雪と雷の世界−雨冠の気象の科学2− 気象ブックス028


978-4-425-55271-9
著者名:菊地勝弘 著
ISBN:978-4-425-55271-9
発行年月日:2009/2/28
サイズ/頁数:四六判 218頁
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価格¥1,980円(税込)
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気象学の専門家が、私たちにとって身近な気象現象である雪と雷について一般向けに語った本。雲、霧、雨、雪、雷などといった気象現象は,専門的には雲物理学という学問分野に含まれるものですが、著者はこれを一般向けにも分かりやすいように「雨冠の気象学」と呼んでいます。本書を読めば一見全く異なる現象のように見える雪と雷も、実は深いつながりがあることが分かってきます。
 雪の話では、結晶の観察から、雪の博士・中谷宇吉郎の人工雪の実験、降雪と交通事故災害、北海道や日本海沿岸、北極・南極といった極地での降雪現象の観測を中心にまとめられています。さらに、従来あまり注目されることのなかった、露(つゆ)、霜(しも)、霰(あられ)、雹(ひょう)、霙(みぞれ)といった現象も詳しく紹介しているのが特徴です。
 雷では、その発生機構に始まり、積乱雲からの宇宙空間への放電現象など、技術の進歩により観測されるようになった、最新の研究成果をも含んだ内容となっています。 著者は北海道大学での長年の研究に加え、南極や北極圏での豊富な観測の経験を持っています。本書を読めば、私たちの生活に身近な雪や雷について、新たな発見があるでしょう。

【はじめに】より
 気象を学ぶ人達の中で「雲物理学」という言葉は、もう誰も違和感なく受け入れられていると思います。しかし一般の人達に雲物理と言っても「クモブツリ」としか聞こえないはずですから、何のことか分かってもらえないのではないでしょうか。かといって、私の研究分野は気象学ですと言えば、ああ天気予報ですねとも言われることが多いのです。そんなことで雲物理学、つまり「雨、雲、雪、雷といった雨冠のつく気象学」の分野のことですと説明することにしているのです。
 さて、この『雪と雷の世界 雨冠の気象の科学??』は先に出版された『雲と霧と雨の世界 雨冠の気象の科学ー?』に続くものです。第?部の「雪の世界」では、数多くの歌にも唄われている雪のイメージを思い出してもらいながら、初歩的な雪の結晶の見方から始まって、もう多くの読者が知っていることでしょう中谷宇吉郎の人工雪の成長実験、その後の発展を、また今日までそれほど情報量が多くは無かった極域での氷晶や雪の結晶、降水現象の観測事実を中心に紹介することにしました。
 降雪現象の観測は今や多機能を有するレーダー観測から人工衛星観測に主流が変わりつつありますが、いわゆるその道の専門書でない気象ブックスという性格上、比較的理解のしやすい従来からの主流であったテレビ画像や天気予報などに使われる表示方法のPPI(降水域の水平2次元表示法)、RHI(降水域の距離ー高度表示法)、CAPPI(降水域の一定高度水平2次元表示法)画像に留めました。極域の降水現象は多くの読者にとってはあまり馴染みの無い地域のことなので、ここで取り上げるのはいかがなものかとも思ったのですが、日本の雲物理観測、レーダー観測が未知の大気現象を極めるべく世界の隅々にまでも活躍して、新たな発見に貢献していることを強調したかったためでもあるのです。雪の博士と言われる北海道大学理学部物理学教室の中谷宇吉郎先生がかつで私に書いて下さった「地の底 海の果てには何があるか分からない」と、恩師の北海道大学理学部地球物理学教室の孫野長治先生の言われる「雲の中の出来事は雲の中に入ってみなければ分からない」の共通点がそこにはあるからです。
 雨冠の気象の中でもちょっとしたマイナーな露(つゆ)、霜(しも)、雨氷(うひょう)や、霰(あられ)、雹(ひょう)、霙(みぞれ)などは今更特に伝えるべき何かがあるかとも考えられるのですが、それらと関連の深いピンゴ(極北のカナダなどの湿地帯に多く見られる大規模な地下集塊氷)や窓霜などは若い人達に「へー、そんなことがあるんだ」と思って欲しいということもあるのです。「最近の雪事情」では雪の形状はシミュレーションでどこまで表現されているのか、またその後の雪の結晶の成長を表すダイヤグラムの変遷を、そうして「雪まりも」という新しい発見は単なる雪上霜によるということより、ひょっとする南極氷床への水蒸気の輸送という見方ができるのではないかという意味で紹介したものと理解していただきたいのです。
 第?部の「雪の世界」では、多くの雷に関する本のようにストレートに雷雲の電荷発生機構の歴史的変遷や、それらの解説に立ち入っても良かったのかも知れませんが、ともすれば水蒸気から雲粒や雪の結晶への凝結、凍結、融解に伴う相変化のみが注目される中で、それに伴って電荷のやり取りが生じ、それが雷雨にまで拡張できるということや、大気中の電場と降水粒子の電荷との間の符号の鏡像関係でも、あまり気が付かない大気中の電気現象を紹介したいと考えたからです。岩場や人体への放電実験といった現実的な雷災の原因究明から、誘雷実験は今後のフィージビリティ〈実行可能性)を考慮している現状を紹介したかったのです。「最近の雪事情」では国スケールの雷観測技術の発展から人工衛星による雷放電の全球分布を、そうして最後に最もホットな宇宙空間への放電現象といった正に「エー、ウソ、ホントー」を地で行くような現象を紹介しました。
 名古屋大学名誉教授の樋口敬二先生によると、科学分野の一般向きに書かれた本には二通りあって、一つは科学の研究のおける最新の成果を解説したものに代表される「知識の本」と、もう一つは現象の解明にいかに知恵を働かせたかを語った「知恵の本」があると言います。今回、私の「雨冠の気象の科学ー?」として取り上げた『雪と雷の世界』のタイトルは、偶然にも中谷宇吉郎先生の名著でもある岩波新書の『雪』は知恵の本であり、『雷』は知識の本ということになるのでしょう。振り返って、私の『雪と雷の世界』は、知識と知恵を半分ずつ取り込んだものと言えましょうか? 私流に言えば、「知識の本」は「研究の流れを伝える本」で、「知恵の本」は「心の流れを伝える本」と理解しているのです。この気象ブックスシリーズを執筆するに当たって、その両者をうまくミックスさせたいというスタンスでと意気込んだのですが、皆様方の判断にお任せしなければなりません。
「観天望気」を私流に換言すれば、「雨冠の気象の科学の世界」を理解することであるとも言えるのです。それぞれの世界でどんあことが分かっていて、どんなことが話題になっているのだろうか? 私たち自身の身の回りの大気現象(気象)の不思議さと面白さを見直していただきたい。そんなことに多少でも興味を持って頂くためにお役に立てればと思い、この本を書くことにしたのです。話題としては、これまであまり取り上げられなかった分野や、「最近の雪事情」、「最近の雷事情」のように最近の話題も取り入れるように努めたつもりです。
 最近よく耳にする学生・生徒の理科離れ、文字離れという現実は永く教育・研究に携わってきた者としては、真に憂うべき事柄です。しかし、これも現実として受けとめなければならないでしょう。そんな方々にもまずこの本を見て欲しい。それから読んで欲しいと思い、この種の本としては異例とも思える多くの写真や図を載せて頂きました。写真や図に多少でも興味湧いたら本文に目を通してみてください。この『雪と雷の世界』と、先の『雲と霧と雨の世界』の中には大気現象(気象)の不思議さや、面白さがぎっしり詰まっているはずです。きっと、へーと思うことがあるはずです。そんなことを夢見ています。

