減ったマイワシ、増えるマサバ−わかりやすい資源変動のしくみ− ベルソーブックス037


978-4-425-85361-8
著者名:谷津明彦・渡邊千夏子 共著
ISBN:978-4-425-85361-8
発行年月日:2011/3/7
サイズ/頁数:四六判 164頁
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価格¥1,980円(税込)
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大衆魚と呼ばれた魚たちはなぜ激減したのか!生態や資源変動のしくみ、資源管理の方法をわかりやすく紹介。今後の資源回復への道を探る。

【はじめに】より
 「マイワシやマサバが高級魚に」のコピーが新聞やテレビで報じられるようになった。もともとマイワシやマサバは大衆魚とか多獲性浮魚類とも呼ばれる。つまり、たくさん獲れて安いので庶民的な魚だった。それがニュースになるほど減ってしまったのはなぜか?
 魚売り場に行くと、マイワシもサバも売られているので、あまり実感がわかないかも知れない。しかし、その中には外国産のものが多く見られる。ノルウェーから毎年5万?16万トンもタイセイヨウサバが輸入されている。また、体にクッキリとした斑点を持つ大型のマイワシがスーパーで売られていたが、これはカルフォルニアマイワシである。
 日本は世界で7番目に広い200海里水域を持ち、国民も水産物を好んで食べる。しかし、高級魚だけでなくマイワシやサバまでも輸入に頼っている。国産のマサバの多くは、大きくなる前に獲られて洋食の餌や中国での加工原料となっている。儲かっている漁業会社も少なくなった。これで日本は海洋国家といえるだろうか?
 欧米では水産資源を自国民の重要な食用資源として位置づけ、安定した漁業生産と資源管理に国家的に取り組んでいる。そのため、「漁業管理にいち早く成功し、より効率的な漁業を達成し得た国から、高品質・低価格の魚が日本に輸入されてくる可能性が小さくない」と東京海洋大学の桜本教授は予言されていた。労働賃金の安い国からならともかく、欧米からの輸入魚が、国産マイワシや大型マサバにとってかわりつつある。この事態は、日本の多獲性浮魚類漁業のあり方へ大きな疑問を投げかけている。
 私たちは、太平洋にいるマサバについて資源評価を行い、TAC(農林水産大臣が設定する漁獲量の上限、5-4参照)を決めるもととなるABC(生物学的に許容される漁獲量、5-2参照)を毎年計算してきた。この本ではマサバとマイワシの生態、資源変動および海洋環境との関連を紹介し、TACやABCの現実と問題点などについても説明する。そのなかで、資源回復に必要な方策も示そう。さらに、日本のマイワシやマサバ漁業のあり方に対して、いくつかの改善策を提案したい。
 国産サバやマイワシが食卓へ返り咲くことに、本書が少しでもお役に立てれば幸いである。

2011年2月
谷津明彦・渡邊千夏子

【目次】
第1章 サバとイワシ
 1-1 魚種交替
 (1)主役は交替する
  コラム1:ミンククジラの胃袋にも魚種交替
 (2)3種の生物学的特徴
  Study1:系群
 1-2 サバの仲間
 (1)サバ類の見分け方
  コラム2:関サバとマサバの養殖
  コラム3:関東以北でのサバは生食要注意!
 (2)マサバの分布と回遊
  Study2:北の海はゆりかご
 1-3 イワシの仲間
 (1)イワシ類の分類
  Study3:ハダカイワシ
 (2)マイワシの分布と回遊
  Study4:仔魚と稚魚と幼魚
 (3)カタクチイワシの分布と回遊

第2章 たくさん産まれて死ぬこと
 2-1 海洋生態系と仔稚魚の生残
 (1)マイワシが多いわけ
  Study5:海の生態系はピラミッド型
 (2)小型浮魚の一石二鳥
  Study6:カイアシ類
 (3)1,000尾の1尾が生き残れるかどうか
  Study7:プランクトンネット
 (4)マイワシ研究のホームラン
  Study8:大卵少産か小卵多産か?
 (5)生き残りの秘訣「はやく、大きく、元気よく」
  Study9:耳石周輪
 (6)親野状態も重要
  Study10:マサバの成熟と産卵
 2-2 目に見えない資源量を推定する
 (1)自然死亡と漁獲死亡
 (2)コホート解析?イモヅル計算?
  Study11:サバのウロコを読む
 (3)コホート解析は信頼できるのか?
 (4)産卵量の変化
 (5)親と子の量的関係?再生産関係?
 (6)マイワシの親子関係
 (7)マサバの親子関係
 (8)思い通りにはいかない親子関係

