交通論おもしろゼミナール6 物流ビジネスと輸送技術【改訂版】


978-4-425-92682-4
著者名:澤 喜司郎 著
ISBN:978-4-425-92682-4
発行年月日:2017/2/28
サイズ/頁数:A5判 268頁
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価格¥3,080円(税込)
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手押し車から大型貨物機まで世界中のモノを運ぶ手段を網羅!
物流とは、生産者から消費者に至るモノの流れをいい、そこには輸送、荷役、保管、包装、流通加工などの諸活動が包括されています。物流は私たちの生活や企業活動、さらには日本経済や国際経済に非常に深く関係しています。たとえば、宅配便では離島など一部の地域を除いて低価格で翌日には荷物が届けられ、海外からは毎日多くのエネルギー資源や食料品、それに石炭や鉄鉱石などの原材料がわが国へ運ばれてきています。
交通経済学では、荷物や貨物の場所的(空間的)移動という輸送は、そのサービスの生産形態によって自己運送と他人運送に分けられます。自己運送とは、荷物や貨物の所有者が自分で目的地まで輸送する形態をいい、たとえば私たちがコンビニエンスストアで買った品物を自分で自宅まで持ち帰る(運ぶ)場合や、石油会社や製鉄会社が自ら所有する船舶やトラックで貨物を輸送する場合が自己運送です。他人運送とは、運賃の収得を目的として他人の荷物や貨物を輸送する形態をいい、たとえば宅配業者が私たちの依頼によって荷物を輸送する場合などがそうです。貨物輸送では、大量の貨物を高頻度で輸送する場合には他人運送が多く、少量の貨物や特殊な貨物を輸送する場合には自己運送が多くなっています。
他方、交通経済学では動力、運搬具、通路を「交通の三要素」といい、動力とは運搬具を動かすための力、運搬具とは人や貨物を運ぶための用具、通路とは運搬具が通行する路を言います。たとえば、陸上貨物輸送の場合には道路が通路になり、道路は自動車などの通行に適した舗装が行われ、高速道路も建設されていますが、道路そのものの本質は歴史的には大きく変化していません。しかし、動力と運搬具は大きく変化し、その変化の方向は機械化と専用化です。動力は、かつての人の力や牛馬などの動物の力から、技術的な進歩によって蒸気機関、内燃機関へ発達し、動力と一体化した運搬具は大量かつ安価に、そして安全かつ確実に、あるいは高速度で輸送できるものへ発達し、その中で輸送する貨物の容積や重量、その他貨物の特性に適した輸送手段が生み出されてきています。
物流は「縁の下の力持ち」と呼ばれ、その重要性は言葉の上では理解されていますが、その実態についてはほとんど知られていないのが現実です。そのため、本書は私たちに身近な物流を取り上げ、私たちが使っているモノがどのように輸送されているかを、貨物輸送手段(機関)と荷役機械に焦点をあててビジュアルに紹介するとともに、技術的に進歩した物流をビジネス論的に解説しています。その意味で、本書は物流理論の解説に重きを置いた実態の見えない物流関係の書籍に対して、独自性をもった観点から編纂されています。
ここで、読者のみなさんに興味のある分野から、本書を読み進んでいただけるように、各章の内容を簡単に紹介しておきます。
序章「物流とビジネスと技術」では、「物流の経営的三要素」の基本的関係式から運賃を安くするための省力化や機械化など経費の削減と運搬具の大型化、「物流の物理的三要素」の基本的関係式から輸送時間を短縮するための通路距離の短縮と高速化について解説され、また貨物の輸送と貨物の積み降ろし荷役との関係、貨物の保管と出入庫荷役との関係、荷役の機械化と省力化について紹介されています。
第1章「道路貨物輸送の機械化の歴史」では、動力としての人と動物、車輪と運搬具を取り上げ、人が多くの荷物を運ぶために使う背負子と天秤棒、人類の発明の中で偉大なもののひとつと言われる車輪を使用した運搬具としての荷車と荷物運搬用自転車、動力機(エンジン)の発明による荷物運搬用原動機付自転車と荷物運搬用三輪バイクなどについて解説されています。
第2章「宅配便のシステムと宅配車」では、私たちの生活に密着している宅配便などのドア・ツー・ドアの小口物流サービスを取り上げ、宅配便の仕組みと宅配車、航空機を利用した航空便と「都心では最速の交通手段」と言われる自転車を使った自転車便などについて解説され、また私たちが人生で何度か経験する引越での引越便と家財の搬出入で使われるデッキ車やスカイポーター車と呼ばれる引越専用作業車、それに特殊な設備が装備された美術品運搬車と現金輸送車が紹介されています。
第3章「鉄道貨物輸送と機関車と貨車」では、地球にも環境にも優しい貨物輸送手段としての鉄道を取り上げ、鉄道貨物輸送の歴史と電化、電気機関車とディーゼル機関車、コンテナ列車と荷役を効率化するためのE&S 方式/TRACE システム、荷役機械のフォークリフトとトップリフターなどについて解説され、また石油や石炭、石灰石などをバラの状態で輸送するバルク列車とその荷役、石油輸送で中心的な役割を果たしている石油専用列車が紹介されています。
