船体構造 強度編(改訂版) 船舶海洋工学シリーズ7


978-4-425-71492-6
著者名:藤久保昌彦 吉川孝男 深沢塔一 大沢直樹 後藤浩二 共著       公益社団法人 日本船舶海洋工学会能力開発センター教科書編纂委員会 監修
ISBN:978-4-425-71492-6
発行年月日:2020/12/28
サイズ/頁数:B5判 244頁
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価格¥4,620円(税込)
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技術者、船舶工学を学ぶ学生諸君が基礎として学んでおくべき船体構造と強度評価に関わる基本的事項をまとめたテキスト。
船体構造「構造編」に続く「強度編」では、強度評価において必要となる、荷重および構造応答の統計的予測法について解説。次に各種構造強度の性質と強度評価法について解説しています。

今回の改訂版では、国内外の機関による波浪観測データの公開サイトの更新、国際船級協会連合IACSによるばら積貨物船と油タンカーの共通構造規則がCSR-BC&OTとして統合されたことに伴う訂正など行いました。

【はじめに】より  船体構造の強度設計は、大きく次の3つの段階から構成される。
 1)荷重推定
 2)構造解析
 3)強度評価
 1)は、船体に作用する荷重を推定することであり、2)は荷重の作用下で船体に生じる変形、応力などの応答を解析することである。これらの荷重、あるいはそれによる変形や応力に抗する構造強度を推定し、必要な構造部材寸法を決定するのが、3)の強度評価である。
 本教科書シリーズの船体構造「構造編」では、1)に関して、船体に作用する荷重の種類を、2)に関して、船体梁の縦曲げおよび捩れ解析法と横強度解析法を、3)に関して、船体用材料と考慮すべき構造破損モードについて説明した。本書「強度編」では、3)の強度評価において必要となる、荷重および構造応答の統計的予測法についてまず述べ、次に各種構造強度の性質と強度評価法について説明する。
 本書は、次に示す1?4の4つのパートで構成される。
 1.荷重および応答の統計的推定法:第1章
 2.塑性・座屈強度
  1)梁柱部材:第2章、第3章
  2)平板構造:第4章、第5章
  3)船体梁 :第6章
 3.き裂強度
  1)疲労強度:第7章
  2)破壊強度:第8章
  3)破面観察:第9章
 4.造船用鋼材:第10章
海の波は不規則である。したがって、荷重および応答の推定では、統計的取り扱いが必要になる。船体強度設計では、設計荷重として次の二種類が重要である。一つは、船の生涯中に生じると考えられる最大荷重あるいは最大応答であり、今一つは、荷重および応答の長期にわたる頻度分布である。Part1では、これらの設計荷重および応答の統計的推定法について述べる。
Part2では、船体が過大な荷重を受けて、降伏および座屈を生じる問題を取り扱う。第2章では、梁柱部材の塑性強度について説明する。ここでは降伏のみを考え、座屈は考慮しない。第3章では、梁柱部材と桁部材の座屈強度と最終強度について説明する。第4章および第5章では、平板および防撓板の曲げ、強度と座屈強度について説明する。第6章では、船体梁の終局的な破損モードである縦曲げ崩壊について述べる。縦曲げ崩壊は、船体の横断面を構成する板および骨部材に降伏および座屈が逐次的に発生することにより生じる。このような逐次崩壊挙動の解析法を、船体構造規則に取り入れられている実用的手法を中心に解説する。
Part3では、繰り返し変動荷重下における疲労き裂の発生および伝播挙動と脆性破壊強度を取り扱う。第7章では、疲労破壊メカニズムと溶接構造物の疲労強度評価法について述べた後、応力の長期頻度分布に基づく船体構造の疲労強度評価手順を説明する。第8章では、線形破壊力学の概要を説明し、その工学的応用として重要である疲労き裂進展解析法について説明する。疲労破壊や脆性破壊の原因の特定においては、肉眼やルーペによる破面観察から破壊の種類を推測できることが重要である。そこで第9章では、破面観察(フラクトグラフィ)のポイントを、破面写真を交えて解説する。
最後にPart4では、造船用鋼材の種類と、現在最も一般的に用いられるTMCP鋼についてその特徴を説明する。
以上の1?4の各Partは、比較的独立した内容になっているため、読者は必要なPartから読み進めることが可能である。また読者は材料力学の基礎を習得していることを前提とするため、適宜材料力学を復習しつつ本書を学んでいただきたい。

【目次】 はじめに

第1章 海象と設計荷重  1.1 海洋波の予報理論
 1.2 海洋波のスペクトル
 1.3 海洋波の表現
 1.4 海洋波の統計的性質
 1.5 船体応答の短期予測
 1.6 船体応答の長期予測
 1.7 設計荷重
  1.7.1 設計荷重せっていにおける問題点
  1.7.2 設計荷重設定における最近の動向
 Appendix A変動量の自己相関関数とスペクトル
 Appendix B波面変動の極値の確率密度関数
 Appendix C周波数応答関数
 Appendix D船体応答のスペクトル
第2章 梁柱の塑性強度  2.1 基礎的概念
 2.2 梁の塑性曲げ
  2.2.1 梁の単純塑性曲げ
  2.2.2 梁の全塑性モーメントおよび断面係数
  2.2.3 曲げと軸力を受ける矩形断面の降伏条件
 2.3 梁の塑性崩壊強度
  2.3.1 集中荷重を受ける梁
  2.3.2 塑性崩壊の定義と諸定理
  2.3.3 仮想仕事の原理を用いた崩壊荷重の算定
 2.4 骨組の塑性崩壊強度

