船体艤装工学(改訂版) 船舶海洋工学シリーズ10


978-4-425-71522-0
著者名:福地信義 内野栄一郎 安田耕造 共著
ISBN:978-4-425-71522-0
発行年月日:2018/12/28
サイズ/頁数:B5判 240頁
在庫状況:在庫有り
価格¥4,620円(税込)
数量
艤装工学の基礎が理解できるテキスト!
船舶は運用のための種類の機能と安全で快適な居住空間を必要としている。これらを具現化する艤装設計には、極めて幅広い知識や経験および機能に係わる現象理解と解析能力が不可欠である。本書では、設計での問題解決のための知識と解析方法について、なるべく細かくわかりやすく解説している。

【改訂版発行にあたって】 2012年に本書の初版を発行以来、多くの関係者にご利用いただいた。幸いにも今回、改訂版発行の機会を得て、全編を見直すこととした。
今回の発行にあたっては、2015 年より強制となった船舶の騒音規制について、また、2004年に採択され、2017年9月8日に発効した『バラスト水及び沈殿物の管制及び管理のための国際条約(バラスト水管理条約)』に関連する部分について改訂を行った。
本書が引き続き、関係各位に活用されるならば、望外の喜びである。

2019年11月
著者代表
福地信義

【はじめに】より (1)艤装工学が包括する問題点
現在の造船設計における日常業務では、多くは、類似船型を基にした倣い設計を組み入れることで、生産効率を高めることが行われ、それなりの効果を挙げている。ただし、新しい船種や新機能のシステムが出現する場合には、新規の技術の創出が不可欠である。このために、既存の技術的環境を理解した上で、新たに生じる課題を解決して、設計案を具現化する能力を備えておくことが技術者として実に大切なことである。
造船設計の中でも艤装工学の分野はきわめて広い技術を包括し、出現する問題は極めて難解なものが多い。その理由の一つは艤装工学に関する問題の構造性にあり、いわゆる悪定義問題や悪構造問題が多くある。外には、他の設計上の問題と繋がっており、その関連性のために単独では解けない完結問題が存在している。さらに、艤装工学では、一般的な現象解析のようにクリスプなものから、感性や人的要因のように極めてあいまいさを含んでいたり、社会・経済・技術的環境の予測が困難なために設計要因を明確に計量化できない問題までが対象となる。これらの問題解決のためには、多くの知識を必要とするために経験と勘に頼ることが多いが、知識だけでなく、艤装に係わる現象を理解し、解析する能力が不可欠である。

(2)艤装工学をとりまく環境
船舶や海洋構造物などの船体艤装の計画・設計を行うには、まずは必要機能を満足する設備・装置や艤装システムを案出して備え、船主などの要求に応えることは当然である。その際に標榜するものは、要求機能を満足するだけでなく、安全で、健康的な環境の創出・維持であり、それに加えて利便性が高く、快適さを備えることである。この実現のためには、艤装設備・システムの知識と対処する解析力の外に、安全性、利便性や快適さとは何かを知り、安全環境や快適環境を具現化する設計を行う必要がある。
また、時代の趨勢として、船舶に対する省エネルギー化、省資源、省人化を強化する要請は益々強くなっている。一方、大気汚染、海洋汚染、地球温暖化などの地球環境問題への意識の高まりに対する適確な対応が求められている。この外、高度な先端技術の応用、寿命までの製造者責任の追求の傾向、規格の世界的統一への動きによるISO(国際標準化機構)との共通化など、艤装分野において今後取り組まなければならない課題は多い。