第4章「航空貨物輸送と航空機」では、最速の貨物輸送手段である航空機を取り上げ、旅客機と貨物機による航空貨物輸送の違い、航空用パレットとコンテナの違いと種類、それを運搬するドーリーとトーイングトラクタについて解説され、また空港での限られた駐機時間の中で航空機への貨物の搭降載を支援する荷役機械としてのハイリフトローダーやベルトローダーなどの地上支援車両が紹介されています。
第5章「道路貨物輸送とトラック」では、私たちが街中でよく見かけるトラックを取り上げ、木材運搬車やクレーン付きトラック、コンテナ運搬車の荷役方法、物流革命に寄与したと言われるパワーゲートトラックとウィングボディ車の荷役方法、バンボディ車の密閉構造という特性を利用した保冷車などについて解説され、また大量貨物輸送を可能にするトラクタ& トレーラ方式のメリットと、セミトレーラやフルトレーラなどトレーラの種類について紹介されています。
第6章「道路バルク輸送と専用車」では、街中や工事現場などでよく見かける大きくて、ちょっと変わった形のトラックを取り上げ、積み降ろし荷役が効率化かつ省力化された危険物ローリーや高圧ガスローリー、石灰運搬車やセメントローリー、汚泥吸引車の荷役などについて解説され、また土砂禁ダンプと呼ばれる深ダンプトラック、脱着ボディ車、戦車のような無限軌道を装着した不整地運搬車などが紹介されています。
第7章「海上貨物輸送とコンテナ船」では、食料品や衣料雑貨、機械器具製品や部品などの海上コンテナ輸送を取り上げ、コンテナ船の大型化と荷役機械が不要なフェリーやRORO 船によるコンテナ輸送、コンテナターミナルで使われているガントリークレーンやストラドルキャリア、トランスファークレーンなどの荷役機械について解説され、また国際海上貨物用コンテナのISO規格と冷凍コンテナなどの特殊コンテナが紹介されています。
第8章「海上バルク輸送と専用船」では、海外から大量の原油や石炭、鉄鉱石などを運んでくる大型で、しかも専用化され最大の経済性を発揮する専用船を取り上げ、オイルタンカーとLNG/LPG タンカー、バルクキャリアの荷役方法、完成車を世界中の国々に輸送する自動車運搬船などの荷役について解説され、またスペースシャトルも輸送するバージとデッキバージ、荷役機械のジブクレーンなどが紹介されています。
第9章「企業物流の特殊施設と特殊機械」では、企業の構内や工場内などで使われているため普段見ることのできない特殊な物流施設と特殊な機械を取り上げ、関西電力が保有する専用鉄道と地下ケーブルカー、宇部興産が所有する日本一長い私道の高速道路、住友セメントが保有する建設当時には東洋一長いと言われたベルトコンベアなどについて解説され、また企業ではありませんが、自衛隊の輸送手段としてのトラックや輸送艦が紹介されています。
第10章「消費生活を支える物流システム」では、あってあたりまえと思われているほど私たちの消費生活に密接に関係しているコンビニを取り上げ、コンビニに商品を配送するコンビニトラック、商品配送時に使われているカゴ車と通い箱、ペットボトル入りのお茶や清涼飲料水を専門に運ぶボトルカー、輸送中の品質劣化を防止する定温輸送車などについて解説され、またモノの消費の結果として排出されるゴミを収集するゴミ収集車や屎尿を回収/ 運搬するバキュームカー、廃棄物以上に厄介な降り積もった雪を除雪する除雪車などが紹介されています。
第11章「生活の中の運搬具と宅配システム」では、郵便物と新聞の配達システム、電気通信と電話回線、電気を届ける電線や都市ガスを届けるガス管、水道水を届ける水道管や水路橋、食事宅配と食材宅配などについて解説され、また郵便配達で使われている郵政カブ、新聞配達で使われているプレスカブ、出前で使われている出前品運搬機などが紹介されています。
第12章「ちょっと変わった物流と運搬具」では、章題のようにちょっと変わった物流と輸送手段を取り上げ、行商や屋台で使われているリヤカー、自転車用電動コンベア、旅行カバンなどの手荷物を輸送する手荷物用ベルトコンベア、一時的に手荷物を保管するコインロッカー、ペットタクシーなどが解説され、また貨物を運ばないトラックとして出張サービス車と移動販売車、アドトラック、図書館車などが紹介されています。
終章「アジアの物流」では、物流と経済発展の関係を考えるために、アジアの物流を取り上げ、牛や馬、ラクダを動力としたインドの動物車、中国の三輪貨物自転車、ベトナムの貨物バイク、韓国の三輪貨物バイク、インドの農業用トラクタなどについて解説され、また台湾と韓国の宅配便が紹介されています。
本書の構成と内容は以上のとおりですが、本書で取り上げて解説・紹介できなかった貨物輸送手段(機関)や荷役機械も残され、また解説や紹介が不十分な個所もあると思います。「縁の下の力持ち」と言われる物流を実現する貨物輸送手段(機関)と荷役機械に焦点をあてたビジュアルな紹介と、技術的に進歩した物流のビジネス論的な解説という本書の狙いがどの程度まで成功しているかは、読者のみなさんのご批判を待たねばなりませんが、本書が私たちの生活や企業活動、日本経済、それに国際経済を支える「生命線」(ライフライン)になっている物流を理解していただく一助になれば幸いです。
最後に、本書の出版を快くお引き受け下さいました(株)成山堂書店の小川典子社長、編集や校正で大変お世話になりました編集部の方々をはじめ、スタッフの方々に厚くお礼申し上げます。

