海のパイロット物語


978-4-425-94651-8
著者名:中之薗郁夫 著
ISBN:978-4-425-94651-8
発行年月日:2002/1/28
サイズ/頁数:A5判 210頁
在庫状況:品切れ
価格¥2,860円(税込)
品切れ
港に出入りする船を安全に離着岸させるパイロット(水先人)。操船技術から外国船船長との交流まで、その仕事の全てを分かりやすく紹介。

【まえがき】より
パイロットといえば、大方の人は飛行機の操縦士を思い出されるであろうが、本来「水先案内人」のことで、こちらが元祖である。法的には「水先人」という呼称であるが馴染みにくく、海事関係や港関係の人達は、もっぱら「パイロット」と言っている。
世界中の港屋海峡にはパイロットがおり、船が港湾や海峡、内海など航海危険の多い水域を航行するときは、安全のため、その水域の事情や船の操縦に精通したパイロットを乗せている。その仕事の内容や役割等については、本文の中で説明するが、簡単にいうと、現代は、パイロットとは水先免許を持ち、船長に代わって船を操縦する者のことである。
私は最近まで東京湾水先区のパイロットとして、横浜、川崎、千葉、君津の各港において、24年間にわたり1万1000隻の船の出入港操船を行い、無事故でとおした。この仕事に限りない誇りと愛着を覚えるものであるが、なにしろこの仕事は世間の目に触れない海の上の仕事であるから一般に知られていない。従って、どんなものであるか紹介し、できるだけ多くの方に理解してもらいたい、という願いから筆を執った次第である。
パイロットになる前は日本優先に30年間勤務したが、入社早々に海軍に召集され2年半軍務に服し、復員後は航海士、船長としての勤務や本・支店の仕事をしていたので、その間に経験したことで印象の深かったことを附記した。
また、固い話が多いので、少しでも気軽に読んでいただけるよう、外国船の船長から見聞きしたことなどを合間に挿んだ。できるだけ専門用語を避け、平易に説明したつもりであるが、一般の方には分かりにくく、海事関係者には物足りない、というところがあるかも知れない。
執筆に当たり、東京湾水先区水先人会、日本パイロット協会の皆さんに温かいご指導をいただいたこと、また、編集・出版については(株)成山堂書店の小川實社長に格別のご協力を賜ったことを深謝申し上げる。
カバーデザインについて、同僚のパイロット鹿島氏のご協力を得、本書に花を添えていただいたことを心から喜んでいる。
この小著が人の目にとまりパイロットや海、船についてのPRに多少とも役立つならば、長年海と関わってきた者としてこんなに幸せなことはない。

平成14年1月
中之薗 郁夫

【目次】
第一部 パイロットは海の案内人
 1 陸上交通と海上交通の違い
 2 海のパイロット
    パイロットの語源
    パイロットの免許
    ベイ・パイロットとハーバー・パイロット
    パイロットの仕事
 3 Starboard(右舷)とPort(左舷)
    操舵号令
    カタコトの薦め
    各国の操舵号令とカタコト一覧
 4 水先人会
    各水崎区水先人会
    日本パイロット協会
 5 IMPA総会余話
    ガールハント
    ヒエログリッフ
    窮すれば通ず

第二部 パイロットの技術
 1 タグボートの利用
    縁の下の力持ち
    タグボートの活用と協力
    タグボートとスラステーの違い
    大型船の操船を可能にしたタグボート
 2 タンカー
    大きくて重い
    タンカーは出船着けが望ましいか
    オトコの願い
 3 自動車専用船(PCC:Pure Car Carrier)
    大きくて軽い
    風圧とフレアー(Flare)
 4 豪華客船
 5 コンテナ船
 6 超危険物積載船
    LNG船、LPG船
    高校野球とパイロット
    東京湾火の海
 7 鉱石専用船:タンカーより要注意
 8 その他の専用船
 9 関連外部への技術協力
    海難防止団体とパイロット
    港湾設計とパイロット
    災害救助と船
 10 水先余談
    船とお国柄
    言葉の発想
    薩摩弁
    ヤマアラシの求愛

第三部 パイロットの修羅場
 1 修羅場
    コンテナ・クレーン全壊
    あわや防波堤激突
    春一番
    ブイの股潜り
    二重衝突回避
 2 閑話小品
    石頭と木頭
    Hummingの禍い

第四部 水先関係の法令
 1 水先関係法令の概要
 2 東京湾内の実情
    常識外の劣悪船ウヨウヨ
    東京湾内の違法航行
 3 港内船舶の突発故障の実情
 4 強制水先制度
    強制水先制度と安全
    強制水先制度と運航能率
 5 不可解な規制緩和
 6 強制水先緩和後の危険な港
 7 外国式考えと日本式考え
    RED-TAPE
    港長指定錨地
    フェンダー損傷
 8 閑話小品
    どんな月、どんな潮
    海のマーフィーズ・ロー

第五部 操船関係機器の発達
 1 新しい航海機器とシステム
    ARPA(自動衝突予防援助装置)
    GPS、DGPS
    SOS
    GMDSSーSOSは時代遅れ
    カーナビ
    電子海図ENCと表示装置ECDIS(海のカーナビ)
 2 操船シミュレーター
    操船シミュレーターの実例
    操船シミュレーターのsimilarとsame
    操船シミュレーターの向上のために
    操船の機械化
 3 新型舵の出現
 4 閑話余録
    ナイル河での帆走
    今でも海賊が出る

第六部 パイロットに望む
 1 何より無事故
 2 水先業務のPR
    抜本的PR活動を
    私の行ったパイロットPR
 3 自己管理と自己研鑽
     自己管理
    自己研鑚

第七部 パイロットへの道程
 1 従軍時代
    巡洋艦「妙高」
    あざなえる禍福
    大島特攻輸送
    戦艦「大和」が身代わり
    Narrow Escape
    最後の戦い
    運と努力
    戦争雑感
 2 船会社時代
    戦い敗れて世はすさみ
    憧れの地中海
    英国海軍は商売人
    豪州余談
 3 労務屋からパイロットへ


書籍「海のパイロット物語」を購入する

品切れ
カテゴリー:趣味・実用 
本を出版したい方へ