(3)艤装工学のテキストとしての本書
このために、本書では船体艤装設計いおいて解決すべき問題に対応するための知識と解析法について述べている。
設計者は幅広い可能解の中から最適な設計値を求めて解析や探索をすることが多い。それには艤装設備やシステムに関する知識だけでなく、設計条件を決め、設計解を選択する理論的根拠を持つことが不可欠であり、本書では、その点に留意して構成しているために、説明がやや冗長的な箇所があるのは否めない。また、設計は自他の知識と経験の累積から成り立っている。このため、その累積量を増やすべく、出現する新規の問題を解決するための技術的知識を提示し、さらに数理解析のいくつかの例を交えて説明している。
なお、本書を書くに当たり、なるべく国内の造船所による統一した見解に基づく内容とするために、日本船舶海洋工学会造船設計・生産技術研究会造船設計部会(旧造船設計委員会)により作成された設計指針(JSDS)の内、P71艤装品の振動、P83救命設備、P86船内交通、P87コンテナ船艤装、P89大型船の係船装置、P90ハッチカバー、P92操舵装置、P101居住区防火・防熱などを参考にしている。
注意が必要なのは、本書の中では、SOLASの規定を始め、多くの国際的な規定、国内法に基づく規定について述べているが、それらにはそれぞれ緩和事項がある場合もあり、また時代の趨勢に応じて条文は適宜改正されるので、詳細については最新の規則を参照することが望ましい。

【目次】
第1章 船体艤装序論
 1.1 船体艤装工学の思考過程
 1.2 艤装システムの構想から設計まで
  (1)艤装計画における機能解析
  (2)計画・設計条件
 1.3 艤装工学に関わる問題の構造
  (1)新規計画の過程
  (2)艤装設計が包含する問題の性格

第2章 艤装問題の解析と状態方程式  2.1 状態量の勾配と輸送方程式
  (1)勾配と拡散
  (2)状態量の輸送方程式
 2.2 熱の流れ
  (1)熱の伝わり方
  (2)定常熱伝導
     Fourierの法則
     多層平板の場合
     円管の場合
  (3)非定常熱伝導
     熱伝導方程式
     (例)物体の表面温度が周期的に変る場合
  (4)対流熱伝達
     空間における対流熱伝達
     固体表面における熱伝達
     Nusselt数と相似則
     Nusselt数の実用式
     熱貫流率
  (5)放射熱伝達
     熱放射の概要
     熱放射に関する法則
     放射熱伝達の様相
 2.3 流体の流れ
  (1)流体に関する基本事項
     流体の種類
     流体の性質
  (2)流体の運動
     流れの場の解析
     状態量の連成
     (例)対流熱伝達の状態方程式
     乱流の場合の解析
 2.4 ガス(物質)の拡散
  (1)ガス体に関する基本事項
     気体とは
     ガス体の性質
  (2)ガス(物質)の拡散解析
     ガス(物質)の輸送方程式
     気相流としての粒子濃度拡散方程式

第3章 管艤装  3.1 給排水およびポンピング(液体の流れ)
  (1)配管に関する基本事項
     液体の性質
     配管系の構成品
  (2)配管艤装設計
     配管系の設計順序
     圧力損失の計算
     ポンプ類
  (3)大容量のポンピング計算
     タンクの液位比較的高い場合
     タンクの液位が低い場合
 3.2 配管システムと管装置
  (1)船舶のバラストおよびビルジ
     バラスト管装置(Ballast water piping system)
     ビルジ管装置(Bilge piping system)
     空気抜管(Air escape pipe)または空気管(Air pipe)
  (2)小径配管
     測深管装置(Sounding pipe)
     燃料油移送管(Fuel oil transfer pipe)
     油圧管システム(Hydraulic oil system)
  (3)海水の利用
     雑用海水管(Sea water pipe)
     海水淡水化
 3.3 タンカーの配管システム
  (1)貨油関係の配管システム
     貨油管システム(Cargo oil piping system)
     貨油ポンプ能力
     貨油ポンプの制御
     自動浚油装置(Automatic stripping device)
  (2)管系の遠隔指示と制御
     荷役遠隔制御システム
     液面の遠隔指示装置
  (3)その他の諸管装置
     バラスト管装置(Ballast water piping system)
     ベント管装置(Vent line)
     イナートガス管装置(Inert gas line)
     タンク洗浄管装置(Tank cleaning line)
     タンク加熱管装置(Tank heating piping line)
 3.4 居住区の給排水・衛生装置
  (1)給水・給湯設備
     給排水設備の設計
     清水管(Fresh water line)
     湯水管(Hot water line)
     飲料水管(Drinking water line)
  (2)排水と衛生設備
     船舶の配水管装置
     衛生設備