2008年12月
菊地勝弘

【目次】
第1部 雪の世界
 第1章 雪のこと
  1.1 雪のイメージ
  1.2 雪月花
  1.3 雪のうた
  1.4 津軽の雪

 第2章 氷晶
  2.1 氷晶の発生
  2.2 氷の結晶構造
  2.3 人工氷晶核

 第3章 天然雪
  3.1 氷晶・雪の結晶
  3.2 極域の氷晶
  3.3 多花結晶(十二花、十八花、二十四花結晶)
  3.4 低温型雪結晶
  3.5 雪の結晶の落下姿勢と落下速度
  3.6 雪片の形成

 第4章 霰(あられ)、雹(ひょう)、霙(みぞれ)
  4.1 霰
  4.2 雹
  4.3 霙

 第5章 人工雪
  5.1 中谷の対流型人工降雪装置
  5.2 B・J・メイソンの拡散型人工降雪装置
  5.3 小林のダイヤグラム
  5.4 ペットボトルを使った平松式人工降雪装置
  5.5 札幌市青少年科学館の人工降雪装置

 第6章 降雪現象
  6.1 北海道西岸の降雪
  6.2 北陸地方・日本海沿岸の降雪
  6.3 レーダーで見る極域の降雪現象

 第7章 露、霜、雨氷など
  7.1 露
  7.2 霜
  7.3 霜柱
  7.4 窓霜
  7.5 雨氷
  7.6 凍雨

 第8章 最近の雪事情
  8.1 雪の結晶のシミュレーションとダイヤグラムの変遷
  8.2 雪まりも

第2部 雷の世界
 第9章 雷は電気現象
  9.1 雷神は女性
  9.2 雲粒の電荷
  9.3 雪の結晶はマイナス、雨滴はプラス
  9.4 融解による荷電現象
  9.5 大気電場と降水電荷の符号の鏡像関係

 第10章 夏の雷、冬の雷
  10.1 雷雲についての論争
  10.2 雷の分類
  10.3 初期の雷観測の歴史
  10.4 雷と球皮事件
  10.5 日本の落雷日数・落雷密度
  10.6 夏の雷、冬の雷
  10.7 最近の冬の雷の観測

 第11章 雷雲の電荷発生機構
  11.1 雷の電気
  11.2 雷電気の発生機構
  11.3 その他の雷現象

 第12章 模擬落雷実験
  12.1 模擬岩場での放電実験
  12.2 模擬人体への放電実験
  12.3 誘雷実験

 第13章 最近の雷事情
  13.1 雷観測技術の最近の発展
  13.2 人工衛星による雷放電の全球分布
  13.3 積乱雲の雲頂から電離層への放電現象

(気象図書)
カテゴリー:気象ブックス タグ:天気 気象 気象ブックス 
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