捕鯨の文化人類学


978-4-425-98241-7
著者名:岸上伸啓 著
ISBN:978-4-425-98241-7
発行年月日:2012/3/27
サイズ/頁数:A5判 354頁
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クジラは食料資源か聖獣か。日本と世界各地の捕鯨や捕鯨文化の歴史と現状を、19人のスペシャリストがさまざまな視点から比較検討する。

【はじめに】より  クジラは日本人にとって食料資源であり、産業資源であった。正確には、現在でもそうである。しかし、日本では商業捕鯨モラトリアム(一時中止)が始まった1988年以降、国内における鯨肉など鯨産物の流通量が低下し、価格も上昇したため、消費量が激減した。さらに、捕鯨を担う砲手や解体者の数も減り、その存続が危ぶまれている。現在では、イルカやクジラは、水族館や近海での鑑賞の対象になりつつある。われわれの日常生活におけるクジラの利用や消費の変化を見ただけでも日本人とクジラの関係はこの30年あまりの間に大きく変化してきたことが分かる。
 最近では、日本のイルカ漁を一方的に非難するドキュメンタリー映画『ザ・コーヴ』が世界中で公開され、類似の番組がアメリカのアニマル・プラネット局から全米へと放送されている。欧米人視聴者の多くは、日本の捕鯨に対して怒りと批判を噴出させている。欧米における捕鯨をめぐる批判は、常軌を逸しているようにも思えるほどである。私は、この反捕鯨動きを、欧米で生成された「クジラを環境のシンボルとし、保護の対象とする立場」(少数派)を一方的に圧倒し、押しつぶしつつあるグローバル化現象の一つであると考えている。
 歴史的に見れば、世界各地で人間がクジラを食料資源やその他の資源として利用してきたことは明白である。にもかかわらず、多くの欧米人が指摘するように、クジラを捕ることや食べることは本当に悪いことなのか。捕鯨支持派と反捕鯨派は相手のことを理解できず、この対立は半永久に続くのだろうか。今、われわれに何ができるのだろうか。
 本書は、現代の捕鯨問題に念頭をおきつつ、世界各地の捕鯨や捕鯨文化の歴史と現状をさまざまな視点から比較し、検討することを目的として文化人類学者や歴史学者、考古学者、民族学者、社会学者、水産経済学者、獣医、行政官によって執筆された。本書は、文化人類学を核としつつも学際的な研究の成果である。本書が人類とクジラの関係の理解に貢献し、捕鯨問題の解決に向けて一石を投じることを希望する次第である。

【目次】
序論−捕鯨に関する文化人類学的研究について

 ・世界の捕鯨文化―人類とクジラの関わりを再考する

第2部 先住民族による捕鯨
 ・先住民生存捕鯨再考
 ・アメリカ、アラスカにおける先住民生存捕鯨について
 ・カリブ海、ベクウェイ島における先住民生存捕鯨
 ・インドネシア、ラマレラの伝統捕鯨文化と社会変化−1994〜2010年の捕鯨記録を中心に
 ・カムチャツカ半島沿岸先住民のシロイルカ猟について−北東アジアにおけるその位置づけ

第3部 日本および韓国における地域捕鯨
 ・考古学から見た日本列島における捕鯨
 ・日本における捕鯨の歴史的概要−漁法を中心に
 ・日本における北の海の捕鯨
 ・千葉県和田浦の小型捕鯨業の現状と課題−鯨食文化の継承をめぐって
 ・食文化継承の不可視性−希少価値化時代の鯨食文化
 ・日本人の鯨食観−2008年首都圏データ(560)は語る
 ・変容する鯨類資源の利用実態−日本の鯨肉流通について
 ・韓国の捕鯨文化−蔚山地域を中心に

第4部 捕鯨をめぐる現代的問題
 ・商業捕鯨モラトリアムの真実
 ・「法」の裁きを下すメディア時代の自警団?−シー・シェパードの反捕鯨キャンペーンの一考察
 ・捕鯨と動物倫理―動物愛護団体の批判に関する考察

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