2017年1月
著者記す

【目次】
序 章 物流とビジネスと技術
 1 大量輸送と輸送コストの削減
 2 高速輸送と通路距離の短縮
 3 荷役の機械化と省力性

第1章 道路貨物輸送の機械化の歴史  1-1 動力としての人と動物
 1-2 車輪と運搬具と自転車
 1-3 動力と運搬具との一体化

第2章 宅配便のシステムと宅配車  2-1 宅配便と宅配車
 2-2 急送貨物と急送便
 2-3 引越貨物と引越便

第3章 鉄道貨物輸送と機関車と貨車  3-1 鉄道貨物輸送と機関車
 3-2 コンテナ列車とコンテナ荷役
 3-3 バルク列車と貨物鉄道

第4章 航空貨物輸送と航空機  4-1 航空貨物輸送と貨物機
 4-2 空港と荷役機械
 4-3 航空機と地上支援車両

第5章 道路貨物輸送とトラック  5-1 平ボディ車と荷役
 5-2 バンボディ車と荷役
 5-3 トラクタとトレーラ

第6章 道路バルク輸送と専用車  6-1 タンクローリーと荷役
 6-2 バルクローリーと荷役
 6-3 ダンプトラックと荷役

第7章 海上貨物輸送とコンテナ船  7-1 海上貨物輸送とRORO方式
 7-2 コンテナターミナルとコンテナ荷役
 7-3 ISO規格と特殊コンテナ

第8章 海上バルク輸送と専用船  8-1 タンカーとバルカーと荷役
 8-2 RORO船と荷役
 8-3 バージと荷役

第9章 企業物流の特殊施設と特殊機械  9-1 産業用鉄道と自家用専用道路
 9-2 インクラインと貨物用索道
 9-3 構内輸送と特殊機械
 9-4 自衛隊の装備とロジスティクス

第10章 消費生活を支える物流システム  10-1 コンビニと物流
 10-2 食品の輸送と特殊車両
 10-3 廃棄物と廃棄物運搬車

第11章 生活の中の運搬具と配達システム  11-1 郵便と新聞の宅配
 11-2 電気とガスの宅配
 11-3 出前と食事の宅配

第12章 ちょっと変わった物流と運搬具  12-1 行商と運搬具
 12-2 旅行と手荷物の輸送と保管
 12-3 貨物を運ばないトラック

終章 アジアの物流  12-1 動物と自転車の貨物輸送
 12-2 オートバイの貨物輸送
 12-3 宅配便と宅配システム
カテゴリー:物流 
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