第3章 梁柱の座屈強度  3.1 長柱の座屈
 3.2 曲げ座屈
  3.2.1 弾性座屈荷重
  3.2.2 初期たわみの影響
  3.2.3 弾性支持された梁の座屈
  3.2.4 柱の耐荷力
 3.3 捩り座屈
  3.3.1 薄肉断面柱の捩り座屈(基礎式と解析例)
  3.3.2 桁の座屈
  3.3.3 捩り座屈を防止する方法

第4章 平版構造の曲げ強度  4.1 平版の曲げ変形の基礎方程式
  4.1.1 横荷重を受ける平板
  4.1.2 横荷重と同時に面内力が作用する場合の板の曲げ
 4.2 平版の曲げ変形の境界条件とたわみの解
  4.2.1 境界条件
  4.2.2 たわみの解
 4.3 平版の大たわみ挙動の基礎式と解法
 4.4 曲げを受ける平版の塑性強度
  4.4.1 塑性曲げ強度
  4.4.2 塑性強度に対するたわみの影響
 4.5 防撓板の曲げ強度

第5章 平版構造の座屈強度  5.1 平版構造の溶接初期不整
  5.1.1 溶接残留応力
  5.1.2 初期たわみ
 5.2 平版の弾性座屈強度
  5.2.1 一軸圧縮を受ける周辺単純支持矩形板
  5.2.2 一軸圧縮を受ける他の境界条件の矩形板
  5.2.3 連続パネルの座屈と境界条件
  5.2.4 二軸圧縮を受ける周辺単純支持矩形板
  5.2.5 面内曲げを受ける周辺単純支持矩形板
  5.2.6 面内剪断を受ける周辺単純支持矩形板
  5.2.7 溶接残留応力が座屈強度に及ぼす影響
 5.3 平版の座屈後挙動と最終強度
  5.3.1 弾性大たわみ挙動
  5.3.2 平板の最終強度
 5.4 防撓板の座屈強度
  5.4.1 パネルの弾性座屈強度と限界剛比
  5.4.2 防撓板の座屈崩壊モードと最終強度

第6章 船体梁の縦曲げ最終強度  6.1 船体の縦曲げ最終強度
  6.1.1 最終強度後の平板および防撓板の挙動
  6.1.2 船体横断面の逐次崩壊挙動
 6.2 縦曲げ最終強度解析法
  6.2.1 応力分布を仮定する方法
  6.2.2 断面係数に基づく方法
  6.2.3 Smithの方法
  6.2.4 Smithの方法の適用(矢尾らの方法)
  6.2.5 Smithの方法の適用(IACS/CSRの方法)
 6.3 船体の縦曲げ最終強度解析
  6.3.1 ばら積み貨物船の縦曲げ逐次崩壊解析例
  6.3.2 各種船体の縦曲げ最終強度
 6.4 縦曲げ最終強度の設計評価

第7章 疲労強度  7.1 緒言
 7.2 疲労破壊の現象
 7.3 S-N線図に基づく疲労設計法
  7.3.1 S-N線図
  7.3.2 疲労試験
 7.4 溶接構造物の疲労設計手法
  7.4.1 溶接継手の応力集中
  7.4.2 応力の分類
  7.4.3 継手等級
 7.5 疲労強度に及ぼす影響因子
  7.5.1 材料・組織依存性
  7.5.2 切欠き係数
  7.5.3 寸法効果
  7.5.4 平均応力
  7.5.5 組合せ応力
 7.6 変動応力振幅
  7.6.1 船舶・海洋構造物に作用するランダム荷重
  7.6.2 応力波形の計数法
  7.6.3 線形累積被害則
 7.7 低サイクル疲労
 7.8 超高サイクル疲労(ギガサイクル疲労)
 7.9 船体構造の疲労強度評価手順
  7.9.1 応力の長期分布
  7.9.2 累積被害度の計算
  7.9.3 設計被法
 7.10 疲労強度改善法
  7.10.1 応力集中低減手法
  7.10.2 引張残留応力低減手法

第8章 破壊力学概論  8.1 線形破壊力学とは
 8.2 材料力学と線形破壊力学
 8.3 非線形破壊力学とは
 8.4 破壊力学の基礎理論
  8.4.1 き裂先端近傍の変形様式
  8.4.2 き裂先端の応力・変位場と応力拡大係数
  8.4.3 応力拡大係数に対する重ね合わせの原理
  8.4.4 応力拡大係数の例
  8.4.5 エネルギ解放率
  8.4.6 小規模降伏とき裂先端塑性域
  8.4.7 J積分とき裂開口変位
 8.5 破壊力学の工学的応用
  8.5.1 脆性破壊強度評価
  8.5.2 疲労き裂伝播挙動
  8.5.3 き裂伝播経路の推定
  8.5.4 き裂伝播挙動に及ぼす環境影響
  8.5.5 CTOD設計曲線

第9章 破面観察(フラクトグラフィ)  9.1 破面の巨視的な特徴
 9.2 破面の微視的な特徴
  9.2.1 粒内破壊
  9.2.2 粒界破壊
 9.3 ストライエーションおよびストレッチゾーン解析

第10章 造船用鋼材  10.1 造船用鋼材の種類
 10.2 TMCP鋼
  10.2.1 TMCP技術の開発経緯
  10.2.2 TMCP鋼の特徴

(海事図書)


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