第4章 甲板艤装・鉄艤装  4.1 係船装置
  (1)係船装置お計画
     係船力の算定基準
     係船方法
  (2)艤装数と錨、錨鎖、係船索
     艤装数(Equipment number)
     錨(Anchor)
     錨鎖(Anchor chain)
     係船索(Mooring rope)
  (3)投・揚鎖錨機
     揚錨機(ウインドラス Windlass)
     錨鎖孔(ホースパイプ Hawse pipe)
     制鎖器(Chain compressor)と制鎖止(Chain stopper)
  (4)係船機と係船金物
     係船機(ムアリングウインチ Mooring winch)
 4.2 荷役装置
  (1)デッキクレーン(Deck crane)
     ジブ型デッキクレーン(Jib-type deck crane)
     ガントリー型デッキクレーン(Gantry-type deck crane)
  (2)コンテナ荷役装置(Container handling system)
     コンテナの概要
     コンテナ船独自の設備
     コンテナの積付けと固縛
 4.3 ハッチカバー
  (1)ハッチカバーの機能・性能
     用途と機能
     強度
     開閉機能
  (2)ハッチカバーの構造と艤装
     ハッチカバーの種類
     ハッチカバーの駆動と締付
 4.4 操舵装置
  (1)操舵装置の要件
     操舵装置に関する規則
     主操舵装置
     補助操舵装置
  (2)操舵装置の構成と機能
     操舵装置の構成
     操舵機の力量
 4.5 交通装置と閉鎖装置
  (1)交通装置の必要性と要点
     必要性
     交通バリアフリー法の適用
  (2)代表的な交通装置
     梯子
     ハッチおよびマンホール
     扉(Door)
     乗船装置
     手摺(Hand rail)
 4.6 救命設備
  (1)救命設備に関する規則
     規則の適用
     SOLAS条約の近年の改正
  (2)救命設備と救命艇
     救命設備の一般要件
     救命艇(Life boat)
     ボートダビット(Boat davit)
     自由降下型救命艇の架台
     救助艇(Rescue boat)
     膨張式救命筏(Infltable liferaft)
     その他の救命器具
 4.7 通風装置
  (1)貨物倉の通風装置
     バラ積み貨物船の貨物倉の通風
     コンテナ船の貨物倉の通風
     一般貨物船の貨物倉の通風
  (2)自然通風装置
     窓、天窓
     通気筒
 4.8 艤装品の振動
  (1)艤装品の共振
     振動源と共振現象
     防振対策
     固有振動数の計算
  (2)艤装品の振動数推定(例)レーダーマスト
     梁モデルによる固有振動数の計算
     振動数の決定要因

第5章 快適さのための環境設計  5.1 快適さと環境
  (1)快適さに影響を与える要因
  (2)環境と適応
     刺激と調整
     ホメオステイシス(Homeostatis)
  (3)感覚量とWeber-Fechnerの法則
 5.2 視覚環境
  (1)物の見え方
     光に関する物理量と感覚量
     視覚による識別
     光の分光分布
  (2)光に対する視覚系の反応
     視覚系の生理反応
     視覚系の心理反応
     色彩調節
     形態の美しさ
  (3)採光と照明
     採光設計
     人工照明
 5.3 聴覚環境
  (1)音の基礎知識
     音の伝播
     音の強さと単位
  (2)音空間の知覚(音響)
     可聴音と音量感
     残響感と音響設計
  (3)騒音予測のための解析
     実績法
     SEA法(統計的エネルギー解析)
  (5)騒音源と具体的対策
     機器から発生する騒音
     流れの乱れを素とする流体音
 5.4 振動環境
  (1)振動と人間
     振動と受容
     振動の感度と許容限界
     全身振動の身体的影響
     防振対策
  (2)動揺病(乗り物酔い、船酔い)
 5.5 温熱環境
  (1)温熱環境の人体熱バランス
     人体温熱要因と環境要因
     人体熱平衡方程式と蓄熱量
  (2)快適さと温熱指標
     有効温度(Effective temperature,ET)
     効果温度(Operative temperature,OT)
     PMV(Predicted Mean Note)
     湿球黒球温度(Wet bulb globe temperature、WBGT)