第3章 資源と環境と漁業の関係
 3-1 環境による変動
 (1)マイワシは地球の温暖期に繁栄する
  コラム4:海底に積ったウロコ
 (2)西風が吹けばマイワシが増える?
 (3)ニシンの乱獲説と環境説
 (4)再生産成功率は何で決まるか?
 (5)海水の表面温度の影響
  Study12:相関係数
 (6)水温の意味するところ
  Study13:黒潮流路と大蛇行
 (7)親潮の南下で好条件に?
 (8)平均像だけでは分からない
    ?海洋前線と渦の生産力?
 (9)捕食者の影響
 (10)卓越年級群が生まれるには
 3-2 漁獲の影響
 (1)イワシとサバの漁業
  Study14:フィッシュミールは国際商品
 (2)親の獲りすぎ、子の獲りすぎ

第4章 魚種交替のメカニズム
 4-1 魚種交替はなぜ起きる?
 (1)3すくみ説、相変異説、環境説
 (2)レジームシフト説の登場
 4-2 気候変動とマイワシ
 (1)寒い冬と暖かい冬の時代がある
 (2)風と黒潮大蛇行とマイワシ
  Study15:エルニーニョ
 (3)やはり初期生残が鍵?
  Study16:スクール・トラップ説?主役の座は簡単には変わらない?
 (4)時計回りの親子関係とレジームシフト

第5章 イワシとサバの資源管理
 5-1 水産資源の特徴と管理
 (1)再生産性・無主物性・不確実性
 (2)マイワシとマサバで管理できる部分は何か?
  Study17:ノルウェーサバの安定した年齢組成と資源管理
 (3)水産資源管理の目標
 5-2 管理の方法
 (1)資源評価?水産資源の健康診断?
 (2)資源管理の考え方
 (3)何を最適にしたいのか?
  Study18:生物資源に関する国連海洋法条約の骨子
 (4)管理方策の3つの類型
 5-3 最大持続生産量MSY
 (1)MSY?ABCの目指すもの
 (2)MSYを求める方法
 (3)ABCの算定ルール
  Study19:予防原則と予防的措置
 (4)Blimitとは何か?
 5-4 TAC制度の登場
 (1)海洋法条約とTAC制定
  Study20:IQとITQとオリンピック方式
 (2)3つの規制
  Study21:欧米と日本の資源管理の違い
 (3)TAC制度の問題点
  Study22:繁殖価
 (4)イカナゴ:TAC管理のお手本
 (5)環境要因を取り入れたイカナゴ管理
 (6)日本におけるTAC制度の基本的問題
 (7)制度上の問題

第6章 マイワシとマサバの未来
 6-1 マイワシとサバのTAC
 (1)大中型まき網のTAC管理体制
 (2)始めからTACをオーバーしたサバ類
 (3)大中型まき網におけるマイワシTAC管理の一例
 6-2 マイワシとマサバは復活するのか?
 (1)マイワシ漁獲規制の効果
 (2)失われた10年
 (3)マサバ最適漁獲年齢
 (4)マサバ資源回復計画と卓越年級群の発生
 6-3 なぜ管理が失敗するのか?
 (1)「イワシ予報官」の提言
 (2)過剰な漁獲努力
 (3)スイッチング漁獲
 (4)まき網協会による対策案
 6-4 儲かる資源管理へ
 (1)ノルウェーのサバ漁業
 (2)待望の次世代型まき網漁船
 (3)グローバル化するサバ類の流通
 (4)単価アップ作成
 (5)漁業のグランドデザイン
 (6)マイワシやサバ資源の管理に向けて
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