1 基礎仮定
  1.1.2 座標系と運動モード
  1.1.3 船体に働く力の種類
  1.1.4 船体に働く力の数式表現
  1.1.5 船体運動方程式
 1.2 復原力が存在しない運動モードの応答特性
  1.2.1 一般解の求め方
  1.2.2 任意外力に対する応答
  1.2.3 周期的外力に対する応答
 1.3 復原力が存在する運動モードの応答特性
  1.3.1 固有周期の概算値と定性的傾向
  1.3.2 自由振動解と任意外力に対する応答
  1.3.3 周期的外力に対する応答

第2章 線形システムとしての船体運動  2.1 フーリエ級数
  2.1.1 実数形式のフーリエ級数
  2.1.2 複素形式のフーリエ級数
 2.2 フーリエ変換
 2.3 特殊関数のフーリエ変換
  2.3.1 デルタ関数
  2.3.2 ステップ関数
  2.3.3 符号関数
 2.4 フーリエ変換のいくつかの性質
 2.5 フーリエ変換を用いた浮体応答の計算法
 2.6 線形システム
  2.6.1 線形性と時間不変システム
  2.6.2 システム関数とインパルス応答
 2.7 因果システムと因果律による関係式
 2.8 流体力への周波数影響を考慮した浮体の運動方程式
  2.8.1 周期的な波浪強制力に対する応答の計算法
  2.8.2 任意外力に対する応答の計算法
  2.8.3 流体力に対するメモリー影響とKramers-Kronigの関係

第3章 水波の基礎理論  3.1 自由表面での境界条件
 3.2 微小振幅の進行波
  3.2.1 位相関数と位相速度
  3.2.2 進行波の速度ポテンシャル
  3.2.3 分散関係
  3.2.4 水粒子の軌道
 3.3 群速度

第4章 2次元浮体の造波理論  4.1 周期的わき出しによる速度ポテンシャル
 4.2 グリーンの公式
 4.3 コチン関数
 4.4 浮体表面境界条件
 4.5 コチン関数および進行波の成分分離
 4.6 流体力の計算式
 4.7 反射波、透過波の計算式
 4.8 グリーンの公式の適用
 4.9 流体力係数の対称性、エネルギー関係式
 4.10 ハスキント・ニューマンの関係
 4.11 浮体によって造られる波の関係
 4.12 減衰力計数間の関係
 4.13 流体力の計算例
 4.14 2次元浮体の動揺特性
 4.15 反射波、透過波の特性
 4.16 波漂流力

第5章 細長船に対するストリップ法  5.1 境界値問題と速度ポテンシャルの近似
  5.1.1 境界条件式
  5.1.2 Radiationポテンシャル
  5.1.3 Diffractionポテンシャル
 5.2 流体力の計算
  5.2.1 変動圧力
  5.2.2 付加質量、造波減衰力
  5.2.3 波浪強制力
  5.2.4 復原力係数
 5.3 上下揺、縦揺に関する流体力
 5.4 上下揺、縦揺の運動方程式
 5.5 ストリップ法による計算例
  5.5.1 計算対象モデル
  5.5.2 付加質量、減衰力係数
  5.5.3 波浪強制力、船体運動
 5.6 変動水圧と波浪荷重
  5.6.1 計算式
  5.6.2 計算例
 5.7 相対水位変動
 付録 NSMによる計算ソースプログラム

第6章 3次元耐航性理論  6.1 3次元境界値問題
  6.1.1 座標系
  6.1.2 自由表面条件
  6.1.3 船体表面条件
  6.1.4 船体表面上の圧力
  6.1.5 Radiation問題とDiffraciton問題
 6.2 速度ポテンシャルの表示式
  6.2.1 グリーンの定理の適用
  6.2.2 グリーン関数
  6.2.3 グリーン関数の計算例
  6.2.4 速度ポテンシャルの漸近表示式
  6.2.5 漸近波動場
 6.3 流体力に関する関係式
  6.3.1 ティムマン・ニューマンの関係
  6.3.2 ハスキント・ニューマンの関係
  6.3.3 減衰力係数の計算
  6.3.4 波浪中抵抗増加
 6.4 数値計算例
  6.4.1 ランキンパネル法
  6.4.2 単一特異点の計算例
  6..4.3 比較計算のための供試模型
  6.4.4 付加質量および減衰力係数
  6.4.5 波浪強制力
  6.4.6 船体運動
  6.4.7 非定常波動場
  6.4.8 波浪変動圧
  6.4.9 波浪中抵抗増加
 付録 グリーン関数の漸近表示法

第7章 船の横揺れと安定性  7.1 浮心と浮面心
  7.1.1 浮心
  7.1.2 浮面心
  7.1.3 傾斜による浮心の移動
 7.2 微小傾斜時の復原モーメント
  7.2.1 メタセンタ高さ
  7.2.2 メタセンタ高さの近似推定法
 7.3 大傾斜時の復原モーメント
  7.3.1 復原てこ
  7.3.2 静復原力と動復原力
  7.3.3 垂直舷側船の復原てこ
 7.4 横揺れ減衰係数
  7.4.1 線形運動方程式
  7.4.2 非線形運動方程式
  7.4.3 横揺れ減衰係数の実用推定法
 7.5 横揺れ周期と振幅への非線形影響
 7.6 1自由度横揺れ運動方程式の妥当性
 7.7 上下揺との連成運動による不安定横揺

第8章 不規則波中の船体応答  8.1 定常性とエルゴード性
 8.2 相関関数
  8.2.1 自己相関関数
  8.2.2 自己相関関数の性質
  8.2.3 相互相関関数
 8.3 相関関数とスペクトルの関係
  8.3.1 自己相関関数とパワースペクトル
  8.3.2 パワースペクトルを用いた不規則変動のシミュレーション
  8.3.3 相互相関関数とクロススペクトル
 8.4 海洋波スペクトル
  8.4.1 海洋波の自己相関関数
  8.4.2 海洋波の周波数スペクトル
  8.4.3 海洋波スペクトルの方向分布関数
 8.5 確率分布関数、確率密度関数
 8.6 2つの確率変数に対する解析
  8.6.1 結合確率密度関数
  8.6.2 共分散
  8.6.3 変位、速度、加速度の相関
 8.7 特性関数
 8.8 正規確率密度関数
 8.9 中心極限定理
 8.10 複数の確率変数に対する正規確率密度関数
 8.11 レイリー確率密度関数
  8.11.1 確率密度関数の変換
  8.11.2 レイリー分布の導出
  8.11.3 レイリー分布のn次モーメント
 8.12 その他の確率密度関数
  8.12.1 ポアソン分布
  8.12.2 ワイブル分布
 8.13 海象統計
  8.13.1 ゼロアップクロスの期待値と周期
  8.13.2 極値間周期
  8.13.3 極大値の確率密度関数
  8.13.4 1/n最大波高
  8.13.5 最大波高の期待値
 8.14 線形システムの応答
  8.14.1 確率過程の入出力関係
  8.14.2 相関関数による入出力関係
  8.14.3 パワースペクトルによる入出力関係
  8.14.4 多入力多出力の関係
  8.14.5 不規則波中での横揺れ等価減衰係数
 8.15 短期予測
  8.15.1 短波頂不規則波中での入出力のパワースペクトル
  8.15.2 船体応答の短期予測
 8.16 長期予測
  8.16.1 長期波浪統計資料を利用する方法
  8.16.2 極値の確率分布関数を用いる方法

(海事図書)


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