第6章 居住区艤装  6.1 居住区艤装の計画
  (1)居住区設計の概念
  (2)居住区配置と設備
     居住区に配置される諸室
     船橋(Bridge)の艤装
     諸室配置図の作成
 6.2 居住区画の空気条件
  (1)空気の性状
     空気の一般的性質
     湿り空気
  (2)室内空気汚染
     空気汚染と健康
     空気汚染への対策
 6.3 換気・通気
  (1)換気の意義と方法
     換気の必要性と換気量
     換気設備の概要
  (2)換気量と汚染空気
     換気によるガス濃度の変化
     換気効率
  (3)機械換気
     換気計画の順序
     必要風圧(圧力損失)の計算
     ダクト径の決め方
     エア・ダクトと送風機
 6.4 冷暖房と空気調和
  (1)暖房設備
     暖房負荷
     暖房方式と装置
     暖房時の室温変化
  (2)冷房と空気調和
     空気調和の方式
     空気調和の計算
     冷凍機と冷凍サイクル
 6.5 居住のための設備
  (1)糧食冷蔵庫
     冷蔵庫
     冷凍機
  (2)防熱構造と内装材
     防熱の目的と熱伝導
     防熱構造材
     内装材
  (3)諸設備
     家具
     調理室からの廃棄物の処理

第7章 艤装システムの安全  7.1 事故の構造と安全性
  (1)事故の状態
     事故の構造と要因
     事故の遷移
  (2)人間ー機械系の過誤
     機能配分と信頼性確保
     人的過誤の発生と対応
 7.2 艤装システムの信頼性解析
  (1)単一基準の信頼性評価
  (2)複合的システムの信頼性評価
     複合性システムの信頼性評価法
     FMEA(故障コードとその影響解析)
  (3)フォールトツリー解析(Fault Tree AnalysisFTA)
     フォールトツリー解析の概要
     人的要因と過誤の発生
  (4)イベントツリー解析(Event Tree Analysis,ETA)
     イベントツリー解析の概要
     (例)船舶の静止物への衝突
 7.3 リスク解析
  (1)人間ー機械系の信頼性とリスク解析
     リスク解析の過程
     リスク評価
  (2)卓越事象への対策とリスク評価ー(例)避難安全システム
     FTAによる信頼性解析と対策案
     安全システムのリスク評価
 7.4 火災安全
  (1)火災安全の基本要因
     火災安全要件
     火災安全の必要機能と評価
     船舶火災の特徴
  (2)火災における燃焼
     燃焼の理論
     区画火災
  (3)防火構造に関する規定
     SOLASの規定
     構造と材料の詳細
  (4)煙の流動
     煙の性状
     発煙量と排煙
  (5)消火装置
     消火の原理
     消火装置と効用
     水消火装置
     スプリンクラー消火装置
     水噴霧消火装置
     泡消火装置
     ドライケミカル(粉末)消火装置
     炭酸ガス消火装置
     火災探知装置
  (6)区画火災現象の解析
     火災現象の数理モデル
     ゾーンモデル(Zone model)
     フィールドモデル(Field model)
 7.5 避難安全
  (1)避難計画と規定
     避難計画の考え方
     旅客船の関するSOLASの規定
  (2)避難行動とシミュレーション
     避難計画に関わる人的要因
     火災時避難の予測計算

(海事図書)


書籍「船体艤装工学(改訂版) 船舶海洋工学シリーズ10」を購入する

カテゴリー:船舶海洋工学シリーズ 
本を出版したい方へ